クッパ戦記   作:鰹ふりかけ

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絶対邪竜戦線

クッパが、これからの打開策をなんとか打ち出そうともがいている間にも状況は著しく変化していく。

 

 

 

占領下においているはずのキノコ王国では、クッパ軍団ではなくキノピオを狙った攻撃が立て続けて発生。

 

現地の憲兵隊が対応に追われている。

 

さらに、国家ぐるみではなければ動員できないような規模の謎の軍団がクッパ軍団の非支配地域で騒動を起こしており。

 

 

 

クッパ軍団の影響下へキノピオの避難民が列をなしてやって来ている事態にまで発展していた。

 

 

 

その中で両者共に言動の一部において違和感が目立つとの報告がなされ。

 

 

 

調査を行ってみると会話内容が所どころ噛みあっていない事が判明した。

 

 

 

それらの齟齬の中でも軍団が市民を救出したさいにあるキノピオの老婆が言った疑問が最たるものだろう。

 

 

 

「私の息子は元気なのでしょうか?」

 

 

 

聞けば息子がクッパに拐われたそうだ。

 

 

 

確かにクッパ軍団はキノピオを拐うこともある。

 

だが、それは副産物に過ぎないのだ。

 

大抵はピーチ姫の巻き添えをくらって城とか乗り物ごと拐われる。

 

しかし、キノピオを単体で誘拐することなどめったにないし。第一拐った所で何の役にたつというのだろうか。

 

 

 

クッパ軍団は国単位でカツカツの状態であり、わざわざ

 

ただめしぐらいを増やす必要もない。

 

 

 

この時対応した兵士もおかしな話だなーーと済ましていた…翌日に百人単位で誘拐被害者の家族が詰所に押し寄せてくるまでは。

 

 

 

異常である。

 

 

 

兵士は、あわてて国元の軍務局にカメックを介した魔法通信で問い合わせた。

 

 

 

かえってきた返事は。

 

「知らんぞそんなもん」

 

 

 

軍務局としても寝耳に水の状態であった。

 

キノピオをさらうといえど、話から相当な数のキノピオが拐われているのだ。

 

そうなれば当然の如く飛空艦や部隊が動くはず…なのにそのような記録が見つからないのだ。

 

また、クッパ帝国の台所事情によって記録などはかなり正確につけられており裏付けとしてしっかりと機能していたことによりさらに疑問が生じる。

 

 

 

接収した市役所で戸籍と情報を付き合わせて見る。

 

自分の顔色がどんどん悪くなっていくのがわかる。側にいた同僚も同じだったようでやがて室内を沈黙が支配するようになった。

 

 

 

 

 

年間千単位でキノピオが行方不明になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

 

ヨースターアイランド

 

 

 

 

 

ここヨースターアイランドは言わずとも知れたヨッシー達の本拠地。

 

クッパが何度も進行し撃退されたキノコ王国に次ぐ激戦地である。

 

歴史は古く、クッパの先代の時代においても砦が築かれておりここが重要拠点の一つであることがうかがえる。

 

 

 

 

 

所でなぜこのヨースターアイランドが血で血を洗う激戦地区になったか疑問をていした者はいないだろうか?

 

 

 

 

 

実際の所、ここヨースターアイランドは地政学的にはほぼ意味のない地点であるのだ。

 

 

 

クッパ軍団は飛行戦艦を保有しており直接キノコ王国にいくことができる。

 

さらに言えば、ここヨースターアイランドはキノコ王国への航路から離れており補給基地としても不適。

 

 

 

すべてはこの島に住まうある生物が原因である。

 

 

 

ヨッシー

 

正式名称ヨッシードラゴン

 

凶悪なまでの生物としての頑丈さ、ある程度のダメージを負うと仮死状態に移行する生存力。

 

鉄のような硬度でありながら伸縮性に優れた舌を振り回し爆裂する卵を投げつける。

 

水の上を走る。なんかホバリングする。逸脱した能力を持つこの生物だが、ここまではまだ良いほうであり。

 

多数の種族の寄り合い所帯であるクッパ軍団とはどうしてもわかりあえない特性があるのだ。

 

 

 

 

 

奴ら知的生命体を補食して繁殖するんだぜ。

 

 

 

 

 

あの愛くるしい姿に騙されてはいけない。

 

奴らは舌で臣民を舐めとり生きたまま補食しその亡骸から構成された卵を味方に投げつけてくるのだ。

 

 

 

そんな奴らを邪竜と言わず何と言えと。

 

 

 

 

 

このようにヨッシードラゴンはこの世界において屈指の危険生物であり。

 

クッパ軍団においては不倶戴天の敵に相当する。

 

そのため、ヨースターアイランドにはヨッシーを食い止めるための最前線基地として城塞がつくられている。

 

 

 

 

 

その城塞が今陥落しようとしていた。

 

 

 

 

 

「緊急!こちらヨースター要塞。襲撃を受けている!被害甚大なり。至急応援をうあああああううあうhs6っっっっっっっっhガリボリゴキ・・・ヨッシーーーーー」

 

「嫌だ!死にたくない助けて・・・・」

 

「舌が!舌が足に絡み付いて助けてくれ!」

 

「うああああああああああああああああああああああああ」

 

「トゲ付きのものは時間を稼げ。非戦闘員は退」

 

「うわあああああヨッシーだああああああ!死にたく」

 

 

 

 

 

突如始まったヨッシーによる襲撃。

 

通常ならばここまで蹂躙されるはずがなかったがヨッシー達に異変が起きていた。

 

 

 

通常ならばヨッシーの身長は1メートルから2メートルである。

 

だが、今回出現した個体は優に十メートルを超えており城壁を楽々と破壊し、そこから多数のヨッシーが侵入。

 

迎撃態勢が整っていない城兵は壊滅という惨状を作りだす。

 

 

 

城内には緑と白のマーブル模様の卵があちらこちらに産み付けられ、絶命したクッパ軍団の死体をヨッシー達が貪っていた。

 

 

 

そしてわずかな兵士の生き残りが砦の最奥で立て込もっていた。

 

 

 

「だめです出入口すべて塞がれています・・・」

 

「そうか・・・」

 

そこには砦の司令官であるトゲノコエースと数人のクリボーとノコノコが身をよせあい。

 

あるものは震い泣き。また別の者はただただ茫然と立っていた。

 

帰ってきた偵察の報告に皆落胆し絶望の空気が充満する。

 

 

 

扉からは中にいる餌を早く早くとせくように扉に体当たりを繰り返すヨッシー達、ぼろぼろになった壁の穴からは貪欲な舌がチロチロと蠢く。

 

 

 

ヨッシー!ヨッシー!とおぞましい鳴き声が響きあちこちでヌチャリと卵を産卵する音が聞こえてくる。

 

 

 

「もはやこれまでか・・・」

 

トゲノコエースが呟く。

 

「では、最後に奴らをできる限り巻き込んで散りますか?」

 

「ダメだ。」

 

呟きを聞いたノコノコが覚悟を決めた瞳で見つめてくるが即座に司令官はそれを否定する。

 

 

 

心情は理解できる。

 

というよりは自分もそうしたい。

 

 

 

だがそれは愚策に近い。

 

 

 

奴らの性質の上で半端な抵抗はほぼ無力。

 

むしろわざわざ餌を与えにいくほどバカなことはない。

 

その行為は奴らの増殖に手をかす事になり、やがては国本の家族・軍の同胞を危険にさらす事になる。

 

 

 

さらに言えば奴らの行動に餌の貯蓄。

 

つまり餌を巣穴に生きたまま生餌として保管する習性も存在し。

 

 

 

現段階での最良作戦、航空戦艦による絨毯爆撃の妨げにもなる。

 

 

 

「自決する・・・」

 

そう宣言すると共に周囲を見渡す。

 

 

 

そこには怯えと恐怖があった。

 

 

 

死への恐怖で震える部下をある時は優しく諭し。

 

 

 

正論を持って説得し。

 

 

 

約束を結び。

 

 

 

苦痛ができる限りないように自ら介錯を行う。

 

 

 

一人、また一人と命が消えて行き。

 

 

 

やがて最後の一人となった。

 

 

 

「覚悟はできています。」

 

「そうか」

 

最後に残ったのは自分に長く付き従ってくれた副官であった。彼には悲壮感などなく、覚悟を決めた澄んだ瞳をしていた。

 

 

 

「では、先に行かせていただきます。クッパ様万歳!クッパ帝国とその臣民に栄光があらんことを!」

 

そう叫び、部下は生き絶えた。

 

だが最後に自分に対して「申し訳ありません」と言ったのが聞こえた。

 

 

 

彼は気がついてしまったのだ。

 

最後の一人は自らの手で命を絶つことになると。

 

その覚悟はいかんなことか、その痛み・苦しみがどれ程重い事かを。

 

 

 

最後まで苦労をかけた。

 

 

 

司令官は今の行いを恥じてはいない、理由はいかんにしても自分は部下をこの手にかけたとしてもだ。

 

 

 

その心には。

 

奴らに対する最大限の抵抗を行ったという思いと共に、部下を生きたまま咀嚼されその血肉が同胞を傷つける事に利用されるのを防ぎ。

 

 

 

何よりあんな酷い死にかたを部下にさせずにすんだという思いがあった。

 

 

 

「クッパ様万歳!」

 

そう言って司令官は自ら命を絶った。

 

同時に撒かれたランプオイルに火を放ち周囲の亡骸を火に包む。

 

これで部下の亡骸が辱しめられることもないだろう。

 

 

 

 

 

かくしてヨースター島の島が陥落。

 

守備隊は全滅となった。

 

 

 

それからすぐに砦からの救援要請によって駆けつけた航空戦艦による爆撃が開始され。

 

ヨースター島が炎に包まれ多くのヨッシー達を行動不能に陥らせる事に成功する。

 

 

 

が、

 

 

 

その爆撃を生き延びたヨッシー達が餌を求めて海を渡り

 

クッパ帝国へと接近している事が同盟を組んでいる水生部族からの警告により発覚。

 

急遽ヨースター島方面の住民疎開が行われ、同時に義勇兵や退役軍人の召集が行われる。

 

 

 

各都市では住み慣れた街を離れ飛行戦艦で避難する市民の姿が見られた。

 

 

 

「お母さん…いつ帰ってこれるの?」

 

「大丈夫よ!きっとクッパ様が必ずなんとかしてくれるわ」

 

「本当?」

 

「ええ前にもこんな事があったの。でもクッパ様がすべて倒してしまったのだから大丈夫」

 

 

 

 

 

臣民のために自身の叡智と力で邪竜のことごとくを封印せしめた魔王。

 

 

 

それがかわいそうだという理由で邪竜の封印を暴き。あまつさえその背中に騎乗し国へと侵攻する勇者。

 

 

 

魔王とは誰の事を指すのだろうか?

 

 

 

 

 

邪竜の侵攻によりパニックとなるクッパ帝国。

 

この騒動によってキノピオの行方不明事件などは有耶無耶となった。

 

 

 

だが、この2つの事件は繋がっていた。

 

 

 

クッパ帝国がこの事に気がつくのはもうしばらくしてからのお話。

 

 

 

なぜなら

 

 

 

「クウックパ様っっっっっっっっっ」

 

「どした、落ち着け❗」

 

「ピいいいい」

 

「ピ?」

 

 

 

「ピーチ姫が亡命してきました❗」

 

 

 

 

 

超特大の爆弾が投下されたからである。

 

 

 

 

 

 


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