転生グルマン!異世界食材を食い尽くせ   作:茅野平兵朗

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第23話 女神様方の祝福のおかげで、なんか、えらいことになっているようです

 女神様方が帰られて、かなりの時間、ギルドマスターシムナの執務室に静寂がたゆたっていた。

 時折聞こえるのは、えぐえぐとしゃくりあげる声、グスグスと鼻をすする音ばかりだった。

 が、それには、悲しみなどという負の感情は欠片も含まれておらず、ただ、ただ、途方もない感動に心を揺さぶられて滂沱していただけだった。

 やがて、僕の傍でひれ伏し号泣していたティエイルさんがガバッと顔を上げ、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔で叫ぶ。

「ふわあぁッ! 祝福……されちゃいましたぁッ! ダブルで!」

 ティエイルさんの叫びを皮切りに。

「はあああぁッ! 何という、何という誉!」

「ひええええええっ!」

「くううッ! 信仰生活二十五年ッ! まさか、このような日が来ようとは!」

 神職さん方は、まさにもう、嬉ションレベルで歓喜のおたけびを上げる。

 一方、お嬢様方一般人の面々も。

「はわわわあッ! こ、こんなこと、いいんでしょうか? 私、神職様でも、敬虔な信徒でもないのに!」

「お姉様、すごいわ、わたしたち無敵よ! 大地母神と生命の女神のダブル祝福なんて!」

「おいおい、いいのかよ、あいつらぁ」

「あらあら、あの子たち、私たちにまで……」

「いいの? いいの? あたしにまでダブル祝福なんて。いや、返上しないけど」

 と、とまどいながらも、一様に喜色を満面に表していた。

 斯くいう僕は、なんとも不思議な気分だった。いや、神様に祝福されるってことは、喜ばしいことなんだろうけど、正直言って、なんか余計なものを背負わされたような気になっていた。

「ハジメさん、祝福を受けるということはですね、この世界においては、鎧をもう一領重ねるのとおなじなのですよ」

 ヴィオレッタお嬢様が、指で涙をぬぐいながら僕に教えてくれる。

「でも、なんか生活とか修道士みたいにきっちりした生活態度にしなくちゃいけないとか、あるんじゃ……」

 その、鎧を得るために、暮らしの自由気ままさを手放したんじゃ、割りに合わないんだけどな。

「はいはい、通常でしたら、上級の祝福を得るためには、信仰に人生をささげることを誓い、厳しい修道士生活を続け、教団のしかるべき地位に就いて、ようやく教団の大総主教の祝福を受けられるのでございます。一般信徒でしたら、どんなに敬虔であっても、修道士の生活はできませんから、いっぱい寄付して教会に通っても、よくて教区の大主教…。せいぜいが町の教会の司祭の祝福が関の山でございますねぇ」

 エフィさんが僕の疑問に答えてくれる。

「神の祝福など、大総主教が就任するときに、大々的な神降ろしをして、そのときにいただけるものなのだ。ここ数百年では、数えるほどしか記録されていないのだ。我が教団においては、先代大総主教猊下が受けられて以来六十年無かった事だ。しかも、その祝福は依り代越しなのだ!」

 ティエイルさんが、僕に向けた口先に微量の怒気を混ぜ込む。うん、敬虔な信徒さんには信じられない態度だよな。

「でもねぇ。ハジメ。わたし達。神様から、じかに祝福受けちゃったんだよ! わたし、こんなの聞いたこと無いわ!」

 サラお嬢様が興奮して、手足をバタつかせる。

 ああ、そうか、そういえば、神様たちが自身の姿で降りてくるのって、滅多に無いことだったっけ。

「はい、…で、ございますね。最後に神が御真姿を現されたのは千年くらい前でしょうか?」

 エフィさんが、神職の皆さんに向き直る。

「はは、確か、末の戦女神リュンデ様が御姿を現されたのが最後かと」

 僧侶生活二十五年を誇る老僧侶さんがエフィさんに最敬礼する。

「此の身も斯様に心得ております」

 アラサー僧侶さんが追従する。

「で、ございましてですね、台下! 此度は、神々が御自ら行われた授福でございます。ですから、何一つ髪の毛一筋たりとも、神はご所望されておりません! はい、ここ、ポイントでございます」

「え? てことは、ただ?」

「はいぃ、で、ございますぅ! 台下!」

 エフィさんがイヌ科の狡賢さで有名な獣みたいに目を細める。いいかげん、その台下ってのやめてほしい。

「え? じゃあ、いいことだらけじゃないですか?」

 そうなんだ。それなら、すごくいいじゃないか!

 僕はてっきり、なんか神官さんみたいな義務が生じるんじゃないかと思い込んでた。

 それで、修道院生活みたいなことしなくちゃならなくなるんじゃないかと……。

「ちなみに、その祝福がどういう影響を及ぼすかというと……。シムナ! ヴィオレッタを鑑定してあげて! ヴィオレッタ、良くて?」

 有無を言わせないといった感じで、リュドミラがシムナさんに人物鑑定を依頼する。

「え? ええ、かまいませんけど?」

 事後承諾に怒るでもなく、ヴィオレッタお嬢様は頷いた。

「了解っ! ヴィオレッタを鑑定っと、ほああああっ! こりゃ……、すっごぉい!」

 マスターシムナが目を剥いた。

 リュドミラがヴィオレッタお嬢様を鑑定させたのは、きっと、お嬢様方が、一番ヤバ気なモノが出て来そうに無かったからだろう。

 それでも、マスターシムナが目を丸くしながら、手元の紙にヴィオレッタお嬢様のステータスを書き出してゆく。

 それを、リュドミラに渡して天井を見上げ、ため息をついた。

「長年冒険者をやってるけど、ナイフ以外、何の装備もしていない普段着で、こんなステータスなんて初めて観たわ、……って、うわああああっ! あたしもか! すげええっ!」

 マスターシムナが自分のステータスを見てひっくり返った。

 メモを受け取ったリュドミラもため息をつく。

「どっかのダンジョンの階層ボス級のステータスね」

「へえ、どれどれ……。うわ、なんだこれ? ちょっとレベル上がったら、B級あたりの冒険者じゃ歯が立たなくなるぞ」

 ルーデルとリュドミラが天を仰ぐ。

 僕も見せてもらおうと思ったけれど、基準がわからないから、どんなすごい数字が並んでいてもわからないだろう。

 僕に鑑定能力があれば、少しは違うかもしれないけれど。鑑定眼はレアなスキルらしいからね。

 でもあったら便利だろうな。ほら、食材採取とかに行って、毒草とか毒キノコとか判ったら便利だよね。

 まあ、僕は、イフェ様が『絶対健康』を約束してくれているから、どんな毒も大丈夫だと思うけど。

 みんなに振舞う料理の中に、毒キノコとか混じったらよくないからさ。

 いいなぁ鑑定! してみたいなあ。

「ん? ……あれ?」

 僕の異変に真っ先に気がついたのは、ヴィオレッタお嬢様とサラお嬢様だった。

「どうしました? ハジメさん」

「ハジメ?」

 なんか、目の前に解像度が合ってないピンボケ状態で、いくつもモニターが起ち上がったみたいに見える。この光景は見たことがあるぞ。イフェ様と契約したときみたいだ。

 いくつか起ち上がったピンボケモニターのうちのひとつを注視してみる。すると、それがはっきりと見えるようになった。

 そこにはこんなことが表示されたいたのだった。

 

 名 前:ハジメ・フジタ

 異 常:無し

 性 別:男 

 年 齢:25歳  

 種 族:人間  

 職 業:無職

 レベル:1

 HP :25/25

 MP :20/20

 攻撃力:45

 防御力:∞

  力 :30

 体 力:25

 魔 力:∞

 器用さ:22

 素早さ:31

  運 :∞

 スキル:絶対健康 常時全回復 鑑定(限定解除)鑑定妨害(状況:虚偽情報表示)

 耐 性:病(無効)毒(無効)眠り(無効)麻痺(無効)混乱(中)恐怖(小)ショック(大)

     火属性攻撃(無効)水属性攻撃(無効)風属性攻撃(無効)土属性攻撃(無効)

     電属性攻撃(無効)

     光属性攻撃(無効)闇属性攻撃(無効)即死性攻撃(無効)

     火魔法攻撃(無効)水魔法攻撃(無効)風魔法攻撃(無効)土魔法攻撃(無効)

     光魔法攻撃(無効)闇魔法攻撃(無効)

 その他:女神イフェの祝福、女神ルーティエの祝福 

 

 って、書いてあった。

 

 これって、不死身ってこと?

 いや、それ以前に、これ、ひょっとして鑑定眼? 鑑定眼なのか?

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