転生グルマン!異世界食材を食い尽くせ   作:茅野平兵朗

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第44話 実は僕がかなりの重量物を担いで走れる件について

 作戦はすんなり決まった。

 まず、これまでのように、洞窟の開口部をサラお嬢様の魔法で全て塞ぐ。

 ルーデルとリュドミラ、そして僕の救出班が、拠点洞窟に潜入、最奥部に囚われている女性たちを救出して脱出。

 救出班の脱出を確認して、エフィさんヴィオレッタお嬢様、サラお嬢様からなる地上班が、救出した女性たちの救護、サラお嬢様の魔法で拠点内のゴブリンを殲滅する。

 と、いう二段階の作戦だ。

 なぜ、めっちゃ低戦闘力の僕が、突入班に組み込まれたのかというと。

「そりゃ、お前が元荷役奴隷で、力持ちだからさぁ!」

 と、にべなくルーデルが言った。

「ハジメなら、女の二三人は担いで走れると思うのだけれど。買いかぶりすぎだったかしら」

 たしかに、荷役奴隷として、キャラバンではかなり重たい……総重量100キロくらい……は日々担いで歩いていたと思う。

 でも、生きている人間となると話は違ってくる。

「それって、捕まってる女の人が怪我してて歩けないってこと?」

 僕の疑問にリュドミラが答える。

「最悪を想定してのことよ。わたしが見てきた限りでは、怪我をしている様子はなかったけれど、連れて来る間に、ゴブリンの追撃に遭って怪我をするかもしれないわ」

 なるほど、と、すれば、僕が三人くらい担いで走ることができれば、ルーデルとリュドミラは、追撃してきたゴブリンへの対応に集中できるってことになる。

 つまり、生還確率が上がるってことだ。

「ヴィオレッタお嬢様、サラお嬢様、エフィさん、ちょっと協力してください

 ぱっと見た目一番重そうなエフィさんを肩に担ぐ。

「しっかりつかまってて下さいね」

「え、え、え、ええッ? だ、だ、だ、台下!?」

 そして、サラお嬢様とヴィオレッタお嬢様を小脇に抱える。

「は、ハジメえッ!」

「ハジメさん!」

 不意に抱えられてびっくりしたお嬢様方は手足をばたつかせる。

「ちょ、ちょ、暴れないでください……。いいですか、ちょっと走りますね」

 おとなしく、僕に抱えられてくださったお嬢様方に、次の行動を予告して、僕は右足を踏ん張る。

「ふんッ!」

 左足を踏み出して、できうる限りすばやく右足を引いて踏み出す。

 左腕に抱えたサラお嬢様が小柄なせいで、バランスがうまく取れないけれど、何とか走れそうだ。

「ふんッ! ふんッ! ふんッ! ふんッ! ふんッ! ふんッ!」

 そうして、三十メートルばかり走ってゆっくりと止まる。急に止まると慣性の法則が働いて、抱えているみんなを放り出してしまうからだ。

「これくらいのスピードなら、なんとか三人抱えて走れそうだね!」

 まあ、片方がサラお嬢様だったから、成人女性を抱えるとなるともう少しスピードが落ちると思うけど。

「おお、上出来だ! それくらいで走れれば、なんとかなんだろ! なあ、リューダ」

「そうね、もう一人担げれば完璧だと思うのだけれど」

 僕は即答する。

「一人を背負子に腰掛けさせて縛り付け、一人を肩に担ぎ、もう二人を両脇に抱えることも可能だと思う。抱える二人の方は、たすきがけができるベルトみたいなのがあれば、それで、もっと楽に運べる」

「たすきって?」

 リュドミラが首をかしげた。

 ああ、そうか、たすきはこっちの文化には無いものか。

「ええっと、肩から斜めにかけるベルト状の……」

「こいつでどうだ? 予備の手綱だ」

 ルーデルが皮製の手綱を腰の雑嚢から取り出した。ルーデルの雑嚢もマジックバッグになっているらしい。

「ロープなら非才が持ち合わせておりました」

 背負子は……僕が持っていた。さすが、元荷役奴隷だ。自画自賛しちゃおう。

 腰の雑嚢型マジックバッグから背負子を取り出す。

 しかし、いつみても、このマジックバッグへの出し入れは、あの国民的アニメの耳無し猫型ロボットの腹にある何とかポケットみたいだ。

「じゃあ、わたしとサラは、先に行って、ちょっと穴埋めをしているわ。空気穴みたいなのも合わせて、二ヵ所だから、あなたたちが追いつくまでに終わっていると思うのだけれど……。サラ、お願いね」

「りょーかい! がんばるっ!」

 リュドミラに連れられて、サラお嬢様は張り切って、先行していった。

 さて、僕はマジックバッグから取り出した背負子を背負い、再びヴィオレッタお嬢様にお願いする。

「ヴィオレッタお嬢様ちょっとご協力願います」

「ええ、ハジメ」

 ヴィオレッタお嬢様に脇に立ってもらい、ルーデルから受け取った手綱を肩に掛けてお嬢様の外側の腋の下を通して結ぶ。

「じゃあ、お嬢様ちょっとしゃがんでいただけますか?」

「ええ、ハジメさん」

 ヴィオレッタお嬢様にしゃがんでもらい、僕もしゃがむ。お嬢様の腋の下を通した皮ベルトを腰の辺りに下げて立ち上がる。

「ひっ!」

「ちょっと、痛いと思いますけど、少しだけ、我慢してくださいね」

 そういって、僕はお嬢様のウェストを抱え込んだ。

「うん、腕だけで抱えるより全然楽だ」

 もう一本同じ皮ベルトを作って、反対側の肩に掛ける。

「はい、ハジメさん」

 エフィさんからロープを受け取り、肩にたすきがけにする。

「たぶんこれで準備完了!」

 これで、僕は、完全に荷運び専従になった。いわゆるポーターってヤツだな。

「うしッ! じゃあ、あたいたちも出発しようか! っと、ハジメ、これ貸してやる」

 ルーデルがマジックバッグから大きな盾を出した。

「虜囚を背負わずにすんだら、お前の役目は盾だ。追撃隊が追いついてきたら、まずお前がこの盾を地面に突き立てて、第一撃を受ける。この盾ならよっぽどのヘマでもしなけりゃ、成体のドラゴンの爪さえ通さないから大丈夫だ。攻撃受けて、ふっ飛ぶかどうかは、装備してるヤツのレベルとか体力とか次第だけどな。そして、お前が攻撃を受けたところであたいとリューダが、敵をやっつける。やっつけたら、逃げる。それを繰り返す」

 うわ、すっげーおっかない役目だ。

「頼りにしてるぜ、ハジメ」

 今度はルーデルが獰猛そうな笑顔でウィンクしてきた。

 

 僕は、不覚にもその表情が可愛いと思ってしまったのだった。




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