私の姉が肉食系だった件   作:ナツイロ

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最後の投稿から約四ヶ月、ゆっくりしすぎて申し訳ないです。
誤字脱字ありましたら、教えてください。

※誤字報告ありがとうございました、修正適用しました。


IFルート みほ編
IFルート みほ編


「はぁー……、ダメだ。予算は補助金を当てるとしても、色々足りない」

 

 ここは大洗女子学園艦の生徒会執務室、その最奥に位置する生徒会長執務室である。

 後数日で高校三年になりそうな学年末のある日、私こと角谷杏はデスクに肘をついて頭を抱えていた。

 つい先日、来年度終了を以て学園艦を廃艦とするとの通達を突きつけられ、咄嗟に返した言葉は、"戦車道で優勝すれば撤回してもらう"。

 あの眼鏡をかけた役人も子供の戯言と受け取ったようで、含み笑いをしながらもそれを受け入れていた。

 どうせ出来やしないと、そう思われているのだろうが、他に良い案があるわけでもない私達はその目標に向かって我武者羅に進むしかなかった。

 なかった、のだが。

 ここに来て、早くも暗礁に乗り上げつつあることを、私は認めざるを得なかった。

 

「そもそも戦車一台しか見っけてないのに、使用予定車輌を全て書き出せって無理があるよねー。昔やってた戦車道関係の書類もまだ整理終わってないから、どんな戦車だったかすら把握出来てないし……」

 

 デスクの傍らに用意していた封を開けたばかりの干し芋をかじりつつ、私は固まった筋肉を解すように腕を回す。

 あぁ゛ー、どうしたものやら。

 ギシリと軋む少し豪華なデスクチェアでくるくると回りながら、考え込む。

 戦車はいずれ戦車道受講者の人手を使って虱潰しに探すとして、それ以外の部分が固まってないんだよなー。

 整備は自動車部にお願いする予定だけど、人数は片手で数えられる程度。

 一日でも早く戦車に慣れてほしいからといって、毎日走り回らせるとしたら、それはそれで整備に負担がかかる。

 演習するにしたって、演習場の整備にこれまた人手が要るんだ。

 自動車部も、流石にショベルカーか何かの資格なんて取ってないだろうし……。

 私や河嶋、小山だって戦車道以外にも通常の生徒会としての役割があるから、余裕がないのは分かりきっている。

 大体、資格取るのにもお金かかるんだぞ。

 そんな予算、大洗女子の来年度予算には入ってない……。

 

「……あ、ウチじゃなくて小野ちゃんとこの分校予算なら」

 

 いや、流石に頷いてはくれないかな。

 どうしても男女の人数差から、分校の予算は微々たるものになりがちだけど、数年に一度の色んな備品更新費用のために、毎年いくらか積立してるくらいだし。

 でも、学園艦が廃艦になるって事情を知ってるのは、私を入れた生徒会の三人と学園職員の幹部、そして男子で唯一高校生の小野忠勝だけ。

 学園の一般生徒には、最後になるかもしれない一年を憂鬱な学園生活で終わらせさせたくなかったため、未だ通達の決心が付かない。

 それに、秘密を知っている人間は少ない方がいいと相場は決まっているものだ。

 私はポケットの携帯電話を取り出し、小野ちゃんに電話を掛けた。

 

「あー、小野ちゃん? わたしわたしー」

『……振り込め詐欺は間に合ってるんで、それじゃ』

「まぁまぁ、会長の角谷だよ。非通知じゃないんだから、分かってんでしょ?」

 

 まぁ、この程度は軽いジャブみたいなもの。

 取り敢えず、電話が出来るか尋ねてみた私は、彼が自宅の部屋で一人でいると確認出来ると、前置きもなしに目的を告げた。

 

「それでさ、小野ちゃん。ショベルカーとかその辺の資格、取ってくれない? お金は分校の積立予算から出して貰うように、私から言っとくからさ」

『はぁっ? 良いわけあるか。今年はようやく、サッカーゴールの中古フルセットに手が届きそうなのに。大体、個人の資格取得に学校の予算が出るわけ――』

「で、資格取ったら……戦車道で使う演習場の整備を手伝って欲しいんだ」

『……そういうことか。廃校になるってのに、来年度以降のこと計画しても無駄に終わっちまう。器具を用意しても、使う生徒が居ないんじゃなぁ』

 

 ようやく、私の無茶な頼みの裏が伝わったようだ。

 彼の言うことも、尤もだ。

 小野ちゃんが高校から編入した時、彼が最初に生徒会の会議で発言したのは、このサッカーゴールのことであったのは強く印象に残っている。

 何年も前から積み立てられている事が分かった彼は、女子の方の予算を少しで良いから回してくれと、女子オンリーの生徒会執行部に予算申請書を書いて寄越したのだ。

 とは言うものの、彼と中等部の男子生徒を入れても十人にも満たない以上、とりわけ緊急性もないスポーツ用品の更新費用は出せなかったのだが。

 女子の方だって、予算に余裕がないのはいつものことで。

 今だってこうして足りない予算と人手を、男子分校の彼にお願いしているわけだ。

 

『それで? 資格を取るって言っても、普通免許だって持ってないんだ。その辺どうなの?』

「小野ちゃん、誕生日って四月の頭でしょ? それなら問題ないはず」

『だからって、直ぐに取れるわけでも無いだろ? 大体、自動車学校に通ってる間に新年度が始まるし、その後にショベルカー何かの資格取得。時間が足りないんじゃないか?』

 

 うーん、ちょっと尻込みしてるな。

 いきなり色々免許取ってというのも、かなり無茶なこと頼んでるのは自覚してるから、この反応は仕方ないけれども。

 

「ね、お願い。ここで躓いてちゃ、全国優勝だって夢のまた夢なんだ」

『創部一年目の野球部が、甲子園で逆転サヨナラ優勝するぐらいな』

「流石にもう少し、可能性があると願いたいね」

『……分かったよ、やってみる』

「ありがとう」

 

 電話口で気にすんなと返す彼の言葉に、私はもう一度礼を言った。

 それから直ぐ小野ちゃんと私は、会長執務室で予算申請に必要な書類を作成し、男子分校の教師に根回しを始める。

 廃校関連の事情を知っていた教師は、まぁ仕方ないかといった様子で了承してくれ、頑張れよと励ましの言葉を貰った。

 先生方も、廃校撤回のために動いている私達を気遣っているのだろう。

 ありがたいことである。

 

 それから小野ちゃんが帰宅し、茜色の空に夜の帳が落ちた頃、私は一人残り戦車道関係の書類整理を行っていた。

 いい加減、戦車道連盟に提出する書類を作らなければならない。

 現物は無くとも、戦車道をやめた頃の二十年前に売り払わなかった戦車だけでも確認しておかなくては。

 そうやって時間が流れていくと、デスクの上に置いてある転校願の書類封筒が目に入った。

 一旦昔の資料を脇に追いやると、私はその封筒から証明写真付きの書類を取り出す。

 

(まさに福音とはこの事かな。熊本の黒森峰から、西住の名がやってくるとはね。気になってネットで調べてみたけど、去年の決勝戦のことがあってこっちに来るのかな?)

 

 そう頭の中で情報をピックアップしながら、その書類を改めて眺める。

 この子はもう戦車道なんて嫌なんだろうけど、それでも私達を率いて貰わなければこの学校に未来は無いんだ。

 

(あー、やだなー。態々嫌われ役なんて、やらなきゃならないなんてさ。やりたくないのにやらされたって、本気で優勝しようなんて思うわけ無いってのに……。何か上手い事、やる気出してもらえないかなー)

 

 

 

「会長ッ! 今の男子の先輩って彼女いるんですか!?」

 

 どうしてこうなった。

 今日は、事実上の隊長に据えられた西住みほちゃんと、あれから何とか戦車道のスタートに間に合った小野ちゃんとの顔合わせの日。

 黒森峰では女子しか居なかっただろうけど、ウチの大洗女子は選手の数すらギリギリの状況。

 そこで、通常は居ないであろう裏方で手伝ってもらっている男子を、西住ちゃんに紹介しておこうとしたわけである。

 基本的に授業中ではなく、主に放課後などを使って彼には動いてもらう事になっていると伝え、今後の円滑なコミュニケーションを期待してのことだったのだが。

 

 いやはや、何とかしてやる気を出して貰おうとは考えていたけれども、こういう方向とは。

 というか、鼻息荒いから、もうちょっと下がってくんない。

 目つきヤバイよ、いっちゃってるよ。

 戦車道女子って、皆こうなの?

 

「ま、まぁまぁ、落ち着きなよ西住ちゃん。お茶でも飲んで、まずは一服、ね? あ、干し芋食べる?」

「お茶で良いです!」

 

 あ、そう。じゃあ私食べよ。

 西住ちゃんはぐいっと一気に呷るように飲み干すと、応接セットのテーブルにガツンと下ろす。

 もうちょっと、優しく扱ってね。

 

「それで、さっきの話何ですが!」

「はいはい、小野ちゃんでしょ? 彼女がいるなんて聞いてないよー」

 

 ほっとした表情を見せるが、言ってないだけかもしれないよと聞けば、どんな顔をするだろうか。

 流石にそんなことはしないけど、無いとも言い切れないしね。

 

 小野忠勝、唯一の男子高校生ということもあり、教師陣や大人達からの覚えもよく、本人の人当たりもその評判に違わない。

 学業も、女子生徒を含めても上の中に何とか食い込めるだけの成績を維持しており、地元熊本の大学を進学先として希望しているらしい。

 少ない人数であるが、男子の後輩からの信頼も厚く、彼の住む長屋には良く男子達が遊びに来るとは近所のお年寄りの言である。

 惜しむらくは、間違いなくイケメンと呼ばれるほどの容姿を持ち合わせていないことで、女子生徒からは友達なら完璧と言われる始末。

 まぁ、本人もそんなことは百も承知のようで、モテないことに悲観しているわけでもなく、大学に進んでからゆっくり考えればいいさと楽観視しているとのこと。

 

(小野ちゃんも、女子との距離がそれほど近くないのを、圧倒的少数派男子の処世術みたいに捉えているフシがあるからな―)

 

「じゃあ、好きな人がいたり……」

「あー、小野ちゃんとは知り合って丸々二年ぐらい経つけど、そういうデリケートな話はまずしないからね」

 

 そこ、使えねーなって顔しない。

 もう少し隠す努力をしろよ、会長だぞこっちはよぉ……。

 無茶なお願いしてる側だから、追求したりしないけどさ。

 

「ま、小野ちゃんとどうなりたいかとかは、西住ちゃんの自由意思に任せるけど……。不純異性交遊は控えるように、一応ね」

「えぇ!? もうやだぁー会長、そんな気が早すぎですよぉ」

 

 そりゃ、こっちのセリフだよね?

 照れた様子でくねくねしてて、ちょっと引くわ。

 戦車道を選ばなかった時に、生徒会室に呼び出した頃の彼女は一体どこへ行ってしまったのか。

 武部ちゃんと五十鈴ちゃんに挟まれて、シュンとしてた顔から意を決して声を上げた姿に、言葉に出さないながらも私は少しばかり感動と嬉しさを感じていたのに。

 ちょっと、私の感動返してくんない?

 

「西住ちゃーん、そろそろ戻ってきてねー」

「あ、はい。すみません、つい」

「どうせ戦車道のある日の放課後は、大体小野ちゃんもガレージにいるから。会長っていう立場上積極的な応援は出来ないけど、そこで上手い事チャンスを活かしてね」

「はい!」

「それと、自動車部と一緒に整備の方でも手伝ってもらってるから、整備に関することも色々教えてやって欲しい」

「分かりましたっ! 手取り足取り腰取りですね!」

 

 最後のは、聞かなかったことにするよ。

 なんだろう、この小動物系を彷彿とさせる見た目の裏に潜む肉食獣は。

 戦車道は、良妻賢母を育成する伝統武道ではなかったのか。

 育ってねーじゃん、西住流さんよ。

 それとも、この娘が特別なだけか?(※西住家では大人しい方でした)

 私は内心溜め息を吐きつつも、やる気が出てきたのは良い事だとして、自分自身を誤魔化すという高度な柔軟性を持った臨機応変な対応を取ることでお茶を濁す。

 

(小野ちゃんには悪いけど、他の皆にもこのやる気が伝播していってくれれば御の字かな)

 

 それから、細かい確認事項を確認しあった私達は、次の日から始まる戦車道の授業に備えるために、日も暮れないうちに解散した。

 

 

 

 訓練の日々が続く中私は、西住ちゃんの押しの強さに戸惑いつつも、適当にあしらう事もできない小野ちゃんの姿を横目に見ながら、忙しくも充実した毎日を過ごしていた。

 つい先日も突然のお願いにも関わらず、聖グロリアーナ女学院という日本高校戦車道界でも指折りの強豪と評されるチームと練習試合が組めたのだ。

 残念ながら、西住ちゃん率いるⅣ号戦車以外は大した活躍も見られなかったが、チーム各員はその敗北から何かを感じたようで、確実に良い方向へと意識が切り替わったと確信できるに至った。

 

 見るからに練習に対する姿勢が変わったのは、本当に良かった。

 廃校の事情を知らない彼女達に、真実を未だ明かせずにいるのは心苦しい話だけど、自分達の勝利如何で学園艦の運命が決まるなんてプレッシャーを感じながら、戦車道をやって欲しくはない。

 どういう結果になろうと、皆には楽しい思い出として残って欲しい。

 私が練習試合の内容を振り返りながら、会長室で全国大会の抽選日の日程を確認していた、その時だった。

 

「会長、小野です」

「んー、どうぞー」

 

 ノックの音が聞こえたかと思うと、何か用事でもあるのか小野ちゃんが作業着姿で入ってきた。

 どうも落ち着かないらしく、そわそわした様子で応接セットに座る。

 デスクに向かっていた私は、自分の肩越しに外を見やれば既に薄っすらと星が見える時間帯。

 もうそんな時間かと思い、そんな時間までこうして作業着姿で頑張ってくれている小野ちゃんに感謝しつつも、突然現れ可笑しな様子を見せる彼に疑問が湧く。

 

(ここまで落ち着かない小野ちゃんも珍しい、何か高い部品でも壊したのかな?)

 

 戦車道関係であれば補助金が出るからそんなに気にしなくても良いのだけれども、まぁ話ぐらい聞いてあげようじゃないか。

 取り敢えず私は備え付けのお茶を淹れると、彼の前に置いた。

 

「それで? 何かやったの?」

「ありがとう……、いや俺が何かしたってわけじゃないんだけど」

「歯切れが悪いねぇ、ほら言っちゃいなよ」

 

 何やら言おうか言うまいか逡巡しているようで、私が先を促すと大きく息を吐き出しこう言った。

 

「西住隊長に……告白された」

「ブフォッ!?」

「きったねぇ!?」

 

 鼻から飛び出たお茶が、テーブルを飛び越え作業服に掛かり、ティッシュペーパーで拭う小野ちゃん。

 私は鼻がツンとするやら何やらで、いまいち状況が飲み込めていなかったが、自分も汚れを拭き取った頃にはようやく彼の言葉が飲み込めた。

 

「マジで」

「……おう」

「で?」

「で? って言われてもだな……」

「返事はどうしたってこと!」

 

 事前に西住ちゃんがそういう気持ちでいると把握していた私だけど、だからってこんなに早くとは思ってもいなかった。

 もう少しこう、半年ぐらい時間掛けたり卒業間近だったりと、何やかんやで西住ちゃんの決心が付くのは先だと思っていたからだ。

 実際、顔合わせをしてそんなには経ってないはず……。

 いや、放課後と土日の自主訓練等を考えれば、最低限人となりを把握できる時間はあったのか?

 ……西住ちゃんは最初からあの調子だったしな、何か生粋の戦車道女子を引きつけるフェロモンでも出てるんじゃなかろうか。

 

「返事は、まぁその……。オッケーした感じ?」

「へぇ?」

 

 私の面白がるような表情に、小野ちゃんも眉を寄せ、いや違うんだと聞いてもいない話を並べ立て始める。

 

「いやいやいや、ぶっちゃけるとね。あんな可愛い子にあれだけ想われてみてよ? 男なら誰でもコロッといくから」

「ふうん? ウチの女子生徒も、それだけ押しが強ければ小野ちゃんをゲット出来たのにねぇ」

「バカ言え。半年に一回は女子から呼び出しがあったけど、全部罰ゲームだったぞ。『すみません、これ罰ゲームなんですぅ。貴方のことは嫌いではありませんけど、好きでもないんですぅ。ごめんなさーい』だってよ。それを聞いた俺はどうすれば良いんだよ……」

 

 器用に声真似をする小野ちゃんは、どこか疲れた様子を見せており、哀愁が漂っている。

 

 それは、ホントご愁傷様です。

 風の噂で耳に入ってきてたのは覚えているけど、確かにそれはキツイなぁ。

 

「中には、本気だった娘もいたかも知んないよ?」

「それならそう言えって話さ。言葉にしなきゃ伝わんねぇよ、当たり前だろうが」

「ま、その意見には私も賛成するけどね」

 

 廃校の通達があったことを、生徒達に告げていない私には耳の痛い話である。

 一体いつになれば、ちゃんと公表するつもりなのだろうか、私は。

 腕組みをして考え込む私の姿が気になったようで、どうかしたのかと小野ちゃんが尋ねてくる。

 それに何でもないよと返し、私は暗い考えを一旦は打ち消した。

 先送りになるけど、仕方ない。

 せめて戦車道全国大会が終わるまでは、公表は控えたいなぁ。

 チームの皆に、余計なプレッシャーを背負わせるわけにはいかないしね。

 

「それでさー、なんて告白されたの?」

「……言わなきゃ、ダメかね」

「いや、私としてもね? これまで女っ気のなかった小野ちゃんを射止めた、西住流告白術を知っときたいなって。あくまでも、そう、今後の参考までに」

 

 嘘を言うなという視線を私は軽く受け流し、さぁさぁと先を促す。

 一際大きく息を吐きだした小野ちゃんは、誰か来ないかどうか扉の方を一瞥すると、顔をこちらに向けて話し出す。

 

「本人の名誉のために、ここだけの話だぞ?」

「分かってる分かってる」

「『お付き合いを前提に結婚して下さい!』って言われてさ……。いや、テンパってるのは西住隊長の態度から分かってたし、気持ちは十分に伝わってきたけど。せめて逆にしてくれって言いそうになったわ」

「おぅ……、一段飛ばしどころじゃないね。初手王手は真似出来ないなー」

 

 これには私も苦笑い。

 いやしかし、目の前にまんまと釣り上げられたのがいるもんな。

 小野ちゃんみたいなタイプには、意外と効くのだろうか。

 試す予定は今のところないから、どうなるかは分からず終いだけど。

 

「ほら、続き続き」

「まだやんのか?」

「ここまで来たら、最後まで言っちゃいなよ。で、どういう返事したわけ?」

 

 その光景を思い出し恥ずかしいのか、そわそわした様子の小野ちゃん。

 こんなに面白い彼は、はっきり言って初めてである。

 

「『結婚は一先ず置いておいて、お付き合いの方からよろしく』……って感じで最後は握手、みたいな」

「ひゅー! ハッピーエンドは嫌いじゃないよ、私は」

「茶化すのやめーや。最初から断ってないわ」

 

 口笛を鳴らし、ニヤニヤとした私の顔がムカつくのか、小野ちゃんは悪態をつくがそんなことされても、私からは笑い声が洩れるだけ。

 小野ちゃんとしても、バカにされてるわけじゃないと分かっているからか、私を制するような真似はしてこなかった。

 

 それから、三十分ほど小野ちゃんを茶化した私は、彼が来るまでやっていた仕事を放り投げ、帰宅の途につく。

 全国大会の抽選会は、どうせもう暫く先なのだ。

 今日ほんの少しぐらいサボったって、誰も文句は付けやしないさ。

 そうして、少しばかり軽くなった気持ちを胸に、寮に帰ったのだ。

 

 

 

 

 

 

「会長!」

「何だい、西住ちゃん」

「学園生徒があまり立ち寄らない薬局って知ってますか? 一応、万が一のためにゴムを――」

「自 重 し ろ」

 

 間髪入れずにチョップを叩き込んだ私を、誰も責められやしないだろう。

 不純異性交遊発覚からの、大会出場停止廃艦コンボはマジでやめろ。

 そんな不名誉な終わりは、ごめんだよっ!!

 おう、忠勝。

 お前の嫁の手綱は、ちゃんと取っとけよ!?

 分かってんのか!?

 おいっ!

 




・妹もやはりこうなった。
原作みほファンの方、先に謝る、ごめん。
この作品では、あの姉にこの妹あり、ということで一つよろしくどうぞ……。

・角谷杏会長
ここでは、小野とは所謂気の置けない関係。
男女関係にはならないものの、友情は感じている。
十年後の同窓会でお互いにフリーだと分かったら、付き合ってからの翌年結婚コンボが発生しないこともない。
そんな関係のイメージ。

・中心人物でありながら生贄ゲフンゲフンな小野忠勝
すまない、オリ主だけど君が視点の話は今後も無いと思う。
なお彼は、告白が成就したみほに抱きつかれた際、若干の下心込みで抱擁を返したことを、角谷会長には語っていない模様。

・運転免許やら諸々の資格
免許云々を色々調べて書いた後、そもそも小学生低学年頃?の西住姉妹ですら戦車を公道で走らせることが可能な世界だと改めて気づく。
パネェ、ガルパン世界の日本って自立心養うの早すぎない?
その為の、親元を離れての学園艦生活なのだろうか。

・男子分校の積立予算やら色々
ここだけの、所謂オリ設定の部分。
サッカー用のゴールポストの新品は、公式ルールに則ったサイズだと何十万とするらしい。ネット知識で裏付けが浅いけど。
何でサッカー用品か?
人数がいなきゃ出来ないのに、全部揃えると予算だけは一人前なスポーツをと考えたらサッカーだった。
サッカーが嫌いなわけじゃないのです、好きでもないだけです、めんご。

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