ペルソナ4の番長の元々通っていた学校が誠凛で、八十稲羽で思ったよりもバスケが楽しかった可能性の話。番長が誠凛バスケ部に入部する。

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息抜きにやった。反省はしていない


もしも番長がバスケにはまってたら

 始業式も入学式も終えた四月某日。WC優勝という成績を残した誠凛高校バスケ部は多数の新入生の獲得に成功していた。尤も、この後の青春の主張イベントで更に減るのだが、それはまた別の話である。そんな多くの新入生を前に、事情を把握出来ていない三年生が一人、混じっていた。普通に考えるより多くの入部希望者を見て、既に及び腰なのは仕方ないと言えるだろう。なぜなら、彼はこの大量の新入部員の理由を知らなかったのである。

 

(……どうしよう。物凄く場違いな気がする)

 

 全力でアウェイ感を体感しつつ、思わず遠い目をする。そもそも彼がバスケ部に入ってみようと思ったのは、昨年、別の学校でやってみて面白かったからとか、その程度の理由だった。この誠凛高校バスケ部が全国で優勝した事など、全く欠片も知らないのである。というか、多分、WCという大会すら彼は知らないだろう。そんな彼でも、これだけの人数が集まっている学校が強豪である事位は察したので、引き返す事も視野に入れた。

 だがタイミングの悪い事に、さも引き返そうとした彼にバスケ部員の一人が声をかける。

 

「んー……? あー! 鳴上?」

 

「えーっと……小金井、だよな?」

 

 一年ぶりの嘗てのクラスメイト(今は違う)に名前を呼ばれ、鳴上は記憶の中から彼の名前を掘り起こした。因に一年の時の鳴上は当たり障りの無い付き合いしかしていないので、本当にクラスメイトというだけだったりする。しかし話しかけられてしまった以上、その時点で黙って引き返すという選択肢は消え去ってしまった。こちらに小走りで向かってくる小金井を見て、鳴上も向き直りながら覚悟を決める。

 

「こっち、戻って来たんだな。鳴上も入部希望?」

 

「ああ、元々一年だけだったし。一応、そのつもりだったんだけど……うん、怖じ気づいた所」

 

 答えながら周囲の一年を見回せば、釣られて小金井も見回した。それから困ったように笑った鳴上に、小金井もまた苦笑する。

 

「あはは……まあ、今年は昨年より大分多いみたいだしね」

 

「この状態じゃあ一見さんはお断りだろうし、大人しく諦めておくよ」

 

 そう言って引き下がろうとした所に、またもや声を掛けられる。なんだ、厄日か。鳴上は思う。

 

「えーと……転校生の……」

 

 咄嗟に名前が出て来なく、且つ鳴上が転校生であるということを知っているという事は、新しいクラスメイトなのだろう。切れ長の目の黒髪の彼は、確かに見覚えはあったが、名前までは覚えきれていなかった。

 

「鳴上だ。……ええと」

 

「あれ、伊月、同じクラスなんだ?」

 

「ああ。俺は伊月だ。鳴上も入部希望か?」

 

 鳴上と同じ事を考えたらしい小金井に尋ねられて、伊月が答えた。それから簡単な自己紹介と、一語一句小金井と同じ質問を鳴上にぶつけて来たのある。それに苦笑しつつ、鳴上は答える。

 

「そのつもりだったんだけど……うちの学校、強かったんだな」

 

「まあな。というか、お前ら、知り合いだったのか?」

 

 鳴上の答えを聞いて伊月は何も知らないで来た事を確信する。だが、そこよりも気になった疑問をぶつければ、小金井が何時もの笑顔で答えた。

 

「一年のとき、同じクラスだったんだよ。鳴上が出戻って来たんだ」

 

「いや、俺のホームは 八十稲羽(むこう) だから」

 

 きっぱりと言い切った鳴上に、二人は苦笑するしか無い。小金井は苦笑しながら思う。一年の時の鳴上と大分印象が変わった。なんというか、前はもっとなにかに執着する事が無かったように思えたのだが。

 

「向こうの学校でバスケ部に入ってみたんだけど、思ったより面白くて。だからきちんとした試合とか、やってみたいと思って……来たんだけどね」

 

「? 試合出来なかったの?」

 

「人数が四人しかいなかったから」

 

 なんでも無いように言ったその台詞に、伊月は息を呑んだ。

 

「……伊月?」

 

「……そっとしておこう」

 

 完全に止まってしまった伊月に、不思議そうに小金井が首を傾げる。自分が何か地雷を踏んでしまったのだろうかと思った鳴上は、そっと視線を反らす。それはある意味で間違ってはおらず、そしてある意味では地雷であったと言えるだろう。

 伊月は考える。鳴上は一年の時の自分たちの可能性の先にいると、そう思ったからである。あの時、もしも小金井や水戸部、土屋が入部しなかったなら、自分は鳴上と同じ思いを抱いただろう。底から伊月の思考は飛躍する。面白いと感じたバスケで、部員が足りずに試合を組む事すら出来ないバスケ部。きっと悔しかった筈だ。いや、悔しかっただろう。鳴上本人は他にやる事がありすぎて、八十稲羽に居た時はバスケ一本に打ち込んではいなかったのだが、その事を伊月は知らない。それが妄想に拍車をかけ、そしてあらぬ場所に着地した。そうだ、鳴上をバスケ部に入れよう。

 

「鳴上」

 

「……うん」

 

 唐突に動き出した伊月に両手を取られ、若干引き気味に鳴上が答える。

 

「一緒にバスケやろう」

 

「あ、うん」

 

 思わず返事をしてから、怖じ気づいて引き返そうとしていた退路が、一瞬にして絶たれた事を鳴上は理解した。どうしてこうなった。熱心な伊月にドン引きしている鳴上を見ながら、なんだか面白い事になったなあと小金井は思う。そこに二人の様子に気付いたらしい水戸部がやってくる。

 

「あ、水戸部ー」

 

「…………」

 

「あ、水戸部も同じクラスなのか。うん、伊月に熱心な勧誘を受けてるとこ」

 

「………(首傾げ)」

 

「んー……なんか伊月の感性に擦ったみたい。珍しいよね」

 

「……(こくこく)」

 

 仕草で会話を成立させる水戸部と小金井に、我に返ったらしい鳴上が興味深そうに見ていた。どうやら伊月を丸め込む事に成功したらしい。流石は言霊使いと言った所か。

 そんなこんなで、鳴上は引き返す事無くバスケ部へと入部届けを出すに至ったのである。

 余談ではあるが、部長の日向にも似たような反応をされる。さもありなん。

 

「えーっと、鳴上君はバスケ以外に何かスポーツしてたの?」

 

 一年生とは別口に監督のリコに服を剥かれた鳴上は、肌寒さを感じつつも彼女の問いに答える。

 

「スポーツとは言えない気がするが……剣道?を少々」

 

 実際の刀を振り回しながらテレビの世界を駆けずり回っていた訳であるが、素直に答えられる訳も無く。自己流とはいえど刀を振り回していたので、剣道と言っても差し支えないだろう。多分。

 

「…………」

 

 リコの目が不審そうに鳴上を見つめる。筋肉の付き方が剣道とは違う事を不信に思ったのである。彼女の目は誤摩化せない。じっと見つめられて、鳴上は内心で冷や汗を流しつつもどうにか視線はそらさなかった。

 

「嘘でしょ」

 

「……はい」

 

 その上で断言され、鳴上は大人しく白旗を上げた。ここで嘘をついても得にはならないと判断したからだ。その上で鳴上はどう言い訳するか考える。

 

「で?」

 

「……気が付いたら番長とかいうあだ名がついてた事から察してくれ」

 

 実際に向こうで気付いたら、見も知らぬ生徒から「番長」などと大層なあだ名を付けられていたのは事実である。乱暴にしていたような覚えはないのだが、解せぬ。因にあだ名の出所は向こうでの後輩である一人の少女である。

 

「……喧嘩?」

 

「黙秘権を行使する」

 

 リコ以外の周囲の目が何とも言えないものになるのを感じたが、事実を話せない以上黙る事を鳴上は選択した。当のリコは目を丸くして鳴上を眺めているが、何処か納得した風でもある。

 

「なんかそんな人には見えないけど、うーん」

 

「誓って言うが、向こうの学校の校内で問題を起こした事は一度も無い」

 

 両手を顔の横まで上げ、ホールドアップの体勢を作って誓う。むしろ先生からの覚えも良かった筈だと自負出来る。伊達に学力一位は維持していない。

 

「というか、流れのままに入部の流れになってしまったが……自分で言うのもなんだが、俺は初心者に毛が生えた程度だ。全国優勝を飾ったような学校のバスケ部に、三年になってから入るというのもどうなんだと思ってしまうんだが」

 

 素直に言わないが、そんな学校の練習等に付いて行けるかどうか。いや付いては行けるとは思うが、真面目に考えて努力には見合わない気がする。尤もそんな強豪校でなければ普通に入っていたのも間違いないのだが。

 

「そんなの関係ないじゃないです。一緒にバスケしましょう」

 

 鳴上の問いに答えたのは、少々小柄(他の部員に比べると)な色素の薄い少年こと黒子であった。いきなり現われた事に鳴上は内心で驚くが、彼の鉄面皮も崩れない。因に一年生たちのリコによる身体測定の最中に、伊月の妄想もとい、人数が足りずに試合が出来なかったくだりを聞かされているので、表面上は無表情であるが熱心さが当社比三割増である。

 

「そうだぜ、です! 一緒にバスケやろうぜ! っす!」

 

「バスケが好きならそれでいいだろうが」

 

 一際大きな赤毛の割れ眉こと火神も、相変わらずな下手な敬語で熱心に誘ってくる。ちょっと目が潤んでいるように見えるのはきっと気のせいだろう。それを援護するように、部長の日向が断言した。その言葉に鳴上は思う。ちょっとバスケが面白そうだと思ったからなんて、言えない。言えそうも無い。どうしてこうなった。

 

「……うん、分かった。こちらこそ宜しく」

 

 こうなった以上と鳴上も腹を決める。こうして鳴上は誠凛高校バスケ部へと入るに至ったのである。是非も無し。

 

「おまっ! 何処が初心者に毛が生えた程度だ……!」

 

 そう言って自己申告を鳴上が怒られる事になるのは、また別の話。





誰かその後を書いてくだされ…
読みたいですぅ…

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