高橋「―――――というわけで、Aクラスはリムジンバスで合宿先に向かうので当日は9:00までに学園に集まるようにしてください。今日のHRは以上です」
朝の脅迫状の件で色々あったけれどもう帰りのHRの時間、今日は合宿についての説明だった。今回の合宿先は卯月高原という少し洒落た避暑地で、Aクラスにはリムジンバスが用意されるようだ。相変わらず学園はこのクラスにお金をかけすぎだと思う
『『『案内すらないのかよ!!!』』』
「「「!?」」」
HRが終わったタイミングで突然、何処からか怒号のような悲鳴のような声が響いてきた。いや、HR中にあんな大声を出すクラスは一つしかないか
優子「何だったのかしらさっきの怒号は」
美穂「びっくりしましたね」
HRが終わってすぐに美穂さん達が僕の席に集まってきた
明久「多分Fクラスだと思うよ」
久保「声の内容から察するとFクラスの移動手段が酷いものだったんだろうね」
翔子「・・・現地集合」
明久「それで案内すらないってことか。翔子さんは知ってたんだ」
翔子「一応代表だから、事前に情報が渡されてた」
明久「なるほど」
それなら納得だ。でも翔子さんのことだから情報をもらわなくても自分で調べ上げそうだよね
美穂「明久さん、今日はもうすることもないですし帰りませんか?」
明久「そうだね、今日はもう帰ろうか」
優子「アタシらはもう少し話してくわ。またね、明久君、美穂」
優子さん達は残るとのことなので僕は美穂さんと二人で帰ることにした
帰り道
美穂「合宿までもうすぐですね。今日の説明でまたワクワクしてきました」
明久「そうだねー、僕も懸念事項がなければもう少し楽しむ気分になれるんだけど・・・」
美穂「あ、ごめんなさい・・・」
美穂さんが落ち込んでしまう。脅迫状の件を思い出してしまったと思ったのだろう
明久「美穂さんは悪くないよ。取り敢えず学園側に話は通してあるけど、今のところ僕らは後手に回ることしか出来ないのが辛いな」
美穂「合宿中に解決できればいいんですけどね。どうすればいいんでしょうか」
明久「こんなことで美穂さんが悩む必要はないよ。これは僕の問題なんだし、心配しないで」
美穂「心配しますよ!明久さんは私の彼氏なんです、何かあったら嫌ですし明久さんの役に立ちたいんです。1人で抱え込まないで私を頼ってください!何も出来ないで見ているだけは辛いんです・・・」
みるみる萎んで俯いてしまった。どうしたものかと思ったけど考えるよりも先に僕は美穂さんの頭を撫でていた
美穂「ふぇ?///」
明久「ゴメンね美穂さん、まだ癖が抜けてないみたいだ、これからはちゃんと頼るようにする。約束するよ」
美穂「・・・ホントに約束ですからね?」
明久「もちろん。さ、美穂さん家もすぐそこだよ」
美穂「あっ」
付き合い始めてから一緒に帰るときは美穂さんを家まで送るのが日常になっていた。女の子1人は危ないってのもあるけど少しでも長く一緒にいたいというのが1番の理由だ
美穂「・・・もう少しお話ししたかったですけど仕方ないですね。明久さんいつもありがとうございます」
明久「僕がしたくてしてることだし気にしないで。それじゃ美穂さんまた明日」
美穂「はい、また明日」
いつも通りの挨拶を交わして別れる。寂しいけど言い出したらお互い止まりどころを見失ってしまう。仕方ないんだ
明久「さて、今日の夕飯は何にしようかな」
脅迫状の件は事が動かないと何も出来ない。今は考えるだけ無駄だと一先ず忘れて夕飯のメニューを考えながら僕は帰路についた
合宿当日。学園に集まったAクラスはリムジンバスに乗って目的地に向かって出発。席は自由だったので僕・美穂さん・優子さん・翔子さん・愛子さん・久保くんといつものメンバーが固まることになった
美穂「いい天気ですね~、景色がすごく綺麗です」
翔子「いい眺め」
久保「・・・」パシャリ
優子「あら、久保くんカメラなんか持ってきてたの?」
久保「せっかくの旅行だからね。思い出は残しておきたいじゃないか」
明久「だね。久保くん、いい写真撮れたら僕にも譲ってくれないかな?」
久保「もちろん。みんなも欲しいものがあったら言ってくれ」
最近になって知ったんだけど久保くんは写真を撮るのが趣味だったらしく、以前見せてもらったものはどれも素人とは思えない出来だった。形に残したいけど絵は描けない、じゃあ写真で。というのが始まりだったらしい
愛子「・・・・・・」
優子「愛子、さっきから黙りこくってるけど何読んでるの、それ?」
いつもなら率先して騒ぎそうな愛子さんが静かだったのは僕も気になってた。優子さんも同じだったみたいだ
愛子「ンー?あぁ、心理テストの本だよ。100均のだけど結構面白いよ~」
心理テストか。やってみると意外と面白いよね、あれ
明久「僕もやってみたいかな。混ぜてよ」
愛子「ん、いいよアッキー♪じゃあ早速、『次の色で連想する異性を答えてください。緑・オレンジ・青』だって♪」
緑・オレンジ・青か。んー、ぱっと思いつくのは――――
明久「緑は翔子さんと優子さん、オレンジは愛子さん、青は美穂さんかな」
愛子「ほほー、ボクがオレンジとは嬉しいねー♪他もまあ予想通りだね」
優子「何々、緑は友達、オレンジは元気の源、青は――――あぁなるほど」ニヤニヤ
愛子「ね?」ニヤニヤ
「「?」」
優子さんも愛子さんもなんでニヤニヤしてるんだ。教えてほしいけど見てる限り口を割ってくれるとは思えない。美穂さんも気になってるみたいだけどこれは諦めるしかないか
優子「愛子がオレンジなのも納得ね」
翔子「愛子はいつも元気だから」
愛子「嬉しいこと言ってくれるね~♪あ、せっかくだし次の問題みんなもやろうよ。久保くんも入るんだよ?」
久保「僕もかい?まぁ構わないけれど」
急遽みんなでやることになった。これだけの人数でやるのも珍しいんじゃないだろうか
愛子「それじゃ早速、『1から10の数字で、今あなたが思い浮かべた数字を順番に2つあげて下さい』だってさ」
みんな少し考えてから
翔子「5と6」
優子「2と7ね」
久保「8と10だよ」
明久「1と4かな」
美穂「3と9ですね」
なるほど、みんなバラけたな
愛子「何々、『最初に思い浮かべた数字はいつもまわりに見せているあなたの顔を表します』だってさ。えーと――――」
翔子――――クールでしっかり者
優子――――真面目で勝ち気
久保――――冷静な常識人
明久――――寡黙でミステリアス
美穂――――控え目で慎重
という感じだった。第一印象はまあみんなそう思うだろうという具合だ。結構当たるんじゃないかこれ
翔子「好印象?」
優子「アタシそんな勝ち気かしら?」
久保「常識人枠か」
明久「ミステリアス・・・そう見えてるのかな」
美穂「控え目で慎重、いいような悪いような」
翔子さんのそれは好印象だよ。優子さんは間違いなく勝ち気だし久保くんもこのメンバーではまず常識人だろう。美穂さんはそれが魅力なんだから悩む必要はない
愛子「続きいくよ~。『次に思い浮かべた数字はあなたがあまり見せない本当の顔』だってさ。それぞれ――――」
翔子――――マイペースな人
優子――――やる気のない人
久保――――少しズレた人
明久――――優しさ溢れる人
美穂――――大胆な人
といった結果だ。美穂さんと翔子さんは納得といったところ。優子さんと久保くんはちょっと意外だな。二人とも結構真面目なタイプと思ってたけど
翔子「優子はやる気がない?」
優子「(何気に当たってるし)」
久保「ふむ、僕のどこら辺がズレているのだろうか・・・」
明久「美穂さんは確かに時々大胆になるよね」
美穂「明久さんも優しいですよ♪」
愛子「おっと、惚気ける前にストップだよ二人とも(笑)」
愛子さんにストップをかけられた。別に惚気けるとかそんなんじゃないのにな・・・
明久「別にそんなんじゃ・・・ん?いつの間にか昼過ぎてるや」
優子「あー、そう言われたら何だかお腹空いてきたわ」
美穂「そろそろお昼にしましょうか」
翔子「・・・明久、ちゃんと持ってきた?」
明久「うん、持ってきてるよ」
「「「???」」」
久保くんと優子さん、愛子さんは首を傾げている。そう言えば三人は知らないんだった
明久「翔子さんに頼まれてお昼の弁当を作ってきたんだよ。沢山あるからみんなも良かったらどう?」
事の発端は美穂さんとの勉強会。あの日以来僕たちは互いの弁当を交換するようになったんだけど、美穂さんが僕の弁当を褒めちぎっているのが翔子さんの耳に入って自分も食べてみたいということになったのだ
愛子「アッキーのお弁当かー、おいしいのは聞いてたけどまさか食べれるとはねー」
久保「吉井君の手作りか、どれ程なのか興味があるよ」
明久「そんな大したものじゃないけどね。どうぞ」
今日作ってきたのはクラブハウスサンド。バスの中でみんなでつつくなら変に凝ったものよりシンプルな方がいいと考えた結果だ
愛子「おぉー!」
久保「なんだかすごく食欲をそそられるわね」
翔子「・・・・・・(モグモグ)」
優子「あ!ちゃっかり食べだしてるし・・・」
明久「さ、みんなもどうぞ」
「「「「・・・(モグモグ)」」」」
優子「これは・・・!?」
愛子「おいし~!」
久保「シャキシャキのレタスにみずみずしいトマト、肉もジューシー、これはいけるね!」
どうやらみんなの口に合ったみたいだ。よかったよかった
翔子「・・・(モグモグ)」←2つ目
美穂「だ、代表・・・(汗」
よほど気に入ってくれたのか翔子さんはもう2つ目を食べてる。自分の作った料理を美味しそうに食べてくれるとこっちも嬉しくなるな
美穂「いつもの事ですけど明久さんの料理は美味しいですね」
明久「そう?ありがとね」
愛子「ふーん、『いつもの事』ね。いいなぁ、羨ましいな~!」
美穂「うぇ!?えと、その・・・」アタフタ
「「「(かわいいなぁ・・・)」」」
明久「アハハ(汗。ささ、残りも食べちゃお」
翔子「・・・(モグモグ)」ひょい
優子「あ!アタシもまだ食べたいのに!」
ワイワイガヤガヤ・・・
昼食を終えた後はトランプをやったり談笑したりで盛り上がった。話題が出尽くした辺りで合宿先の旅館に到着したのでそこで女子組と解散、僕と久保君は自分たちに割り振られた部屋で早々に荷解きを済ませて寛いでいる
明久「学園の所有してる場所だからどんなものかと思ってたけど、結構いいところだね」
久保「元々あった旅館を学園が買い取って改装したらしいからね。もう少し違うところにお金を掛けてもいいんじゃないかと思うけどね」
全くもってその通りだと僕も思う。学園内にもっと充実させるべき場所があるだろうに
久保「にしても、やはり少し広いな、この部屋は」
明久「確かに。僕らだけで使うのはちょっとって感じだね」
4人5人となると手狭になるけど2人で使うには十分過ぎる広さだ。僕らにもう1人くらい仲のいい友達がいたら3人で丁度良かっただろう
明久「あ、そうだ久保君、提案があるんだけど」
久保「ん、何だい?」
明久「前々から言おうと思ってたんだけどさ、僕たち名前で呼び合わない?いつものメンバーで久保君だけ名前呼びじゃないのも何だかって感じでさ」
久保「確かにそうだね。うん、僕のことは利光で構わないよ明久君」
明久「うん。よろしく、利光君」
いつも一人だけ苗字で呼ぶものもどかしいと感じていたのでこの機会に解決出来て良かったな。これで少し利光君との距離が近づいt――――
久保「(あぁ!吉井君から名前で呼んでもらえるなんて!もし今日ここで死ぬことになっても後悔はないよ!)」キラキラ
うーん、何だか嫌な予感がするなぁ、なんてゆーか、悪寒がする。距離が近づきすぎた気m『バァン!!!』!?
「全員手を頭の後ろに組んで伏せなさい!」
勢いよくドアを開けて数人の女子が押し寄せてきた。顔には明確な怒りが浮かんでいる。訂正、如何やら悪い予感の正体はこっちだったみたいだ。やはりこの合宿、穏便に済ませることは出来ないみたいだ
明久、悪い予感はどっちもなんだ・・・
今回の心理テスト、問題は原作とは同じなんですけど二つ目のテストの答えは作者のオリジナルですので実際に試しても当たりませんのでご了承ください
見直ししてないんで誤字脱字あったらすみません