こんなレミリアを想像しただけの超短編です。
「はぁ...お茶が美味しいわぁ」
縁側でお茶を啜りながらこの時間を満喫している少女の口からついつい言葉が出てくる。
赤と白を基調とした巫女服を身につけている彼女は端から見れば巫女には見えず、お婆ちゃんがやるような貫禄?があった。
“博麗の巫女 ”
それが彼女の名であり、この幻想郷の平和を保つために活躍する要を担う重要人物である。
「おーい、霊夢!異変だぜ!」
その縁側での至福の一時に待ったを掛ける存在が一人。
紅白を基調とした霊夢とは逆に白と黒を基調とした、所謂典型的な魔法使いの衣装に身を包んだ少女だ。
“普通の魔法使い”
動かない巫女とは対照的に活発的な印象を与える彼女は霊夢に異変だから動けと急かしにきたのだ。
「何よ魔理沙。素敵なお賽銭箱はそこよ」
「そんなこと言ってる場合か!今明らかに異変だろ!?」
魔理沙が騒ぐのも無理はない。
天気予報があれば本日は雲一つない快晴であり、陽の光が辺りを照らしているはずだからだ。
しかし周りを見渡して見ても陽の光どころか空を紅い霧が覆い隠しており、不気味さを醸し出している。
誰が見ても明らかに異常である。
「そうは言っても陽が入らない以外に被害報告なんてないのよね...」
「いやいや、これは明らかにそうとは言ってられないだろ?」
「うーん...あ、そうだ。紫、居るんでしょ?」
「はいはーい。呼んだかしら?」
「この異変らしきものは解決した方がいいの?」
「それは当然よ。人的被害は無くとも立派な異変ですもの」
霊夢の呼び掛けに空間裂いて現れた女性がそう告げる。
彼女の名は
この幻想郷を創った張本人であり、平和を管理する隙間妖怪。そんな彼女も霊夢のやる気の無さに困惑しているようだ。
「うーん...なんかやる気が出ないわぁ...」
「おいおい霊夢。いつもなら嬉々として出るお前が一体どうしたんだ?」
「だってこの異変、特に悪意も感じないし、なんか裏がありそうなんだもの」
その言葉に紫がビクッとしたことに対して敢えて何も言わずにスルーを決め込む。
「そうだったとしてもお前がこれを無視するわけにもいかないだろ?洗濯物も乾きづらいし、色々と不便してるんだ。行こうぜ」
「あぁー…確かに洗濯物が乾かないのは困るわ。解決して、さっさとこの霧を消して貰いましょ。ところで紫。発生場所は“勿論”知っているわよね?」
「えぇ。発生元は紅魔館。吸血鬼が主を担う館よ」
「そう。じゃ、行くわよ魔理沙」
「やっとか。遅れんなよ霊夢!」
場所も聞いた霊夢達は空を飛んで目的地へと向かう。
「全く、霊夢は本当に鋭いんだから...後でどやされそうね」
それに続くように紫も隙間を開き、その場から姿を消した。
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「…で、なんで私達はお茶をしてるのかしら?」
「たかだか5分程度いいじゃないの。まだお昼を過ぎている訳でもない。霧も色々と弄ってて貴方の神社は勿論のこと、人里の各民家の洗濯物が乾くように霧に隙間を作っているから生乾きになる心配もない。ただ陽を隠せますよーっていうアピールだし、急ぐ必要はないわ」
生乾きって気持ち悪いわよね。と言いながら急須でいれたお茶を湯呑みで啜る目の前の少女は無害にしか見えない。本当にこの人物が現在進行形で異変を起こしている人物なのだろうか・・・
「生乾きにならないって...でも魔理沙が生乾きがつらいって言ってたわよ」
「その魔理沙って子は人里に住んでいないの?生憎だけど人里以外は知らないわ。流石にそこまで意識はいかないもの」
紅魔館の主は「御愁傷様」と言いながら立ち上がり、棚から茶菓子を出してくる。
一瞬毒でも盛られているのではないかと勘ぐったが、そんな考えはすぐに捨てた。
「フフッ。ちょっと作ってみたのよ。出来れば味の感想を聞かせて欲しいわ」
自分が食べて感想を言うことを楽しみにしているのか、メモまで取りだして待機していた。そんな姿を見ていると勘ぐった自分が馬鹿馬鹿しくなってくる。
「・・・おいしい。けど、私的にはもうちょっと甘さ控えめにしてくれた方が食べやすいわね」
「うーん。甘すぎちゃったか。砂糖入れすぎたかな・・・うん。ありがとう」
素直な感想をいうと嬉しそうに笑みを向けてくる。その姿は孫の姿を楽しみに見つめるお年寄りのようだ。
しかし自分がやってきた理由は異変の解決。相手が好意的とは言えども見ないふりをするわけにはいかない。
なのでさっさと本題を切り出すことにした。
「…ところでなんでこんなことしたの?」
「それはこの霧のこと?」
「そうよ。あんたから悪意も感じない。どころか私に会うのを楽しみにしているようだしでよくわからないのよね」
お茶を飲みながら答えると先ほどのやわらかい雰囲気にプラスして多少の威圧感が増したように感じた霊夢であるが、気にせずにお茶を口に運ぶ。
「そうねー…経緯なんかは詳しく言えないけど、強いて言うなら“下調べ”かしら」
「それだけ?」
「えぇ。今代の博麗の巫女がどんな存在なのか気になってね。実力を測るのも兼ねて今回の異変を起こしたの。この“紅霧異変”をな」
「…ッ!?」
身に着けている
ただ眼鏡を外しただけではない。先ほどのやわらかい雰囲気は消し飛んでおり、眼前にいるのは圧倒的な強者が出せる絶対的なオーラだった。
あまりの豹変ぶりに霊夢も驚愕し、瞬時に態勢を立て直した。
そして危険だと認識し直す。いつでも攻撃に対処できるように。
「心配するな。何もここで始めるつもりはない。建物に被害が行くからな。外に出ようか」
「・・・わかったわ」
紅魔の主に従って外に出る。
真っ赤に染まった空を背景に翼を広げて浮遊するその姿は吸血鬼に相応しい貫禄と威圧感を持っていた。
「さて、改めて自己紹介をするとしよう。我が名は レミリア・スカーレット。紅魔館の主にして、今異変の元凶。今代の実力、見せてもらおう」
「…まったく、厄介な奴に目をつけられたものね」
向かい合った両者は同時にスペルカードを放つ。
『紅色の幻想郷』
『霊符「夢想封印」』
互いのスペルがぶつかり合い、火花を散らす。
スペルカードを用いた最初の異変がここに始まった。