※ホープフル・チャント読んだ方向け。
ホープフル・チャントP91からの分岐。
あったかもしれない世界。
エイジがあの時動けていたなら―――という話。
ホープフル・チャント読んでない方は非推奨。



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自己満足でしかない蛇足。
こんな話だったらよかったのにと思っただけのこと。



Chant to the future

―――――守る!ユナは、僕が守る!!!

 

「ユナーーーーーーッ!!」

 

声を振り絞り、叫んで、ノーチラスは地面を蹴った。

単身であの数のモンスターに挑めば、攻略組のノーチラスとて無事では済まないだろう。最悪、死んでしまうかもしれない。

でも、それでユナを助けられる可能性があるなら。

最悪、僕は死んでもユナは生かせるのなら。

ノーチラスの、その覚悟と決意という名の『理性』(助けたい思い)は。

すんでのところで『本能』(死にたくない思い)に負けてしまう。

理性の言うことを(ユナを助けたいのに)体が聞いてくれない。本能に従って、(死にたくないから)立ち止まってしまう。

まるで、石化(デバフ)でも食らったかの如く、両足の、それに続いて全身の動きが止まった。三日前、迷宮区のフィールドボスと対峙したときと、同じ現象。

―――――動け!動け!!!動けッッ!!!

―――――僕は、死ぬのなんて怖くない!!ユナを守れないなら、生きていたって意味なんかない!!!

動かない口の代わりに心で叫び、必死に体を前進させようとする。だが、足はぴくりと動かない。

―――――くそ!くそ!!

理性が悪態をつくがそれでも本能は覆らない。

全身の感覚が薄れる。世界から色が褪せ、音が遠ざかる。

―――――ユナッ!!悠那ぁ!!!

そんな視界の中、密集する拷問吏たちの向こうから、色鮮やかなものが弧を描き飛んでくる。

――――――ユナの硝子瓶だ。ユナが、投げたのだ。

あの瓶が飛んできた方向にユナはいる。

――――――ユナからもらった飴玉は、現実でもこの世界でも、おいしかったな・・・。

このようなときに何故こんな場違いなことを考えられるのだろうか。

――――――もう一度、食べたい。

ユナを―――――

――――――もう一度、ユナから飴玉をもらって。

――――――助けなくてはいけない。

――――――ユナ、ユナ、ユナ、ユナ、ゆな、ゆな、ゆうな・・・・・・・。

頭の中で、今までユナともに過ごした日々がフラッシュバックしていく。

――――――優那!!

 

「う、おおおおおおおおおおおああああああああッッ!!!!!!」

 

動かなかった口を動かし、地面に貼りついたままだった足を引きはがし、走り出す。

向かう先は密集する拷問吏の群れの真ん中―――――ユナのところへ。

 

「ユナーーーーーーー!!」

 

もう一度優那の飴玉をなめたい。

新たに加わったその『本能』が、もとよりあった本能を覆し、ノーチラスに《死の恐怖》を乗り越えさせた。

理性で越えられなかった壁を、本能を。また別の本能で越えたのだ。

敏捷パラメータの限界に近いスピードで突進。そのまま、片手剣基本突進技《ソニック・リープ》へと移る。

システムの薄青い光に包まれた、速く鋭い一撃が一匹の拷問吏の背中に突き刺さる。

数が多い分、HPは低く設定されているのか、そのまま拷問吏は身動き一つとらず、その身をポリゴン片へと変化させた。

――――残り、19匹。

心中でつぶやき、今だ変わらぬこのピンチに少しばかり絶望する。が、あくまでそれは少しの話だ。

僕はもう、自由に走り回れる、戦える、ユナを、守れる。

さあ、果たそう。あの約束を。

そうして、目の前のちっぽけな絶望に対して宣言する。

 

「これから僕の本当の実力を教えてやるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・くん、エーくん・・・・・・!

 

誰かが自分を呼ぶのが聞こえて。

僕の意識は覚醒した。

目を開ける。その瞬間見えたのは、愛おしき幼馴染の涙で濡れた顔だった。

あれ・・・・・・ここは・・・・・・?

 

「ゆ・・・・・・な・・・・・・?」

 

「エーくん、目が覚めた!?よかった・・・・・・このまま目が覚めなかったらどうしようって・・・・・・」

 

そういえばユナの泣き顔を見るのは初めてだった気がする。この世界に来てから僕の知らないユナをたくさん知れた、――――酷い世界ではあるけれど、案外憎めない部分もあるのかもしれない――――などとまだ完全に覚醒していない頭で考えていると、ついさきほど――――僕の体感だが――――の悪夢を思い出す。

 

「そうだ!あの拷問吏、あいつらどうなった!?倒したのか!?」

 

「おぼえてない?エーくんが倒したんだよ」

 

「僕が・・・・・・?」

 

一匹の拷問吏を倒したのは覚えているが、それからさきがよく思い出せない。

無我夢中で剣を振っていた気がする。ユナを守るために。

 

「僕はユナを守り切れたのか・・・・・・?」

 

「そうだよ。エーくんが守ってくれたんだよ。ありがとう、エーくん」

 

「そうだ!アンタはたいしたもんだぜ!」

 

「そうそう!一人であの数のモンスターを倒しちまったんだからな」

 

ユナとひとときの戦友たちからの称賛の声。

そうか・・・・・・。僕はユナを守り切れたのか。

よかった。本当に、本当に、よかった。

 

 

 

 

 

―――――その時、声が聞こえた気がした。

こことは違う、けれども似た、また別の場所から。

『お前は優那を守ることができたんだな』と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




好きな子から飴玉をもらうためなら死んでも構わない。
恋する少年ならそれぐらいするんじゃないかねえ。
またこのエイジは原作のエイジよりすこしばかり必死です。だからこそ、硝子瓶ひとつで死の恐怖を乗り越えられたのではないでしょうか。














雰囲気再現するためだいぶ原作の文に似せたんだけどこれ運営に駄目って言われないかな・・・(ガクブル)

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