俺は、スーパーザンクティンゼル人だぜ?   作:Par

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全ては、彼に集まるのだ。人も、星晶獣も、騒動も。

12.11 ザニス高地への移動に関して修正。詳しくは、あとがきにあります。


騒動の”目”、団長君

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 一 ブラギュステ

 

 ■

 

 ただアウギュステの街をブラブラ歩く、ブラギュステ。つまらないと思う人は思うだろうが俺は面白いと思う。街の造りと建物の立地から地形の特徴を読み取ったり、先人が何を思ってここに建物を建てたのかを知ったりとできる。多分アウギュステで橋の痕跡とか、アウギュステ建築を見たり、暗渠探して回ったのは、俺とシャルロッテさんぐらいだろう。

 

「お前、もっと……もっとさあ……お前」

 

 と言う俺の報告を聞いたB・ビィの反応がこれだ。文句あっか?

 

「とても十代と二十代の男女がアウギュステを巡った一日と思えねえ……」

「あの騎士団長も中々渋いな……」

 

 どうも俺達のアウギュステ巡りは、団員達には不評のようだ。悪かったな。

 

「まあ、二人がどう言った趣向で街を巡るかは、自由として……首尾の方は?」

「初日ですからねえ……世間話する程度でした」

「いやそれでいいのだ。徐々に聞き出すのも諜報だよ」

 

 そう言ってくれると助かるなあ。

 だがシャルロッテさんは、騎士団の事を話すのが嫌と言う雰囲気は無かった。

 

「自ら騎士団長と名乗った以上、話を振って問題は無かったですね。実際幾つか騎士団での事聞いたら誇らしげに話してましたよ」

「誇らしげに、か」

「自分の事と言うよりも、自慢の仲間達の話が多かったですが」

「そうか……」

 

 気持ち嬉しそうなコーデリアさん、そして一緒に聞いていたブリジールさんの二人。

 

「残り数日でまあ何とか聞いてみます。ただコーデリアさんの方でも例の仕事をして問題ないと思ったら自由にどうぞ」

「そうするよ。だが今は、推移を見守るとしよう」

「明日は、どこ行くのかにゃ?」

「えっと……ザニス高地だって」

「列島を一望できる場所だったな。ってこたぁ、そこで雄大な景色を見るのか」

「うん、立体的に列島の形を見て、島の成り立ちを考えてくる」

「お前アウギュステに何しに来たの?」

 

 これも不評であった。え~楽しいと思うのになぁ、アウギュステってくり貫かれた様な面白い形してて気にならない?島の成り立ち……あ、ならない、そうですか。

 しかし残り五日、この調子なら無事終わってくれるんじゃないだろうか。うん、街歩きも思ったより楽しかったし、大丈夫そうかな。そんなに不安になる事無かったかなー。

 

 ■

 

 二 THE・神出鬼没

 

 ■

 

「いやぁ~本当に助かります~」

「いえいえ、これも騎士の使命であります」

 

 そんなに不安になる事無かったと言ったな?あれは嘘だった。

 

「助かります~」

 

 俺を挟むようにして歩くハーヴィン二人。一人は言うまでも無くシャルロッテさん。もう一人は、なんで居るのか我らがよろず屋シェロさん。何で居るの?

 ザニス高地への行き方は、主に二通り。陸路か船である。陸路の場合美しい珊瑚礁も見れるラヤの水辺を歩いて行く方法だが、一番手っ取り早いのは、小回りの利く船である程度移動する方法だ。ラヤの水辺は、また別の時にゆっくり見ようと言う事で、ここはパパッとザニス高地に行ってしまおうと言う事になった。てなもんで、移動は船である。が、ここで主に観光用の船に乗ろうと渡し場へ行くと、何故かシェロさんが居た。「あ、マズイ」と思った途端俺と目が合う。その時のシェロさんの笑顔ときたらね。トコトコ近づいて来て、直ぐに傍に居たシャルロッテさんにも気がついた。

 

「おやおや~これは奇遇ですね~」

「む?ジミー殿は、よろず屋殿とお知り合いでしたか?」

「ジミー?」

 

 ジミーと言う俺の偽名を聞き、顔を強張らせている俺と対照的なシャルロッテさんを交互に見たシェロさんは、俺の状況を察したのか更に笑顔になった。

 

「ええ~“ジミーさん”は、何かとお世話していますので~うぷぷ~」

「うん?何かおかしかったでありますか?」

「いえ~少し意外な組み合わせでしたので~うぷぷ~」

 

 俺氏、シェロさんに新たな借りを作る。

 

「シャ、シャルロッテさんも、シェロさんと知り合いだったんすね」

「はい、よろず屋殿には、リュミエール聖騎士団でもお世話になっております」

 

 なんら不思議な事では無い。コーデリアさんもシェロさんを頼っていたのだから。

 

「あー……シェロさんは、何をしてたんですかね?」

「えっと~実は、今からザニス高地へ行こうと思っていたのですが~私の行く所は、特に魔物が多い所なので~誰か護衛を頼める人は居ないかと探していたんですよ~」

「護衛、でありますか」

 

 シャルロッテさんがソワソワしだす。

 

「急な事ですので~本当は、知り合いの騎空士の方に頼もうかと思ってたんですが~どうもその方は、「急な用事で無理」と仲間の方が言っておりまして~」

 

 チラッと俺を見るシェロさん。誰だろうね~その騎空士って~?

 

「あうあう……」

「うふふ~」

 

 シャルロッテさんは、ウズウズしてる。シェロさんは、ニコニコしてる。俺は、シブシブしてる。

 

「……俺等ザニス行きますけど手伝いましょうか?」

「ジ、ジミー殿?」

「え~しかしお休みの最中のようですが~よろしいんですか~?」

「はっはっは……隣の騎士団長がお助けしたくてたまらないようですし」

 

 何をしたいか見抜かれたのか、シャルロッテさんが慌てておられる。

 

「じ、自分はその……と言うか、ジミー殿の方こそよろしいのですか?それに危険では……」

「俺実は、徒手空拳で武者修行をしていた事があり……」

「唐突な設定でありますな……」

 

 あながち嘘ではないがね。修行はしてたから。

 

「いやいや~ジミーさんは、こう見えてお強いので~シャルロッテさんが心配する様な事は、無いと思いますよ~」

「そうなのでありますか?」

「はい~」

 

 本当だろうか?と言う視線を受ける。まあ、気絶寸前の荒くれ者を殴り倒したぐらいだからね、実力なんて分からんでしょ。

 

「騎士団団長と比べては、流石にあれですがまあ魔物程度には、遅れは取りませんよ」

「うふふ~」

「……あと、シェロさんをほっとくなんて、できないなーおれー」

「そうですか、そうですか~」

 

 笑顔の視線がなんか怖いッ!!

 

「そ、そうでありますか……いや、義を見てせざるは勇無きなりとも言いますし、しかしジミー殿の案内もありましたから、けれどジミー殿が共にとあればここは、リュミエール聖騎士団団長として、よろず屋殿を助けぬ訳にはいかないであります」

 

 と言う事である。

 結局さっきから俺とシャルロッテさんは、シェロさんが何かしている間中、現れる魔物共をボコボコにしていた。

 

「いやはや、ジミー殿本当にお強いでありますな」

「いやいや、シャルロッテさんに比べたら」

「謙遜なさらず……と言うか、強すぎる様な気がするでありますが、本当にただ武者修行しただけなのでありますか?」

 

 本当にそうなんだなこれが。修行相手が人間か怪しいばあさんと、星晶獣と言う事を除けばだが。

 

「なんなら、即戦力としてリュミエール聖騎士団に来ても問題ないであります」

「いや、勘弁」

「そうでありますか、ちょっと残念でありますな」

 

 騎士団って柄じゃないし。

 

「お二人とも~ありがとうございました~」

 

 そんなところで用が済んだのかシェロさんがヒョコヒョコと現れた。

 

「お二人のおかげで~無事用事も済みました~」

「なんだったんです?色々と見てましたけど」

「うふふふ~実はですね~本当は秘密なのですが~……シェロちゃんのよろず屋ザニス高地支店を開店する事が決まりましてですね~」

「支店増やすんっすか?アウギュステだけでも、もう既に幾つかあるだろうに。しかも魔物が出る場所なのに……」

「シェロちゃんのよろず屋は、コンビニエンスですから~必要とあらば、どんどん展開しますよ~」

 

 流石カルテイラさんもライバルと言うだけある。この人も商魂逞しいな。

 

「それでは、自分は念の為魔物がいないか、周辺を見ておくであります」

「お願いします~私は、ジミーさんと少しお話していますので~」

 

 帰りの事も考えてか、シェロさんの護衛を俺に任せてシャルロッテさんが辺りの警戒に向かう。

 

「さてと~……うふふ~?団長さん、面白い事になってますね~?」

「疲れるだけっすよ」

 

 今の俺はジミーではない、星晶戦隊(以下略)の団長へと戻る。

 

「シャルロッテさんが居ると言う事は~コーデリアさんには既にお伝えしたんですね~?」

「当然ですよ」

「でしたら~私の方からも幾つかお耳に入れておきたい事があるんですよ~」

 

 ……あんまり聞きたくないような。

 

「まあ、聞きましょう」

「実は、リュミエール聖騎士団のある部隊が明後日任務のため、アウギュステへ一時滞在するらしく~シャルロッテさんの事は、知らないとは思いますが~少し気にしておいた方がいいかもしれませんね~」

「……引き合わせないほうがいいですか?」

「それは団長さんやコーデリアさんのご判断にお任せします~。今の彼女は、名目上は各国での騎士団活動査察中ではありますけど~本人は、進んで騎士団の方と会おうとは思わないでしょうね~」

「理由って知ってます?」

「そこまでは~、少なくとも正義への忠義は、あるままですからね~きっと個人的な事かと~」

 

 個人的な事か……団長と言う立場でありながら、理由でっち上げてまで騎士団休む程の理由って何だ?考えても分からない、ヒントが無さ過ぎる。

 

「了解です。情報感謝します」

「いえいえ~これもよろず屋のお仕事ですからね~うふふ~」

 

 ああ、笑顔が怖い、笑顔が怖い。

 

 ■

 

 三 秘密のシャルロッテちゃん

 

 ■

 

 シェロさんの用事も済み、ザニス高地もまあまあ満喫したのでミザレアへ戻ると、もうお昼を過ぎていた。俺とシャルロッテさんは、二人ミザレアのシャルロッテさん曰く「大人な、オシャレなカフェ」へと足を運んだ。が、ここで問題が起きる。

 ミザレアでは、水路での移動が多いのであらゆる店舗に言える事だが、低い位置にある店ほど良い店になる。そこら辺は、シェロさんにも聞いたことがある。シャルロッテさんの連れてきたカフェも、開けた水路に面した場所にあり確かにオシャレなカフェだ。その入り口にあるメニューの張られているたて看板を見る。

 

(……たっか)

 

 ランチメニュー2600ルピって高くない?そもそもドリンク一杯辺りの値段が高いよ、グラス小さいのに5~600ルピ以上すんの?そんなもんなのこれ?いやだわ、都会怖いわ~。

 などと、俺がメニューの中でも比較的安い物を探していると、隣のシャルロッテさんが、ぼそり、と一言。

 

「……お子様ランチが無いであります」

 

 そりゃねーよ。カフェの狙う層じゃねーもん、お子様ランチ食うやつ。と言うか、食うんかいお子様ランチ。

 

「……結構店混んでますね」

「え、ああ……そうでありますな」

「別のとこに、良さげな喫茶店あったんでそこ行きます?メニュー多そうですし」

「そ、そうですか……確かに、並んでいても時間がかかりそうですから、他の店のメニューを見て決めるのもいいであります」

「じゃあ、そう言うことで」

 

 そいで移動して、如何にも普通だが悪くない喫茶店。財布に易しいメニューの中には、輝かんばかりのお子様ランチがっ!

 

「ここにしましょう!」

「そうでありますな!」

 

 満場一致であった。

 結局店は混んでいるが、メニューが決め手である。オシャレなカフェ、またの機会に会おう。

 

「具詰め込みまくったミックスサンドうま」

「おお……見てくださいジミー殿、このお子様ランチの旗は、中々雄々しいと思いませんか」

「クリームコーヒーのソフトクリームの割合がデケェ」

「実質ソフトクリームであります」

「パフェ、パフェ食いましょう。俺チョコバナナにクリーム多目にしちゃうもんね」

「なななっ!ならば自分は、フルーツ多目で!」

 

 この時俺達の頭からは、オシャレなカフェは消し飛んでいる。こう言うのは、駄弁りながら食べるのが良いんだ。勿論行儀は悪い、悪いがしかし許してくれ。これがいいんだ。まあ、当然回りに迷惑かけるほどの事はしないが。

 

「けぷっ……フルーツ多目は、失敗でした」

「無茶しやがって」

「うぅ、しかし自ら多目にしたのに残すのは……」

「ほら、俺が余ったの食いますからよこして」

「め、面目ないであります……」

 

 ちょっと昔のまだ落ち着きのあった頃のジータを思い出す。胃が小さいような頃は、よく食べ切れないくせに粋がって飯大盛りにしては、食べきれないと泣いて俺とビィが食ってやったものだ。まあ、そう経たずして運動量の増加に伴って俺以上に食うようになったが。

 

「あらあら、仲の良い御兄妹ねぇ」

「面倒見のいいお兄さんだこと」

(ハッ!?)

 

 ついつい昔の頃を懐かしみ、面倒を見てしまったが、その時聞こえる喫茶店に居るおばあちゃん達の声。と言うか他の客もなんとなく俺達を見てる……微笑ましい視線で!!

 

(お、落ち着け……そう、兄妹と思われてるなら、まだいい……。そうだ、これで事案とか言われて通報されるとヤバいが、大丈夫だ。ロリコンとか言われて少し疑心暗鬼になってるな……)

 

 幸いにもいかにも憤慨してしまいそうなシャルロッテさんには、聞こえてなかったようだ。他人の噂を気にしすぎてもいい事は無いな。だが噂をそのままと言うわけにもいかないし……困ったものである。

 

「どうかされたでありますか、ジミー殿?変な顔をして」

「……嫌な噂されるといやだなーって事思い出しましてね」

「噂、でありますか……」

 

 噂について言うと、途端にシャルロッテさんの顔が曇り出す。ここで俺は、直感でこの話題に彼女の失踪について鍵があると感じた。

 

「シャルロッテさんも、なんか言われたんすか?」

「うぅ……まあ、色々と」

 

 少し押せば聞けるなこれ。今こそ彼女の秘密を探る一歩、押しに弱いだけが俺じゃない、押す事だって出来ると照明してやる。

 

「誰に聞いたんだか……酷いもんですよ、噂ってのは。あること無い事ばかり。言った覚えも無いのに、俺の女性の好みとか趣味趣向とか……」

「皆誰しもが何かを噂されるのでありますな……ジミー殿」

「はい?」

「ジミー殿は、小さな女性をどう思いますか」

 

 空気が死んだ。

 

 ■

 

 四 黒い謎生物「迂闊に話題振って、ロリコン疑惑自ら広めた男がいたんだってよ~」某風星晶獣「ナ~〜二ィ〜~!? ヤッチマッタナwww」

 

 ■

 

(その聞き方は、まずいですよシャルロッテさんん゛ん゛っ゛!?)

「ハーヴィン族は、小さいことを理由に、色々と言われる事は少なくないであります。ジミー殿は、小さいのは、ダメとお思いでありますか」

(その言い方もまずいですよお゛お゛ーーーーっ!?)

 

 さっきまでの微笑ましい視線が、俺一点に集中、冷えた視線に変わった。死にたい。

 

「そ、それはぁ……ど、どういう意味でですかー?」

「……前お話したように自分は、リュミエール聖騎士団の団長であります。けれど、騎士団の団長がハーヴィンである事に不満を持つ者が、騎士団内外に居る事をしりました」

「あ、仕事の話ね!ハーヴィン、そうねー他に比べて小柄な種族だから、うん!言われるよねー!!」

「……?何故声を大きくするでありますか?」

「ちょっと必要だったんで……」

 

 何とか俺への視線が和らいだが、まだ疑念が晴れきった気がしない。だがこれ以上の弁明は、露骨でむしろ悪手かもしれん。シャルロッテさんに対しても不信感を与えてしまう。畜生。

 

「ま、ままあ……なんだ、そのー言いたい事は、分かりました。何をどう言われたかは、聞く気は無いですけど、ほっときゃいいんじゃないですかね。噂なんて、根も葉もない事。有名税なんて言葉ありますけど、騎士団トップともなりゃそんなもんですよ。嫌ですけどね、そりゃ勿論」

 

 これね、同時に自分に言い聞かせてるのね。

 

「それは、確かに最初はそうも思いました……けれど誇り高き騎士団と仲間達までもが嘲笑されるのは、自分耐え切れないのでありあます!」

「はあ……まあ、確かに仲間とかまで色々言われちゃあねえ」

「ハーヴィンである事を怨みこそしませんが、やはりそのような事を言われてしまえば、見返したいと思ってしまうであります。自分が、ヒューマンやエルーンのようにスラリとした身長に、ドラフの様なメリハリある肉体には、憧れがあります……」

 

 一般的女性やドラフのようなシャルロッテさん……いや、なんか違うな。ダメじゃないが、なんか違う。

 

「まあ、そのままの良さと言うのもありますし……」

「しかし自分は、もう24の大人の女性であります!なのに子ども扱いされるのは、やはり我慢なりません!」

 

 24が大人かと言われれば、まあ成人女性だけど成人してたかだが4年の人じゃあ、まだまだ若いと言われそうにも思えますがねえ。

 

「……ジミー殿は、ハーヴィンでも身長を伸ばせると思いますか」

「物理的にですか?」

「言い方がなんか怖いであります!違うであります、もっとこう身長が伸びる薬とか、魔法的なのも込みで聞いてるであります!」

 

 背骨増やすとかじゃないのか。薬ねえ……まあ買わんし頼りたくないな、怖いわ、それこそ、身長が伸びる薬とか。あと魔法はなあ……こっちありそうだけど、なんか対価払わされそうでやっぱ怖い。

 

「どっちもあっても、なんか怖いんでやです俺」

「むう」

 

 ちょっと不満だったのか、頬を膨らましながらオレンジジュースを飲むシャルロッテさん。多分そう言う仕草が子供っぽく見られるかと……だが言わない、あとカワイイ。

 

「……ふふふ~しかし実は、自分密かに身長を伸ばす秘薬や魔法の存在を調べたのであります!」

「調べたんすか……」

「し、信憑性は高いでありますよ?薬に至っては、実際に背が伸びたと言う評判も各島で聞いたでありますし」

 

 俺の中でそれはなお更信憑性が下がるがそれは……。

 

「……え、と言うかまさかそれ手に入れに行くんすか?」

「まあ、ええ」

「場所の目星は……」

「薬の方は、一応……あと自分の姿を変えれる泉とか、そう言うのはまだ具体的には」

 

 この空には、そんなに見た目に関しての薬や伝説があるのか……俺知らなかったよ。けど自分の姿変えれるなら、イケメンとは言わないがもうちょっと覚えてもらえる姿にしたいかもしれない。いや、信じてないけどね?あったらまあ、いいな的な?

 

「けど騎士団の仕事あるんじゃあ……」

「あ、いや……ああ、心配無用であります。ちゃんと休みをとっているであります」

 

 今目が少し泳いだね?……待って待って……俺の情報じゃシャルロッテさんは、現在【騎士団査察】を理由に国を出て以来突如姿を消し失踪とコーデリアさんから聞いた。その本当の理由は、って言う話だけども……えっ!?これっ!?リュミエール聖騎士団現騎士団長失踪理由これもしかして!?俺コーデリアさんに言うのこれ?「シャルロッテ団長、背伸ばしたいってよ」って言うの!?

 

「どうしたでありますか?また突然顔色が悪いですが」

「いや、ふと知人に伝えるべき事を思い出して……ちょっと伝えづらい事だから気が重いなぁと……」

「なるほど、そう言った事は自分も身に覚えがあるであります。仕事柄部下には、厳しくとも心を鬼にしても言わねばならない事もあるゆえ」

 

 正に貴女の事だけどね言い辛いこと。と言うか、正に貴女の部下に言わないとダメな案件なんだよ、心を鬼にして貴女の事言わないといけないんだよ、言い辛いけど!!

 

「まあそう気に病まず、後でまた美味しい物を食べるであります」

「はい……ありがとうございます」

 

 どう言やいいのさこれ……。

 

 ■

 

 五 その頃の、空

 

 ■

 

「明後日の昼頃には、アウギュステか」

「羽を伸ばすには、丁度いいぜ」

「お前には、文字通り羽があるしな」

「まあな!」

 

 蒼き騎空艇グランサイファーの甲板で、ビィと語り合う一人の男。舵を取る姿が様になる彼はラカム、グランサイファーの操舵士であり【ジータと愉快な仲間たち団】の一員でルリア達と空に旅立ってから最初に仲間になった一人であった。

 

「よろず屋には、ビーチで開いた新しい店にも招待されたしな、たまには帝国だとか星晶獣だとかの事忘れてのんびりしたいぜ」

「オイラも最近戦ってばっかで疲れちまったよ」

「お前は、別に戦っては無いだろ?」

「馬鹿言うなよラカム!オイラだってな、立派な騎空団の一員だぜ!オイラがいなきゃ、誰がジータの暴走とジータの暴走と、あとジータの暴走を……」

「あ、悪かった……だから戻ってこいハイライト」

 

 自分でジータの事しか出てこない事と、その時の事を思い出したのか目がどんどん死んでいったビィを見て、ラカムは途端真顔で謝罪した。

 

「まあ、そう言うのから逃げるために休むんだけどな」

「あ、ああ!そうだよな!オイラ、アウギュステに着いたらよろず屋に兄貴の事も聞くんだ!」

「ああ、例の故郷で世話になったって言う奴か……星晶戦隊(以下略)の団長って話だが、それだけの男なのか?」

 

 ラカムも最近噂の星晶戦隊(以下略)の事は、聞いている。星晶獣6体だとかそれよりも多いとか、それに負けない濃い面子を従える騎空団、それを率いる男の事を、一騎空士としても気になった。

 

「うーん、ザンクティンゼルにいた頃は、そんな強いとか気にしなかったなあ。けど……」

「けど?」

「考えてみれば、オイラ以上にジータに付き添って色々巻き込まれてたから、何時の間にか鍛えられてたって事は、あったかもしれねえなあ」

「俺、お前の兄貴が一気に気の毒に思えて来たぜ……」

「オイラは、当時から気の毒に思えてたよ……」

 

 脳裏に浮かぶ満身創痍の少年の姿に涙するビィ。まだ顔も知らぬ少年があのジータに振り回される姿を想像し思わず黙祷するラカム。だが、別に死んでいない。

 

「もし会えたら、そいつに何か奢ってやるか……」

「そうしてやってくれよ。きっと喜ぶから」

 

 金銭面的に彼は、奢ってもらうと本気で喜ぶがその事をまだ彼らは知らない。そしてアウギュステにその少年が居る事も知らず、帝国がまた何かやらかそうとしている事も知らない。

 皆、何もまだ知らないのだ。

 

 

 ―――星晶戦隊(以下略)、ギュステバカンス三日目。【ジータと愉快な仲間たち団】アウギュステ到着まで、あと二日。

 




今回のイベントも楽しいですね。ところで多くの騎空団には、巨人をうなじ事吹き飛ばせそうな方が結構いるんですが、それは。

ジータは、病んでるのか。もうちょっとしたら判明。

本当は、カリおっさん出したいんだけど、うちおっさん居てもクラリスいないのね。おっさん出す以上、クラリス出さないとってのもある。まあ、取り合えず出すかもしれないのねん。

12.11 
ザニス高地への移動法を、改めてゲームを確認してたら、アウギュステの11章の場所を選択した説明がザニス高地なのですが、10章を選択した時のラヤの水辺の説明に「ザニス高地に至る砂浜」とあり自分の考えた場所が全く違うと判明。やっちまったぜ。
詳しい地理がわからないので、ラヤの水辺と大瀑布の中間をザニス高地として考えて修正しました。ただし、11章の場所が、ザニス高地である場合もあるので、また修正するかもしれません。
ここ独自の設定なので、ご注意ください。

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