転生グルマン!異世界食材を食い尽くせ   作:茅野平兵朗

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第85話 女神様方の再々再降臨は戦隊の登場シーンのごとく也

「「「いただきまーす!」」」

 

 明るく元気な愛らしい歓声が夕暮れのゼーゼマン邸の裏庭に響き渡る。

 思い思いの料理を手にした少女たちが、満面の笑顔で(彼女たち曰く)ごちそうを頬張っていた。

 

「はふうっ! おいひいぃ!」

「んはあぁっ! こんなごちそうお祭りのときでも食べたことないよ!」

「ああぁっ! しやわせぇ!」

「はううぅ、このパンがまた食べられるなんて」

「おいしいねぇ! おいしいねぇっ!」

「この、麺もおいしいよう」

「わたし、夢を見てるのかなぁ」

「夢がこんなにおいしいわけないじゃん!」

 

 僕らがゴブリンの巣穴から助け出した女の子たちは、夢中でごちそう(あくまで彼女たちの主観でだ)を咀嚼し飲み込みお腹をふくらませていく。

 そんな女の子たちの食べっぷりに、僕の視界はちょっとだけ滲む。

 

「ハジメさん……」

 

 いつの間にかヴィオレッタお嬢様が僕の傍にいた。その両手はエールを満たしたゴブレットを持っている。

 焼き奉行はサラお嬢様が交代しているようだ。

 

「え? あ……、ありがとうございます、ヴィオレッタおじょ……」

 

 涙を指で拭い、ゴブレットを受け取ろうと差し出した手が空振りをする。

 ヴィオレッタお嬢様がゴブレットを引っ込めたのだ。

 その目が抗議しているように少し吊り上って、頬が膨らんでいる。

 

「あ! えーっと……ゴホン……、ありがとうヴィオレ」

 

 咳払いをして言いなおす。

 

「はい、ハジメさん」

 

 にっこりと微笑んで、ヴィオレッタお嬢様がゴブレットを差し出す。

 僕はようやくエールを受け取ることができたのだった。

 ぐるりと裏庭を見回す。

 ヴィオレッタお嬢様、サラお嬢様、ルーデル、リュドミラ、エフィさん、オドノ社長にゲリさん。

 皆がエールを満たした杯を掲げ微笑んでいる。ちなみにサラお嬢様はこちらの世界ではエールやワインは飲んでもいい年齢に達しているのでセーフだ。

 僕は一人ひとりの瞳を見て会釈して杯を掲げる。

 そして、杯を持った手を高く突きあげた。

 みんなも無言で微笑み、杯を天にかざす。

 無言なのは大声を出して、『ごちそう』を楽しんでいる女の子たちを驚かさないようにだ。

 

 乾杯っ!

 

 心の中で叫んでエールを食道に注ぎ込む。

 

「うふふふ、盛況ですねっ! ハジメさん」

「やあやあ、、これはまた旨そうなのを作ってくれたね。ハジメ」

「うむ、祠の扉越しに、楽しげな喧騒が漏れ聞こえ、妙なる匂いが漂ってきおったのじゃ。ハジメ、妾は『あいすくりん』を所望じゃ」

 

 ぶふぉっ!

 

 盛大に咽てエールを吹き出す。

 

「きちゃった」「やあ、またご相伴にあずかたせてもらうよ」「あいすくりん」

 

 振り返ればそこに、生命の女神イフェ、大地母神ルーティエ、冥界の主宰神ミリュヘの三柱の女神様方がホクホクとした笑顔で佇んでおられたのだった。

 

「おおっ! なんと、なんと! あの絶望的な状況でも心挫けなかった乙女たちを祝福に、生命の女神、大地母神、冥界の主宰神の使徒さま方がおいでくだされたんだね!」

 

 オドノ社長が杯を掲げて叫んだ。

 一心不乱に『ごちそう』を頬張っていた少女たちが僕の方を見て動きを止める。

 凍りついたといってもいいかもしれない。いや、もちろん恐怖なんかにではない驚愕にだ。

 その焦点は、僕を通り越した数メートル先に結ばれている。

 

「皆さんはじめまして。生命の女神の使徒イェフと申します」

「やあ、大地母神の使徒エーティルだ」

「冥界の主宰神の使徒ヘミリュである」

 

 微笑み会釈するお三方の背後で爆発するように見たこともない美しい花々が咲き乱れる。

 まるでなんとかレンジャーの登場シーンみたいだ。

 そして咲き乱れた花々が光の粒子となって消えてゆく。

 

「強い心をもった娘たち、そのお顔をよく見せてくださいな」

 生命の女神の使徒イェフ様』が花を撒き散らしながら微笑み、しずしずと進む。

 

「使徒さま!」

「使徒様!」

「使徒サマ!」

「使徒さまっ!」

 

 十八人の少女たちが、『使徒様』方に駆け寄る。

 

「ああ、よい子たち」「よくくじけなかったね」「褒めてつかわす」

 

『使徒様』方が少女たち一人ひとりを抱擁してその頬にくちづける。

 ヘミリュ様は少女たちよりも背が少しお小さいので、お姉ちゃんに甘えている幼女にしか見えないのは僕だけの秘密だ。

 

「こ、こ、こkdうぇrtyあああ……」

 

 エフィさんががくがくと震え、意味不明なことを口走る。

 

「かかかかっ! こりゃすごい、例えは悪いがこれは、これは祝福のバーゲンセールなんだね」

「ええっ?」

 

 オドノ社長の笑い声に、僕は慌てて【鑑定】を展開して、狼人の少女ダリルを観る。

 ダリルにはしっかりと『女神イフェの祝福(小)』『女神ルーティエの祝福(小)』『女神ミリュヘの祝福(小)』がついていた。

 他の子にもしっかりと三女神の祝福(小)がついている

 

「こ、こっ、ここっ、ここここっ、こんなことっ!」

 

 エフィさんは半泣きだ。

 ああ、まあそうだろう。

 宗教者にとって神様からの祝福なんて、何十年も一生懸命修行してようやく受けられるか受けられないかってくらいのものだろうから、こんな、ここにいたってだけの村娘や亜人デミたちがいともたやすく授けられているなんてこと臍噛みもんだろうからね。

 

「かはあああっ! 私の幸せは世界一いいいいいいいぃっ! こんな、こんな奇跡に何度も何度も立ち会えるなんてえええええええええええええええぇっ!」

 

 どっかのマンガの軍人キャラみたいに叫んで、エフィさんはその場にへたり込んで動かなくなった。

 

「エフィさん!」

 

 思わずいつも心の中で呼んでいる呼び方で呼びかけてしまう。

 近くにいたゲリさんとオドノ社長が駆け寄って、エフィさんを抱き起こし、生命兆候を看る。すなわち呼吸や脈なんかだ。

 医療ドラマなんかではバイタルって言葉が飛び交うけどいわゆるそれだ。

 ゲリさんが頷いて、オドノ社長が微笑む。

 エフィさんは感極まって失神しただけみたいだった。

 

「さあ、みなさんお食事の途中だったのでしょう」

「楽しんでおいで」

「うむ、さめないうちに食すがよいぞ」

 

「「「はーい!」」」

 

 祝福を授けられた少女たちが食事へと戻ってゆく。

 

「さて、ハジメくぅん」

 

 自称大地母神の使徒、エーティル様が、ねっとりとした視線を僕に巻きつける。

 

「なにやら、とても珍しいお酒を手に入れたようだねえ」

「なんだって? そりゃほんとかハジメ!」

 

 『使徒エーティル様』の暴露に音速を超えてルーデルが食いついてきた。

 ってか、食いついてきたのはルーデルだけじゃなかった。

 気絶しているエフィさん以外の全員が僕を取り囲んでいた。

 衝撃波で辺りが吹っ飛んでなかったのが不思議なくらいの速さだった。

 

「なんだよハジメ! あたいに内緒なんて!」

「青年! そ、それはどんな酒なんだね?」

「甘くてフルーティなのよ!」

「それはそれは、ソーマやネクタルもかくありなんという香気なのだわ」

「ハジメさん! わたし、それ、とても興味あります!」

「ちょ、ちょ、ハジメくん! なんか今、聞き捨てならないこと耳に挟んだんだけど!」

「そ、ソーマ? ネクタル!?」

 

 あ、あれ? いつの間にか人数増えてないか?

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