部活に顔を出さなくなってしまった赤也。
柳はそれを心配するのだが、幸村が何か知っているようで――
「今日も赤也は来ていないのか……」
「そういえば最近、見ていないのう」
毎日欠かさず部活に来ていたはずの赤也が、今日も見当たらない。無断欠席が続いているのだ。
「これで4日目だ! 全く、たるんどる!」
「学校も、お休みしてるみたいだね」
「風邪でもひいたかのう? 馬鹿はなんとやら、というが……」
試しに電話してみたが、出ない。メールも1日に数回は送っているのだが返事は1度たりとも来ない。
「心配、だね。怪我とかしてなければいいんだけど……」
「風邪ではないのですか?」
「さあ、どうだろう?」
幸村はにこりと笑って首をかしげると、さっさと部室に行ってしまった。
「変じゃのう……?」
「いつもと少し違いますね……?」
首をかしげる2人をよそに、柳は追いかけるように部室に向かった。
部室に入り、着替えている幸村の横に立つと柳は問いかける。
「何か知っているのか」
「何を、かな?」
着替える手を止めずに話す幸村を見て、柳自身も着替え始める。
「赤也が学校に来ていない理由を、だ」
柳の台詞に、幸村はぴたりとネクタイを締める手を止めた。
「ああ、心配だね。電話にも出ないようだし……ちゃんと食事をしているといいんだけれど……」
そう言ってから、幸村は再びネクタイを締め、鞄を手に取った。
「どういう意味――」
「じゃあまた明日」
柳の言葉を遮って、幸村は部室を出ていく。
「赤也に何か起きている可能性は99……否、100%」
「雲行きが怪しくなってきたな……」
空を見上げて呟く真田に声を掛けてから、柳は走り出した。
カツン、と誰かが階段を下りてくる音に、赤也はびくりと体を震わせた。その動きに合わせて、壁に繋がれていた手錠と鎖がじゃらりと音を鳴らす。金属質の窓もない部屋は、酷く埃っぽく、冷たい。
むき出しの電球が不規則に点滅し、顔を上げようとしない赤也を照らしている。
「やっぱり、食べてなかったね」
階段を下りきった幸村は、悲しそうに赤也の前に手つかずで置かれた料理を見た。
「ほら、食べて?」
幸村は料理の入ったトレイを赤也の前に差し出すと、唯一部屋に置かれている錆びた椅子に腰かけた。
一向に料理に手を伸ばそうとしない赤也に、幸村は眉を寄せた。
「食べさせて欲しいのかい?」
ため息交じりの幸村の台詞に、のろのろと料理に手を伸ばす赤也。
「目もあわせてくれないのかい」
「何で……何でこんなことするんスか……」
「言ったはずだよ、朝練に連続で遅刻した罰だと。それから……ああ、そうだ。蓮二が心配していたよ」
後半の言葉に、赤也が顔を上げる。
「……やっぱり、そうなるのか」
幸村は悲しそうに呟くと、ゆっくりと立ち上がった。
「……こんなつもりでは、なかったのだけれど。赤也――」
更に言葉を続けようとして、止める。
「時間切れ、かな」
幸村は少し困ったように笑うと、階段を上がって行ってしまった。
「思ったよりも早かったね」
階段を上りきった幸村の目の前には、息を切らせ幸村をじっと見つめる柳がいる。
「おかげで、一番伝えたかった言葉を言えなかったよ」
「…………」
「傘も差さずに走ってきたのかい。ずぶ濡れじゃないか。使うといい」
幸村はタオルを取り出すと柳に向かって放り投げる。タオルを無言で受け取った柳は、一緒に放られた鍵の存在に気付くと驚いたように幸村を見つめた。
幸村は何も言わずに扉から離れた。
「明日は朝練遅れないようにって、赤也に言っておいて」
「……ああ」
いつもとどこか違う足音を聞いて、赤也はそっと顔を上げた。
「柳……せんぱ……」
柳は目を丸くする赤也に近づくと、手錠を外してやる。
「なん……で……」
「あまり部活を休まれては困るのでな」
「っ……せん……ぱ……」
赤也はこみ上げる涙を堪えて、差し出された手を握るがすぐに崩れ落ちそうになる。
「大丈夫か?」
崩れ落ちる寸前で柳に抱きとめられる赤也。
「すいま……っ!? 先輩、冷たい……!?」
この部屋では外の天気なんて分かるはずがないな……と、柳は呟いてそっと赤也を抱きしめた。
「冷たいのはお前だろう? 体が疲れているんだ。少し休め」
優しげな柳の声に、赤也はゆっくりと頷いた。
「じゃあ、ちょっとだけ……」
柳の胸に顔をうずめると、赤也はゆっくりと目を閉じた。
途中から予定変更して出来上がってしまいました。
キャラの喋り方が安定できませんでした……