俺は、スーパーザンクティンゼル人だぜ?   作:Par

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急にSRカルテイラが出たからね


クロスフェイト 邪眼が呼ぶ天災 前編

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 一 人の噂も七十五日で再更新

 

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 アウギュステに向かう途中、俺は新しい俺達【星晶戦隊マグナシックスとB・ビィくんマン&均衡少女ZOY】についての噂を聞いた。聞いてしまった。

 

「最近あの星晶戦隊によ、新しい団員が増えたってよ」

「マジかよ…・・・あれ以上どう濃くなるって言うんだよ……」

「なんか、始終笑い続けて銃を撃ちまくる女ハーヴィンを仲間にしたとよ」

「マジかよぉ……なんでそんなヤツ見つけれるんだよぉ……」

「空って広いな……」

「な……」

 

 という感じ。

 早くない? ルドミリア仲間になったの、ほんの数日前だよ?ただ他の騎空団にとっては、問題児ばかりの我が団もその事に目をつむれば戦力がガチ過ぎて自分らの仕事が取られると心配する団もあるらしい。取らん取らん、基本シェロさんから次々と依頼が来るだけで依頼なんて奪わねえって。

 だがこの事をコーデリアさんに相談したら割とマジな感じで「各国がマークしてると言ったろう?」と言われた。震えてきやがった、怖いです。

 しかし実際のところ、ルドミリアが仲間になってまだ依頼に出てはいないが、ヤバみを感じる。エンゼラ船内でも笑いの発作は、当然の様に止まらないので、あんまり発作が酷いようだと近くにいる団員に気絶させる方法を取る事にした。ルドミリアもいっそ気絶してる方が楽だそうなので了承しているが、近くにいた団員がフェザー君だったり、ティアマトだったりすると拳か星晶パワーで気絶させられるのでキツイらしい。

 なお、一番楽なのは、セレストによる気絶で、まるで眠る様に気を失うと言うが、セレストヤバい事してないよね?

 そしてアウギュステ前に行う最後の依頼。なんでも新しい魔物図鑑を作るから図解の絵を描く絵師がいるので、その絵師が野生の状態で生きた魔物を描くまでの護衛をしろとの事。

 大きな戦闘が無いと信じて新参のルドミリアを連れて行くのにちょうどいいかと思い彼女をメンバーに加えて俺はその絵師に会いに行ったのだった。

 ――絵師を護る、ただそれだけの依頼がまさかあんな事になるとは、この時思いもしなかったのだ。

 

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 ニ フェイトエピソード 一 乾き疼く瞳を持つ者

 

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 運命の出会いは、何年も前。絵物語を扱うマーケットで偶然目にした一冊。全身に電流が走るがごとき衝撃をその表紙を見て受けた。心が肉体から離れ、物語の世界に入り込むのを感じた。美しき男達の尊さを知った。

 湧き上がる創作への意欲。元から絵は好きだった。だが、美しいもの、特に美しく可憐な人間を描く事が彼女には、とても難しかった。決して絵は下手ではない。だが、彼女は魔物を描く事に特化していた。見様見真似で人物を描いた。何百、何千、何万、どれ程描いたろうか。

 その中で運命の出会いであった一冊は、「不埒」と断定され親に捨てられた。しかし彼女は、描いた。美しき男達を、耽美なる絵を。

 自分なりに描けた一冊を本にして、店に置いたが売れない。そのため一際才能があった魔物の絵を生活の糧にするうち、何時しか彼女は【魔物絵師】として広く知られ、魔物図鑑或いは魔物の手配書等の仕事では、多くの指名を受ける程になった。

 

「彼女の描いた絵は、まるで生きているようだ」

 

 最大の賛辞、だが彼女の心は晴れない。

 自身の目指すもの、それは耽美の世界。何時か空中の耽美物を集め、自身もまた耽美絵師となりたい。その思いは、決して無くなる事も無く日々魔物の挿絵を描いた。

 ある日受けた新たな魔物図鑑の依頼も、そんな当たり前の日々の一幕。面白くも、つまらなくも無い。そんな当たり前の依頼、そうなるはずだった。地味な少年が率いる騎空団が、自身の護衛に現れた時その運命は変わる。新たなる耽美の世界を求める世界へと。

 

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 三 魔物ウォッチ

 

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 結論から言おう。

 

「あは、あーははははっ!! ま、待て待てえあははーーっ!」

「GUAAAA!?!?」

「お前が待てルドミリア!! 笑いながらだと魔物が怯えるっ!!」

「うっわわっ!? こっちくんなやっ!?」

「セレスト、餌っ!! 餌ちょうだいっ!!」

「ま、まって……うわっ!!」

「セレストさんがこけたですっ!?」

「いひひっ!! ぶちまけた餌に、まも、魔物がははははっ!んひーひひひっ!!」

「あかん、全部食われるでッ!!」

「だ、だめです!まだ食べちゃだめですっ!!」

「ま、まだルナールさん!?」

「ダメ、もうちょっと」

「んだあぁーーーーーーーーっ!!」

 

 思ったよりきつい。

 依頼メンバー、ルドミリア、カルテイラ、セレスト、ブリジール、俺。ルドミリアは、入団して直ぐで様子を見るのにちょうどいい依頼と思ったから参加。ブリジールさんは、コーデリアさんに比べると戦力としては不安だがサポーターとしては十分と思った。カルテイラさんは、アウギュステまで船に乗せてあげてる分手伝ってもらう。セレストに関しては、星晶獣を連れてくるほどの依頼とは思わなかったが、たまには自分も依頼に行きたいと思ったようだ。肉体労働は、相変わらず苦手だが依頼内容が比較的楽に思えたらしい。

 あと一番着いてきて欲しいがコーデリアさんには、お留守番と補給物資確認の指示をお願いした。ティアマトが残っているがたぶん今船にいるメンバーで一番の常識人だからあっちは心配ないだろう。

 だが全部裏目に出た。

 

「いいわ、そのままで。止まってるなら描きやすいわ……」

 

 一心不乱に、スケッチブックへ魔物を描き込みまくる絵師。ハーヴィンの女性絵師ルナール、今回受けた依頼の護衛対象である。彼女が魔物をスケッチしている間、俺達はひたすら魔物を引き付け逃がさないようにする。シェロさん曰く、「難しくない仕事ですよ~」との事。

 だが、魔物一匹を追い回すのに右往左往する俺達。倒さず逃がさず追い回すと言うのは、思ったより大変だった。こんな姿ばあさんに見られたら、また一から鍛え直されそうで怖いぜ。

 しかし一方こんなありさまでも冷静、と言うかいっそドライに魔物を描き続けるルナールと言う絵師、かなりの集中力だ。腕の良い絵師とは聞いたけど、確かにこれは凄い。凄いが早くして、早く、早くしてくれたのむからねえ!!

 

「このアホッ! 勝手に餌全部くうなっ!」

「Gyan!?」

 

 強化ハリセンで魔物をドツキ回すカルテイラ。案外この点は助かる。今回は、魔物の討伐が目的で無いので非殺傷武器(?)を使うカルテイラさんには、けん制をしてもらう。

 

「もう少し動いてる時が見たいわ、うまく誘導して」

 

 注文が来れば俺達は、従うほかない。何故なら彼女は、依頼主だから。

 

「しかたねえ……行けB・ビィ!!」

「しょうがねえな……」

 

 あと普通にいたB・ビィ。まあ、こいつはビィを自称してるので基本俺といるから当然なのだが。

 そんなB・ビィが俺の指示を受け、通常形態のまま空を飛び魔物が食らい付いている餌を奪う。

 

「Ugaa!?」

「こっちだぜノロマッ!!」

 

 餌を奪われ怒った魔物は、絶妙なスピードで飛ぶB・ビィを追いかけた。

 

「いいわね。そのままでお願い」

「変身は無しだからな!魔物が怯えて逃げるから!!」

「クッソが!これ結構つかれんだからな!あとでリンゴよこせよ!!」

 

 通常形態でもクソ強い癖に文句言うんじゃねえ。

 ちなみに、こんな感じの事が午前中からずっと続いてる。今のところ休みなしだ。この魔物が終われば一息入れて午後残りの魔物スケッチだ。

 

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 四 一時の安らぎ

 

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 普通の戦いより疲れた気がする依頼の前半を終え、一時丘の上で休息する。飲まず食わずでこんな事出来る訳がないし、いい加減腹が減ったのだ。

 

「ああ、しんど……」

 

 すっかり疲れて丘の上でねっころがるカルテイラさん。かく言う俺も、レジャーシート広げて一緒に倒れ付している。

 

「そ、想像以上にきつかった。まだ午後もあるのか……」

「あんた、もうちょっと考えて依頼貰いや。船乗せてもろてるさかい、そら手伝いせい言われたら断る気はあらへんけど、限度ッちゅうもんがあるで」

「だって、シェロさんが難しい仕事じゃないって……」

 

 そしたら「ド阿呆」とハリセンで頭をはたかれた。

 

「“難しくない事”と“楽な事”は別や」

「うぐぐ」

「まあ、これもシェロはんの信頼の証かもしれんな。あんたらなら、なんやかんやで依頼をやり遂げるちゅう信頼があったんやろ。せやけど、気をつけんと一々面倒な依頼ふられる事になるで」

 

 好きで依頼を受けているのではない。シェロさんから来る依頼は、選好みできないのだ。借金あるから。

 

「おまはん、借金無くても貧乏くじばっか引きそうやな。生まれついての苦労人」

「やかましいなあ、思い当たる事多すぎて困るから止めて」

「あるんかいな」

 

 あるんだなぁこれが。

 

「ご飯準備できたです!」

「うっひょー! 待ってたぜ、りんご!りんごくれ!」

「落ち着くですB・ビィさん、りんごは逃げないです」

 

 ブリジールさんが持ってきた荷物から用意した弁当を取り出す。手馴れた様子で食事の準備をするブリジールさん。更にコーデリアさん手製のサンドウィッチだぞ。やったぜ。

 

「そういやルドミリアはんは?おらんやん」

「なんか、近くの森で珍しいキノコないか見てくるって」

「止めんでええんかいな、またけったいなキノコ食って症状悪化すると面倒やで」

「キノコ見つけても、まず持って来いって言っておいた」

「大丈夫やろな~」

 

 多分大丈夫だよ。多分、きっと、メイビー。

 

「てか、セレストは?ルナールさんも」

「お二人なら、木陰でお休みになってるです」

 

 ブリジールさんが指差す方向には、確かに二人がいる。一応声をかけた方がいいだろう。

 

「熱い……日差しきつい」

「……」

 

 どっちも日光が嫌いのようで、セレストはぐったりとしている。大して日差しはきつくは無いのだが、彼女にはつらいようだ。一方でルナールさんも日差しを疎ましそうにしているが、それ以上にスケッチに熱中している。休憩中と言うのに熱心なものだ。

 

「セレスト、飯どうする?」

「お、おいといて……後で食べる……」

「ルナールさんも、ちょっとは休んだらどうですか?食事も用意してますけど」

「別にいいわ、もう少し描いておきたいし」

「あ、はい」

 

 にべもねえや。

 仕事人間なのだろうか、それとも絵が好きなのだろうか、俺にはわからん。しょうがないので、食事と飲み物だけ置いておく。

 彼女の持つスケッチブックには、既に多くの魔物の姿が描かれている。一体の魔物もあらゆる角度で描いて最もその魔物が生き生きとしている構図を見つけ出す。そして図鑑用のわかりやすい挿絵用の構図もまた同時に考える。一度彼女の絵を見たが確かに「生きているようだ」と言われるだけはある。

 絵を描く事を仕事にするって大変だなあ、と思いながら元のレジャーシートに戻りコーデリアさんお手製のサンドウィッチを食べて休む。

 

「あは、あははっ!! だ、団長、ちょっといいかな?」

 

 はずだった。

 

「……どしたの、ルドさん」

「その略し方は、初めてだよ、ふふっ! ちょっと、森の方で気になる事が……ほふひひっ!」

「気になる?」

「魔物じゃない気配がするんだ……んふっ、人がいない場所のはずだからおかしいと思って、ひひっ。か、確認をしたいが、私一人では多分無理だろうからね……なはははっ!!」

 

 そうだね、現状ルドさんは、全空一斥候とか出来ない人ナンバーワンだろうさ。

 

「10秒待って」

 

 手に持ったサンドウィッチを頬張り一気にお茶で流し込む。本当はもっと味わいたかったよ。コーデリアさんの手作り。

 

「セレスト、ルナールさんの護衛お願い。なるべく直ぐ戻る」

「わかった……」

 

 ぐったりしたまま返事してる……大丈夫かな。俺が残ってブリジールさんに様子を見に行ってもらうって言うのも……ああ、いや駄目だ。たぶん彼女だと、ルドさんに振り回されてまともに動けないだろう。危険な魔物か人物であった場合を考えれば、カルテイラさんも除外だ。やはり俺しかないか。

 

「ルナールさんも、すみませんが」

「かまわないわ、どうせまだ描いてるから」

 

 ドライだねえ。

 

「カルテイラさんにブリジールさん、ちょっと森の様子見て来るんで少し頼みます」

「了解しましたです!とことん頼まれました!」

「気いつけや」

「あと特にB・ビィ、お前は念のため残しておくからな。勝手についてきたりするなよ」

「わかってるよ」

 

 あいあい。それじゃ行きますよルドさん。魔物じゃないと言うが、せめて盗賊程度であるといいが。俺の場合、薮突いた場合蛇どころか星晶獣が出かねないからなあ、悲しいかな。

 

「んふふぅ……っ、そ、それじゃ案内するよ、うぷっ!」

 

 しかしよりにもよって気配に気づいたのがルドさんか。道案内の途中でその未知の相手に気取られないよう願うしかない。相変わらず笑い続けるルドさんを連れ、二人森へと入っていった。

 

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 五 闇引き合い、天災来たり

 

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 笑いまくるルドミリアを引き連れながら森へと入っていく団長を、木陰でうなだれたままのセレストは見送る。

 そしてふと気がついた。隣にいるハーヴィン、絵師ルナール。彼女は黙々と絵を描いているが、この空間に気まずさを感じ始めてしまった。視線をカルテイラとブリジールがいるレジャーシートに移す。そこは、普通であれば穏やかな日差しだが彼女にとっては炎天下。そこに移動する気は起きなかった。

 

「ご、ごはん……食べなくていいの?」

「いいわ」

 

 やはりにべも無い。

 移動する気も起きない以上、ここで用意された食事を取るしかなく、団長が置いていったサンドウィッチをモソモソと食べ始める。

 モクモクと絵を描くハーヴィン、モソモソと食事をする星晶獣。相当珍しい光景だろう。だがそれぞれは、それぞれの事に集中してるのでそんな事を考えていない。そんな事が数分続く。

 だが気まずい。何も問題が無いはずなのに、互いに無言の気まずさ。ただ純粋に星晶獣であった頃には、味わうはずの無かった感覚に戸惑いながらセレストは、この気まずさの突破口を探していた。

 

(そうだ、絵の話題……)

 

 絵を仕事にしてるなら、絵の事を話題でふったら反応してくれるだろうか。そう思いルナールを見る。だが彼女は相変わらずスケッチに夢中だ。

 

(声……かけ辛いなぁ……)

 

 セレストは人見知りであった。この時ばかりは、星晶戦隊内でも空気を読まない事に定評があるティアマトの図々しさが羨ましかった。反面ああはなりたくないとも思うが。

 どうしようか悩んでいると、今度はルナールのほうがセレストを見た。

 

「あ……」

「なに? さっきからチラチラ」

 

 どうやら気が付かれていたらしい。セレストは、申し訳ないのと恥ずかしさで赤面した。

 

「ご、ごめんなさい……」

「はあ……貴女、話を聞いた限り星晶獣なのよね?ただの人間に何遠慮してるのよ?」

「い、今は……ただの星晶戦隊の一員だから……」

「それにしたって威厳が無いんじゃないの?」

「け、けど……うちには、無駄遣い多くて団長にお尻蹴られたり……住んでる水槽の水質に煩すぎて、蒲焼にされかけたり……ドMで団長に罵られたがる……もっと駄目駄目なの……いるよ」

「大丈夫なの、その星晶獣……」

 

 きっと大丈夫ではないだろう。

 

「それで、何か聞きたいの?」

 

 ルナールは、すっかりセレストを星晶獣と言うよりもただの気弱な人間として認識したようだ。

 

「あ、あのね……」

 

 まさか向こうから話をふってくれるとは思わず、慌ててしまう。そもそも漠然と絵の話をすればいいかと思っただけで、どう話題をふろうかまで考えていなかったのだ。

 ワタワタしながらセレストは、何か言わなければと焦りそして。

 

「絵って描いてて楽しい?」

 

 言ってちょっと後悔した。もう少し言うべき事があったろうに、なぜこんな当たり障りも無さ過ぎて話の続かない事を言ってしまったのだ。ベールで隠されたセレストの瞳は、涙目であった。

 

「いきなり何よ……」

「あは、はは……ずっと描いてるから、好きなのかなって……なんか、ごめん」

「星晶獣が簡単に謝らないでよ、調子狂うわね……別に好きじゃないわ、嫌いでもないけど」

「え……?ならなんで描いてるの?」

「仕事だからよ、それ以上理由ある?」

 

 そうだろうか?セレストは、疑問を感じた。言われてみれば、彼女の魔物を描く姿は、絵師か職人のそれだがどこか作業的であった。しかし絵を描くという行為にたいして「好きでも嫌いでもない」と言う半端な思いは、感じられなかった。

 

「他に、魔物以外を描いたりとか……してるの?」   

「う゛ぅ゛ん゛……っ! ……い、いいえ? まあ、たまに? 人物や模写とか? 人型の魔物とかいるし? そう言うのとかは、するわよ? 当然ね、ええ」

 

 露骨に焦りだした。これはあまり聞かない方がいい内容のようだ。そうセレストは、人間社会に出て学んできた技“空気を読む”によって感じ取った。なので、とりあえず話題を変えることにした。

 

「ちょ、ちょっと……見てもいいかな?」

「……これは、仕事用だから……うん、何も描いてない」

「え?」

「ああ、ううん!なな、なんでもないわよ?まあ、見るぐらいなら別に、ある程度は描けたし……はい」

 

 そう言ってルナールは、今まで使用していたスケッチブックをセレストに渡した。セレストは、それを嬉しそうに受け取ると、パラパラとめくり絵を見る。

 

「わあ……す、すごいなあ……」

 

 そこには、団長も見たようにまるで生きているような魔物達の姿があった。ただ一つのペンから生まれるとは思えない躍動感。この短時間で描いたとは思えない量と精巧な書き込み。

 人の生み出す芸術、それをセレストは初めて実感した。

 

「ど、どうやったら……こんな風に描けるの?」

「どうもなにも、描くしかないわ。スケッチでも模写でもいいから、一日一枚とか十枚とか決めて、描き続けるの。じゃなきゃ上達もしないし腕が描き方忘れるわ」

 

 そう言うルナールの姿に、まるで歴戦の戦士の様な風格すらセレストは感じた。ほんの22歳、しかし絵師としての心構えは、既に達人の域に達しようとしている。セレストは、星晶獣として長く生きてきたが、あの団長とジータの次にルナールと彼女の描く絵に強く関心を持った。

 そして可能なら、彼女の描く他の絵が見てみたいと言う欲求が生まれる。自ら欲する、それもまた初めての感情だった。

 

「依頼が終わったら……ちょっとだけでいいから、絵の描き方とか……教えて欲しい」

「私が?」

「だ、駄目かな?」

 

 ルナールは、意外そうにしている。またかなり困惑もした。

 

「なんでそんな」

「わ、私星晶獣だから……団長と出会うまでずっと空を漂っては、人の死を奪って眷族にしたり、取り込んだりするだけの生活だったの……」

「そ、壮絶ね……そこら辺は、流石星晶獣だわ」

「だからね……今団長と空を旅するの、凄く……た、楽しい。こうやって……今まで気にも留めなかった……絵とかに興味がわくから」

 

 血の気の無い、蒼白の皮膚。だが紫の口紅が弧を描き、表情はベールに隠れても彼女が生き生きとした笑みを浮かべているのは、ルナールにもわかる。

 

「……ちょっとだけよ?」

「あ、ありがとう……」

 

 見た目は大人の女性で、しかも星晶獣。なのにやたら人間らしく、弱々しさすら感じるのは、あの変わった団長の所為だろうか。船に残りまだいると言う、セレストよりも“駄目駄目”な他の星晶獣とやらも、少し気になりだしたルナールだった。

 そして、そんな穏やかな時間は、突如として終わりを迎えるのだ。

 

「あ、あれ?」

「どうしたのよ」

「なにか……聞こえた」

「なにか?」

「うん……森のほうから」

 

 セレストが不思議そうに団長とルドミリアが入って行った森をみた。一見何も無いただの森であったが、しかし徐々に、徐々に奇妙な音が響く。

 

「な、何の音?」

「わ、わからない……何かが、動いて……回転する様な……」

 

 その時である。木々が伐採され吹き飛ぶ。けたたましいエンジン音が鳴り響き、そして現れたのだ。

 

「そ、総員退避いぃーーーーーっ!!」

「あははーーーっ!! あはははっ!? やばひっ!! ぶへえっ!! うはははっ!?」

 

 二人並んで森から出てくる団長とルドミリアの二人。その後ろからせまる、一人の女性。

 

「ヒャアアアッハアアアアアーーーーッ!! クウゥゥレイイジイイィィィーーーーーーッ!!!」

 

 人はそれを、“歩く天災”と呼ぶと言う。

 

 




SRカルテイラ可愛すぎない?あとあれ、一枚目ちょっと乳首浮いて見えてエロい。貯めといた石全部つぎ込んだよ。

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