転生グルマン!異世界食材を食い尽くせ   作:茅野平兵朗

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第6話 契約くんは指先を切って血を滴らせるのが好きだな。サドなのか? 変態め

 壇上で、お嬢様方の寝巻きのようなワンピースを、引き裂こうとしている連中に向かって。

「そんなのはいい、競りを始めろ!」

 と、怒鳴り声を上げたやつがいた。

「王都ネコチェルン一家の若頭だ」

「なんで?」

「こんな辺境に、ネコチェルンが何の用があるってんだ?」

 嵐のような異様な盛り上がりは一瞬にして凪いでしまった。

「で、では、はじめます。破産交易商人の娘姉妹。 五千から」

「一万!」

 ネコチェルンの若頭と呼ばれた男の声が、いきなりの高額をコールする。

 客席の前方で歓声が上がる。さっき、ゼーゼマン氏のところから洗いざらいもっていきやがった蝗どもだ。

 きっと、ゼーゼマン氏に貸し付けた金額に届いたのだろう。ひょっとしたら、利益が出てるかもしれないなあの喜び具合は。

「あの男、危険です」

 45番が囁く。

「だね」

 44番が同意する。

「お前たちよりもか?」

 俺はふたりに聞き返す。

 ふたりは俺の方を向いて、白い歯をむき出して鼻で笑う。

「「フン! まさか」」

 その笑顔は、シベリア虎が笑ったら、きっとこんな顔で笑うんだろうなと、思える笑顔だった。

「なら、それは、危険とは言わない」

 俺は手を上げる。

「一万五千!」

 辺りは、みすぼらしい旅装姿の俺がコールした破格な金額に驚き、そしてあざ笑う。俺なんかがそんな金を持ってる訳がないと思い込んでいるからだろう。

「一万六千!」

 ネコチェルンの若頭がレイズする。

 俺は負けられない、ゼーゼマン氏が姉妹を俺に託したのだ。報酬は先払いで貰った。高性能戦闘獣人の奴隷ふたりだ。

 だから俺も更にレイズする。

 

「二万!」

 

 ってこれ、日本円にしたら二億円だよ。ってか、もうそれ以上は殆ど出せないよ。

 向こうが更に吊り上げてきたらどうするんだよう。僕のあほーッ!

 

「二万ないか? 二万!」

 静寂が競売場の中を満たす。

 44番と45番は両手を胸の前で組んで何かに祈っている。

「では、二万でそこの旅姿方に! 手続きは一刻以内にお願いいたします。手続きがなされない場合は、次点の方の権利獲得となりますのでご注意ください。

 僕は、会場を出て用意しておいた幌付の馬車に乗り込む。

 荷台で金貨の麻袋をマジックバッグから出して床に並べ、44番と45番を見張りに立たせて、奴隷商の受付へと向かう。

 すぐに、壇上で競売を仕切っていた男が出てきて、馬車に乗り込み、麻袋を確認する。

 そのときの奴隷商の顔といったら、まさに鳩が豆鉄砲を食らったような顔だった。

「で、では、登記証書をお渡しと隷属契約をいたしますのでこちらへ」

 奴隷商の使用人たちが、金貨が入った麻袋を馬車から奴隷商の店舗内に運ぶ。

「金貨をたしかめさせていただきます。しばらくこちらでお待ちを」

 応接室に通され、紅茶を出されて待つこと数十分。

「お待たせいたしました。金貨は全て真正で数もぴったりでございました。金貨二万枚確かに。あと、取引税が10パーセントかかるのですが……」

 え? ってことは全部で二万二千枚必要ってこと? やばいよやばいよ! マジックバッグに入っていた金貨はもう四百枚しかないよ。

 

 いざって時は、45番が言っていたように強奪だな。俺は即座にハラを決める。

 

「さあ、来なさい、おまえたちのご主人様に引き合わせよう」

 奴隷商がお嬢様方を応接室に招き入れる。僕は、ようやくヴィオレッタお嬢様とサラお嬢様に再会することができたのだった。

「あい……ハジメ!」

「ハジメ、ハジメッ!」

 サラお嬢様が体当たりするように俺に抱きついてくる。下腹部に頭をグリグリと押し付けて喜びを表現してくる。

「では、旅のお方、このふたりの奴隷の所有権は、ただいまから貴方様のものとなります。本証書に記名、血判され、二人の隷属の首輪にその血を滴らせることで、本契約が成立となります」

「すぐに解放するんで、隷属契約はしなくてもいいかと……」

 僕は奴隷商人に聞いてみる。

 商人は目を見開いて驚き、そして呆れる。

「なんてもったいないことを。お客様はこのふたりの対価として二万枚もの金貨をお支払いになったのですよ。それをすぐ解放だなんて……。まあ、お買い上げから先はお客様の自由ですから、わたくしどもが口を挟むことではございません……が」

 ため息混じりだった。

「ですが、一度は所有していただかないといけません。現在、この二人は当商会の仮所有になっておりますので、一時的にでも隷属契約していただかないことには、解放も何もございません」

 そういうことなら仕方がない。

「あ…ハジメ様、わたくしを貴方のものにしてください」

「ハジメ様、わたしもハジメ様のものになりたいです」

「お嬢様……」

 お嬢様方のダメ押しに、揺らいでいた気持ちがひとつの方向に定まった。

 僕は左手人差し指の先端を小刀で切る。

 滴る血で二枚の書類に名前を書いて血判を押す。よかった、こっちの文字読める。助かった。書類にはお嬢様方の名前と生年月日、血統などの個人情報と、奴隷の所有者が僕であることが記されていた。

「では、この宣誓呪文を読み上げてください」

 奴隷商がなにやら書き付けてある紙を僕の前に広げる。

「太陽と月の神にかけて、ここに隷属の印を施す。死が主従を分かつか、契約が廃されるまで、本契約により、汎用奴隷ヴィオレッタ・アーデルハイド・ゼーゼマンは旅人ハジメに隷属するものとする」

 ヴィオレッタお嬢様に着けられた首輪に指先から血をたらす。首輪が青く光り、ヴィオレッタお嬢様の全身にバチバチと稲妻が迸ったのだった。




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