宮本武蔵×沖田総司の百合SSです。
酒に酔ってしまった二人が色々とするお話です。
勢いで書いたものなので多少雑かもしれませんがご了承ください。
以下の描写がOKという方のみご閲覧ください。
・R-15程度の百合
・独自設定
宮本武蔵は呆然としていた。これは夢だ、そう思いたかった。
しかし入ってくるあらゆる情報がこれを現実だと示している。
まさかこんな事が起こるとは夢にも思わなかった。正直、ドラマや映画だけのフィクションのお話だと思っていた。まさか現実で起こるようなことではないだろうと。
何故だ。どうしてだ。必死で先日の記憶を辿る。だが何も思い出せない。頭痛も相まって記憶が霞んでいる。昨晩何があったのかまるっきり覚えていないのだ。
彼女は混乱していた。一体どうしたらいいのかわからなかった。
―――何故、私は裸で布団にいて、隣には裸の沖田ちゃんがいるのーーーー!!!
これは遡ること昨夜の事
「それじゃみんな~カンパーイ!」
「カンパーイ!!!」
朗らかな声とグラスのぶつかる音が店内に響いた。畳の上の四角いテーブルを男性一人と女性四人が囲んでいる。皆笑顔で一気に酒を一気飲みした。机上には酒や和風の料理が並んでいる。
ここはカルデア内部にある居酒屋だ。元は職員の何人かが夜の憩いの場として作った場所で、料理は交代で作っていた。しかしカルデアにサーヴァントが揃っていくに連れて料理をしたいという者や、夜の楽しみがないと面白くないという層が増えてきて、いつの間にやら飲み屋が出来ていたのだ。カルデアの使用されていなかった部屋に職員と一部のサーヴァント達が作ったのだが、なかなかどうして立派な店になっている。もっとも店と言ってもお金は払わなくて良い。一応夜のみの開店となっており、未成年であるマスターは利用できない。カルデアの職員やサーヴァント達が夜に集まって静かに飲んだり、時にどんちゃん騒ぎをしたりと大人の場所として利用されていた。
「それじゃ、今回の歓迎会の主役、鈴鹿御前さん!挨拶よろしくー!」
初めからいきなりテンション高く切り出したのはセイバー、宮本武蔵。二本の刀を用いる二天一流兵法で有名な剣術家であり、兵法書である五輪書は、今や海外にも有名な本となっている。そんな著名な剣豪だが、とても彼女を見てそう思う人はいないだろう。だらしがなくタダ飯に弱い。常に呑気でまるでくノ一のような恰好をしている時もある。ちなみに総じて評価は、どこか抜けてるお姉さん、という物だ。
「はいはーい!今日からお世話になるJKセイバー、鈴鹿御前でーす!マジよろしく☆みたいな~?」
宮本武蔵から呼ばれた少女もまた楽しそうに返答した。彼女はセイバー、鈴鹿御前。つい先日カルデアに召喚されたばかりのサーヴァントだ。頭からは獣の耳を生やし刀とバッグを持っている。そして衣服は白い服に短めのスカートとまるで女子高生のような恰好であった。鈴鹿御前と言えば平安時代に立烏帽子という名でも通った有名な剣士で、多くの鬼を夫である坂上田村麻呂と退治した逸話を持つ。当然JK要素など史実的には皆無であるものの、本人が自称しているのなら突っ込むのは野暮というものだ。
そして彼女はこのサークル、「カルデア日本刀クラブ」の新入部員でもあった。このサークルは宮本武蔵とアサシンのサーヴァント、佐々木小次郎が作った物だ。そのまま日本刀を用いるカルデアの英霊をスカウトして部員を増やしているのだ。そして鈴鹿御前と聞いた宮本武蔵が慌てて勧誘に行き、こうして無事に入ってくれたのだ。ちなみに今日は新入部員たる鈴鹿御前の歓迎会で皆で集まっている。
「よろしくな鈴鹿殿。しかし女子高生なら、居酒屋はご法度ではないか?」
そう突っ込んだのは着物を着た優男、佐々木小次郎だ。もっとも宮本武蔵の相棒として名高い英霊ではなく、単に佐々木小次郎の技を使えるだけの無名の農民に過ぎない。それでも剣の腕は確かで、宮本武蔵と対等に渡り合えるだけの実力者だ。
「もうそんなのは良いんだって!お酒を飲めるJKだってありっしょ!」
「いや、女子高生の飲酒はダメですよ!まぁ鈴鹿さんは未成年ってわけじゃないですけど!」
鋭い突っ込みをしたのはセイバー、沖田総司。新撰組一番隊隊長にして天才と謳われた隊士だ。しかし労咳によって満足に戦うことが出来ず晩年は療養ばかりであった。サーヴァントとして召喚された時も吐血は発生してしまうものの本人からしたらある程度慣れてしまったらしい。もっとも周りは未だに慣れていないのだが。
「良いではないですか。私も以前は兄上と共に良く酒を酌み交わしたものです」
「って牛若丸って幼名じゃないですか!貴方も年齢的に怪しいじゃないですかヤダー!」
「まぁそこは大人の事情というやつで。そもそも私たちはサーヴァントですし」
すでに料理に手を付け始めているのはライダー、牛若丸だ。牛若丸という名の他、遮那王や成人してからの源義経という名もある。一応彼女は牛若丸という名前のサーヴァントとなっている。平氏打倒の最大の功労者となったものの、その才能を兄である源頼朝に疎まれ朝敵とされた悲劇の鬼才。多くの伝説や物語を生んだ他、現代では判官贔屓という言葉の語源ともなっている。
さて、サーヴァントとしての彼女を見て、この少女が源義経と思うものはまずいまい。背丈は小さく鎧を象った大胆な衣装で身を包んでいる。というかはっきり言って身体の前面は裸に近い。本人は涼しいからと好んでいるが、正直胸も腹も下着らしき物も丸見えだ。サークルに入った当初は、本人は恥ずかしがらないが周りが恥ずかしがってしまうという現象が起こっていた。流石に周りももう慣れてしまったが。
「いや~私達のサークルにまた部員が増えてホントに嬉しい!これで色々と捗るってもんよ!」
武蔵がテーブルの料理をつつきながらコップに入った焼酎を口に流し込む。ぷはー!とわざわざ声まで出す良い飲みっぷりだ。
「そうですね~。これで種火周回とかも一緒に行けますし、戦い方とかも話し合えますしね。それに鈴鹿さんとも剣の話してみたいです!」
「それは拙者もだな。かの鬼退治の鈴鹿御前ともなれば、興味深い話も聞けるというものだ」
沖田は目を輝かせて鈴鹿御前に目を向けているし、小次郎も興味深そうに鈴鹿御前を見ている。
「う~ん、鬼退治の話も良いんだけど~。そういや部長。このサークルって何する所なの?私まだあんまりよくわかってないんだけど」
「そうね~まぁざっくり言うとみんなで剣の鍛錬をしたり模擬戦をしてみたり、こうやって飲み会をしたりってのが活動かな」
「武蔵殿、飲み会がしたいというのが本音なのでは?」
「しー!牛若ちゃんしー!」
「図星みたいですね」
部長、というのは宮本武蔵だ。一応サークルの設立者が部長という事になっている。これは他のサークルでも同様のようだ。ちなみに日本刀サークルとなるとどうしてもサーヴァントに限られてしまうが、カルデア内部には他のサークルもある。例えば放課後スイーツ女子といった誰が入っているのか明白な物もあったりする。また音楽系や魔術系は歴史的なプロフェッショナルから指導がもらえると通う職員もいるようだ。
「失礼、追加の肉じゃがと冷奴だ。テーブルの上に置いておくから各自で取ってくれ」
そう言ってテーブルまでやって来たのはアーチャーのサーヴァント、エミヤだ。いつもは白髪を立てているが今は髪を下ろしている。それにきちんとエプロンをしていた。お盆には五人分程度の肉じゃがと、小次郎が注文していた冷奴を一皿乗せていた。
「お、ありがとうエミヤ君!君本当に料理上手いよね~。昔何かやってたの?」
「そうだな・・・。料理を作る機会は割りと多かったな。それも大人数向けに作る事が多かった。さて、それでは失礼するぞ。まだ作っている途中なんでね」
そう言ってさっさと厨房の方へと帰っていってしまった。
現在この居酒屋は主に料理サークルが担当している。彼は厳密には入っていないと主張しているが、主に教える側として出席することが多いようだ。料理サークルは趣味で料理を作るサーヴァントやカルデア職員が集まっており、この居酒屋にも積極的に顔を出している。
ちなみに今日の料理はほとんどエミヤが作ってくれた。日本刀サークルの飲み会なので、と言うと彼が快く作ってくれたのだ。正直食べてみると驚愕のクオリティだ。ひょっとするとエミヤは生前料理人だったのだろうか?と疑うレベルだ。ちなみに生前の彼を知っているらしいセイバー、アルトリアに聞いてみても適当にごまかされてしまう。エミヤという英雄は古今東西聞いたことが無いし、他の英霊達の間でも謎の存在であった。
「さて、せっかく持ってきてもらったし肉じゃが食べますか!」
そう言って武蔵が取り皿に一人分取った。手元の箸を使って口へと運ぶ。案の定美味しかった。エミヤの料理は単に美味しいというだけでなくどこか家庭的で安心する味として人気だ。本人は否定しているが周りからはしばしば、おかんと呼ばれている。
「すごいですよね~あのエミヤさん。私あんまり料理とか得意じゃないんで羨ましいです」
「私結構料理いけますよ?よろしければ今度教えましょうか?」
「そうなんですか?」
沖田も装って肉じゃがを食べていた。もちろん沖田とて新撰組で集団生活をしていたし、料理スキルもある程度持っているだろうが、本人はできていないという評価なのだろう。それに対して牛若丸は少しだけ得意げに話している。
「生前は兄上にも作っていたものです。兄上はなぜかいつも顔を顰めて食べてくれなかったんですが。カルデアの食材なら・・・そうですね、心臓とか黒獣脂とかいいかもしれませんね」
「遠慮しておきます」
沖田はきっぱりと断った。牛若丸はえー、という表情をしているが、どう考えても食材として美味しく頂けるようなラインナップではない。牛若丸は確かに天才なのだが、時々ぶっ飛んだ発言をするから始末が悪い。天才と馬鹿は紙一重というやつだろうか。
「料理なら私イケるよ。なんたってこう見えて良妻だし?家事スキルも完璧だし!」
「ほう、やはり鈴鹿殿の料理なら最近流行りの物なのか?」
「いやいや、私はカレシの健康第一だからやっぱり和食っしょ!」
自信満々に言う鈴鹿御前。流石に牛若丸のような悲惨さはないだろうが、鈴鹿御前の料理スキルが如何程の物かはわからない。だが鈴鹿御前と言えば坂上田村麻呂の伴侶であったのだ。それなりの家事スキルはあるだろう。ちなみに彼らは鈴鹿御前の料理を食べたことがないため推測できないが、実は彼女は周りから思われている以上に良妻賢母な質なので料理の腕もかなりの高水準だ。
「そう言えば小次郎さんはどうなんですか?料理」
「うーむ、そうさな・・・。先程の弓兵には及ばんだろうが、一応農民故、簡単な物なら作れるだろう」
「つまり私と同じくらいですかね。じゃあ宮本武蔵さんは・・・って何目を背けてるんです?」
沖田が目を向けると明らかに武蔵が目を逸らした。
「あーこの煮物ホント美味しいなー!エミヤ君やっぱすごいわー!」
・・・間違いない、これはできない人間の反応だ。もはや答えを聞くまでもなかった。
「できないんですね」
「何いってんの沖田ちゃん!私だってうどんくらい作れるんだから!」
「本当に武蔵殿うどん好きですよね」
「確かに、武蔵殿と言えばうどんと言うくらい、隙あらばうどんを食べようとしているな」
「えーだって美味しいじゃん。早いし安いし美味しい!最高の食べ物だって!あ、エミヤ君うどん注文していい!?」
「了解した、しばらく待っていてくれ」
宮本武蔵は何故か無類のうどん好きとして名が広まっている。というのも彼女はクエストから帰ってきた時、あるいは腹が減った時にうどんを食べたがる癖があるからだ。ちなみに彼女の名言に、うどんは別腹!というのがあるほどだ。
「そうそう、剣の話でも良いんだけどさ~。もっとこういう所ではもっと別のネタで話さない?」
「鈴鹿さん?他の話って、例えば?」
「当たり前でしょ、女子が集まったら話すネタなんて恋バナに決まってんじゃん!」
「こっ、恋バナっ!?」
「おっ、部長、誰か好きな人でもいんのかなー?顔が赤いじゃん?」
「拙者もいるのだがそれはカウントされていないのだな・・・」
露骨に武蔵が動揺した。それを面白がって鈴鹿が詰め寄る。小次郎の呟きは誰の耳にも入る事はなかった。
「そ、そんな好きな人とかまぁ、いないことは、ないけど・・・」
「マジ?ね、誰にも言わないから言ってみてよ!」
「ひ、秘密!秘密なんだって!」
まだあまり酒を飲んでいないのに武蔵の顔は真っ赤だ。彼女はこういうネタになると初心なので上手く対応できないのだ。
沖田がその光景を眺めていると、武蔵がこちらの方をちらっと見てきた。妙に熱い視線だった気がする。何だろう、と思ったが、すぐに鈴鹿の方に目を戻してしまった。ひょっとすると助け舟を求めているのかもしれない。こういうノリに慣れていない恋愛ポンコツ剣士からのSOSなのだから是非受けなくては。
「そう言えば小次郎さんはそういう話は無いんですか?時々あのキャスターさんとお話しているみたいですけど」
「ん?キャスターってどのキャスターの事?」
とりあえず話を逸らすために小次郎に聞いてみた。狙い通り鈴鹿御前はこちらにも食いついてくれた。それに彼は時々キャスター、メディアとメディアリリィと話している。どういう関係なのか地味に気になるところだ。
「うん?あぁ、あの女狐達か。恋バナ、とは全く縁のない話だ。単に以前から知っている顔というだけだな。何、大人の方は存外いじりがいのある女だからな。意外と相手をしていると飽きん。子供の方は意外と可憐で驚いているくらいだ」
本人が言った通り、どうにも恋バナという感じではないようだ。
「そ、それじゃ牛若ちゃんは?」
間を空けたら鈴鹿がの矛先が再び武蔵にロックオンされかねない。武蔵は次に急いで牛若丸にも聞いてみた。
「私ですか?やっぱり兄上ですかね。なんと言ったって私の憧れの人ですから。腕も人も、私の兄は世界一です。私は武士としても兄としても敬愛してますよ。例えば・・・」
「ってそれ全然恋バナじゃないじゃーん!」
鈴鹿御前も思わず突っ込んでしまった。というか、恐らく牛若丸は恋バナという物がどういう物かもわかっていないだろう。
「やーっぱ部長に聞いちゃうしかない感じー?ホラホラ言っちゃってよ!」
残念ながら再び鈴鹿の狙いが武蔵へと移ってしまった。
「や、だ、ダメだってもう!」
「すまん、うどんを持ってきたのだが」
武蔵が鈴鹿に押されている間に再びエミヤがやって来た。まさに僥倖だ。ここで器用に話を逸らせれば。
「エミヤ君ナイスタイミング!あのさ、エミヤ君には恋愛経験とかは」
「失礼する」
短く返答してそそくさと退却していった。その背中は明らかに、これ以上は聞くな、と如実に示していた。ますます彼の生涯に謎が深まるばかりだ。
「不思議な人ですよね、エミヤさんって・・・」
「そうさなぁ、まぁあの弓兵の過去はあまり掘り返さないのが吉だろうよ」
小次郎の反応は何かを知っているような口振りだった。彼もまた彼の生涯を知っていたのだろうか。
「さて、それじゃ観念して話してもらおっかな~?」
残念ながら話を逸らすことはできなかった。鈴鹿はニヤつきを隠そうともしない。武蔵の口から、あはははは・・・と乾いた笑いが溢れる。
「それでいるんでしょー?もしかしてもうカレシもういたりするの?」
武蔵はそのまま近くにあったグラスを掴んだ。
「さあ!今日は飲むぞ!飲んで飲んで飲みまくるぞー!いただきまーす!」
「ってもう食べてるっしょ!それに話を逸らすなー!!!」
彼女はそう言って勢い良く酒を煽った。周りもそれに釣られて笑って日本酒を飲んだ。まだまだ歓迎会は始まったばかりだ。
「う・・・うーん・・・」
「武蔵っち、意外と下戸じゃん?」
「武蔵殿はあれだ。宴会は好きだがあまり酒には強くないタイプなのでな」
飲み会が始まってから三時間ほど経った。開始時間が早かったためまだ深夜という程ではないが、そろそろ時間的に閉店の時間だった。そして部長の宮本武蔵はと言うと主賓の鈴鹿御前を差し置いて派手に飲み食いをし、その結果数十分ほど前から畳に横たわっている。はっきり言って飲み過ぎだ。日本酒、焼酎と頼んでは飲み頼んでは飲みを(下戸でありながら!)繰り返していたのだ。ぶっ倒れるのも当然だ。それからは残った四人でくだらない話をしながらだらだらと時間を過ごしていた。
「って、アンタも結構酒強いじゃん。結構昔は飲んでたの?」
鈴鹿は小次郎に尋ねた。皆宮本武蔵程ではないとはいえ飲んでいるのに彼はまるで酔っている気配がない。もちろん鈴鹿御前も酒は強いため平気だったのだが。
「まぁ拙者はザルだからな。普段は、酒は嗜む程度に取っていたと言ったところかな」
「小次郎殿は飲み方も風流ですからね。でも少し顔が赤いですよ?」
「そう言う牛若丸殿も頬が染まっているぞ?何、酒の席なら少しくらい酔うのも無礼講という物よ」
「みなさんすごいですね~。私はすぐ酔っちゃうからあんまり飲めないんですよね」
今起きている中で最も顔が赤いのは沖田だろう。彼女はあまり酒が強い方ではないと自覚しているので量は少なめだがやはり少し酔っている。というか彼女の周りが皆強すぎるだけなのだが。
「さて、そろそろお開きかな。丁度日付も変わりそうだ」
「そうですね、それじゃお片付けしましょうか」
気づけば机上の料理も空っぽになっていた。この居酒屋では皿は各自で厨房まで持っていく事になっている。調理班の手間を少しでも掛けないようにと言う配慮だ。もっともそれでも食器を洗ってくれるのは料理担当の人だ。好きでやってくれているとはいえ感謝しなければならない。
「って、この部長どうする?」
「そうさな・・・まさか寝かせておくわけにもいくまい。沖田殿、いつものように連れてってくれんか」
「えぇ・・・」
「良いでは無いですか。正直もう慣れたでしょう?」
「そりゃそうですけど・・・」
飲み会好きの宮本武蔵が酔い潰れるのは何も今回が初めてではない。カルデアにはサーヴァント毎に一応個室が用意されていて、武蔵と沖田は部屋が隣だ。その為宴会をすればかなりの確率で倒れた武蔵を部屋まで運ぶ役割を沖田が負う事になっていた。正直宴会が終わる時は沖田も酔っていて足元が少しとは言え危うかったりするので大変といえば大変なのだが。
「ま、片付けは私達でやっとくから。そこの酒酔い部長さっさと連れてってきて」
「はぁ、しょうがないですね。それじゃお先に失礼しますね」
「はいはーい!飲み会結構楽しかったし今度またやっちゃおー!」
そう言って沖田は武蔵を背負って器用に靴を履いた。見た目は少女とは言えど、サーヴァントなので一人背負うくらい大したことはない。そのまま足元に注意しながら沖田は店を出ていった。
「うーん、結構重たいです武蔵さん・・・」
そうぼやきながらカルデアの廊下を歩いていた。もちろん武蔵を背負って。流石に最初はなんてことなかったのだが、居酒屋から部屋まではそこそこ距離があるので地味にきつくなってきた。それに自分も少し酔っているのだから尚更辛い。次からは自分で歩ける程度の飲酒にしろ、と流石に注意するべきだろうか。ちなみにその武蔵はというと沖田の背中ですやすやと寝息を立てている。起こしても自力では歩けないだろうし、何より流石に悪いような気がした。しょうがないのでゆっくりと部屋へと歩いて帰っていたのだった。
「それにしても、武蔵さんって結構大きいですよねぇ・・・」
武蔵は起きていないのでもちろん沖田の独り言だ。何が大きいか、と言うとそれは今沖田の背中に押し当てられている物だ。おんぶしているから仕方ないとは言え、彼女の豊満なバストが背中から柔らかさを訴えてくる。沖田もそこそこのサイズだがいつもは晒で押さえつけているし、そもそも彼女ほどではない。この背中に当たる二つの、こうむにっとした感覚が不思議と心地良い。
―――それに良い匂いがする
沖田の鼻孔を甘い匂いがくすぐる。これはもちろん武蔵の匂いだ。彼女は普段からすれ違うと良い匂いとよく言われている。彼女は積極的に香水とか使用するタイプではないので恐らく柔軟剤の匂いなんかがするだけなのだろうがそれでもすごくいい香りだ。それに彼女の匂いは決していやらしいものではなく、花のすごく安心するような甘い香りだ。しかし今はそれだけではない。今の彼女は酒をかなり飲んで酒臭い状態だ。しかし彼女の元の匂い、それに汗が花の匂いと相まって、不思議と背徳的な香りを醸し出している。
沖田も顔が赤くなってしまう。自分も想像以上に酔ってしまっているらしい。なぜだか武蔵を意識するとこんなにも熱くなってしまうのだから。今日は早く彼女を部屋に送って帰ろう。そう思って彼女は僅かに歩く速度を早めた。
「ふぅ・・・やっと付きました」
しばらく歩き、ようやく武蔵の部屋の前に辿り着いた。カルデアの部屋は基本的に自動ドアのようになっている。沖田が近づくと部屋が自動的に開いた。扉は本人が近づくと開く仕掛けになっているので、沖田に反応したのではなく彼女が背負っている武蔵に反応したのだが。相変わらず武蔵はぐっすり眠っていている。
「それじゃ、おじゃましまーす・・・」
後ろの武蔵が聞いているわけでもないだろうが、他人の部屋に入る時にはそう言うのが習慣になっていた。もっとも何度も酔っ払いをこの部屋に連れて帰ったり、たまにプライベートで遊びに来たりしているのでこの部屋にもとっくに慣れているのだが。
普段からだらしないお姉さんというキャラクターの彼女だが、それを裏付けるかのように部屋は少し散らかっている。例えるなら女子大生のリアルな部屋というところだろうか。もっともそこまで破滅的というわけでもない。その辺に服が置いていたり、紙くずや本が地面に転がっている。流石に剣士として地面に練習用の竹刀を置きっぱなしなのは如何なものだろうか。
「さてと・・・さっさと下ろしましょう」
所々落ちている物を躱しながら部屋を進む。そして部屋にあるシングルベッドへと辿り着いた。背負っている彼女をゆっくりとベッドに下ろした。低反発のマットレスが少し沈んだ。
ちなみに何故布団じゃないのか以前聞いた所、布団より柔らかくて気持ちいいからだそうだ。沖田は一応部屋では布団を敷いている。ベッドも良いのだがやはり生前の習慣に基づいた方が沖田は落ち着いた。
沖田はなんとなくベッドの上の武蔵を眺めた。仰向けに寝ている彼女は全身がよく見える。相変わらず美人だと思う。普段は常に朗らかな顔だが、静かな顔も恐ろしく美しい。それに非常にグラマラスな身体だ。サーヴァントなのだから見た目の筋肉が無くても剣を振れるし戦える。だがとても彼女は剣士とは思えない。出る所は出て、引っ込んでいる所は引っ込んでいる。その彼女が無防備にベッドの上で転がっているのだ。
・・・少しくらい触ってもいいだろうか
普段の彼女ならそんなことは考えなかったかもしれない。あるいは思いついたとしても絶対に理性で止めていたことだろう。
「女子同士だし・・・寝てるからバレませんよね」
だが沖田もまた酔っていた。ここまで武蔵を運べる程度には動けるが、かなり頭はぼんやりとしていた。そのせいか、沖田はつい手を伸ばしてしまった。伸ばす先はもちろん胸部だ。
むにっ、という柔らかい感触。豊かな球が沖田の手に収まった。自分のそれより遥かに大きい。服の上からでもわかる柔らかさ。まるで大きな水風船を触っているかのようだ。このままずっと触っていたくなる。
「んっ・・・」
武蔵の口から声が漏れる。起きてしまったか、と慌てて顔を見たもののそういう様子ではない。そうわかると、沖田は何故かもっと触りたくなる衝動に駆られた。起きないように慎重に、かつ自分の衝動を満たすために触り続けた。沖田は今ほど自分が男でなくて良かったと思ったことがない。もし自分が男性なら本当にアウトだっただろう。もしバレても女性同士だからそこまで問題にはならないだろう、と酔った頭はそんな思考をしていた。
乳房を揉むのが想像以上に気持ちよく、最初は起きないようにと気をつけていたのが徐々に力が入ってしまう。すると。
「ん・・・?沖田ちゃん・・・?」
沖田ははっとした。武蔵の顔を見ると、確かに目を開けて起きてしまっている。寝ぼけ眼だが意識があるようだ。少し調子に乗りすぎたようだ。
「む、武蔵さん!?あ、あのごめんなさい!私ったらつい!」
即刻手を引き武蔵に向かって謝った。
自分は一体何をしていたのだろう。いかに同性とは言え相手の身体を無闇矢鱈に触るなんてただの変態だ。もしさっきまでの行動を武蔵が覚えていたら本当に嫌われてしまうかもしれない。もう謝る以外の選択肢が思い浮かばなかった。
武蔵の顔は未だ赤かった。目もとろんとしていてまだ酔いが覚めているわけではないようだ。武蔵は寝っ転がったまま沖田を見てぼーっとしている。
ひょっとしたら覚えていないかもしれない。このまま何事もなかったことにしてくれれば。沖田がそんな期待をしたその時。
突然武蔵が体を起こして沖田の腕を力強く掴んだ。
「え?」
思わず沖田から戸惑いの声が漏れる。やはり武蔵は怒っているのだろうか。と考えたすぐ後、ぐいっとベッドに引っ張られてしまった。
「えっちょっと!?」
勢い良くベッドに倒れ込む。
普通の女性なら人間を片腕で引っ張ることなどよほど鍛えていない限り不可能だろう。だが宮本武蔵はサーヴァント、それに筋力はBだ。沖田を引っ張ることくらい造作もあるまい。
しかして沖田はベッドに寝転がることになってしまった。隣には武蔵がベッドに座ったままだ。
「あの武蔵さん、一体何を・・・?」
だがそんな沖田の戸惑いの声など彼女には届いていなかった。武蔵は相変わらず酒に呑まれた状態なのだから。武蔵は仰向けに転がった沖田の上に移動した。いわゆる馬乗り状態だ。彼女は見事にベッドに両手を乗せてマウントを取っていた。腹部あたりに乗っている武蔵の重さ、彼女があまりに近くにいることに沖田もこれまで以上に赤面してしまう。
だが武蔵はまるで気にしていなかった。武蔵は沖田の、自分でも気が付かない内に握りしめていた手を柔らかく包んだ。そして彼女はこちらに上半身を密着させてきた。武蔵と沖田の胸が触れ合った。武蔵が上から押し付けている感じなので胸でもむにっとした感覚を味わうことができる。背中に当たるより遥かに恥ずかしいし気持ちよかった。
そして武蔵の顔が沖田の眼前まで近づいた。互いの吐息が混じり合う。相手の熱まで感じ取れてしまいそうな距離だ。恥ずかしくて沖田はつい目を逸らしてしまう。だがそれを武蔵は言葉で防いだ。
「沖田ちゃん、好きだよ」
あまりに感情的に紡がれた言葉に驚いてしまった。沖田はこれまで直接好意を向けられた経験がない。その為そういうことにまったく免疫がないのだ。よっているとは言え、あの美人な武蔵から愛の告白をされるとは夢にも思わなかった。もうこれまで以上に顔が燃え上がる。
だが武蔵は沖田の返答を許さなかった。武蔵はそのまま沖田に何の躊躇いもなく顔を近づける。そして互いの唇が触れ合った。
―――!!?!??
より武蔵の甘い香りが漂う。それに口からは彼女の唇の柔らかさが伝わってくる。まさに未体験の感覚だった。余談だが沖田はこうして誰かとキスをしたことなど生前でもカルデアでも一度もない。
流石にまずい、同性でもこれ以上は戻れなくなってしまう。本能的にそう思った沖田は何とかして彼女から離れようとした。抵抗したら彼女から顔を離すことが出来た。ほっとしたのもつかの間、再び武蔵が近づいてキスをした。
更に次は唇だけではない。武蔵の舌が沖田の唇を割って入ってきた。彼女の舌が沖田の口内を貪る。互いの唾液が混じり合い何故か甘い味がする。
沖田は思わず目を見開いた。沖田は接吻がここまで情熱的に行われるなんて知らなかったからだ。それに予想以上に心地が良い。気がついたら自分も武蔵に合わせて舌を動かしていた。されるがままだったのがいつの間にか武蔵の口内も蹂躙している。誰かとつながるこの感覚がとてつもなく気持ちいい。
―――もう、どうでもいいや
止めようとしていた理性はどこかに飛んでしまった。むしろもっとこの感覚を味わいたい、という本能が無限に増大していく。酔った頭もそれを促す。気づけば握っていた手は解かれていた。五本の指は今、武蔵の手と絡み合っている。全身から力が抜けていく。
もっと。もっと。
欲望のままに纏わり付く。そうしていると、武蔵が顔を離した。混じり合った淫靡な液が互いの間に糸を引く。それは互いを燃え上がらせるある種の媚薬でもあった。もう互いに理性は欠片もなかった。そこにあったのは理性という殻を捨てた獣の欲望だけであった。
「ねぇ、沖田ちゃん、もっと楽しもう?」
最後の躊躇いを容易に打ち砕くその言葉と共に、長い夜が始まった。
もちろんそんな事を目覚めた武蔵は欠片も覚えていなかった。全て酒の勢いだったのだ。武蔵は酔ったら記憶が飛んでしまうタイプなため昨日のことは飲み会があった、程度しか記憶に残っていないのだ。結果、目が覚めたら隣に沖田がいた、という現象に陥ってしまったのだ。しかも武蔵も沖田も生まれたままの姿だ。ちなみに服はと言うと脱ぎ散らかされたまま床に転がっていた。
「ど、どどうしよう???」
武蔵は初心だが無知ではない。裸の二人がベッドで朝を迎える、ということの意味がわからないほど武蔵は知識がないわけではなかった。
「痛っ」
突然首の後ろあたりに痛みを感じた。何だろう、と思って触ってみると歯の跡のような物があった。まるで誰かに噛まれたような・・・
「んっ・・・」
すると沖田が声を出した。そのまま彼女はゆっくりと目を開けた。
「あれ・・・?武蔵さん・・・?」
彼女は確かにそう言った。もうこうなってはこそっと部屋を出たり隠れたり、なんてことは出来ない。何が起こったかはわからないが何はともかく謝らないと。そう思い武蔵が行動しようとしたその瞬間。
「服が・・・。えっ、あれ?うそっ?」
沖田は自分も武蔵も裸であることに気づいたようだ。その直後沖田は急に慌て始めた。とりあえず彼女は急ぎ毛布で自分の肌を隠した。流石に裸であることは恥ずかしいらしい。武蔵もそれとなく毛布を寄せて隠す。
「沖田ちゃん、その昨日は・・・」
一応昨夜何が合ったのか沖田に聞こうとした。だが昨日、という単語を聞くやいなや、沖田の顔が真っ赤になってしまったのだ。もう聞くまでもないだろう。
「その、ごめんなさい!」
武蔵は素直に謝った。記憶になく、酒の勢いだったとは言え恐らく自分が沖田に手を出してしまったのは事実だ。謝らずにはいられなかった。沖田に嫌われてしまったらと考えるととても苦しい。だが嫌われてもおかしくないことをしてしまったのだ。とりあえず謝罪するするしかない。
しばらく静寂の時間が流れる。それを破ったのは沖田だった。
「その・・・武蔵さん。昨日のこと、覚えてますか?」
彼女は震える声でそう尋ねた。その様子から沖田は覚えているようだった。嘘を吐こうかとも考えたが、ここは正直に答えることにした。
「ごめん、酔ってたせいでまったく覚えてない・・・」
「そうですか」
我ながら最悪と思う。他人の身体を汚しておいてまるで覚えていないのだ。不幸中の幸いは互いに女性同士でサーヴァントなのだから妊娠は絶対にしない。なのでそういう意味では人間のように責任を取る、という話にはならなくて済むだろう。だがそういう問題でもないだろう。
沖田は謝る武蔵を黙って見ていた。武蔵にとっては何も言われない時間が何より辛かった。軽蔑でも良いからせめて何か言ってほしかった。
「顔を上げてください」
少し経った後、沖田が静かにそう言った。沖田の顔を見るのは怖かったが武蔵はゆっくりと顔を上げた。沖田がどんな顔をしているか確認しようとしたその時。
沖田は突然武蔵にキスをした。
まるで花と触れるような優しい接吻。武蔵は何故突然彼女がそんなことをしたのか全然わからなかった。自分は当然嫌われてしまっただろうと思っていたからだ。
「武蔵さん。私、貴方にされたこと許してません」
沖田の発言は武蔵にとって案の定と呼べるものだった。当然だ、それだけのことを自分はしてしまったのだから。だがそうとわかっていてもやはり肩を落としてしまった。
そんな様子を見て、だが沖田は笑って言った。
「だから、今度は貴方が覚えている時にしましょうね?そうしないと、ずっと許しませんよ?」
その言葉で武蔵も笑顔を取り戻した。一人用の狭いベッドの上には、笑い合う二人の少女の姿があった。
こんにちは、リクです。ご閲覧ありがとうございました。
あらすじでもありますが、今回のSSはTwitterのフォロワーさんからのリクエストです。
というのもタグで、一番目にリプきたキャラに二番目にリプきたキャラがキスをする
みたいな物があって、この組み合わせになった次第です。私もこの二人はFGOで持っているのでとても楽しみながら執筆できました。日本刀コンビいいよね!
ちなみに日本刀サークルなのに式はいないの?という疑問を持たれた方。そこは大人の事情という物があるんです・・・(単に引けなかっただけ)
実はR-18でガッツリ書こうかな?という考えもあったのですが、時間的余裕と流石にそこまでの描写はきついものがあり・・・申し訳ないです。それでも楽しんでいただけたら幸いです。
さて、今回リクエストを下さった緋色帝様、ありがとうございました!予想以上に時間がかかってしまいましたね。筆が遅くてすまない・・・(笑)
もしこのSSを面白いと思ってくださった方がいらっしゃれば、拙作の「Fate/Kaleidoscope」もご覧になってくだされば幸いです。ただいま10話ほど連載していますのでぜひ読んでやってください。というかそっちが連載中なので本来はそっちを頑張って執筆しないと行けないんですけどね。アガルタが実装されるまでには投稿したいなぁ・・・
ではそろそろ失礼して。「Fate/Kaleidoscope」以外には今土カー(土方×カーミラ)の執筆もしようかなと考えています。これからも精進しますのでどうか応援お願いします。
p.s.
水着イベントでメドゥーサさんの水着が実装されることに期待しながら。
Twitterはこちらです→@Riku_fgo