世界が俺を殺しにかかってきている   作:火孚

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中等部時代
神は言っている。ここで死ねと


 突然だが、みんなは「魔導」や「幻想」などと言ったワードに何を感じるだろうか。

 俺こと鯨澤 聖那(くじらざわ せいな)は、ふと懐かしくも古い中学二年生の頃の自分(くろれきし)を思い出した。

 あの頃は、無意味にも右腕に包帯を巻いたりして「っく、封印されし力が何かに反応している……ッ!? 静まれ、俺の右腕……ッ」とか、「仲間など邪魔なだけだ。真に選ばれし者の俺は、孤高にあってこそ初めて真の力を開放することができる」などと一人でいる俺かっけーみたいなことをつぶやいていた。

 ちなみに、この台詞は目の前でリア充どもがイチャイチャし始めた時に目を毒沼のように腐らせながら吐き出した言葉である。誰だよ、そんなダサいシチュエーションでダサい言葉吐いてるやつ。俺だよ。死にたい。

 今からでも過去に戻ってあの時の俺を殺したほうが今の俺の精神安定的な意味でよろしいんじゃないだろうかとふと思ったが、そもそも過去の俺を殺したら俺の存在がパラドックス的にやばい感じになっちゃうので実行はできない。そもそも過去に戻るすべなんてないが。

 

 大幅に話がずれてしまった。これ以上俺の過去をさらけ出すと俺の精神が危険で危ないので、さっさと本筋に移るとしよう。

 「魔導」「幻想」なるほど、大いに中二心をくすぐられるキーワードである。大抵の場合「魔」とか「幻」とか付く言葉は格好いいのだが、そこのところはおいておこう。

 誰でも、一度は考えたことがあるのではないだろうか? 自分の想像が追いつかない、まさしく神の御業ともいえる神秘や、深淵をのぞいてみたいと。

 かくいう俺もその一人だ。いや、一人だった。何故過去形なのかは、まぁすぐに分かるさ。

 取り敢えず、今は欠片もそんなことは思っていない。むしろ、そんなことを考えてるやつを全力で止めるまである。

 

 だってよく考えてみろ。俺達は良くも悪くも戦争を知らない世代だ。争いごとといっても、精々が大喧嘩程度だ。むしろ、その喧嘩すら経験しないで育ったやつもいるのではないだろうか。

 現代日本は超法治国家だ。平和すぎると言っても過言ではないくらいに、日本に生きる人達の危機意識は薄い。まさに平和ボケというやつだ。ボケるのが平和ってことは、歳を取る事に平和になっていくということだろうか。確かに日向ぼっこするおじいちゃんおばあちゃんを見てるとほっこりすることがあるな。あれが平和か。でもどうせならご老体よりも可愛い幼女が日向ぼっこしてる姿がみたいです。これなんの話だっけ。

 

 ともあれ、俺がいいたいのはそんな平和ボケした現代日本の中でも特に現代っ子である俺達が、「魔」とか「幻」とかいう存在が認知されているという、余りにも平和とは縁がなさそうな世界に放り出されたらどうなるか?

 もちろん、そんなの決まってる。何もできずに野垂れ死ぬだけだ。

 まるで見てきたようだって? それもそうだろう。まさしく俺がそのことを表す生き証人なのだから。といっても、別に一度野垂れ死んでチートの力で生き返ったとかそういうのではなく、毎日死にそうな思いをしているだけだ。

 神様は俺にもっとデレてくれても良かったのではないか。普通こういう異世界転生物って何かバランスブレイカー的サムシングがもらえるものじゃないの? それともあれか。「原作の知識を持ってるんだからそれで十分だよね♡」とでもいいたいのか。金髪碧眼ロリの神様だったら許した。お兄ちゃんという文言が加わっていればなお良かった。

 ただあいにくの話、俺はロリどころかむさいおっさんの神様にすら会っていない。なんか気がついたらこの世界にいた。と言うか生まれ落ちてた。

 そう、赤ちゃんとして。びっくりだよ、転生って本当に生まれ変わっちゃってるよ。どうせなら記憶もリセットしたかった。それじゃ転生者って言わないじゃん。はは、ワロス。

 

 まぁ、状況は全然笑えなかったけど。何が起きたのかわからないでキョトンとしていたら、周りの真っ白な人間たちが慌てた様子で俺のことをひっくり返したときは本当にびっくりした。そう言えば赤ちゃんって出産直後に声を出して肺呼吸をするんだっけ、とぼやーっと覚えていた記憶を頼りに一泣きすれば、周囲に流れるホッとした雰囲気。おめでとうございます、お子さんは空気の読める元気な男の子です。

 幸いにも転生後に性別が変わる、なんていうこともなく、前世では一度もお世話にならなかった我が息子と無事再会。おお、息子よ。元気にしていたか? まぁ元気になっても使う相手が居ないんですが。なにこれ辛い。いっそ殺せ。

 とは言え、折角二度目の生を受けたならめいいっぱい楽しもうじゃないか、なんて気分を入れ替えるのもつかの間。やっぱり世界は俺のことを殺しに来ている。精神的な方向で。

 

 この世界のママンと呼べるお方は、前世のママンと違ってとても幼い印象だった。前世が骨だとすればこの世界のはゆりかごだといえばわかってもらえるだろうか。どんだけはなれてるんだよ。

 流石に大げさすぎたが、それでも幼いという印象は変わらない。と言うか、どっからどう見ても十代後半に差し掛かった辺りの体系だ。どうやって産んだんだこの人。人間ってすげー。

 ちなみにパパンはすっげぇダンディーなおじ様だった。渋柿よりも渋い感じ。もはや渋みしか感じないね。ところでこの二人が並んで夫婦だって看破できる人はいるのだろうか。俺には絶対できない。賭けてもいい。寧ろ警察に電話をかけるレベル。

 

 まぁそこもいい。二人がいいならいいんだ。問題は暫くしてから浮き彫りになった。いくら赤ちゃんとは言え、精神年齢は立派な青少年な俺にママンとは言え幼女体系のおっぱいに吸い付くなんて真似ができるはずもなかった。やったら死ぬ。精神的にも社会的にも死ぬ。いや、見てくれは赤ちゃんだから問題ないのか? 問題ないな。チュー。

 なんてできるはずがない。俺はまだそこまで人間を捨てたつもりはないのだ。という訳で授乳を断固拒否していたら、どうやら授乳は哺乳瓶を使うことになったらしい。これで俺の人としての尊厳は守られた。長く苦しい戦いだったな。俺達の人生はこれからだ! まぁ本当に始まったばっかりなんだけど。

 

 と言うか、ここまで俺が死にかけた要因って「魔」も「幻」も関係ないな。大体ママンのせい。いや、ママンは悪くないな。世界が悪い。誰か責任者呼んで。

 とまぁ、幼少時代は精神が崩壊するレベルで苦労したと言っていいだろう。後々発覚したことを考えればまだぬるい方だったけど。

 取り敢えず、第二の生を受け取った俺は、暫くの間ロリっ子ママンとダンディパパンにそれはもう愛情を注ぎに注がれまくって育てられた。あまりの甘やかしように、俺みたいに芯がしっかりしてないやつだったら駄目になっていたレベル。将来はママンみたいな人をお嫁にもらって自堕落な生活を送りたい。もはや手遅れだったか……

 

 それで、順調にすくすく育ったある日。順調にとすくすくって意味かぶるのだろうか。因みに危険が危ないは文法的に間違ってるけど、危険で危ないは何ら問題はない。あれ、逆だっけ? まぁどっちでもいいや。

 話を戻そう。丁度小学校に上る前くらいの頃。ふとテレビから聞こえてきたどこか聞き覚えのある単語に、俺は首を傾げてテレビを注視していた。

 

 

「――しており、予断を許さない状況となっています。なお、犯人が所持しているとされる魔導遺産についてはそこまで害のあるものではないとの見解が強く、暫くすれば騎士団(スプリガン)の突入部隊が到着する模様です。現地では、部隊の到着と同時に――」

 

 

 ふむ、なんてツッコミどころ満載なニュースだろうか。キャスターのお姉さん、エイプリルフールで嘘をついていいのは午前中だけなんですよ。キャスターって聞くと、どうしても某運命的サムシングのクラスの一つを思い出す。ルールブレイカー! 相手は死ぬ。そりゃナイフで刺されたら大抵の人間は死ぬか。って言うか今日4月ですらなかった。どういうことだってばよ。

 色々気になって調べてみた結果、まぁ当然のごとく俺が元生きていた世界とはまるで異なる世界線だということが判明した次第である。

 魔導遺産、魔女狩り戦争、異端審問会に対魔導学園……おや?

 

 

 

 

 

 なるほど、ここは対魔導学園35試験小隊(ざこしょうたい)の世界線だったか。俺死んだんじゃね?




オリ主の受難は続く
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