例えば、組み分け帽子が性急じゃなくて。   作:つぶあんちゃん

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クィディッチ優勝杯

クリスマス休暇は今年もシリウスは休みを取れなかったのでハリーはプリンス邸で過ごすことになった。

 

口煩いダリアが苦手なハリーとしては些か不満はあったものの、プリンス邸は田舎に位置していて思う存分に箒で飛び回れるので大人しく従った。グリモールド・プレイスは住宅地なので、クィディッチをするほどの庭がないのだ。

 

ドラコの入院により代理のシーカーを立てたスリザリンはレイブンクローに僅差で負けてしまい、優勝杯戦はグリフィンドール対レイブンクローに決まった。ドラコはそれはそれは悔しがり、ハリーに「絶対優勝しろよ」と不貞腐れたように言った。

 

「ねえ、シャル。 本ばかり読んでないでさ、僕と箒で遊ぼうよ」

 

ハリーは、行儀悪くソファーに寝転んで『魔法薬の神秘』を読み耽るシャルロットを尻目に、これみよがしに溜息をついてみた。

 

「嫌よ。 私が箒に乗るの嫌いなの、知ってるでしょう」

 

「嫌いっていうか…恐ろしく下手だよね」

 

シャルロットはぱたんと音を立てて本を閉じると、ハリーを睨んだ。そして、ダリア特製のクッキーに手を伸ばす。

 

「うるさいわね。 私のママはグリフィンドールのシーカーだったのよ? 私はパパに似ちゃっただけで」

 

ハリーは思わず曖昧な笑みを浮かべた。

つい先日シャルロットの母親レイチェルを植物状態に追い込んだ犯人が、逃亡中のペデュグリューだと知ってしまったからだ。

 

しかし、何も知らないシャルロットは言い返してこないハリーを不思議そうに見てキョトンとした。

 

「何よ、変な顔しちゃって」

 

「学年一のプレイボーイに失礼だろ」

 

「…随分と自信がお在りなようで。 でも、確かに暇ね。 魔法薬の宿題でもやる?」

 

シャルロットの提案に、ハリーは思いっきり顔を顰めた。シャルロットと言い、ハーマイオニーと言い、ハリーの周りの女の子は何故暇つぶしの感覚で勉強をしたがるのだろう。

 

しかし、宿題が全く終わっていないハリーにとってそれはそんなに悪い提案ではないように思えた。

ハリーは了承すると、プリンス邸の中にある魔法薬の研究室へ向かった。そこには大きな鍋や見たこともない植物が所狭しと…しかし、持ち主の性格を体現したようにきっちり分類して陳列されている。

 

「置いてあるものに勝手に触らないでね。 パパに怒られるし、貴方の指も2.3本無くなるわよ」

 

紫色のうねうねと曲がった茎の植物に触ろうとしたハリーは、思わずビクリと手を引っ込める。

それを見てシャルロットが可笑しそうに笑ったので、ハリーはからかわれたのだと気付きちょっとむくれた。

 

シャルロットは慣れた手つきでテキパキと鍋に火をつける。

 

「えーっと、宿題の内容は『膨れ薬』の提出ね。 あなたは材料を刻んで」

 

シャルロットの言われた通りに、材料を刻んで大鍋へと入れる。

大鍋はあっという間にグツグツ煮立ち、真冬だというのに汗ばむほど部屋は暑かった。

 

「髪、切っちゃおうかしら」

 

シャルロットは鬱陶しそうに垂れ下がる金髪をかきあげた。

 

「ねえ、シャル。 変なこと聞くけどさ、セブルスおじさんから昔の話してもらったり、写真見せてもらったりしたことある?」

 

シャルロットは髪を結きながら怪訝な顔をした。

 

「そりゃあ、あるわよ。 リビングにパパとママの結婚式の写真だって飾ってあるし。 ママの話、よくしてくれるわよ」

 

「いや、そうじゃなくて…パパとかジェームズ父さんとかリーマスおじさんと一緒に写ってる写真」

 

すると、シャルロットは鍋を掻き回す手を止めた。

 

「…そういえば、ないわね。 パパが見せてくれるのはママの写真ばかりで。 男の子同士の友達たちってあまり写真を撮らないのかしら?」

 

「ふーん、そっか」

 

ハリーは何でもないことのように会話を終えようとしたが、シャルロットは何かを探るようにまじまじとこちらを見た。

 

「なんで突然そんなこと聞いたのよ?」

 

「いや、ちょっと気になっただけ。 ジェームズ父さんの写真がこの家にあるなら見たいなーと思って」

 

その答えにシャルロットは納得したらしく、それ以上何も聞いてこなかった。

 

次の日、シャルロットは髪を短く切った。

その様があまりにも新聞で見た若い頃のレイチェルにそっくりだったので、ハリーは驚いた。

 

同じことをセブルスも思ったようで、夕食時にはシャルロットの顔を物憂げな瞳で見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

あっという間にクリスマス休暇が終わり、ホグワーツに戻ったハリーを待ち受けていたのは親友2人の大喧嘩だった。

 

とうとうクルックシャンクスはスキャバーズを食べてしまったらしい。ロンのベッドの上には少量の血とオレンジ色の猫の毛が落ちていた。

 

ハリーとしては2人の仲を取り持って仲直りをさせたかったが、残念ながらその時間が訪れたのは2週間後くらいのことだった。クィディッチ優勝杯戦が近付いてきてウッドはいよいよ狂人じみてきたので、チームメイトは皆練習に追われていたのだ。

 

「おい、ハリー。 分かってるだろうな? おまえが誰と付き合おうが文句は言わない。 しかし、そのせいで手を抜いたら…」

 

「その話するの何度目だよ、ウッド! 僕が恋人のためにわざと負けるシーカーだって本気で思ってるのか!」

 

ハリーは疲労のせいか、苛ついたように怒鳴った。

 

グリフィンドールとレイブンクロー。お互いのシーカー同士が恋人ということで、この試合は色々な意味で皆の好奇心をくすぐったらしい。

ウッドだけに留まらず、似たようなことを他の人にも何度も言われた。

 

その日も雨に打たれビチョビチョに濡れたハリーを、談話室でウトウトしながらロンが待っていた。そして、かなり離れたところでハーマイオニーは黙々と勉強を続けている。

 

「いい加減、仲直りしたら? 拾ったばかりのネズミだろ? そんな思い入れもないじゃないか」

 

「…あいつが謝ってくれればね」

 

ロンはハーマイオニーにも聞こえるよう大きな声で言った。

お互いどうやら意固地になっているらしい。

 

「ムキになるなよ、ロン。 …好きな子を追い詰めて楽しいか?」

 

最後の言葉は他の人に聞こえないよう、彼の耳元でこっそり言った。

 

「なっ…!?」

 

ロンは呆気にとられ、そして自身の赤毛と同じくらい頬を真っ赤にした。

 

「あれ、違うの?」

 

ハリーはロンの反応に驚いて怪訝な顔をした。

ハリーは、シリウスの影響もあり恋愛面に関してはかなり大人びていた。

思春期真っ盛りで懸命に恋心を隠す周りの友達と違い、ハリーの恋愛はかなりオープンなのだ。そこがまた、周りの女子生徒から魅力的に思われるのだろう。

 

何となくハリーもロンも、ハーマイオニーに好きな相手がいることは気付いている。つまるところ、今回の喧嘩の悪化の原因にはロンの嫉妬もあるのだろう。

 

「い、いや! 好きっていうか…その…」

 

しどろもどろになるロンの手をハリーは掴むと、ハーマイオニーの前へと引っ張る。

ハリーは不意に1年生の頃のトロール事件を思い出した。あの時もこうやって2人の仲を取り持った気がする。

 

「とにかくさ、女の子を1人にさせるなんて紳士のすることじゃないぜ。 ・・・ハーマイオニーにも謝らせるからさ、仲直りしろよ」

 

やや強引な仲直りだったが、2人を前にしたハーマイオニーはここのとこいっぱいいっぱいだったようでポロポロと泣き出した。彼女は毎日勉強をしていたし、日課だったレギュラスへの質問もピタリと止んだ。色々限界だったのだろう。

涙を流すハーマイオニーを見てロンも罪悪感に駆られたらしい。もういいから、と何度も何度も言ってハーマイオニーの背中を不器用に摩った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「優勝杯、絶対とれよ!」

 

「がんばれよ、ハリー」

 

「ブラック! 応援しているわよ!」

 

優勝杯戦の日の朝、廊下ですれ違う人ほぼみんなにそう声をかけられた。その度にハリーは不敵に笑ってみせたが内心は穏やかではなかった。

もし自分のせいで負けたら…。そんな考えが嫌でも頭をもたげる。

何も食べる気が起きず、プレッシャーをかぼちゃジュースで飲み込んだ。他の選手も似たようなもので青い顔で朝食を食べていた。

 

大広間では、既に横断幕を広げる生徒や寮の色をモチーフにしたコスチュームを着た生徒たちで賑わっている。朝食時のマナーとしてはどうかと思う騒がしさだったが、今日だけは先生も目をつぶっているようだ。

むしろマクゴナガルもソワソワしているようで、彼女らしくないことに何度かフォークを取り落としてはその度に頬を赤らめていた。

 

「じゃあな、ハリー。 後で競技場で行くからな!」

 

「頑張ってね!」

 

ハーマイオニーとロンのその言葉に、さらにプレッシャーがかかりつつもハリーは何とかニヤリと笑ってみせた。しかし、今にも胃の中が逆流しそうな思いに駆られながらハリーは大広間を出た。

選手たちは早めに競技場に行かなければならない。皆、大広間で食事をしているせいか城内は閑散としていた。

玄関に差し掛かったところで、ダークブロンドの髪が目に入った。階段に腰掛けて、サンドイッチを齧っている。

名前は確か--。

 

「やあ。 ルーナ」

 

話しかけられた少女はふわりと髪を靡かせて振り返ると、ニッコリ笑った。…コルクのネックレスと蕪のイヤリングが無ければ彼女はさらに魅力的であっただろう。

膝の上には、大広間から持ち出したのであろうサンドイッチが木のカゴに入っている。

 

「ハリー、あんた頭の上にムカットの群れが飛んでるよ」

 

「ムカットって何?」

 

「知らない? 吸血鬼と尻尾爆発スクリュートのハーフだよ」

 

ハリーは思わず緊張も忘れて吹き出した。

 

「何でこんなとこでご飯食べてるの? 1人?」

 

「うん、そうだよ。 でも、あたし1人が好き。 1人でいれば、誰もあたしのことルーニー(変人)って呼ばない。 そうでしょ?」

 

ハリーは思わず言葉に詰まった。

奇抜な外見や言動から薄々気付いていたものの、彼女は友達が少ないようだ。

 

「…少なくとも、僕は君のことそんなふうに呼ばない」

 

「うん。 知ってる。 でもね、ここでご飯食べるの楽しいんだよ。 風は気持ちいいし、ムカットもへーダルリックも遊びにきてくれる」

 

へーダルリックが何か少し気になったが、訊かないことにした。

 

「ねえ、サンドイッチ1つもらっていい?」

 

先程まで全くなかった食欲が少し湧いてきた。

 

「うん。 いいよ」

 

もう競技場に行く時間なので、ハリーはサンドイッチを二口で飲み込んだ。

そんなハリーを見て、ルーナは顔をくしゃりとさせて微笑んだ。大人ぶってクスクス笑う周りの女子生徒と違う、そのあどけなさに思わずハリーは目を奪われる。

 

「またね、ハリー。 心配しなくて大丈夫。 きっとあなたならスニッチとれるもん」

 

「君はレイブンクローだろ?」

 

すると、ルーナは心底不思議そうにキョトンとした。

 

「友達を応援するのは当たり前だよ。 違う?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合開始の合図と共に、赤と青のユニフォームたちが舞い上がった。

観客たちも興奮の最高潮で湧き上がる。

グリフィンドールの1番大きな横断幕には「我らの最高のシーカー、ハリー・ブラック」と書かれ、ハーマイオニーのかけた魔法により数秒毎に赤と金に点滅していた。

 

試合は開始数分で40対0とグリフィンドールの優勢だった。それもそのはず、グリフィンドールはチーム皆がシリウスからプレゼントされたニンバス2001である。

少し話は逸れるが、スリザリンが優勝杯を取ることが多いのも、やはり裕福な家庭で良い箒を買えるというのもあるからだろう。

 

とはいえ油断はできない。

レイブンクローはチームワークがやや欠けるものの、その分個々の実力は目を見張るものがある。

 

「レイブンクロー初得点! 40対10! 未だグリフィンドールのリードです! それもそのはず、グリフィンドールは去年と同様チームメイト全員がニンバス2001なのです。 チャン選手のコメット号では到底追いつきません…」

 

「ジョーダン!」

 

レイブンクローは野次があがり、マクゴナガルは実況中のジョーダンを窘めた。

 

「オッケー、オッケー! しかし、予想外です。 てっきり優勝杯戦はグリフィンドール対スリザリンになると思いましたが、勝負は何が起こるか分からないものなのです。 シーカーマルフォイが怪我をしてくれたおかげで…いや、非常に残念なことに怪我をしていただけたので…」

 

「ジョーダン! いい加減になさい!」

 

「軽い冗談ですよ、マクゴナガル先生。 さあ! アリシアがクァッフルを取りました! ゴールまで行けるか!」

 

ハリーは飛び交うブラッジャーを避けながら、縦横無尽に競技場を飛び回る。

ニンバス2001には対抗できないと思ったのか、チョウはハリーの周りをちょこまかと飛び邪魔をしていた。しかしその目は本気で、恋人のために手を抜こうとする気配は一切ない。

 

「ハリー! 相手を箒から叩き落とせ! 彼女だろうが関係ない! やるときゃやるんだ!」

 

ゴールの近くを通った時、ウッドがそう吠えた。

 

「ああ、わかってるよ!」

 

そう怒鳴り返したが、レイブンクローの猛攻を防いでいるウッドの耳に聞こえたかどうか微妙であった。

 

グリフィンドールの観衆は皆、声を枯らして応援している。

ハーマイオニーとロンの隣りに…だいぶ間を上げてドラコとシャルロットがいた。グリフィンドールの衣装こそ着てないもののアウェイな空間だというのに、腕を上げてハリーに声援を送ってくれている。

 

スニッチを見つけなくては。

早る鼓動を抑え、競技場内を見渡す。

 

そして…とうとう見つけた!

 

ハッフルパフの方の観客席に金色のものがチラチラ輝いている。

 

ハリーは箒を急加速させた。

チョウがハリーの進路を妨げるように突っ込むよう飛び込んだ。

ぶつかりそうになったが、すんでのところでそれを交わした。

 

放たれた矢のように、ぐんぐん箒は加速する。

あっという間にチョウを突き放した。

 

優勝杯まで、あとすこし! ハリーは唸る風の中で手を思いっきり伸ばした。

 

やった!

ついに、バタバタ藻掻くスニッチをハリーは手中に収めた。

 

水を打ったような一瞬の静寂。

そして、次の瞬間グリフィンドールは爆発したように歓喜の嵐となった。

 

ハリーは金色のスニッチを掲げて、観衆の上を高々と飛んだ。

教員席ではリーマスが涙目になりながらハリーに手を振り、セブルスは満面の笑みでリーマスの背中をばしばし叩いていた。 …もしかしたら、ポジションは違うもののハリーと亡き親友を重ねているのかもしれない。

 

「ハリーがスニッチをとりました! やったああああ! グリフィンドールの優勝だあああ……ぐえっ!!」

 

ジョーダンの叫びは、感極まったマクゴナガルの強すぎる抱擁によって途中で遮られた。

 

「優勝よ! 私たちが優勝杯をとったのよ!」

 

アンジェリーナとケイティ、アリシアの声が聞こえた。同時にウッドはぐしゃぐしゃの泣き顔でこちらに飛んでくると、ハリーを抱きしめた。

フレッドとジョージがハリーの背中を叩いて雄叫びを上げた。

抱きしめ合い、もつれ合い、泣きながらチームメイトたちは地上に降り立つ。観衆たちは柵を飛び越え、選手たちの方に雪崩込んできた。

 

「優勝だ! グリフィンドールの優勝だ!!」

 

誰かが再びそう叫んだ。

 

マクゴナガルは大粒の涙を横断幕で拭いていた。ロンとハーマイオニーが人混みを掻き分けてこっちに来ようとしていた。2人とも感極まって言葉が出てきていない。

 

ハリーは肩車をされたままスタンドへと向かった。

にっこりしたダンブルドアから優勝杯のカップを渡されると、ハリーは雄叫びを上げてそれを天に掲げてみせた。

 

観衆は、またしても沸き上がった。

 

 

 

 

 

 

夜が更けても談話室でのお祭り騒ぎはおさまらなかった。

 

皆はお菓子を食べ、ジュースを飲んで、騒ぎ尽くした。

ハリーはその中でヒーローだった。誰もが彼と話したがり、何度も何度も乾杯をしたがった。

 

途中ターバンで髪を包み、ネグリジェを着たマクゴナガルが談話室に入ってきた。こんな夜更けまで騒いでいたことを怒られるかと談話室は一瞬静かになった…が、マクゴナガルは「かぼちゃジュースは足りてますか?」と確認すると、改めてチームに労いの言葉をかけて出て行った。

 

夜中になるにつれ談話室の人は少なくなっていったものの、まだまだ盛り上がっていた。

途中ウィーズリーの双子が談話室を出て行ったかと思うと、かぼちゃジュースとバタービールのビン、そしてクッキーやスコーンを抱えてすぐに帰ってきた。

 

「ねえ、それってどこでもらってるの?」

 

ハリーはふと疑問に思った。

基本的、ホグワーツの食事は決められた時間に大広間でしか出来ない。

 

「「よくぞ聞いてくれた!」」

 

フレッドとジョージは互いに顔を見合わせると、ニヤリと笑って大仰に手を広げた。

そして、人の少ない部屋の角にハリーを引っ張った。

 

「いいか、俺たちももう5年生。 O.W.Lの年になってしまった。 つまり後継者を探している」

 

「それで俺たちは偉大なるシーカー、ハリー・ブラック様にこれを授けようと思う。 なぁに、遠慮はいらない!」

 

そう言うと、フレッドはポケットから1枚の羊皮紙を恭しく取り出した。

四角いくたびれた何の変哲もない羊皮紙だった。

 

「なんだい、これ?」

 

「ジョージ、説明してやってくれ」

 

「よろしい。 我々がまだ1年生だった頃--君と違ってまだクィディッチをしてなかったからな。 クソ爆弾を廊下で投げるスポーツに励んでいた」

 

ハリーは思わず吹き出した。

 

「そしたら何故か知らんがフィルチの不興を買ってしまい、事務所まで引っ張られた」

 

「そして、我々はあることに気付いた。 書類棚の引き出しの一つに『没収品・とくに危険』と書いてあるじゃないか」

 

「もしかして…」

 

ハリーは耐えきれずニヤリと笑った。

 

「ジョージがもう1回クソ爆弾を爆発させて気を逸らしてる間に、俺が素早く引き出しを開けて掴んだのがこれさ」

 

「そうとも。 そのせいで、俺はさらに説教が伸びた。 …さあ、使い方を教えよう! 『われ、ここに誓う。われ、よからぬことを企む者なり』」

 

ジョージは杖を取り出し、羊皮紙に軽く触れてそう言った。

 

すると、杖が触れた場所からたちまちインクの線がクモの巣のように広がり始めた。線があちこちで繋がり、交差して、ホグワーツの地図になる。そして、地図上には小さな点が散らばり、名前が書かれていた。

 

例えば、アルバス・ダンブルドアは校長室にいるし、事務室にはフィルチがいる。その他の先生は殆ど自室にいるようだ。

三階の廊下には、ミセス・ノリスが徘徊していた。

そして、この地図の最も素敵なことに色々な抜け道も書かれていた。

 

「ちなみにここの道はホグズミードに直行さ。 とはいえ、生徒が1人で彷徨いてたら目立つ。 ホグズミード週末以外に行くのはおすすめしないね」

 

「で、地下の廊下の絵画の梨をくすぐると厨房に入れる。 俺たちはいつもここから食べ物を失敬してるってわけ」

 

フレッドとジョージは得意げにニタリと笑った。

 

地図の上には、緑色の字でこう書かれていた。

 

『プロングズ、パッドフット、ワームテール、ムーニー、シュリル われら「悪戯仕掛け人」がお届けする自慢の品』

 

「我々はこの5人の諸兄にどんなに御恩を受けたことか」

 

フレッドは芝居がかった厳かな口調で言った。

 

「使い終わったら、こうだ。 『いたずら完了!』忘れずに消しとけよ」

 

ジョージがとびっきりのウインクをしてみせた。

 

「いいの? 僕がこんな素敵なものもらっちゃって」

 

「ああ、俺たちは道は暗記してるからな。 君なら俺たちと変わらないくらい素晴らしく使ってくれるだろ」

 

「ロニー坊やにも使わせてやってくれよ。 そんないいもの君にあげたと聞いたら拗ねるだろうから」

 

フレッドとジョージはそう言うと、意気揚々とお祝いの席へ戻っていった。

 




ハリーの女ったらし癖が、ロンとハーマイオニーの仲直りだったり変なところで役に立つ。

ここのとこ素敵な感想ばかりもらってウキウキで執筆してます( ´ω` )
感想が最大のスタミナ!!本当にいつもありがとうございます!!

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