これは、人々に畏れられたあるモンスターの独白と、その最期である――

息抜きで乱雑に書いてみたものです。お暇な時にでもどうぞ。

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とあるリュウの願い

 ―――何故、己は嵐を纏うのか。

 

 幼き頃は、それこそつむじ風程度の風しか纏っていなかったように思う。生まれた直後の事など己は覚えていないので、確証はないが、それでも今纏う嵐よりは弱かったのは確かである。しかし成長するにつれて徐々につむじ風から竜巻へと変わり、いつしか嵐そのものとなった。眼下に並ぶ合切が軒並み吹き飛び、あるいは崩れる。その破壊の原因が己であることは、嵐を纏うようになってから自覚した。恐らく親譲りだろうこの能力(ちから)は、どうやら己と同じ姿をしている者達の中でも一際強いらしい。己が住まう土地へ足を踏み入れた同族らしき影が、吹き荒ぶ風に蹂躙される様を見たことがある。

 そんな同族の影を見、己はただ思う。

 

 ――羨ましい

 

 仮にとはいえ死んだだろう同族を前に思うことではないのは重々承知しているが、想うことをやめられない。己はこのような能力(ちから)などいらなかったのだ、と己の種族そのものを否定することさえままある。

 己は……己は、ただ――――

 

 

◇◇◇

 

 

 その昔、一人の狩人ありけり。

 山々に囲まれた村に住みしその狩人は、ある時訪れた一匹のリュウと対峙する。そのリュウが持つ恐ろしい力は、村のみならず周辺の生き物たちをも恐怖してしまうほどのものだったから。

 だからこそ狩人はリュウと対峙した。その背に背負うは銀の太陽の太刀、その身に纏うは黒き覇たる者の武具。その傍らに立つのは数多の笛をもつ臆病な獣人と、人から見て小さな飛び道具と金色に輝く細身の剣を持つ獣人。狩人は相棒となった獣人二人と共に、リュウへ挑んだ。

 

 ――そして、死闘が幕を挙げた。

 

 御伽にて神と呼ばれしリュウは、その水を纏う息吹にて大地を抉る。狩人はそれを紙一重で避け、白き神へと近づかんと足を動かす。狩人に付き添う獣人らは、それぞれ笛を吹いたり、あるいは飛び道具を投げて、ただ主人が攻撃する隙を与えんとした。

 リュウは己の能力(ちから)に自信を持っていた。持っていたからこそ、リュウに近づこうとする狩人に怒りを覚えた。だからこそリュウは狩人を己の敵と定め、全霊を持って排除しにかかった。

 

 怒りに震える白き神により荒らされる天地、その全てが狩人の敵となった瞬間である。

 

 水を纏う息吹が連続して放たれ、余波で飛んできた石が狩人を傷付ける。神自身が風を纏い狩人へ迫り、風の刃が狩人を切り刻む。激しい豪雨は狩人の気力を確かに削って行き、落ちる轟雷は神の勝利を確信させるようにその音色を響かせる。

 狩人は敵となった天地に大きな畏怖を懐きつつも、白き神と敵対することをやめはしなかった。それは偏に、狩人が世話になった村の皆を守るために。その一身で狩人は白き神へと立ち向かうのだ。

 

 ――そして、村を救わんとする狩人の意思は、災禍の調べを奏でる神に打ち勝った。

 

 白き神は慟哭する。なぜ矮小且つ脆弱なヒト如きにリュウたる己が敗れるのか。嵐の只中を舞う己こそが、絶対的な強者であったはずなのに……!

 命の灯火が小さくなりつつあるのを自覚したリュウは、己を討った狩人へ最後の意地として一撃見舞おうと口を開き――――

 

 雲海の隙間より注がれる、"それ"を見た。

 

 

◇◇◇

 

 

 ボロボロとなった狩人が、既に事切れたリュウを見る。

 

 積年の願いが叶ったような、そんな穏やかな顔で眠るリュウを見る。


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