不死人、オラリオに立つ   作:まるっぷ

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第七十三話 新たなる冒険へ

 

【ロキ・ファミリア】が『遠征』から帰還して十日が経過した。

 

地上では何も変わらぬ日常が続いていた。十日前の【ガネーシャ・ファミリア】による深夜の避難訓練―――という名目での、住民たちの緊急避難だが―――には多くの住民たちから戸惑いの声が上がったが、それも今や忘れ去られている。

 

一部の神たちはこの出来事の裏を探ろうとしていたが、真実を知り得るには彼らは部外者に過ぎた。全ては終わった事であり、彼らもそれ以上追求するような事はなかった。

 

「………」

 

そんな日常が続くオラリオの、壁や天井が半壊した建物が放置された人気(ひとけ)のない場所に、一人立ちつくす者がいた。

 

土が剥き出しの地面にかつてあったはずの篝火は、今や影も形もない。

 

「……本当に行ってしまったんだな」

 

不死人の安息地である篝火が消失した事実に、フェルズはぽつりと呟きを落とす。

 

その時。懐に忍ばせていた水晶(マジックアイテム)に、ウラノスからの連絡が入った。

 

『フェルズ、地上の様子はどうだ』

 

「ああ。オラリオ中を見て回ったが、やはり被害があったのはダンジョンの中だけだ。リドたちにも手伝ってもらったが、もうその必要もないだろう」

 

『そうか……』

 

『深淵』が再び発生した際に即座に対応するため、『異端児(ゼノス)』たちの協力も得て地上とダンジョンの両方で警戒に当たっていたが、あれから一切の異常はない。

 

当時ダンジョンにいた冒険者たちにも被害者は出なかったとガネーシャを通して報告があった。『リヴィラの街』にいた冒険者たちも『異端児(ゼノス)』たちにも、誰一人として被害が出なかったのは奇跡と言って良い。

 

脅威が完全に消えた事を確信したウラノスは、フェルズに元の作業に戻るよう伝える。

 

『59階層に現れた『穢れた精霊』の件もある。今後はそちらに注力しろ』

 

「分かっているよ……なぁ、ウラノス」

 

本来の仕事……ウラノスの片腕となり地上を脅かす危機を速やかに察知、対応する役目を担っているフェルズは、自らが抱く未練がましい感傷を断ち切るように、神の言葉を乞う。

 

「彼は、本当に行ってしまったんだな」

 

『……ああ』

 

水晶越しでも分かる神妙な声色でウラノスはそう答えた。

 

僅かな時間ではあったが、しかし確かに仲間であった者の喪失を、一人と一柱は沈黙を以て噛み締める。

 

彼が歩み続けるであろうその旅路が、どうか報われるものである事を祈って。

 

 

 

 

 

時はフィンたちが本拠(ホーム)へと帰還した日へと遡る。

 

夜にも拘わらず、黄昏の館は多くの団員たちの盛大な出迎えの声で満たされた。死線を乗り越えた勇者たちへの歓声は、しかし徐々に鳴りを潜めていった。

 

そこにいるべきはずの人物、ファーナムの姿が見えない事に気が付いたからだ。

 

フィンたちの固い表情に、団員たちは何が起こったのかをすぐに察した。『遠征』に危険は付き物であり、そういう可能性がある事を知らない者はいない。故に誰もが口を噤み、本拠(ホーム)を静寂が包み込んだ。

 

「よっ。おかえりぃ、皆」

 

そして、ロキがやって来た。

 

口調こそ軽いが、いつもの道化じみた雰囲気はそこにはない。ただ静かに、帰還したフィンたちを出迎える。

 

「ロキ」

 

「疲れてるとこ悪いけど、ちょっと来てくれへん?今回の『遠征』の事、聞かせてや」

 

「……ああ」

 

主神の声に導かれるまま、フィンたちはロキのもとへと進んでゆく。招かれたのは59階層へと足を踏み入れた者たちに限られ、アキたちはそのまま休むようにと伝えられた。

 

「待って、ロキ!せめて明日に……!」

 

「いいんだ、アキ」

 

ファーナムの姿がない事にロキが気付いていないはずはない。神でなくともその意味は分かるだろう。誰もが辛い事を承知の上で、せめて今日はこのまま……とアキは食い下がろうとしたが、他ならぬフィンがそれを制した。

 

「ロキの言う通り、君たちは休んでくれ。ここにいない者たちには、明日僕の口から伝える」

 

「……っ」

 

有無を言わさぬその言葉に、アキたちは黙る事しか出来なかった。

 

彼らの視線を背に受けながら、ロキを先頭にフィンたちは彼女の神室へと進んでゆく。毎日歩いているはずの館の廊下が、やけに長く感じた。

 

そうして足を踏み入れた部屋の中で、ロキは全員へと向き直る。普段は閉じられている糸目は薄く開かれており、その面持ちに他派閥の椿はもとより、アイズたちまでもがごくりと唾を飲み込んだ。

 

ただ三人。最古参組であるフィン、ガレス、リヴェリアだけが、その表情を崩さなかった。

 

「今更だが、手前がいても良いのか?」

 

「ええよ。ファーナムの事を知っとるんは、ここにいるうちらだけなんやし」

 

ウラノスの事は伏せ、ロキは椿の懸念をさらりと受け流した。同時に、ファーナムの正体を知っていたという事実を明かす。

 

そして、フィンの口から見てきた事、起こった出来事が語られた。

 

59階層に待ち構えていた『穢れた精霊』。それを瞬殺し、この地上にいる神々の抹殺を企てた『闇の王』との戦闘。そしてこれを倒し、自分のいた世界へと還っていったファーナム……その全てが語られた。

 

「そっか……」

 

口を挟まず、ロキはただ黙ってそれを聞いていた。アイズたちもその場に立ち尽くし、彼女が口を開くまでその姿勢を崩さなかった。

 

「……やっぱり行ってしもたんやな、ファーナムは」

 

「心当たりがあったのかい?」

 

「主神やからな。『恩恵(ファルナ)』が消えた訳やあらへんけど、えらい遠くにいるように感じてしもて」

 

神だけにしか分からないその感覚。自らの神血(イコル)を分け与え眷属となった者が命を落とした時、神はその者との繋がり、即ち『恩恵(ファルナ)』の喪失を感じ取る事が出来る。

 

そうではなくとも、ファーナムに刻まれた『恩恵(ファルナ)』の感覚はとてつもなく希薄になってしまった。その事実にロキは、彼がもとの世界へと還ってしまった事を察していたのだ。

 

「ロキ……」

 

「にしても、あれやな!行くなら行くって一言くらいあってもええのにな!主神やぞ、うち!?しょーもない奴やなぁホンマ!」

 

机に寄りかかり、ロキはそれまでの雰囲気をぶち壊すかのように笑い飛ばそうとする。それがただの空元気である事は誰の目から見ても明らかだ。

 

集った眷属たちの前で、主神の笑い声が空しく響く。そんな中で、アイズが口を開いた。

 

「ロキ……ファーナムさんから、伝言があるの」

 

「!」

 

その言葉に、ロキは顔を俯かせたまま目を見開く。

 

「……ファーナムは、なんて?」

 

「うん……一言だけ」

 

 

 

―――ありがとう。

 

 

 

「……ははっ、なんやそれ」

 

いかにもファーナムらしいたった一言だけの伝言には、全てが込められていた。

 

不死人である自分を拒まず、ファミリアに誘ってくれた事。オラリオで人としての暮らしを与えてくれた事。

 

仲間と背を預けながら戦う心強さと、彼らと飲み交わす酒と食事の楽しさを教えてくれた事。

 

己を見失いそうになった時、手を差し伸べてくれた事。内に秘めた葛藤を振り払ってくれた事。

 

そして、仲間を守る為の魔法を与えてくれた事。

 

そのたった一言に、全ての想いが込められていた。

 

「そんな一言くらい、自分で言えっちゅうねん……ホンマ、しょーもない奴やな」

 

俯いた顔を見せないように、ロキはアイズたちに背を向ける。

 

そんな主神の様子に、フィンはアイズたちに退室するように告げた。

 

後に残ったのは三人。フィン、ガレス、リヴェリアのみである。

 

「……自分らは休まんでええの?」

 

「なに、一杯くらいなら付き合ってやろうと思っての」

 

「ああ。それくらいなら良いだろう」

 

そう言い、ガレスはリヴェリアに目配せをする。彼なりの気配りに普段は酒を嗜まないリヴェリアも賛同し、フィンもまた無言で頷いた。

 

「ん……三人とも、ありがとうな」

 

そうして取り出されるのは酒の入った瓶と、四つのグラス。

 

琥珀色の液体を注ぎ、一柱と三人はグラスを手に、部屋の中央で向かい合う。

 

「先に言っとくけど、これは別れの酒やない。自分で選んだ道を歩むと決めたファーナムへの、祝いの酒や」

 

ロキの顔に寂しげな面影はもうない。そこには新たな旅路へと向かった眷属の無事を祈る、神の顔があった。

 

「ファーナムの新たな旅路に……冒険に、乾杯」

 

小さく打ち鳴らされる四つのグラス。彼らはそれを一息に飲み干した。

 

「……っかぁー!やっぱ酒は美味いなぁー!」

 

「んっ……けほ、けほっ!」

 

「がははは!相変わらずリヴェリアは火酒が苦手か!」

 

「お前と一緒にするな、ガレスっ……くっ、喉が焼ける……!」

 

「リヴェリア、無理に一気に飲まなくても良かったんだよ?」

 

「ひゅー!酒でむせるリヴェリアなんて超レアもんやでー!萌えー!」

 

「うるさい、ロキ!……フィン、すまないが水をくれ……」

 

「はいはい。分かってるよ」

 

神室に残った湿っぽい空気を払拭するかのようにロキが声を上げた。

 

火酒の酒精にやられたリヴェリアをガレスが茶化し、フィンも呆れ顔で水差しを持って来る。まるで入団当初のように盛り上がる三人の様子に、ロキの頬が緩んだ。

 

そして、彼女の視線が戸棚へと向けられる。そこには『遠征』前夜、ファーナムがロキへと買ってきた神酒(ソーマ)の入った酒瓶が置かれていた。

 

(……ちゃんと取っとくから、ちゃんと帰ってくるんやで、ファーナム)

 

いつの日かまた酒を酌み交わすべく、ロキは心の中で静かに、そう呟いた。

 

 

 

 

 

翌日、【ロキ・ファミリア】全団員が本拠(ホーム)の広間へと集められていた。彼らの前にはただ一人、フィンが立っている。

 

「皆、聞いてくれ。今回の『遠征』について、言っておかなければならない事がある……ファーナムについての事だ」

 

その名が出た瞬間、多くの団員たちの顔に影が差した。

 

『遠征』から帰還したフィンたちの中に、彼だけがいなかった。その意味を理解できない者などいない。僅か数か月という短い時間ではあったものの、仲間を失う痛みに耐えるように、彼らはぐっと歯を食い縛った。

 

「彼の力がなければ、今ここに僕たちはいなかっただろう。その勇気は何ものにも代え難く、何よりも貴く……まさしく彼は、冒険者だった」

 

己の命に代えても仲間を守る。その覚悟で戦う事はできても、それを実現させられる者はほんの一握りしかいない。それこそ御伽噺、(ちまた)で語られる英雄譚に登場する主人公のように。

 

「そんな彼に対して、僕たちがすべき事は何だ?」

 

フィンの言葉に、俯いていた団員たちが顔を上げる。

 

「彼の英雄的行動を忘れないように心に刻む事か?違う。空の棺を納めた墓標に感謝の言葉を伝える事か?違う……僕たちは、彼の帰りを待つんだ」

 

ざわ、と団員たちがどよめく。

 

フィンは徹底した現実主義者(リアリスト)だ。時には非情な決断をも辞さない彼が放った先の言葉は、普段の彼からあまりに乖離している。

 

命に代えて仲間を救ったファーナムに対して、墓すら建ててやらないのか。それは余りにもむごい仕打ちだ。そういった非難の視線を一身に浴び―――フィンは真正面から言い切る。

 

「彼は言った。必ずまた戻ってくると」

 

瞬間、彼らの表情が驚愕に染まった。

 

そんな口約束を鵜呑みにしたフィンに対して、ではない。有無を言わせぬ気迫、そしてファーナムの生存を確信していると感じさせる、フィンの強い意志に対してだ。

 

「ならば、いつまでも待ち続けよう。そして再び会ったその時に、見せつけよう。今よりも遥かに成長した僕たちの姿を」

 

「………っ!」

 

その言葉にアイズが、レフィーヤが、ティオネが、ティオナが、ベートが、ラウルたちが、全団員が、己の胸に火が宿った事を確信した。

 

それは決意を新たにした冒険者たちの誓いの灯火。待ち受けるどんな試練にも決して膝を突かず、ただひたすらに前のみを見据えて走り続け、いつかファーナムに追い付き、追い越してやろうという、戦う者たちの魂の輝きだ。

 

「ふっ。相変わらず焚き付けるのが上手いの、あやつは」

 

「ホンマや、みんな目ぇギラギラさせとる。ベートなんか今にもダンジョンで大暴れしそうやで!って、アイズたんも!?」

 

「全く……今日くらいは大人しくしていて欲しいものだが」

 

壁際でフィンの言葉を聞いていたガレスとリヴェリア、そしてロキが顔を見合わせて嘆息する。そんな主神と幹部たちの胸中などお構いなしに、広間の士気はどんどんと高まっていった。

 

そんな次世代を担う若き冒険者たちに、フィンはこう締めくくった。

 

「そして存分に語らおう……僕たちの素晴らしい冒険を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これより物語は本来あるべき形へと向かう。

 

オラリオを脅かす無数の悪意、邪神の演出する舞台上へと冒険者たちは(いざな)われる。

 

しかし、悲劇では終わらない。

 

彼らの胸の内には……これまで以上に燃え盛る、不屈と言う名の炎が宿っているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

岩の玉座で目を覚ます。

 

兜の奥で薄く開かれた双眸に映るのは、まさに今閉じられようとしている岩の扉だ。

 

「………」

 

この扉が閉じられれば、もう後戻りは叶わない。強大なソウルを取り込んだこの身は、緩やかに滅びゆく世界を延命させるための薪となるだろう。

 

そして、世界は再び繰り返すのだ。真の終わりを迎えるその時まで、何度でも、何度でも。

 

 

 

―――ならば、抗おう。

 

 

 

不死人は立ち上がる。

 

擦り切れた心のまま、一度は薪となる事を選んだ己を葬り、不死の呪いを根絶するという途方もない旅路を歩み続けるべく、閉じかけた岩の扉に手をかける。

 

「……っ、………!」

 

岩の扉が開かれる。緩やかに死んでゆく世界の運命を拒むかのように。

 

眼下に広がるのは薄暗い空間だ。その光景に、原罪の探究者の言葉が脳裏を過ぎる。

 

 

 

―――試練を超えた者よ。お前は何を望む。

 

 

 

「……ああ、何度でも言おう」

 

不死人は階段を昇る。

 

一歩一歩を踏み締め、己の立てた誓いから目を背けず、真っすぐに前を向く。

 

「……あなたは……」

 

階段の先に、彼女はいた。

 

最後に見た時と同じ格好、同じ姿勢のまま立ち尽くしていた緑衣の巡礼……シャナロットと名付けられた人造の竜の子は、不死人の姿をその目に認め、ポツリと呟いた。

 

「そうですか……玉座を拒んだのですね」

 

「……ああ」

 

「……私から何かを言う事はありません。どの道を選ぼうとも、私の旅は既に終わったのですから。運命を受け入れるも、拒むも、あなたの自由です」

 

「そうだな……俺は自由だ」

 

「……?」

 

そんな不死人の言葉に、シャナロットは僅かに違和感を覚えた。

 

最後に会話した時と比べ、今の不死人にはどこか……初めて出会った時にも感じた、人間らしさのようなものを感じたのだ。

 

「シャナロット、お前の旅は既に終わったと言ったな」

 

「……はい」

 

「なら、俺と一緒に旅をしないか」

 

「……旅、ですか?」

 

シャナロットが僅かに首を傾げ、聞き返す。その様子に不死人は小さく笑った。

 

「俺は不死の呪いを根絶させる手段を探す旅に出る。そんなものなど何処にもないのかも知れない、そんな旅だ」

 

それは暗闇の中を松明も持たずに進み続けるようなものだ。だというのに不死人は、どこか楽しみにしているかのような口ぶりでシャナロットに話しかける。

 

「そして旅には……冒険には仲間が必要だ。一人では成し得ない事も、仲間がいればどうにかなる……かも知れん」

 

「……あなたは何を言っているのですか?」

 

「あー……まぁ、つまりだ」

 

不死人は困ったように頭に手を回し、やがて口を開く。

 

「一緒に来て欲しい。仲間がいれば心強い」

 

「……ふふ、可笑しな方ですね」

 

この時、シャナロットは初めて笑った。

 

生み出されてから初めて抱いた感情。それはとても奇妙なもので、これがどのような時に抱くものなのかさえも彼女は知らない。

 

それ故に、彼女はもっと知りたいと思った。自分の中には何があるのか、この感情の他にも何かあるのか。

 

それを知るために、この不死人ともっと話をしたいと、そう思った。

 

「……分かりました。この身があなたの役に立つというのであれば、共に行きましょう」

 

「ああ、ありがとう」

 

 

 

 

 

こうして不死人は仲間を得た。

 

来た道を戻り、その道中で新たな仲間も加わった。仮面を外した誇り高い女騎士と、家宝の大剣を担いだ気さくな戦士である。

 

彼らと共に、不死人は海を渡った。その先で数々の出会い、そして別れを繰り返し、彼の冒険は続いてゆく。

 

 

 

 

 

「皆さん、夕食の準備ができました」

 

「おおっ!これはかたじけない、シャナロット殿!」

 

「蜂蜜酒も少しならあるぞ。以前の村で山賊から助けてくれた、その感謝の品だそうだ」

 

「これは有難い!それではルカティエル殿、某がまず味見を……」

 

「駄目だ。一番の功労者はお前ではないだろう、バンホルト。最初に飲むのは彼だ」

 

「む、むむぅ……!?」

 

夜の帳が落ちた平原で、夕餉の光が灯る。

 

四人は車座になって地面に座り、暖かなスープを木の器に注いでゆく。

 

「さあ、飲め。これはお前の酒だ」

 

「ありがとう……うん、美味いな」

 

「なぁ、貴公!次は某が飲んでも良いだろうか?」

 

「ああ、ルカティエルとシャナロットが飲んだ後にな。お前は全て飲むまで瓶を離さないだろう」

 

「そ、それはっ……!?」

 

「ふふっ。あの時は頂いた火酒を一人で飲み干してしまいましたからね」

 

「ふっ、因果応報という奴だ」

 

楽しい時間はゆっくりと過ぎてゆく。

 

酔う事はなくとも、酒が入れば上機嫌にもなる。

 

「貴公、またあの世界の話を聞かせてはくれまいか!」

 

「またか。もう散々話しただろう」

 

「いや、私も興味がある。特にあの褐色の鍛冶師が鍛えたという、その剣についてな」

 

「私も聞きたいです。あなたから貸して頂いた『アルゴノゥト』以外にも、たくさんの物語があるのでしょう?」

 

「お前たちもか……良いだろう。なら夜が明けるまで話してやる」

 

不死人は笑みを(たた)え、語る。

 

僅か数か月だけの、しかし何ものにも代えがたい、オラリオでの素晴らしき日々の記憶を。

 

そして決まって、話の最初はこの言葉から始まった。

 

「俺はあの世界で、ファーナムと名乗っていたんだ―――」

 

 

 

 

 

~不死人、オラリオに立つ~   完

 

 




新年、明けましておめでとうございます。

そして『不死人、オラリオに立つ』、とうとう完結です。

この作品は私が初めてハーメルンに投稿したもので、読み返してみれば表現や文章が拙いところも多くあり、まだまだだなぁと痛感します。それでもここまで書き切ることが出来たのは、今まで読んで下さった皆様のおかげです。

五年と約半年もかかってしまいましたが、これにてファーナムの物語は終わりとなります。彼が歩み続ける旅路、冒険がどうか報われるものである事を皆様が祈って下されば幸いです。

これまで本当に、本当にありがとうございました。





……次回作はゴブスレとかで書きたいなぁ(遠い目)
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