俺は、スーパーザンクティンゼル人だぜ?   作:Par

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三人まとめて出す事にした。今更ながらキャラ崩壊注意。


トリプルフェイト 魔蛇とトレジャーハンターと(前編)

 ■

 

 一 ゆるやかな一時

 

 ■

 

 小さな島での盗賊騒動であったが、無事盗賊団を全員秩序の騎空団に引渡しやるべき事は全て終えた。後はあちらのお仕事だ。最近ここら辺を騒がしてた盗賊団だったらしいので報奨金も出た。やったぜ。

 そんなこんなの後、一路ガロンゾへ向かう。道中また休み休みになるが確実に船はガロンゾへと進んでいる。アウギュステからは幾つかの島々を通る事になるバルツ、アルビオンと言った有名な島もあるが、今回はそちらには寄らず現在エンゼラは深い森の島ルーマシー群島付近を飛行中である。

 

「緑しかねえな」

「緑だなあ、団長」

 

 近づきつつあるルーマシー群島、もう甲板から見える森林をゾーイと共に眺める。

 ルーマシー群島はその殆どを木々に覆われた島。気候の変化が少ないためにこの木々が枯れる事は無い。鬱蒼とした森林からは、船からでも強い湿気を感じる。

 

「端に見えるのが騎空艇停留所か」

「ユグドラシルの話じゃあ、そう言うのは確か島西側に集中しているそうだよ」

「出身者居て助かった」

 

 森と大地の島。ここには星晶獣ユグドラシルが眠る。うちのユグドラシル・マグナの本体だ。リヴァイアサンに続けて軽い里帰りである。

 

「必要な補給品もそう無いから、停泊は一日だけでいいや」

「だとすれば後数回島を経由してガロンゾだな」

「その前にシェロさんに会いたいけどね」

 

 ガロンゾ到着前に幾つか依頼でも受けて金がほしい。修理か改修かまだ決めてないが、どの道エンゼラの事で金がいるのだ。

 

「とは言えユグドラシルの本体には会っときたいよな」

「そうだな。彼女達は普段本体とのリンクをあえて切っているから、お互いの状況や旅の話もしたいだろう」

 

 ティアマトもリヴァイアサンもそうであるが、マグナシックスは皆各島にいる本体と意識共有のリンクを切っている。理由はそれぞれの旅を楽しむため。ティアマトを見ているとよくわかるが、最早マグナ達は独立した自我を持ち始めている。コロッサスもイオちゃんに聞いたが、あんな謎の感情表現方法(しかも表現豊か)はとらない。これはゾーイとB・ビィが言うには俺が与えた影響らしいのだが身に覚えがありませんなあ。

 まあざっくり言うとプライバシーを護るためにリンクを切っているのだ。緊急事態であれば一方が強制的にリンクを繋げれる通称「緊急リンク」があるらしいので問題にはならない。

 

「さてと、そろそろ停泊準備だ」

 

 宿は取らずそのまま船で寝るが、停泊施設がある以上停泊申請は必要だ。その後もエンゼラの調子を確認したりする事がそれなりにある。ゾーイとの談笑もいいが俺もそろそろ戻るとしよう。

 

「それじゃあ船内に」

「ベックシュエェーイッ!!」

「おや?」

 

 このクシャミは……何と言う酷いクシャミ、これはティアマトか。甲板では腹巻巻くか、上着羽織りなさいってのにお腹冷やしても知らないよ。それにあいつクシャミすると軽い辻風を起こすから困る。以前フィラソピラさんは、それで墜落して俺の顔面に落ちた。

 

「きゃあっ!? 何よこの風ぇーーーーっ!?」

 

 そうそう、こんな感じで――。

 

「おい、ふざけんな、ぐべえっ!?」

「あ、しまった……!」

「おおう、団長が踏み潰されてしまった……」

「ぐ、ぐぐぐ……っ!」

「あ、けど割と頑張っている」

 

 何だというのだ。子供一人分ぐらいの重量が俺の上に。くそいてえ。

 

「ア……スマーン、マタヤッテシマッタ」

「あ、あの(笑)野郎……お、おいあんた大丈夫か?」

「アタシは……あ、ちょっと待った! メドゥシアナ、ストップッ!! まだ駄目えっ!」

「あん?」

「ガアァッ!?」

「のおおおぉぉぉぉーーーーっ!?」

「きゃあああっ!?」

 

 こ、今度はなんだっ!? 明らかにでかい重量の物が船に乗ってぎゃああっ!?

 

「せ、船内放送……! なんか、船のバランスが……ひえっ! 崩れたから、皆何かに掴まってぇ~っ!」

 

 船内各所の伝声管(星晶パワーでの音響アップ済み)からセレストの慌てた声が聞こえてくる。

 

「グワァ……」

「大丈夫メドゥシアナ!? アナタも風に煽られたのね!」

「この野郎、貴様の仕業かあ!? なんて事しやがるっ!?」

「きゃあっ!? ア、アタシじゃないわよ!? ちょっと、掴まないでよ!?」

「団長何かに掴まらないと……あ」

「あ」

「え?」

 

 船がまたグラリと揺れて突然の浮遊感。

 なるほど、これは浮いてますねえ……。と言うか落ちてますねえ……。

 

「いや、まだだっ!!」

 

 甲板の柵を咄嗟に掴む。やったぜ、ギリギリセーフ。

 

「ブションッ!!」

「うおっ!?」

「あ、馬鹿今離したら」

 

 突然の強風。と言うか、クシャミ。

 

「オォウ……スマン」

 

 ああ、やっぱり君だったんだねティアマト。うふふ、許さん。

 

「ふざけんなああぁぁーーーーっ!?」

「いやああぁぁっ!? なんでアタシまでぇぇーーーーっ!?」

 

 ああああああーーーーっ!?

 

 

 ■

 

 ニ フェイトエピソード 誇り高き蛇姫(笑)

 

 ■

 

 星晶獣と言う存在は、嘗てあった覇空戦争で空の世界へとやって来た星の民が、空の世界にある「概念」や「力」そのものを兵器として作り上げた存在である。基本的に星の民にしか従わず、覇空戦争で猛威を振るったその存在は人々に恐れられた。

 しかしそれも古の時代の事。覇空戦争も厳密な開戦、終戦時期も不明の過去である。生み出された星晶獣達は、星晶の形となり眠り、ある者は島へと根付き神と崇められ、ある者はその強大な力を天災の如くふるい、ある者は人と共に生きた。

 そしてその中で見たものを石へと変えてしまう魔眼を持つ者がいる。巨大な魔蛇メドゥシアナを従えた少女は名をメドゥーサと言った。

 覇空戦争を終えた後の星晶獣はある意味で自由である。先述の通り崇められる者もいれば、恐れられる者も居る。メドゥーサはどうであろうか? 彼女は星晶獣としてただ奔放に生きていた。星晶獣としての誇りを持つ彼女は、つまり星晶獣とは人々に畏れ崇められる存在と思っている。そして星晶獣として相応しい力を見せ付ければ、人々は確かに彼女を畏れた。何より家族とも言える愛おしい魔蛇メドゥシアナの存在は正しく彼女が星晶獣である事を物語った。

 メドゥーサはメドゥシアナに乗って空を移動している時に騎空艇を見つけると悪戯心から、船に飛び乗り人々を驚かした。星晶獣である自分をみて慌てふためく人間を見るのは気分が良かった。稀に無謀にもメドゥーサに剣を向ける人間も居るが、そう言った輩は一瞬で石となってしまう。尤も人を驚かせたりするのが好きなだけで殺す気は無く、適当に戻して去っていくが。

 この日もメドゥーサは手頃の騎空艇を見つけてまた人間を驚かせてやろうかと思った。暫しルーマシー群島で過ごしていた彼女にとって丁度いい暇つぶしであったのだ。

 そう思ってメドゥシアナに乗って何時ものように騎空艇へと乗り込もうとした。そして何時も通り脅かしてやろうと悪戯小僧のように「にししっ!」と笑っていた。

 だが突然吹いた辻風。それに煽られ本来華麗に甲板へ着地する予定が狂う。着地地点はずれて甲板に居た少年の頭にそのまま尻から着地してしまう。そして続けて降りようとしていたメドゥシアナも風に煽られ墜落。その重量で船はバランスを崩し大きく傾いて少年と少女は哀れルーマシーの深き森の中へと墜落していった。

 

「あんたの所為よ!? 何で私まで落ちなきゃならないのよっ!」

「いや、俺の所為じゃないと思うんだ」

「なによ!! アタシの所為だって言うの!?」

「そうは言ってないじゃん……」

 

 何か彼女に言えるかといえば、運が無かった、これに尽きる。

 

 ■

 

 三 出会いは突然、なお日常茶飯事

 

 ■

 

 突然エンゼラ、と言うか俺に落ちて来てそのままティアマトのクシャミに吹き飛ばされ俺と共にルーマシーのどこぞへと落下した少女。幸いどちらも擦り傷程度で済んだ……済んでしまうのか俺。明らかに4~50mはあったんだが……。

 

「くっそティアマトの奴、あとでぶちのめす……。だいぶ風で流されたな……エンゼラが見えねえ」

「ちょっと聞いてるの!?」

「待て待て、今色々確認しなきゃなんだから」

 

 一方でこの少女もかすり傷で済んでるのは何でじゃい、って普通はなるのだが。

 

「誇り高き星晶獣であるアタシがよりにもよってこんな事で落ちるなんてえっ!」

 

 と、先程から自分の正体を隠そうともしない。なるほど、星晶獣であるならかすり傷で済むだろう。雰囲気でわかってしまうので疑う気も無い。

 

「おい、星晶獣ならそのぐらいの怪我平気だよな? お前飛べたりしないの?」

「何でアタシがあんたの言う事を聞かなきゃならないのよ? アタシは誇り高き」

「はいはい、それはいいから。飛べるならエンゼラ、さっきの船行って助け呼んで来てくれよ」

「……」

「うん?」

 

 突然黙ったな。

 

「嫌よ。アタシは人間の頼みなんて聞いてあげない」

「……飛べねーの?」

「と、飛べないとは言ってないでしょっ!?」

「じゃあ助け呼んでよ」

「だ、だからあんたの頼みなんて」

「飛べないんだ?」

「飛べるわよっ! メドゥシアナが居ればアタシだって!!」

「メドゥシアナ?」

「あ」

 

 なるほどさっきのデカイ何かがそうか。

 

「ならしゃーないか。狼煙でも上げるかな……火種どうすっかな、最近魔法使って無いし杖も無いのに火出るかな?」

「ちょ、ちょっとっ! あんたアタシの事役立たずとでも思ってないでしょうねっ!?」

「思ってない、思ってない」

「目を見て言いなさいよ、目をっ!!」

 

 煩いなあ。なんとも見ため通りの少女だ。

 

「じゃあ君何が出来るの?」

「え? あ、ふふーんっ! 聞いて驚きなさい! アタシはメドゥーサ、全てを石にする魔眼を持つ誇り高き星晶獣よっ!」

「石かあ」

「ふふーんっ!」

「まあ今はいらないかな」

「んなあっ!?」

 

 と言うか普段から別に石はいらない。

 

「何よその薄い反応はっ!?」

「いや今そう言うのいいんで……もうちょっとこの状況を打開できる能力無い?」

「それは、その……えっと」

「無いのね」

「無いなんて言ってないでしょっ!? なんだったらこの一帯全部石に変えて場所知らせてやるわよっ!!」

「やめなさいよ、自然破壊だぞ」

 

 誰もそこまでしろとは言っていない。

 

「それにね、アタシは別に平気なのよ。メドゥシアナが助けに来てくれるんだから!」

「さっきのデカイ奴?」

「そうよ! メドゥシアナならアタシを見付けるなんてわけないんだからね!」

 

 そりゃ助かる。少なくともこの子と行動を共にすればエンゼラからの助けが来る可能性がある。

 

「じゃあ大人しく待つか……っておいおい」

「何よ?」

 

 座って助けでも待とうと思ったらメドゥーサとやらが勝手に何処かへと行こうとしていた。

 

「何処行くんだよ」

「あんたには関係ないでしょ」

「いやあるっつーの。そのメドゥシアナ? とか言うの待ちなんだから、お前に消えられると俺が困る」

「あんたが困ったとしてアタシは困らないわよ」

「そんな事言うなよ……それに道なんてわからんだろうに」

「勝手に決め付けないで。アタシはここの事なんて自分の庭のように知ってるわ」

「あれま、そうなの?」

「そうよ、ずっとルーマシーで過ごしてたんだから」

 

 なるほど土地勘はあると。

 

「人の居る所に案内とか頼めない?」

「だーかーらー! 何でアタシがあんたの頼みを聞かなきゃならないのよ! 第一あんたさっきから生意気よっ! 愚かな人間の癖にアタシが怖くないわけ!?」

「怖いって言われてもなあ」

 

 小柄の少女がプリプリ怒っても、その……カワイイだけですねえ。

 

「別に怖くはねえなあ」

「あんたさっきの話聞いてたの!? アタシは全てを石に変える魔眼を持つメドゥーサよっ!? あんたなんか簡単に石に変えれちゃうのよ!?」

「あ、自分弱体回復(クリア)系各種持ってるんで……」

「きいぃーーーーっ!! ほ、ほんとに生意気っ!」

 

 あはは、地団太踏んでら。弱体気にしてたら騎空士なんて出来ないですよ。ディスペル、クリアオールは必須ですぜ。

 

「あと悪いけど俺星晶獣に慣れててさ、あんま人型だと特に怖くないって言うか……」

「星晶獣に慣れてるって何よっ!? 嘘言わないでよ、普通慣れないでしょっ!」

「だよな、普通慣れないよな」

「なんであんたが同意するのよっ!?」

 

 君もエンゼラ来たら理由わかるよ……。

 

「わけわかんない! ほんと何なのよあんたっ!? 言っとくけど石化出来なくたってね、あんたを殺すぐらい容易いのよっ!」

 

 そう言うやメドゥーサの長い光沢を放つ白髪が、ゴワゴワとうねり出すと髪が纏まり3匹の蛇となった。

 

「さあどうかしら? アタシはこんな事だって出来るのよ? 絞め殺すのも噛み殺すのもわけないの、ほらほら怖いでしょ? さあ畏れなさい愚かな人間よ!!」

 

 カワイイけど、若干ドヤ顔なのがムカつくな。だがこの感じ……はっは~ん、なるほどね。割と(笑)側の星晶獣なんですねこの子。ちくしょうめ。

 

「胃痛の予感がする。こうしてくれるわ」

「わあ!? な、何するのよ、やめなさいっ!?」

 

 生意気な娘はこうしてくれる。うりゃうりゃ。

 

「ふっ、蛇の三つ編みだ」

「ああっ!? 髪が全部後ろで編まれた!?」

 

 メドゥーサの長い髪を全部編み編みにしてやったぜ。蛇になった髪も編みこんだが、蛇が若干苦しそうだ。

 

「ほーどーきーなーさーいーよーっ!!」

「わははははっ! ほざけ小娘」

「むきーっ! しかも結び方が巧いのが余計に腹たつぅ~っ!!」

「幼馴染にせがまれ何年も髪の手入れをやらされた俺を舐めるなよ」

「幼馴染って誰よ!?」

 

 全空一の暴れん坊の女の子です。

 

「まあおふざけはここまでだ。悪いけど一緒に居てもらうぞ」

 

 我ながら悪党みたいな台詞だなあ。

 

「うぅ……厄日だわ、星晶獣である私が何でこんな……」

「人間だろうと星晶獣だろうと運の悪い時はある」

「あんたに星晶獣の何がわかるのよぉ……」

 

 まあ色々とわかってるつもりだよ。普通の人間よりは。

 メドゥーサも大人しくなったので、今度こそ腰でも落ち着けようと思ったのであるが。

 

「……なんか音、っていうか声聞こえない?」

「はあ? 突然何よ」

「いや人と言うか獣の声が」

「うーん?」

 

 俺に言われてメドゥーサも耳を澄ます。気のせいと思ったが、確かに聞こえる。森の奥から俺たちに向かってくる獣、いや魔物の叫び声が――。

 

「おいおい、ざっけんなっ!!」

 

 奥から姿を見せた声の主“達”。それは数が把握出来ない程の魔物の群れであった。

 

 ■

 

 四 Green Forest 止まらずに、ひたすら行け!

 

 ■

 

 突然津波の如く押し寄せてきた魔物の群れ。それは弱肉強食の行列であった。

 ラビット系の草食魔物を狙うラウンドウルフの群れ。そしてそのラウンドウルフを狙って追って来たマンイーターの群れ。獲物を求めた群れが更なる上位者の獲物になろうとしている状況。自然界とは実に厳しいものなのだ。

 

「何で俺達の方にくるんだあああぁぁぁーーーーっ!?」

「いやあぁぁーーーーっ!?」

 

 そんな自然の厳しさを身をもって今俺達は体験している。

 全力ダッシュで走る俺達。迫る魔物達。さっきから右へ左へ走ろうがきっちり魔物達はついてくる。なんだろうねこの状況。

 

「こ、この野郎っ! こっち来るんじゃねえっ!! くらえ【エーテルブラスト】!!」

 

 剣は落ちる時に無くした。仕方なく無手で魔法を発動させる。魔術媒体が無いので威力は落ちるが、魔物程度なら大丈夫のはず。

 

「GAAAAaaaa !!」

「おぎゃあぁーっ!? ぜんぜん減ってないっ!!」

 

 だいぶ吹き飛ばしたと思ったが全く減ってなかった。むしろ今ので俺達の方に魔物達の意識が向いてしまった。

 

「余計な事してるんじゃないわよっ!? 馬鹿なの!?」

「うるせい! ならお前なんとかせい!」

「ふんだ! 見てなさいよ、偉大なる星晶獣の力っ!! お前達みんな石になっちゃえ!」

 

 メドゥーサの瞳が怪しく光る。するとその光を浴びた魔物達が瞬く間にカチコチの石に変わった。ううむ、疑ってはいなかったが確かにこれは凄い。

 

「おいおい、やるじゃんお前っ!!」

「ふふんっ! これがアタシの」

「GUOOoo !!」

「実りょ、くよ……」

 

 石化した魔物。間違いなく石化している。のだが、しかしその後ろからまた波のように魔物が溢れかえった。

 

「ちょ、ちょっとふざけないでよっ!? 石になれ!」

「GUGYAAaaaa !!」

「い、石にっ!」

「GAAaaaa !!」

 

 もう何度か魔眼を使用したようだが、結局先頭の魔物が石になってその後ろからウジャウジャと魔物が溢れかえった。

 

「駄目じゃんっ!?」

「う、うっさいわね! 数が多すぎるのよ!」

 

 結局再び逃走開始。泣けてくるね。

 

「お前めっちゃ自信満々だったじゃん!? 頑張れよもうちょっと!」

「簡単に言うんじゃないわよ、これ連発するの疲れんのよっ!? ドライアイになったらどうしてくれるのよっ!?」

「そんな場合かよ! もうメドゥ子だっ! お前なんてメドゥ子って呼んでやる!」

「な、なんて事言うのよっ!? ちゃんとメドゥーサって言いなさい!」

「うっせ、うっせっ!」

「きいぃーっ! この馬鹿人間!」

「はぁーーーーんっ? 馬鹿って言った方が馬鹿なんですぅーっ!」

「じゃあやっぱりあんたが馬鹿じゃないのっ!!」

「……」

「あ……うきいぃぃーーーーっ!! 生意気、生意気いぃーーーーっ!!」

 

 わははは、星晶獣だから何年生きてるか知らんが精神年齢は所詮見た目通りの小娘よっ!!

 

「やはりお前も星晶獣(笑)だったようだなぁ! 誇り高き星晶獣と言っても、俺の目は誤魔化せんぞ!」

「星晶獣(笑)って何よ、馬鹿にしてんのっ!?」

 

 してるんだよ。

 

「てかメドゥ子、俺達今どこ走ってんだ!? 詳しいんだろ!!」

「メドゥ子って言うな!! もうアタシにもわからないわよ! 似た景色の中無茶苦茶に走り回ってんだから!」

 

 くそう、土地勘あるメドゥ子でも駄目かっ! もう周りは緑緑のド緑地帯。似た木々が茂る所為で同じ場所をグルグル走ってるかと思うぐらいだ。せめて魔物達から身を隠せる所があれば。

 

「あ、あれ見なさいっ!」

 

 すると突然メドゥ子がある方向を指差す。何とした事か、そこには古びれているものの立派な遺跡があるではないか!

 

「何と言う光明っ! おい逃げるぞ、あんな数相手してられるか!」

「言われなくっても!」

 

 必死に走って滑り込む。入り口が人間に合わせていたのでマンイーターの様な大型は入って来れない。小型中型の魔物は何匹かついて来るが、入り口が狭いのでそう数も多くない。足で蹴って何とか追い出す。

 

「おら、こっちくんな! おい、もっと奥行くぞ!」

「アタシに命令しないでよ!」

 

 そういいながら二人で遺跡の奥へと逃げる。まだ諦めてないのかマンイーター共が入り口をガリガリしてるから出るに出れん。

 

「あいつらが諦めるまで何処かに身を隠すぞ。メドゥ子、この遺跡は知ってるのか?」

「知らない」

「知らないって、あーた……」

「そんな事言われても知らないものは知らないわよ。暫くルーマシーに居たからって島全部の遺跡なんて把握してないわ。まあ殆どは知ってるけど」

 

 ふふーん、と胸を張っているが俺は今この遺跡について知りたいのである。

 しかしメドゥ子でも知らない遺跡となると途端に不安になってきた。遺跡と言えば罠である。実際本当に「遺跡=罠」なのかは知らないがそんなイメージがある。これは不用意な行動は避けたい。

 それにしても暗い。ちょっと奥に入っただけでもう外の光りが届かなくなった。しかたなくパチンと指を鳴らし指先に火を灯す。魔法の応用である。杖も無いためマッチ程度の小さな火だが、松明もない中で明かりの無い遺跡を注意深く移動するにはこれしかない。

 

「あら、あんた器用なのね」

「星晶獣様に褒めて頂き光栄ですねえ」

「あんたそれ本気で思ってないでしょ」

 

 そのとおりだよ。

 

「にしても相当古いなこの遺跡……」

「ルーマシーにある遺跡なんて皆大昔のよ。なんだったら覇空戦争時代のもあるわ」

「100年以上まえじゃねえか、いや下手すると数千年……」

「まあその殆どは壊れてるかしてるわよ。大樹に埋もれて姿を消した物も少なくないわ。殆どが手付かずのままでね。尤も愚かな人間が下手に遺跡に手を出せば……」

「出せば?」

「遺跡に食われるのがオチよ」

 

 食われる、とはまた言いえて妙である。浪漫と宝を求めて命を落とした者は数え切れないだろう。そして俺達もまたその遺跡の腹の中に居る。

 

「おお怖い怖い。お前のとこのメドゥシアナはまだ来ないのかね」

「勿論探してはいるはずよ。ただアタシ達もあちこち走り回ったから……」

 

 少し自信無さげに話すメドゥ子。今更ながらこんな事になるなんて予想外だったんだろう。俺もだけども。

 

「そう心配するなよ、ちゃんと助けくるって」

「だ、だれが心配なんて! それにあんたに慰められたくないわよ! 馬鹿人間の癖に!」

「おう、生意気言うのはこの口かおらぁ~?」

「ふげっ!?」

 

 馬鹿人間と言われむかついたので、空いてる方の手でメドゥ子の口を引っ張ってやる。

 

「にゃにしゅるのよ、このおぉ~!」

「んげっ!?」

 

 そしたらメドゥ子まで俺の口を引っ張る。と言うか両手どころか解けた髪の毛の蛇まで総動員して顔を引っ張りやがる。

 

「ふがが……っ! それは、卑怯だぞ!?」

「あはは、なんてマヌケ面かしら! あんたにはお似合いよ!」

「んだとこの野郎っ!」

「ふぐっ!?」

 

 片手と言う圧倒的不利な状況ではあるが、負けてなるものか。

 

「んががががっ!!」

「ふぎぎいぃっ!!」

 

 真っ暗な遺跡の中で小さな明かりを頼りに喧嘩する男と星晶獣。しかも見た目はいい歳した男が少女と喧嘩してる風にしか見えない。その点我ながら情けないが、しかしこいつは星晶獣である。遠慮は不要!

 だが果てして何時までも続くかに思われたこの不毛な争いも終わる事になる。

 

「ふが……? おい、待て」

「あによ、降参する気になったかしら?」

「誰がするか、だけど待て。今なんか変な音がした」

「変な音?」

 

 お互い相手を掴んでいた手を放し耳を澄ます。どうも気のせいでもなく地下から聞こえるようだ。

 

「音ってか声かこれ?」

「ええー、また魔物じゃないでしょうね」

「いやこれもしかして人の声かもしれん」

 

 トレジャーハンターか? 俺達よりも先に遺跡に飛び込んだ誰かが居たのだろうか。

 

「ねえこれ足跡じゃないの?」

「うん?」

 

 メドゥ子に言われて数歩先の床を照らす。確かにそこには明らかに人間の靴による足跡があった。

 

「足跡、かなり新しいな……それも二人分だ」

「馬鹿ねたった二人で遺跡に入るなんて。死にに行くようなものじゃない」

「馬鹿なのか自信があるのか……なんにしても今の声の主はこの二人かもな」

 

 足跡はまだ続いている。地下から小さくとも声が響いて聞こえたので深く潜ったのだろうか。

 

「真っすぐ進んでる。迷いが無い……かなり慣れてるな」

「助けに行くわけ?」

「いや助けを求められたわけでもないしな……む?」

 

 今気づいたがこの足跡、中央を通らず壁際を進んでる。唐突に、用心するように。

 

「ふーん、まあアタシも別に興味なんて無いけどね」

「あ、待てメドゥ子!」

「え?」

 

 メドゥ子が一歩踏み出す。そこで俺は猛烈に嫌な予感がした。露骨に足跡が方向を変えすぎているからだ。そしてその予感が当たっていると証明するようにメドゥ子踏み出した足の下から「カチリ」と何かの音がした。

 

「え、今の音何?」

「おい……」

 

 こんな遺跡で不穏なスイッチ。道を避けている足跡。それが意味するものは――。

 

「あ」

「あ」

 

 突然の浮遊感本日二回目。ふっと足元を見ると、通路がパッカリと開いていた。勿論俺達は仲良く落下する事になる。

 

「ふざけんなあああぁぁぁーーーーっ!?」

「いやああぁっ!? なんでまたこんな目にいぃーーーーっ!!」

 

 もういやだ、こんな展開。

 

 ■

 

 五 クロスフェイト ドタバタトレジャーハンターズ

 

 ■

 

 若干15歳、マリーと言う少女は若くしてトレジャーハンターとして身を立てる少女である。火器にも精通し、魔物相手でも負けない度胸がある。そして幾つもの危険を切り抜け、お宝を手にして来た。

 一方カルバ。こちらもまた腕利きのトレジャーハンターである。マリーよりもトレジャーハンターとしての経験は長い。特に彼女は罠に関してはプロフェッショナルであった。ありとあらゆる罠を見抜き解除する技能を持ち、多くの同業者からも頼られる事は多い。マリーもその一人。カルバの事を知った彼女は、手付かずの危険な遺跡に入るためにカルバと手を組んだ。

 そのマリーとカルバが手を組んだとなれば、これは中々に凄いコンビだぞ、一部同業者からはそう噂されたのであるが……。

 

「うそでしょおおぉぉーーーーっ!?」

「よくある罠だよねえ、まあ悪くも無いけどさあ」

「罠に良いも悪いもあるかーっ!!」

 

 二人は只管に走っていた。遺跡の通路内を只管に走る。何故走るかと言うと、後ろから通路を埋めるほどの大岩が転がり迫っていたからだ。坂道を激しく転がるその大岩は、容易く人間など轢き潰してしまうだろう。

 

「あそこに罠あるなら言ってよ!? スイッチ押しちゃったじゃないの!」

「いや~言う前にマリー押しちゃうからさあ」

「あんた明らかに言おうか悩んだ顔してたじゃない!?」

「いやぁ~押したら押したで面白いかなって」

「あんたほんとぶっ飛ばすわよっ!?」

 

 二人のコンビ、厳密にはカルバには致命的な欠点があった。

 確かにカルバは罠のプロフェッショナルである。彼女に見抜けぬ罠はそうそう無いだろう。だからこそ多くのトレジャーハンターは彼女に同行を頼む事が有るのだ。

 だが彼女と共に遺跡に潜った者は、再び彼女と共に遺跡に行こうとは思わぬ。皆が言う「命が幾つあっても足りない」と。何故なら彼女は、ハラハラドキドキ、命の危険大歓迎、極度のスリルジャンキーなのである。

 罠を見抜いた彼女はそれがありきたりでつまらない物であれば、落胆したように解除する。だがもしも彼女が強い興味を持つような空前絶後、前代未聞、死亡必至の罠であったなら――彼女は間違いなく敢えて罠にかかる。

 相応しい装備、技術、知識を持つが故に出来る遊び。あるいは生き方。カルバはそれほどにスリルが大好きなのだ。

 しかし本人が好きなのは構わぬが、組んだ相手はたまったものではない。なんせ罠を解除して欲しいから呼んだと言うのに自ら罠にかかるのである。これではあまりにも意味が無い。しかし最終的に遺跡から生還できはするので文句も言いにくい。だが中には人の良い彼女を騙して遺跡や島に置き去りにする輩もいる。だがそこはベテラントレジャーハンター、最も価値のあるお宝を手にしてちゃっかり脱出する。

 運の良さもまた、彼女がスリルに惹かれる理由かもしれない。

 さてそんなスリルジャンキーであるカルバを、他のトレジャーハンター同様に罠の解除を期待して雇ったのがマリーである。

 結果は案の定。罠のプロと聞いたはずが罠に“かかる”プロだった。これに落胆の意思を隠さないマリーであったが、実の所二人での仕事は初めてではない。

 まさかの罠大好き人間であったカルバに落胆したマリーであったものの、やはり罠のプロである事は間違いなかった。罠に積極的にかかろうとする点さえ、そこにさえ目を瞑れば……そう思ったマリーはお宝と言う実を取った。やはりお宝は魅力である。

 それとカルバの人柄もマリーとよく合ったのだろう。なんだかんだで女性トレジャーハンターコンビ、一方が苦労性になるがその実力は確かであった。

 

「やめときゃよかった、やめときゃよかったあーーっ!! 次の仕事前の肩慣らしって言うから適当な遺跡と思ったのにいぃーーーーっ!!」

「だから適当な遺跡だったじゃん? いい具合に罠のある」

「基準っ!!」

 

 尤も文句を言わないわけではない。むしろ文句しかない。

 

「おっと? あれは行き止まりだねえ」

「え゛っ!?」

 

 カルバが焦った様子も無く衝撃の事実を口にした。マリーの視線の先、そこは確かに袋小路、そして後ろの大岩。デッドエンドである。

 

「あたしの人生終了? こんなところで……?」

「いや少し天井低いから岩引っかかるよ? とりあえず滑り込もうか」

 

 確かに行き止まりの手前の天井は今走る通路よりも低くなっていた。その意図は不明だが少なくともこのまま岩に潰されはしないだろう。

 

「ひえっ!?」

「とぉーう!」

 

 必死に駆け抜け行き止まりまで来ると、岩が激しい音を立てて天井にぶつかり止まった。

 

「た、助かった……」

「ん~? あ、いやこれ助かってないよ」

「何でっ!?」

「ほら見てみ、天井」

 

 カルバが岩が引っかかっている天井を指さす。驚くべき事に二人のいる場所の天井が徐々に徐々に下がってきていた。

 

「うそ……」

「どっこい現実。これ岩から逃げれてもここで潰される系だねえ」

「潰される系だねえ……じゃないわよ!? どうするのよ!?」

「岩と通路の隙間はちょい無理かあ……まあ、こういう時は何かしら隠し通路があるってえ」

「なら暢気してないで探しなさいよ!」

「さてさて、隠し通路を見つけるのが先か、潰されるのが先か……ハラハラするぜえ」

「楽しんでんじゃないわよ!?」

 

 マリーも必死に通路らしきものを見つけようとする。壁や床の隙間から空気の流れ、空洞なども無いか探す。しかし探せど探せどそれらしいものは見つからない。天井はもう直ぐ二人の頭にまで届く。

 

「いやあーーーーっ!? どうすればいいのよー!?」

「あらら、これはまずいかな?」

「はっ!? ば、爆弾で岩を……」

「それ位置的に私らも死ぬぜ?」

「打つ手無しじゃない!!」

 

 襲い掛かる理不尽に思わず怒りのマリーパンチを壁に打つ。するとここで奇跡が起こる。マリーパンチが放たれた壁の石がガコリと動く。

 

「え? 今のって」

「お、もしかして」

 

 そしてその動作を合図に今度は床が動く。

 

「はえ?」

「おっと」

 

 床はガコンと斜めに下がりそのまま二人は坂道を転がっていく。

 

「きゃああっ!?」

「おう、おうこれは連鎖トラップかなあ!!」

 

 ジグザグになっている坂をボールのようにゴロゴロと落ちていく二人。圧死は免れたがこれはこれでつらい。そしてお尻やらが痛くなって来た所でポイッと穴から吐き出される。

 

「あいたっ!」

「おっと」

「あでっ!?」

「きゃあっ!?」

 

 先程よりも更に地下へと落ち、打ち付けたお尻を摩るマリー。

 

「なんて酷い罠っ!!」

「まあまあ、結構楽しかったからいいじゃん」

「だからよかないっての!」

「いったぁー……ケツ打った……」

「あーんもう! 体中埃まみれじゃない!」

「……埃高き星晶獣」

「あんた石になりたいの!?」

「ははは、ベールベール」

「やーめーなーさーいーよー! ああ、もう本当に魔眼弾かれてるし!? アタシの魔眼防ぐってあんたどんだけよっ!?」

 

 危機を脱して一転、僅かに和やかなムードに移る四人。

 

「……ん?」

「あれ?」

 

 ここでやっとマリーと増えた二人組みが互いを認識した。

 

 ■

 

 六 すっとこどっこい四人組

 

 ■

 

「誰よあんた達っ!?」

 

 いつの間にか増えていた人数に驚きを隠せないマリー。一方増えた方は、どこかのんびりしていた。

 

「あ、俺は通りすがりの者です。こっちは星晶獣(笑)のメドゥ子」

「メドゥーサッ!! メドゥ子じゃない!」

「いや意味わかんないわよ」

 

 まるで情報が無い自己紹介をされてしまいマリーも呆れるほかない。そもそも遺跡内部で通りすがる人間がいるだろうか。

 

(星晶獣? ただの女の子にしか見えないじゃない)

 

 少年の紹介にあった少女も星晶獣と言うが、一見してただの少女だ。どんな二人組なのかマリーには見当がつかなかった。

 

「あんた達トレジャーハンター?」

「違うよ、俺はただの騎空士。ちょっと色々あって二人で魔物から逃げててさ、遺跡に入ったらこいつが落とし穴発動させちゃって」

「うるさいわね、事故よ事故」

「そりゃお気の毒ね」

「そっちは?」

「こっちも罠で落っこちちゃったの」

「あれまあ」

 

 服についた埃を払いながら立ち上がり、辺りを見渡す少年。

 

「相変わらず位置も不明の通路か。やだねえ、出口が遠くになる一方だよ」

「そだねー。ハラハラして楽しいよね!」

「……楽しい?」

「そそ、スリル最高!」

 

 少年がマリーに視線を向ける。マリーは諦めた様子で首を横に振って、それを見た少年は色々と察する。

 

「それよりあんた達、この誇り高き星晶獣であるメドゥーサが名乗ったのよ? そっちも名乗りなさい」

「……ねえこの子本当に星晶獣? ただの子供にしか見えないけど」

「失礼ね!?」

「うーん……メドゥ子、ほれこれに魔眼」

 

 少年は懐から一本のナイフを取り出すとそれをメドゥ子と呼ぶ少女の目の前で持つ。

 

「あんたが仕切るんじゃない! ふんっ!」

 

 文句を言いつつ少女が気合を入れると一瞬で金属のナイフは石へと姿を変えた。

 

「うわ、本当だ!?」

「おーう、こりゃ本物だ! 凄いね私星晶獣って始めてみた!」

「ふふーん! そうでしょう、凄いのよアタシは! さあ畏れなさい愚かな人間共よ!」

「あーうん、悪かったわ。あたしはマリー、トレジャーハンターよ」

「私はカルバ、自分もトレジャーハンターなんだ」

「むふふ」

 

 一定の尊敬の念(?)を集めたメデューサは、特に無い胸を張った。

 

「まあ何あるかわからんからナイフは元に戻すけどね。ほい、クリアオール」

「あ、こら!」

 

 少年がナイフに向かって呪文を唱えると、石へと変えられたナイフが元の姿に戻った。

 

「あんたそう言う事するとアタシの力が疑われちゃうじゃないの! と言うか何でそんな簡単に戻せるのよ、魔眼の石化なんて普通戻らないのよ!?」

「弱体回復系を極めてこそ、空での危険は減るのだ」

 

 不本意だったらしくその場で地団太をふむメデューサ。ともかくメデューサは異能の力を持っている事がわかった。

 だがここでカルバがある事に気がつく。

 

「あ、メドゥ子ちゃんそこ踏んじゃ」

「メドゥ子じゃないっ!」

 

 メドゥーサは反論しながら一際強く床を踏んだ。するとそのまま足が床に沈む。いや沈むのではなく、床の一部が下がったのだ。同時にカチャリとまた怪しげな音がした。

 

「カチャリ?」

「おい、ふざけんなメドゥ子……」

「カルバ、これって……」

「うーん、さてさてどんなのが来るかなあ!」

「喜んでんじゃないわよ!」

 

 冷や汗を流す二人、うろたえる一人、ワクワクしてる一人。そして夫々にとって今日一日何度も聞き、うんざりとする様な背後からの轟音。恐る恐る振り向くマリーと少年。魔物ではない、大岩でもない。通路を突き進む圧倒的な質量。それは――。

 

「総員走れえぇーーっ!」

「いやあーーっ!?」

「ア、 アタシの所為じゃないからねえーーーーっ!!」

「おほ~うっ! こりゃ凄いねえ!」

 

 遺跡への侵入者を文字通り“洗い流そう”とする存在。それはただただ多量の“水”であった。

 

「もういやだああーーーーっ!!」

 

 少年の叫びは、遺跡の中に響くのみである。

 

 




今回出て来た遺跡は、世界一かわいい何オストロがいる遺跡じゃないです。

最新章クリア。アリアちゃんプレイアブル来て……来て……七曜二人プレイアブル来て……

カルバってアニメ後、特にSR実装で「~ぜ、~だぜ」って言うようになったイメージ。大好き。

ブローディア、出ねーディア

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