あいあむあいあんまん ~ISにIMをぶつけてみたら?~   作:あるすとろめりあ改

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待たせたな──本当に、お待たせしました

多くは語りません


004 覚悟とオモイ

「どのみち試合はする事になるんだし、練習はしておいた方が良いと思うよ?」

 

 

 なんていう箒にしては至極真っ当な指摘を受けてIS学園でも特徴的な建築物、蔑称“戦闘服の肩のヤツ”こと競技場に訪れていた。

 本当に試合をするかは兎も角としていずれISを装着することに変わりはなく、曲がりなりにも日本という国の代表候補生である箒から指南を受けられるというのは貴重である事に間違いはない。

 そんな訳で言われるがままに学園からレンタルした打鉄を身に纏いアリーナへと繰り出したのだが……

 

 

「おい箒、なんで腰を掴んでいるんだ?」

「だって一夏、ISのイメージインターフェースでのスラスターの吹かし方とかなんて分からないでしょ?」

「そりゃあそうだけどさ……」

「それに別に装甲のとこだから擽ったくないでしょ」

「うん……って!なんで手をワキワキさせる?!」

 

 

 そんなものかと油断した隙に、箒の手は奇妙に蠢いていた。

 確かにその手は装甲で覆われた部分にあったが、連想させる感覚が無性にこそばゆくなる動作であり落ち着かない。

 自分と同じく打鉄を纏っている箒の手は人のそれとは異なり無機質な風貌であり、無尽蔵に動く様は寒気さえ感じてしまう。

 逃れようと身をよじるがその手から逃れられることもなく、気が付けば徐々に魔の手は這い上がっていく。

 

 

「あれ、もしかして腋の方が良かった? こうやって、こちょこちょこちょ……」

「だー!やめ!そこ弱っ、知ってるだろ?!ほん、っと!落ちるって!!」

「大丈夫大丈夫、落ちても死なないから」

「そういう問題じゃなハハハハハッ!!!」

 

 

 ピンポイントに装甲が配置されておらず、かつ個人的に1番触られたく無い部分を執拗に、かつ最悪なリズムで触れられる。

 よく見れば器用にも手の部分だけ装甲を量子化して素手でやられていた。

 ISの機能である部分展開のちょっとした応用らしいが、是非とももっと役に立ちそうな事に利用して頂きたいと切に思う。

 

 

「あははは、ほら緊張も解れたでしょ?」

「ぜーったい……緊張をほぐすとかじゃなくて、おもしろがってやっただろ……」

「そんなことないよー?」

「わざとらしく棒読みするな」

「はいはい。それじゃ訓練はじめよっか」

「おい」

 

 

 訓練を始める前に箒に弄ば…………一悶着あったが、途中で飽きたのか解放され何だかんだ真面目に指導してくれる事になった。

 無事に地面まで降ろされてからは歩行から始まり、脚部での姿勢制御にPICによるブレーキ、浮上から着陸……ハイペースな指導に追いつくだけでも必死だったが、何だかんだその教え方は堂に行っていて、これが代表候補生たる所以なのかと感心させられる。

 気がつけばオート制御で始めていたPICもマニュアルである程度使いこなせる用になっていた。

 

 

「これでひと通りの動きは出来るようになったかな?」

「ああ、まだぎこちない所はあるけど……軽い機動なら何とかなりそうだ」

 

 

 飛行する事が前提にあるISの操作においてその要たる飛行機動の特性がどうしてもネックになっていた。

 慣れ親しんだアイアンマンにおいては掌と足の裏にスラスターが設けられており、4つの噴射口から放出される推進力で姿勢制御と飛行を兼任する形になる。

 しかしISでは姿勢制御はPIC、推進はスラスターと分離されている。完全に分離している訳ではないが、操作系統は異なるしアイアンマンには無いPICの制御という機能自体の慣熟が必要だ。

 ステアリングに関しては、どちらも似通った思考インターフェースを採用しているので飛行するだけであれば容易に慣れることが出来たのは幸いか。

 なお、思考インターフェースと言うと第三世代ISの世代区分条件にある兵装を連想する者がいるが、実際には視線や脳波、筋電をセンサーが感知して手指を用いずに機械群を制御する一連の操作系統の事を指す。

 飽くまでも第三世代ISの兵装はその思考インターフェースを利用した非接触操作型の兵装の事を言うのであって、基本的には照準を思考制御する事が可能なものであると定義されている。

 

 まあ、打鉄は第二世代機なのでそこまで気にかける必要もないが。

 

 

「それじゃ、早速実戦機動してみよっか」

「は────」

 

 

 突然の不意な言葉に思考と認識がかなっても感情と理解が置いてけぼりになり頭が半分白くなる。

 しかし、箒はお構いなしに日本刀の如し近接ブレードを質量化(かいとう)し装備したかと思えばスラスターを全開に吹かして飛び込んできた。

 こちらもいつまでも呆けている訳にはいかない。

 応じるように近接ブレードを右手に展開し、箒の剣筋に合わせて刃を受け止める。

 

 ガキンッ!

 

 金属と金属が鈍く重なり合う音が眼前で轟く。

 想像していたよりも幾分か重い一撃に顔を顰めながらも体重を背中へと傾けながらスラスターを動かして距離を離す為に後方と下がる。

 その間に、対して箒は機体を浮上させていた。

 そしてそのまま急降下。先程よりも鋭い一撃を与えてくるのは明白である。

 

 刹那、腕が千切れそうな剣撃が迸った。

 

 

「んんんんっ、ぐうぅ!!」

「ほらほら一夏!後手後手に回ってると飲み込まれちゃうよ!」

 

 

 その言葉の通り、こちらを飲み込もうとするかの様な連撃が喰らいつく。

 鋭く重く厚い、一閃一閃に意志と思考を感じる。無秩序ではない制御された嵐の様な攻撃。

 何とか捌くのは追い付く。しかし防戦一方で攻撃に転じる活路が見いだせない。

 まさにジリ貧。このままではいずれ押し切られてしまう。

 ならば攻撃に転じる施策。考え、実行するしか無い。

 剣では追いつかない。足りない。インパクトを与える事さえ出来れば、一瞬でも隙が出来れば良いんだ。

 ライフル……違う、取り回しが悪い。

 そうだ、サブマシンガン。連射とこの距離感、一瞬で弾薬が尽きても別に良いんだ。

 

 サブマシンガン、サブマシンガン!サブマシンガン!!

 

 思考コールのコツが掴めていない故に3回目にして左手にサブマシンガンが現れた。

 それと殆ど同時。トリガーを潰さん勢いで握りしめると銃口が燃えるように吼える。

 

 

「おっとぉ?!」

 

 

 漸く、箒の方から下がり距離が開く。

 だけどこんなのは一瞬だけだ。この一瞬で何とかしなければまた同じ事の繰り返し。いや、寧ろ畳み掛けられて終わる。

 どうする、こちらは踏み込みさえ満足に出来ていない。剣技なんて児戯に等しい。

 格上だ。なら、同じ条件にしないと。

 何がある。武装、スタンダードパック、近接ブレードがもう1本。

 もう賭けだ。やけでも良い、やりきるだけっ!

 

 

「うおおおおおおおおおっ!!!」

 

 

 知識だけなら知っている。有名なISの推進テクニックぐらいなら、その機序ぐらい。

 一度推進エネルギーを放出して再取り込み、そして放出。

 ジェットエンジンのアフターバーナーとは異なり垂れ流している訳では無いので動作までラグがあるのと取り込んだエネルギーに比例する加速しか得られないが、転じて言えば推進剤の節約になるし加速度は上だ。

 一瞬で良い。本当に一瞬、辿り着けさえすれば!

 

 

「うそ……瞬時加速(イグニッションブースト)っ?!」

 

 

 速度は一瞬1000を越えた。音速の手前。

 そのままの勢いのまま飛び込む。

 叩き込む、叩き込め、叩き込む!叩き込む!!

 一撃では終わらない。抑えこませない、止まらない、逃がさない。

 吸い付いてやる、取り憑いてやる。

 二刀流。単純に手数は二倍、これで瞬間的なレベルはイーブンになったか。

 今のうちに、総てを出し切る。

 

 

「うおおおおおおっ!!!」

「っ……!!」

 

 

 幾つかの剣閃が、箒の刃を越えたのがわかる。

 感覚的にシールドエネルギーをわずかずつではあるが、削っている。

 押し切れるか。逃がさなければ、或いは────

 

 メキッ

 

 

「あ…………」

 

 

 悲愴的な音が、右手から鳴いた。

 見れば近接ブレードが根本から折れ、砕けている。

 慌ててコンディションを見れば近接ブレードは真っ赤(レッドコンディション)。打鉄の制御系にもイエローアラートが散見。

 つまり、限界だ。

 

 

「…………」

「あー……うん、やめよっか」

 

 

 消化不良というのが正直な感想だ。

 嘆息をつく箒の顔にも似た様な感情が見えた。

 

 ……こちらの反撃のおり、箒の顔に浮かんでいたのは笑みだった。

 楽しんでいたのか、何なのか。

 心の内までは見通せないが、少なくとも快いものを感じていた様だ。

 あのまま、近接ブレードが折れなければ打ちのめされていたかもしれない。

 何となく、そんな気がした。

 

 

「とりあえず、片付けよ?」

「……ああ」

 

 

 

 

 始末書、というよりか反省書。

 借り物であるISの武装の破損と本体の損傷は、金銭こそ支払いの義務は無いが条項には違反している。

 何かしら罰則なりある訳ではないが、申し訳ない気持ちを抱きながらしたため、漸く打鉄の返却手続きは終了した。

 このあと、打鉄は整備課の手で修理される事になるだろう。整備課の手に余ればメーカー、倉持工業へ輸送されて修理……薄情な様だが、どうなるかはそこまで興味がない。

 

 

「ふぅ…………」

 

 

 ため息をつきながら、風呂に入りたいなとぼんやり思考が過ぎった。

 あの屋敷には当然と言わんばかりにジャグジーがある。

 温水と泡に包まれて身体と心を休めたい気分だ。

 

 

「あら……」

「あ──」

 

 

 アリーナから出ると、見知った顔を鉢合わせた。

 セシリア=オルコット。この度、俺と試合する事になってしまった渦中の人である。

 

 

「えーっと……」

 

 

 謝罪をするべきかな、と思っていたのだが、どことなく気不味く感じてしまいそれを実行出来ていなかった。

 それ故に更に申し訳なさが積もるという負のスパイラルを自業自得で重ねてしまっているのは、何とも我ながら不甲斐ないものである。

 

 

「ごきげんよう織斑さん。練習をなさっていたのですか?」

「あ、ええ、何とか最低限は動ける様にしておきたくて」

 

 

 躊躇ったままでいると、先に声を掛けられてしまった。

 度重なってバツが悪くなるが、それでも言わねばならぬだろう。

 胸に岩の様な重いつかえを覚えながら、短く息を吐いて切り出す。

 

 

「その、この度はオルコットさんにもご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありませんでした」

「え?ええ、確かに驚きましたが……でも織斑さんが謝罪する事ではないでしょう?」

「ですが、身内の引き起こした事ですしね……自分なりの、けじめです」

「ふふ……織斑さんは真面目なのですね」

 

 

 爽やかな笑顔でそんな風に返されてしまう。

 紳士的……違うな、淑女的?でいいのか?

 イギリス人だからとひと括りにするのも失礼だが、余裕というか包容力を感じた。

 

 

「試合は来週ですが……(わたくし)も全力であたらせて頂きますわ」

「……ご容赦のほどを」

「あら、残念ながらそれはお断りさせて頂きますわ。誰に対しても全力で、それが私の主義ですから」

 

 

 その言葉に一夏は察した。

 こちらを蔑む様子は微塵もない。慢心せず油断しない、常に敬意と上昇思考をこころに宿している。

 一貫した信念。イギリスならば騎士道とでも言うのだろうか、そういった類の高潔さを感じた。

 

 

「失礼しました。ではこちらも、胸を借りるつもりで全力でいかせて貰います」

「ええ、楽しみにさせて頂きますわ」

 

 

 互いに会釈をして別れる。

 

 勝てるのかな。

 ふと、考えた。

 そして何も知らないなと思い返した。

 ISに対してあまりにも無頓着過ぎた、と。

 調べるべきだろう、ISについても、オルコットさんについても。

 

 

「あれ一夏、何してたの?」

 

 

 思考を巡らせていると、タイミングを見計らったかのように箒がアリーナから出てきた。

 髪が少し濡れている。ここでシャワーを浴びてきた様だ。

 

 

「オルコットさんとバッタリ会ってさ、少し話をしてた」

「ふーん。どんな人だった?」

「そうだな……大人だな、って思ったよ」

 

 

 代表候補生だから……では、無いだろう。

 別に眼前の幼馴染を見てそう思った訳ではない。

 少なくとも、人として己より上手であると思った。謝罪を躊躇う自分なんかよりも、と。

 

 

「……大人って、どういう意味?」

「どういうって……お、おい、何をするんだよ」

 

 

何を思ったのか、箒は俺の右腕を抱き抱える様に身体を寄せてきた。

 そうなれば当然として双子の凶悪兵器が押し潰される事になる訳で、これが心と身体に悪い。効く。

 柔らかいしシャワーを浴びて来たからか仄かに暖かいしシャンプーか何かのいい匂いまで漂ってくるので始末におえない。

 下唇を噛み締めて、痛みと鉄の味で思考を埋め尽くさんと試みる。負けそう。

 

 

「何って、当てて」

「そーじゃない!こんな所でやめろっての!っていうかここじゃなくてもどこでもやめて?!」

「えー、なんで?何がいけないの?」

「周囲の目とかモラルとかさぁ!あるだろ!」

「でもさ、別にIS学園の校則には異性交友は禁止されてないし。あ、でも避妊しろって書いてあるん──」

「わー!もういい!!」

 

 

 暴走気味の箒の口を抑えながら、引き摺る様に帰路を目指す。

 その間の周囲の目が、突き刺さるようで痛かった。

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