Dクラスにも休日をください。   作:くるしみまし

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はい。リアルが落ち着いたので約1年ぶりの投稿です。無事進学でき、新生活にも慣れてきたのでぼちぼち投稿していきます

リハビリ作品なのでかなり短めです……お許しください


SCPー085②

『君は絵の中にいるが“ソコ”は夢のようなものだ。……まあ君にとっては悪夢のようなものだからそのうち覚めるさ。』

 

ガラス一枚越しのように見える彼は、私に向かってそう伝えた。

私には正直いまいちピンときていない。しかし、ここの人たちは私の夢が覚めるように協力をしてくれるようだ。

 

そのために毎日様々な検査を受けることになった。

例えば彼たちがペンを手に持ち私から数メートル離れたところに紺色のジャケットを書き出す。着用するように促せれた私はワンピースの上からジャケットを着る。彼らが書いた飲食物、例えばハンバーガーやワインなどを食す。そんな感じの簡単な作業を毎日続けている。

 

こんなことをしていて意味があるのかとある日聞いた。

 

彼らは『……すまない。もう少しの辛抱だ。』と、どこか哀れむような、申し訳なさそうな顔でそう言う。

まあ私も協力してもらっている立場だ。逆に気を使わせてしまったことを申し訳無く思う。

 

私が検査を受け始めてから未だにこれと言った進展はないけれど、いつかこの夢も覚めてくれるはず。覚めない夢なんてないもの。

 

 

その頃の私はそう考えて疑わなかった…………あの日までは。

 

 

その日も私はいつものように検査を受けていた。別に難しかったり大変な検査ではなく、検査官の人が用意したいくつかの用紙の間を自由に移動するというだけのものだ。

特にトラブルらしきものもなく、無事に検査を終えた。

 

 

「それじゃあ今日の検査はここまでです。今日はこの後に検査の予定もないので、静かに待機していてください。」

 

 

検査官の彼はそう言って私のことが書かれているだろうレポートの紙をまとめだした。

私はほっと一息をつく。別に検査が嫌なわけではないが、なんというか………すこし息詰まるなるような緊張感があり、それが少し苦手だ。

 

静かに私から離れていく彼を見送る。検査は苦手ではあるが、私にとっては一日の中で唯一人と触れ合う機会なので、この瞬間だけはいつも少しだけ寂しくなる。

 

彼が部屋を出ていくと私は今日は何をして時間を潰そうかと考え、振り返る。

 

 

『あれ……?』

 

誰かに聞こえるわけではないが疑問の声を漏らす。

 

私の知らない紙が一枚自分の近くに置いてかれている。

取りに帰ってくる様子がないので、おそらく私に見せるためか、彼が忘れていったのだろう。

 

どちらなのだろう?もし、私に見せる予定の無い紙であれば勝手に見るのは気が引ける。

しかし、正直なところを言うと内容が気にならないわけではない。私に用意されている数枚の用紙の中で一人で遊ぶのは正直飽き飽きなので、少しでも見識が、この狭い世界が広がるのであれば、ぜひとも見てみたい。

 

少しの間悩んだが私は好奇心に後押しされ、その用紙の中へ足を踏み入れた。

 

 

私はこのことを一生後悔するとも知らずに。

 

 

新しい紙の中へ足を踏み入れた瞬間、私の前に文字の山が浮かんできた。しかもそれだけでなく、その文字の内容までまるで早読みのように数秒で理解できる。これもこの世界の私の一つの力なのだろう。

 

しかし、その時の私はそれどころでは無かった。

自分の中に飛び込んできた情報があまりにも衝撃だったからだ。

 

内容をまとめるとこうだ。

 

私はキャッシー……しかし正確には『SCPー085 手書きのキャッシー』という名前が正式らしい。

ここは私が思っていたような特殊な病状を抱えた患者を治療する施設ではなく、異常性のある物質、現象を管理、収容している施設らしい。

私はこの施設で管理されている異常性を抱えたとある『ペン』の実験を行った際に偶然誕生したもののようだ。

つまり…つまり私はもともと人間で、この世界に閉じ込められた悲劇のヒロインなどではなく……この平面の世界に産み落とされた“異常性”というだけだったんだ。

 

「……嘘。」

 

視界がグニャリと歪み足が震える。

 

「…………嘘よ。」

 

吐き気が酷い。頭痛と耳鳴りが激しくなってきた。

 

今まで自分が人間だと信じ込んでいた間……あの人たちが私に向けていたあの視線の意味が分かった。あれは私の境遇を哀れんでいたんじゃなくて……人だと思い込んでいる化け物を哀れんでいたんだ。

 

頭痛と耳鳴りが加速する。

意識が朦朧と し始めた 私の耳に一つの声が 聞こえ てくる……笑い声 だ。

 

「アハハ…………」

 

見回り はさっき終わっ た から彼らの 声では ない……だっ たら 誰の? と少し 考えたが 直ぐに気 づい た。

 

 

 

この 笑い声 の主 は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」

 

 

 

 

『で、そこで私はショックで意識を失っちゃったわ。恥ずかしながらあの時の私には【その事実】を受け止められるほどの強さは無かったんだ。この後も私は結局鬱病を患っちゃってさ……この車だって私の気を紛らわそうと思って準備して貰った物なのよ。』

 

どこか寂しそうな目で愛車を撫でる彼女に俺は声をかけられなかった。

 

思った通りだった。

俺は後天的に生まれた怪物だったのに対して、彼女は先天的な怪物…SCPだったようだ。今回の問題はそこではなく、彼女が『その事実』(先天的な怪物)を知らなかったことだ。

 

一体どれほどの衝撃を受けたのだろうか……外の世界を夢見て、いつ終わるかもわからない検査に耐え続け、見えぬ明日を信じていた。

 

それなのに

 

(これじゃ……あんまりにもこの子が救えなさすぎる…!)

 

この子を私利私欲の実験で生み出した財団か、この子に残酷な現実を凡ミスで知らせてしまったアホな職員か、それとも彼女の古傷を抉った自分に対してか……

俺は自分でもどこへ向けて良いのか分からない怒りに肩をふるわせていた。

 

『貴方は優しいのね……私みたいな化け物のために本気で怒って悲しんでくれてる。貴方みたいな優しい人に出会えただけで少し救われるわ。』

 

彼女は無理をして作ったような笑顔でそう告げた。

 

『私はもう大丈夫!もう《諦めた》。むしろ外へ出れないって分かったから潔く身を引けるわ。』

 

先ほどよりももっとワザとらしい笑顔で、そう続ける。

 

『だから……』

 

ワザとらしい笑顔が少し曇理、自分でも気づいていないのだろうが目を軽く軽く伏せ彼女は

 

『私みたいな化け物は……外に憧れちゃいけないの。これで……いいのよ。』

 

 

 

「いいわけないだろうがっ!!」

 

 

 

思わず手話を忘れ、ペンを握りつぶしながらそう叫んだ。

彼女に俺の声は聞こえていないはずなのに、驚いたように目を見開いている。

 

誰が怪物は外の世界に憧れちゃいけないだなんて言った。

誰が少女が夢を抱いてはいけないだなんて言った。

 

「誰か見てるんだろ!今すぐ用意してもらいたいものがある。ありったけの紙と水性でも油性でもいいから絵の具と筆を用意してほしい!頼む!」

 

俺は部屋に設置されたカメラに向かって全力で頭を下げる。こいつらに対して頭を下げるだなんて初めてかもしれないが、今はそんなことどうでもいい。

 

「無理な願いなのは分かってる……だけど、頼む。」

 

頭を下げ続けること数十秒。部屋のスピーカーからノイズが鳴る。

 

「このscpの部屋に紙類を持ち込むことは禁止されている。ペンや筆類も持ち込みが禁止されている。却下だ」

 

 

「……。」

 

ダメか……と諦めそうになったその時

 

『【この部屋に】持ち込むことは禁止されている。』

 

流れが変わった。

 

『今私の手元には“たまたま”コピー用のプリント用紙が余っており、“たまたま”発注ミスで水彩の絵の具がこの部屋に届くとのことだ。』

 

頼んだ俺自身が笑ってしまうようなめちゃくちゃを淡々とした様子で告げる

 

『このプリント用紙と絵の具……廃棄しても構わないんだが、どうせなら有効的な消費をしたいと考えている……そういえばお前は絵を書くのが好きだったよな?好きだろ?好きに決まっている。この任務は長くなりそうだからな……少し部屋の外に出て息抜きに【お絵描き】なんてものはどうだ?』

 

今まで絵が好きだなんて言ったことは無い。こんな急展開なんか予想もしてなかった。一体どんな裏があるのかわからないし、このあと何をされるかなんて分かったもんじゃない。

 

しかし

 

「……ああ。お絵描きは大好きだ!ちょうど絵が描きたくて仕方なかったんだよ。」

 

どうせなら乗るしかないだろ……このビックウェーブに。

 

俺は振り向きキャッシーに手話で

 

「しばらく待っててくれ。俺が外の世界を見させてあげるから。」

 

そう伝える。

彼女は戸惑いながらも小さく頷いた。

 

部屋の扉が職員によって開かれ。連れられて俺は部屋の外に出た。

 

 

 

そして、それから約2ヶ月もの間。俺はキャッシーの部屋には戻らなかった

 

 

 

 

「博士……なんでこんな無茶なこと許可したんですか?」

 

部下の一人が私にそう問いかけてくる。

私は彼に対して向き直り書類を手渡しする。

 

「これは……」

 

「今SCPー085を担当している男の調査資料だ。見てわかる通りこいつが担当したSCPの中には奴が担当してから脳波が明らかにリラックスした値を見せている。」

 

「つまり……彼にSCPー085に対してのリラクゼーション効果を期待しているんですね。」

 

「ああ。新たな調査資料が手に入れば君の昇進にもかかっている。引き続き監視を続け給え」

 

「は、はい!」

 

そういうと彼は顔色を明るくさせ、モニター自分の持ち場に戻っていった。

 

「……………………」

 

ちなみに博士と呼ばれた彼がいったことは

 

(でまかせだけどね!!)

 

伝えたことは何一つ嘘はないが、真意は全く別であった……彼の真意とは

 

 

(二次元の女の子には笑っていてほしいよね!)

 

 

毎日の激務で心すり減らされていた彼の趣味はアニメ鑑賞であり、密かに設立されていた『キャッシーファンクラブ』の会員だったのである。

 

 

 

 

 

 

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