転生グルマン!異世界食材を食い尽くせ   作:茅野平兵朗

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第94話 ゼーゼマン邸の土地が正式にヴィオレッタ様の所有になったこと

「はい、真正の大金貨27枚、金貨2700枚分確かにいただきました」

 

 商人ギルドの最上階(といっても、三階建てだけど)の商人ギルドヴェルモン支部長室で、僕とヴィオレッタお嬢様、サラお嬢様は土地売買契約を終わらせた。

 元ゴブリンプリンセスのダークエルフが三女神様方から祝福され、新たなエルフの氏族の始祖となった日から三日が経っていた。

 ダークエルフとなった元ゴブリンプリンセスは養い親に立候補した冒険者ギルドヴェルモン支部のギルドマスターシムナのもとに引き取られ、ゴブリンの巣から助け出した少女たちのうち行く当てのない18人は、未だ落ち着き先が決まらず、ゼーゼマン邸で雑用をしながら起居していた。

 

「おめでとうございます! ハジメさん、これで、あの土地はあなたのものです。しかし、おどろきました。どうにかするだろうとは思ってましたけど、まさか、たった三日で金貨2700枚もの大金を作るとは。いやはや驚嘆に値します」

 

 僕はシャイロックから土地の権利書を受け取りながら答える。

 

「ええ、冒険者になった翌日にたまたまゴブリンの巣を一個つぶすことができて、翌日に大規模ゴブリンパレードが発生しそうになってたのを防ぐことができた結果です」

 

 本当は、それだけじゃ足りなかった。時間的余裕ありに分類された依頼申込書のクエストをまだ片付けてないから、金貨二千枚はまだ冒険者ギルドからもらっていない。

 実は、僕が持っていた二本のケニヒガブラの毒袋つき牙のうち、全く手をつけていない一本をオドノ商会に金貨一万五千枚で買ってもらってお金が用意できたのだった。

 燻煙麻酔薬『モルフェオの吐息』に使ったほうの牙は、固辞するエフィさんを押し切って彼女に進呈した。

 僕が持っているよりも遥かに有益に使ってくれるだろう。結果、きっと金貨一万枚以上の価値をもたらしてくれるに違いない。

 

「ああ、こないだはえらいさわぎでしいたね。この街周辺の村々からゴブリンに娘さんを攫われた人たちが、一族郎党引き連れてやって来て、あちこちで大宴会してましたからねぇ」

 

 シャイロックが肩をすくめた。

 

「ああ、そうだシャイロックさん、これの名義変更ってどこでやればいいんですかね」

 

「ハジメさん!」

 

「ハジメ!」

 

 ヴィオレッタ様とサラ様が僕を咎めるように叫ぶ。

 だけれども僕は、それに怯まず、シャイロックを見つめる。

 数瞬、尋ねた僕をシャイロックが呆けた顔で見つめてから慌てて手を胸に当てる。

 

「それなら今ここでできますが……」

 

「では、これの名義をヴィオレッタ・ゼーゼマン様に変えてください」

 

「だめだめ! だめですハジメさん! あなたは、わたしたちにどれだけ背負わせればいいんですか!」

 

「だめだよハジメ! その権利書はハジメの命と等価だよ! そんな価値のもの、わたしたちもらえないよ!」

 

 僕は、サラお嬢様の頭をなでながら視線をサラお嬢様の高さに下げる。

 

「サラ、この権利書を買ったお金はアイン・ヴィステフェルトさんが文字通り命と引き換えに得たものです」

 

「そうだよ、わたしとお姉ちゃんを助けるために……」

 

 サラお嬢様が目に涙をいっぱいにためる。ヴィオレッタお嬢様も鼻を真っ赤にして涙を流している。

 

「だから、彼の想いを遂げるために使うんです。彼は、お嬢様方を助けることができて満足してミリュヘ様の下へと旅立ったんです。これは冥界の主宰神ミリュヘの使徒ヘミリュ・セルピナ様から聞いたことですから本当のことです。ですから、ぼくなんかが勝手にしていいお金じゃないんです。お嬢様たちをお助けするためにこそ使うべきお金なんです」

 

「でもハジメ!」

 

「でもです! ハジメさん!」

 

 僕は人差し指をお嬢様方の唇に当てた。

 

「では、ハジメさん。名義変更は……」

 

「ええ、ヴィオレッタ・ゼーゼマン様にしてください」

 

 僕はシャイロックに向き直り答えた。

 

「本当にあなたはお人よしだ。頭に馬鹿がつくくらいの……ね」

 

 そうつぶやいたシャイロックのことを僕はあえて無視した。

 

 

 

 

「じゃあ、親方、そういうことでお願いします」

 

「おう任せときな!」

 

 商人ギルドからの帰り、僕は製麺所に立ち寄った。

 製麺所の親方にあるものを渡し、それを使って麺の生地を打ってもらう依頼をしたのだった。

 ヴィオレッタお嬢様とサラお嬢様には、商人ギルドから出たところで辻馬車を拾って、お屋敷に先に帰ってもらった。

 

「しかし、こんな物を混ぜて作る麺の依頼は初めてだぜ」

 

 親方は健康そうな白い歯を見せて笑った。

 

「本当に麺の形にしなくていいのか?」

 

 親方が大きな押し出し製麺機を指差す。

 練った生地をつめて押し出してスパゲッティを製造するヤツだ。

 元の世界では、断面が丸いパスタを作るでかい注射器みたいな押し出し製麺機が通販とかで売っていたっけ。

 

「ええ、生地を普通の麺の太さくらいの厚さに伸ばして畳んでくれれば大丈夫です。そこからは僕が麺の形に切っていきますから」

 

「なんだ、切り麺か。どれくらいの太さがいいんだ? 切っといてやるぜ」

 

 え? スパゲッティ以外も作れるのか?

 

「できるんですか?」

 

「おう、ウチは断面が丸いヤツだけじゃなくて四角いヤツに筒になってるヤツや、平たいヤツも作ってるからな」

 

 なんと、スパゲッティだけじゃなくてマカロニやフィットチーネも作ってるのか。

 

「じゃ、じゃあ、是非お願いします! 断面が真四角になるような感じで、これくらいの太さに!」

 

 僕は地面に二ミリ角の断面図を書いて一本あたりの長さを約10インチ(約25センチ)くらいに指示する。だいたいスパゲティとかのロングパスタのサイズだ。

 箸で食べるなら40センチくらいの長さがいいんだけれど、フォークで食べるとなるとこれくらいが適当な長さだ。

 これより長いとフォークで巻き取りきれない。

 アメリカのカ○プヌードルの麺の長さが日本で売ってるのよりも短いのと同じだ。

 そして一人前を5オンス(約140グラム)ぐらいで100個お願いした。

 

「まかせろ! 明日の昼過ぎまででいいんだな?」

 

「ええ、僕が取りにきますから! これは前金です。残り半分は明日取りに来たときに」

 

 僕は金貨一枚を取り出し親方に手渡す。

 

「前金? おいおい、こりゃもらいすぎだ。これだけで5オンスの玉、120個分にもなるぞ」

 

「初めてのものをお願いするので、面倒代です。今回はこの金額でで100個お願いします。さっきお渡しした材料が100個分くらいですから」

 

「わかった。その口ぶりだと俺の仕事次第で次があるってことだな」

 

「はい」

 

「うしっ! きっちり指示書通りのもん作っといてやる!」

 

「はいっ! お願いします!」

 

 製麺所を後にした僕は、これから取り組む料理のまだ揃っていない分の材料を集めに、市場へと向かった。




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