「おーい、千冬!迎えに着たよ!!」
クリマスの前日。次狼は織斑家の前にいた。
今日は千冬と一緒にクリスマスパーティーでプレゼント交換用の品を買いに行く約束をし、迎えに来ていたのだ。
とはいえ、この約束は昨日決まった事である。
というのも、厳さんにプレゼントの相談をした時に、丁度、買い物に来ていた千冬が同じ目的で訪ねて来たので、なんなら、一緒に買い物に行けばいいだろ? ということになり、今にいたる。
ただ、その時の厳さんの目が異常に輝いていた気がする。
次狼は特に反対する理由もなく、千冬も丁度いいということもあってこの案に乗った。
とはいえ、案外乗り気だったのは千冬だったりする。
別れた後、一夏君から「千冬姉と何かありましたか?」とのメールが来たので「明日、買い物に行く約束をした」と返信したら「成る程、だから機嫌が良かったんですね」と「明日はよろしくお願いします」などから
よっぽど買い物が好きなんだな〜と次狼は結論付けた。
普段、忙しくて、あまり買い物に行けないからだと思う。
なら今回はとことん千冬の買い物に付き合うか。千冬にはよく世話になってるし。
しばらくすると、扉が開いて千冬が出てきた。
「すまない、遅れた」
流石の千冬も寒さには弱いらしく、コートとマフラーを着ていた。
スーツ姿のクールなイメージの千冬だが、これはこれで似合っていた。
いわゆる、ギャップ萌え……とか言うやつなのかは分からないが思わず見惚れてしまうほど新鮮だった。
……と気を取り直して千冬に話しかける
「鍵は閉めましたね?なら、早く行きましょう。今日はクリスマスイブですから早くしないと駐車場がなくなっちゃいますから」
「そうだな。……というかそれで行くのか?」
千冬には大型バイクに跨った次狼の姿が目に映った。
「ん?あー、これ?厳さんが貸してくれた」
本当は車で迎えにいこうと思ったのだが、厳さんに男ならバイクで迎えに行けと説得され、バイクを持ってないと言ったら、快く貸してくれた。
「これまた、随分でかいバイクだな」
次狼が載っているバイクは大型のアメリカバイク ハーレダッビットソンFLSTFファットボーイ。
ターミネーター2でシュワちゃんがウィンチェスター片手に乗りこなしていたやつである。
「とりあえず、これ付けて」
千冬にヘルメットを渡す。一応、大きめのを用意してもらったから問題は無いと思う。
「付けた?では、後ろに乗って」
「ああ……て、後ろ!?」
「ええ、側車はついてないので。後、落ちないようにしっかりとしがみついていれば大丈夫」
「い、いや……流石にしがみつくのは……」
何故か分からないが、たじろぎ始めた千冬。
そんなにバイクが怖いのかな?
「大丈夫。安全第一で運転しますし、爆走したりしませんから」
「いや、そういう問題では……」
「早く行きますよ」
「あ、ちょ……」
早くしないと駐車場がいっぱいになるので、多少強引だが千冬の手を引っ張ってすわらせた。
ただ、手を引っ張った時、妙に顔が赤かったのとかすかに「……バカ」と聞こえた気がしたが恐らく、気のせいだろう。
千冬がしっかりとつかまったのを確認し、アクセル全開で加速してその場から消えた。
一方その頃 束の秘密基地では……
「いいなー、じーくん。ちーちゃんとデートだなんて」
束は監視カメラをハッキングして、次狼と千冬が買い物に行くのをのぞいていた。
「しかも、バイクで背後から抱きついてるとか羨ましすぎるよ!!」
私もバイクの免許持ってたらなーと頬を膨らませてる束を見て、クロエは相変わらずですと微笑んでいた。
そんなクロエも少しだけ羨ましかったりもする。
「千冬様ばかりずるいです。私もお父様とバイクに乗って買い物に行きたいです」
「そういうけど、くーちゃんはこの前いっぱい撫でてもらったじゃん。それに、膝枕もしてもらってたじゃん!」
「それはそれ、これはこれですよ束様」
「むぅ、くーちゃんが反抗期だー!」
うわーんと泣き出す束
いつものことなのだが、放っておくとうるさくなるので頭を撫でるなりして慰める。
これじゃ、どっちが母親なのか分からない。
「そういえば、今年のクリスマスはどうするのですか?この前はフランスでエッフェル塔をクリスマスツリーにしましたよね?」
「あー、懐かしいね!」
「はい、警察や軍隊に危うく捕まりかけましたから」
「うん、だから今年はのんびりパーティーでも開こうかと思ってるよ!」
「それを聞いて、安心しました」
今年のクリスマスは平和だ。
少なくともそれを聞いて安心したクロエだった。
前半後半にするつもりでしたが、もう少し続きます