俺は、スーパーザンクティンゼル人だぜ?   作:Par

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あの団名決定とRキャラ話
時系列は、団として少し活動してからな感じ


スーパーザンクティンゼル人の軌跡
名前を決めて迎えよう酔っぱらい


 ■

 

 一 団の名は。

 

 ■

 

 

 重要な事に気がついた。

 俺達がザンクティンゼルを旅立ち、イスタルシアへと向かう……。その前に俺は知らぬ間に作られた借金を返済するためよろず屋シェロカルテから報酬のいい依頼を貰ってはそれをこなし金を稼ぐ。そんな中で気が付いた重要な事。これを何時までも後回しには出来ない、俺は至急エンゼラの会議室に団員達を集めた。

 

「寝テタノニ……」

「(´・ω・`)ドシタノ?」

 

 もっとも今居る団員などザンクティンゼル出た時の化け物集団ばかりだが。

 

「皆の衆、俺は大変な事に気がついた」

〈なんだ唐突に〉

「わからないか?俺達は、過程はどうあれついに船を手に入れた」

「借金と共にな」

「……それなりの武器も手に入れ」

「8割……ポンコツだったね……」

「…………頼もしい仲間もむかえて、むかえ……」

 

 (笑)ばかりだが。

 

「泣いてるのか、団長?」

 

 よそう、これ以上自分で自分の傷をえぐるのは。

 

「それよりもまだ俺達に無いものがある」

「イイカラ本題ニハイレ」

「……いいか、耳かっぽじってよぉうく聞け」

 

 極めて重要で可及的速やかに、今後俺達が騎空団として活動するに当たり絶対的に必要なものがある。

 

「団名決まってないじゃん」

「そういや、そうだったな」

 

 名前がない。俺達は未だ無名の騎空団なのだ。旅立ちの時点でよろず屋シェロカルテと出会えたためにわりと最初から依頼を受けれたりできたので完全に忘れていた。あっはっは、うっかり。

 これを決めない事には今後自分達だけでは依頼を取りにくい。

 無名の騎空団などあるだろうか? いや、ない。

 騎空団とは、名が売れてなんぼである。覚えてもらうには、活躍と共に名前を売り込むのだ。

 

「と言うわけで、速やかに騎空団名を決める会議開始します。はい、団名案ある人挙手」

「急すぎるぞ主」

〈まあ、確かに重要だ。あの娘でさえ団名をつけているからな。名前はともかく〉

 

 ジータとゆかいな仲間たち団の事は置いておこう。あんな名前になんかせんぞ俺は。

 

「だがジータの団名は覚えやすさでは抜群だよ団長」

「たしかになぁ。名前はともかく、誰が団長か一発だもんな!」

 

 ゾーイとB・ビィの意見も最もである。よし皆の衆、なるべく覚えやすくてインパクトばっちりな奴頼むよ。

 

「ジャア、【美しき風のティアマトの団】」

 

 ふざけんなよ。

 

「却下に決まってんだろ」

「ナゼダ!!」

「おめーの団じゃねーだろ!! 俺が団長だぞ!!」

「オマエミタイナ、パットシナイ奴ガ団長デハ覚エテモラエンダロ!!」

「うるせえ!!」

 

 こいつじゃ駄目だ。次だ次!!

 

「(。-ω-)ボクナンデモイイヨ」

 

 コロッサス、それちょっと一番困るやつ。

 

〈【リヴァイア団】とかどうだろうか〉

 

 駄洒落かよ。しかもクソつまらんし。

 

「――――♪」

 

 ユグドラシルよ……【ユグユグ団】は、可愛いけどちょっと勘弁して。なんか悪の組織っぽいし。

 

「なら【星晶騎士シュヴァリエ~へ、変態、この変態男!少しは恥を知りなさい!~】」

 

 なめてんの? なんでサブタイトルあんの? 悪名しか轟かねえよ。依頼一つも来ないよそんなの。

 

「じゃ、じゃあ……えっと、えっと……【団長が普通の団】とか」

 

 セレスト、君良いつもりで言った? 俺の心が粉砕し始めてるんだけど。

 

「ネタでいいなら【ぐらぶるっ!】でいこうぜ」

 

 いいわけあるか。なんだよ【ぐらぶるっ!】って。例の【特異点るっ!】の事か?

 

「……ふむ、【世界調停の翼】」

 

 まてまてゾーイ、これ別に大喜利じゃないだ。お前までネタに走るな。いや本人は真面目なつもりかもしれん、字面が良いのがまた何とも言えんがこの団にそんな使命はない。

 と言うか何これ、この団殆どの奴センスが壊滅的じゃん。ジータの事何もいえないよ。目くそ鼻くそだよ。クソしかねえよ。

 

「ナラ、オマエノ案ヲ言エ」

 

 ……まあ結果的に? 真打が最後に来る的なね? 俺のネーミングセンスが良いと自惚れるつもりは無いが、これだけクソな名前が揃えば悪いと言うこともあるまい。全員の特徴を踏まえ、インパクト抜群なやつをかましてやるぜ。

 

「騎空団【グランブルー】だ」

「普通スギル、却下ダ」

「(-ω- )ン、ン∼…?」

〈つまらん〉

「……?」

「グラブル団とか略されそうだぞ主よ」

「ジータの船って……グランサイファーだっけ……かぶってる」

「かっこいいとは思ったんだろうな。遅く来たお年頃か相棒」

「私にはよくわからないな」

 

 あれあれ?ねえ、俺なんか変な事言った? ここまでボロクソ言われる様な事。

 

「うるせえ! 団長は俺だ!!」

「横暴ダ!!」

「ならせめてもうちょっとまともな案だせやオラァ!!」

〈しかたない、力尽くしかないようだな……〉

「主が相手とて致し方ない……なるべくケツを攻撃してくれ」

「おもしれえ……死にてぇ奴からそこに並びな」

 

 おう、いい度胸だこの野郎。騎空団命名権賭けてやってやろうじゃないかこの野郎、てめえ。

 

「まとめてかかって来いやああぁぁーーーーっ!!」

 

 

二 寿限無ジュゲム

 

 

 その後、船が壊れそうになるのを回避するため無人の孤島で繰り広げられた騎空団の命名権を賭けた最低の戦い、それは全員ノックアウトの引き分けとなり戦いに参加せずお菓子をつまみながら静観していたコロッサス等癒し組の手によって阿呆達全員が気絶している間に考えられた団名をシェロカルテを通して正式に【星晶戦隊マグナシックスとB・ビィくんマン&均衡少女ZOY】として登録された。

 このことに関して、一切初期メンバーにかかわらずスルーされた団長の少年は、後にファータ・グランデ空域で著名な雑誌のインタビューで「誠に遺憾である。改名の機会があればせめて自分(団長)の名を入れたい」と語っている。

 事実この後この騎空団は新たな仲間を迎えた後も何度か改名機会があったが、そのたびに上がる候補がクソ過ぎて結局阿呆達による命名権を賭けた戦いを繰り広げられ、全員が倒れた後その時の癒し組達によって【超星晶戦隊マグナシックスクライマックスwith具羅武流!B・ビィくんマン&均衡少女キューティ・ZOY】、或いは【星晶戦隊マグナシックスMEGA MAXと仮面戦士B・ビィくんマン&プリティー均衡少女ZOYマックス・スマイル】などの些細な改名が何度かされるものの「略し辛いし、いくら何でも長い」と各方面から言われ結局【星晶戦隊マグナシックスとB・ビィくんマン&均衡少女ZOY】と稀に【星晶戦隊マグナシックスとB・ビィくんマン&均衡少女ZOYと仲間達】に落ち着きついに団長の名が追加される事は無かったと言う。

 この伝説のスーパーザンクティンゼル人と呼ばれる男が率いているにかかわらず、名を入れぬ事でよりそのスーパーザンクティンゼル人の存在を神秘的にさせていると言う説もあるが、当時のメンバーの証言からも「忘れてた」説が定説である。

 

 

一 フェイトエピソード 帰ってくれ酔っ払い

 

 

 

 ある村の居酒屋。何か特別な村と言うわけでもない、過度な善人がいるでも最悪の悪党がいるでもない普通の村の居酒屋で。

 

「なあ……ラムレッダ? おまえ、今回で皿割るのとお客様に粗相するの……何度目?」

「ふにゃぁ~……?」

「ね、聞いてる?」

「んにゃぁ……ごめんなしゃい、店長。聞いてるにゃぁ……」

 

 酔っ払いが説教を受けていた。

 

「じゃあ、俺の質問答えれる?」

「はひぃ……おしゃらはぁ、今日で25枚い~? おきゃくさんに、おしゃけ零したりしたのはぁ……34回ぃ?」

「皿は56枚客への粗相は70回だよ、この店が開店して以来、一人が一月で割った数の新記録だ」

「おぉ~~」

「私はなんで君を雇ったのか、自分でもわかんなくなってきたよ」

「にゃは、にゃはは……ごめんなしゃい」

 

 ベロンベロンに酔っ払い修道服を着たドラフのシスター、ラムレッダがこの店に来た時の事をこの店長の男はよく覚えている。半年前の事であろうか、彼女は初めこそ普通の客として店に酒を飲みに来た。そして何時まで経っても店を出ない。しこたま飲んだ酒の空き瓶が並び、床にも転がり一方で彼女は幸せそうだった。

 「お客さん、閉店ですよ」と呼びかけてもまるで反応が無い。しかしそのままにも出来ないので少し肩を揺らしたのだがそれがまずかった。

 

「おぶぅ」

 

 彼女の口から虹がかかり店がちょっとすっぱい匂いになった。

 後日一日店で安静にさせた後、心底申し訳なさそうなラムレッダに毒気を抜かれた店長が話を聞いた。

 今まで修道院で清貧な生活を心掛けていたが、成人して初めての酒を飲んで飲んで飲みまくり、ついに記憶が飛ぶほどに呑んだ。そして冷静になった時自分は、修道院の外におり、記憶が無く何をしでかしたのかわからぬ恐怖にかられ飛び出してしまったとの事。

 彼女は今27と言うので、もう7年もそれを理由に放浪し続けているのだからある意味大したものだ。はっきり言ってしまえば自業自得なのだがなんとも目の前でしょぼくれるラムレッダを見てるとほおって置けない気持ちにさせられる。

 店長は、ラムレッダを雇う事にした。打算的な事だが彼女は、女性のドラフ族特有の小柄でありながら豊満な胸があった。そして容姿も良い。シスターと言うのも面白かった。案外いい看板ウェイトレスにでもなるかもしれないと、暢気に考えラムレッダもまた店長に感謝していた。

 そして店長の期待が大きく外れたのは、彼女を雇ったその日の内であった。

 ラムレッダは、酔っていた。常に酔っていた。酔ったウェイトレスが居るだろうか?いや、いない。よしんば酒が入っても前後不覚、営業に影響が出るほど飲むか?飲まないはずだ。だが彼女は飲んだ。飲んで呑んでのみまくる。当然皿は割る、客に料理をぶちまける。出す料理を間違えるなんて日常茶飯事だ。

 客も客で夜の居酒屋にくる客の中には、既に出来上がってるものもいる。大酒飲みのラムレッダを面白がって、接客中に飲ませるやからがおおい。そのまま接客に戻るラムレッダによる被害が大きくなるのは、当然の事であった。

 普通ならもうその日の内にクビにするのだが、酔いが覚める度申し訳なさそうな彼女の顔や、それでも楽しそうな店の客達を見ていると、どうしてもクビには出来なかった。だからこそ、半年持ったのだ。

 だが流石に限界が来た。幾ら客が彼女を許し、自身も彼女を許そうと彼女による物損被害などもろもろが多すぎる。

 

「……君の事を理解はしてるけど、だが私は店とそこで働く店員の生活を預かる身だ。これ以上は見過ごせないよ」

「あぅ……はいぃ……」

「一先ず、今日一日頑張って……お酒は……もう飲んじゃってるから無駄だけど、それ以上飲まないでね、いいね?客に勧められても飲んじゃ駄目、ね?」

「んにゃ、わかったにゃあ」

 

 店の休憩室からトボトボ出て行くラムレッダを見ると罪悪感が湧くが、しかし同時に彼女に頭を悩まされているのも事実だった。男は、人からはよく、御人好しといわれるが彼は、自分でもそれを今自覚していた。

 

(だれか都合よく彼女を引き取ってくれる人でも現れないだろうか)

 

 あんな問題児、好き好んで引き取る人間なんて全空広しと言えどいないだろうにそんな期待を持たざるをえない店長だった。

 

 

二 問題児には、問題児をぶつけんだよ

 

 

 その日、ラムレッダはとても緊張していた。まるで初めて働き出した時のようだ。店長の言葉が頭に日響く。

 

「これ以上は、見過ごせない」

 

 わかっている。自分でもこのままではいけないと。酒が悪いんじゃない、酒に飲まれる自分が悪いんだ。酒、なんて罪深い命の水よ。だが彼女は決意した。わかった、私は断とう。この日を乗り切るため、酒を断ち接客に挑むのだと、そして緊張を和らげるため彼女は、一杯の酒をあおったのだ。

 

「……んにゃあ!? だめじゃん!?」

 

 結局彼女は、酔ったまま接客に挑むのだった。

 そして……。

 

「きゃあっ!! 服にスープが!!」

「ひいっ!! 皿が飛んできたぞ!?」

「料理が違うんだけど……」

「なあ、この料理はなんて言うんだ?」

「よう知らんけどこの島の名物のしこたま芋ぶち込んだシチューだそうだ」

「それは、食べがいがあるなあ団長」

 

 駄目だこりゃ。店長は頭を抱えた。

 こうなるだろうとは思っていた。まずこうなると思っていた。けれど最後に信じてみようと思ったのも確かだった。だが無理、もう駄目だ。ほろ酔い状態で接客に挑んだらラムレッダ、あっさり客に勧められた酒を飲みまくりベロンベロンになった。

 だが店長が更に頭を悩ませているのは、店の団体席を物理的に占領してる団体に対してだった。団体席を団体が使用し占領するのは当たり前のように思えるがこの団体、圧が凄い。小型の竜を3匹従えた美人なのに残念そうな女性と、床ぶち抜きそうな鎧と、でかい蛇っぽい魚類(?)と、めっちゃ癒し空間撒き散らす少女に、腕が四つある女と、クソ暑そうなゴスロリ衣装の女に、黒い竜のような小さいナマモノ、さっきから大人五人前ぐらいの料理を一度に注文し平らげては追加注文する褐色の少女。あとなんか印象が薄い少年。旅の騎空団らしいこの者達だが、何だこの色物集団。入店させたのはどいつだ。

 

「んにゃぁ~おもしろそうなお客さん達……ごあんにゃい~しておきましたにゃ~」

 

ラムレッダだった。店長は願った。正直早めに店を出て欲しい。

 

「んにゃあぁ~~~~っ?」

「ぁじゃあっ!?」

「ああ……団長が、熱々シチューに顔を……っ!」

「はにゃあ~~~っごめんにゃさ~い」

「プークスクス、ダッサ。超ウケルワ」

「そう言う熱々なのは、蝋攻めで私にしてくれ」

「団長、皿に顔を突っ込むほどお腹すいてたのか?」

 

 そしてよりによってラムレッダがその印象の薄い少年の頭に持ち歩いていた酒瓶を当ててしまい、少年の頭は熱々シチューにイン。他の仲間と思われる者達の反応もおかしい。

 

「らいじょうぶですかぁ~? おきゃくさん~」

「あ、気にしなくていいぜ。こいつ何時もこんな感じだからよ。酔っ払いの姉ちゃん、オイラりんごあれば欲しいんだけど頼むぜ」

「にゃあ~~ん? ぬいぐるみがしゃべってるにゃ?」

「はっはっは、オイラは人形じゃねえぜ」

「にゃはは~おもしろ~いにゃ~……」

 

 よりによってその団体に絡まないでくれラムレッダ。

 店長は頭を抱えてうずくまった。

 その時である、店の中に一人の【チンピラ風の男】が現れた。店長の嫌な予感が膨れ上がる。チンピラ風の男は、腹が減ってしょうがないからと食事を出せと言いながら席に着いた。

 そして、店長は知る事になる。酔いどれラムレッダ、奇天烈集団、チンピラ風の男。この組み合わせが、この店長にとっての光明となるのだった。

 

 

三 割れた酒瓶の出会い

 

 

 変な店に来た。

 いや、店自体はおかしくないのだが、店員の一人がおかしい。ドラフ族の女なのだが、この女酔っ払いながら接客してる。しかも商品ではない個人用のでかい酒瓶を持ってるもんだから危ないったらありゃしない。とか思ってたら、バランスを崩したその女に瓶で頭を打たれ俺は、注文したやたら芋のあるシチューに顔を突っ込んだ。クッソ熱い。

 おら、ティアマトも笑うんじゃねい。ゾーイ、別に腹空いてるわけじゃないよ、見てなかった?あとB・ビィ、何時もどおりって何だてめえこの野郎。我が団の仲間達は、コロッサス達癒し組みを除き心配してねえ。俺は認めねえぞ、こんな通常運転。

 おうおう、姉ちゃん何してくれんの?と文句の一つでも言おうと思ったが、どうもこのドラフの姉ちゃんを見てると毒気を抜かれる。酔ったのも客が飲ませたらしいのでなんとも言えん。だとしてもよく店は、こんな店員雇っているもんである。しかもシスターの格好。なんなの? 趣味なの? もしかして、ここそう言う店?

 勿論そんなわけないだろう。だとしたら、未成年の俺を入店させていない。なお更この姉ちゃんの位置が不明だが。

 

「ふざけやがって、ぶっ殺してやる!!」

 

 唐突に誰かが叫んで店長の悲鳴が上がった。

 なんだ喧嘩かと声のほうを見ると、あの姉ちゃんがチンピラに絡まれとる。物の数秒でトラブルを起こすとは、トンでもないトラブルメーカーだ。店長が仲介に入っているが、それでもチンピラの怒りは、収まらないようだ。しかし、あんな脅し文句言う奴がいるとは、実に三下っぽい奴だ。

 

「オマエモ、悪態ツク時大概三下ッポイゾ」

 

 うそやん。

 

「は? お前、何証拠にそう言う事言うわけ? ふざけんなよ、てめーこの野郎、てめー」

「ソウ言ウトコロダ」

「わざとだし、わざとそれっぽくしただけだし」

「((;´・ω・`))ケンカ イヤダナア」

「お代わりを頼みたいのだが……店員さんがいないな……」

「――……」

「お前まだ食うのか……」

〈今日稼いだ報酬の殆どなくなるな〉

「燃費……悪すぎ……」

「りんごまだかよ」

「そこっ!! さっきからゴチャゴチャうるせーぞ!? この、なんだこの……なんだこの集団っ!?」

 

 チンピラが俺たちに向かって咆えるが直ぐなんかわけわからん物を見た表情になる。気持ちはわかるぞ、チンピラ。正直よく店に入れたと思うほど混沌とした集団だからな。見た目完全に人間っぽい奴が俺とゾーイ以外いない。

 

「お構いなく、俺達ただ飯食ってるだけです」

「いや……と言うか、お前大丈夫か? 顔めっちゃ火傷してるけど……」

「その店員に出来立てシチューに顔突っ込まされただけだからご安心ください」

「ええ……やだ、何この店こわい……」

 

 強気だったチンピラだがカッとなっただけだったのか俺の惨劇を聞いて途端に弱気になっている。俺も自分で言っててなんだろう、なんでこんな目に遭ってるのか。ただ飯を食いに来ただけなのに。

 

「お、お客様……大変ご迷惑をおかけして申し訳ありません……お食事の方直ぐにお運びしますので……」

「いや、いいよこわいよ……何だよこの店……シチューに客の顔ぶち込む店員と訳わかんない集団いるし……帰るわ……帰るわ」

 

 店長は恐る恐るとチンピラに謝罪を述べるが、チンピラはすっかり怯えた様子で店を出てった。店長の後姿が実に哀愁漂っている。きっと何時も苦労してるんだろうな。わかるよ、その気持ち。

 

「にゃぁ~……しゅみましぇん、てんちょ……もって行く順番と料理間違えて、危うくおしゃけの瓶でおきゃくさん叩きそうににゃって、おしぇけおきゃくさんにぶちまけちゃって……」

 

 そら怒るよ。あのチンピラなにも悪く無いじゃん。おこだよ、激おこだよそら。何してんのこの店員。チンピラが気の毒だよ。こわ、近づかんとこ。

 だが、その時店長の哀愁の中に鋭さを宿した眼光が俺を見たことに気がついた。めっちゃ嫌な予感がした。

 

「オイお前ら、帰るぞっ!!」

「逃がしゃしませんぜお客さまぁ!!」

「ぎゃあああああああっ!?」

 

なになに、なんなのこの店長はやっ!! やめろ、腰を掴むな離せこの野郎!! 何だつよいぞ、この店長っ!!

 

「思いだしたぞ……最近話題の……っ!! 僥倖……っ!! 圧倒的……僥倖っ!!」

「なにこの店長怖いんだけどっ!!」

「特徴的な色物の団員しか居ないと話題になって、そのくせ団長の印象が薄いと言われる騎空団っ!!あんたらがそうだな!?そうなんだなっ!!」

「うるせぇ!!」

 

 色物は否定せんが団長の印象が薄いってどういう事だおらあっ!!

 

「見タ目普通ダカラナ」

〈正直地味だ〉

「平凡と言うやつだな」

「主人公顔ではねえよな」

 

 お前らぶっとばすぞォ!!

 

「……お願いです、私の頼みをお聞きくださいぃ~~~っ!!」

 

 すると店長が野獣の様な表情から一気にボロボロ泣きまくる。周りの客の目など気にするそぶりは一切無い。ああ、俺のズボンがおっさんの涙と鼻水で汚れていく……。

 

 

四 俺の胃死にたまふことなかれ

 

 

 後日、船に一人団員が増えた。

 

「にゃぁ~今日からよろしくにゃ」

 

 結論から言ってしまうとあのウェイトレスのドラフをうちの団で引き取る事になった。どうしてこうなった。どうしてこうなった。

 見たくも無い涙と鼻水と涎をボドボドに出しまくる店長のおっさんに無理やりに店の休憩室に引き込まれ曰く”聞くも涙、語るも涙”なドラフ娘、改めラムレッダの話を聞かされる。だがなにが”聞くも涙、語るも涙”だこの野郎。世間一般じゃそれを笑い話とか失敗談と言うのだ。初めての酒で失敗しただけじゃないか。

 それでも店長のおっさんには、確かに同情を禁じ得ない。なまじ人が良いために追い出せない問題児。わかるよ、なんとなくその気持ち。苦労人だったんやな。

 そこに来た問題児に慣れていると噂の騎空団。慣れてないよ、つらいよ。店長の脳内に「押し付けよう」と言う妙案、俺にとっては迷案が思い浮かぶのに時間はかからず、俺の腰にタックルし俺を確保したのである。

 

「君の真の居場所はあそこだラムレッダ!」

 

 と、目を輝かせ適当に感動的な台詞を言いながらラムレッダの説得(クビ)を完了させ、とうのラムレッダ本人もなんとなくその気になってしまい、最終的に俺の説得をごり押しした。と言うか外堀を固められた。「別ニ、カマワンダロ」とティアマト始め全員がOKサインを出してしまい、団長として立場がいまいち弱い俺が反対しきる事が出来なかった。

 そして何より。

 

〈我々以外の仲間もそろそろ必要だろう〉

 

 リヴァイアサンのその一言に揺らいだのは確かだった。

 そして今に至る。

 

「んにゃあぁ~~~っはっはっはぁっ!! きょうはぁ~あたしの入団歓迎ありがとにゃぁ~~んっ!!」

「オウオウ、飲メ飲メ」

〈酒なら多量に買っといたからな〉

 

 どうしてこうなった。どうしてこうなった。

 さっきまでまだシラフじゃなかった? なんでもう出来上がってるの? 歓迎会ってなによ、俺知らない。なんで料理と酒が用意されてるのさ。

 

「戻る途中でみんなで買い物したじゃないか、団長」

 

 必要な生活用品の補充だったはずだよゾーイ。何時の間に買ったのさ。こんな飲み食いしまくるだけの材料買う予定なかったよね。酒も暫く買う予定なかったよね? 主に(笑)達がウワバミだったから、しこたま飲むからやめようってなったよね? ねえ!!

 

「(*`・ω・)イッパイツクルヨッ!」

「ざ、材料は……良いものを揃えてるからね」

 

 高級食材ですか? そうですか……あのところで、お金……お金は?

 

「あたし……こんなに歓迎しゃれたのはじめてだにゃぁ~~とっても嬉しいにゃあ!」

「ウム、イイ飲ミップリダナ」

「美味い酒にあう飯もあるからな」

 

 だ、駄目だ……全員既に酒が回っている。話が通じねえ。

 

「だぁ~んちょ~~!! たのしいにゃぁ~~うれしいにゃぁ~おしゃけおいしいにゃぁ~」

「ちょ、いきなりつかまるな……くっさっ!? 酒くさ!!」

 

 ラムレッダが千鳥足と思えぬ早さで俺の腰に絡みついてくる。その上酒臭い。

 

「あらためてぇ、よろしくにゃぁ~だんちょうくん~」

「はいはい……」

「にゃはは……団長君は、まだ子供だったねぇ……おしゃけ、飲めるようになったら、飲み方おしえてあげるにゃ~」

「はいはい、ありがと、ありがと」

「む、むぐ……ッ!?ぁ……やば、ぃ……き、昨日までのおしゃけ……まだ、けっこ……のこって……うぷっ!?」

 

 へいへい、ちょっとそれはまずいですよ、まってまって!!

 

「あ、ごめ……ちょっと……む、りぃ……うっ!」

 

 待て待て待てまていっ!! 待つんだラムレッダ、耐えろ! せめて離れてから……力つっよっ!! はなせねええっ!?

 

「ぁ……ゆらすと……まず、うっぶっ」

 

 し、しまったっ!! あ、ああっ!! うわあああぁぁつ!!

 

 

五 苦労を買った覚えはない

 

 

「シェロさん……依頼ください、報酬良いやつ」

「うふふ~団長さんは、熱心で関心ですねぇ♪」

「出費がひどいもんで……」

「出費がしゅっぴきならない事になってるんですねぇ?うぷぷぅ~♪」

「あはは、わらちゃう……ちなみに、今借金幾らです」

「えっとぉ……現在234万と5600ルピですねぇ」

「なんで増えてんのっ!?」

「たまに団員の方達、主にティアマトさんがツケで趣向品などをうちで購入されるもので~」

「あのくそどもがっ!!」

 

 

 




ラムレッダは、エピソード事態は、SRのを元にしてますがイメージは、Reverseバージョンじゃ

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