異世界オルガ   作:T oga

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祝福オルガ4

緊急のキャベツ狩りクエストから数日が経過した。

 

ダクネスやフミタンをパーティに加えた俺たちは順調にクエストを重ね、レベルを上げていった。

 

 

「皆さん!早速討伐に行きましょう!それも沢山(たくさん)の雑魚モンスターがいるヤツです!新調した杖の威力を試すのです!!」

 

とある日、めぐみんがそんな事を言い出した。

 

俺もあともう少しレベルが上がれば、バルバトスルプスの召喚スキルに必要なスキルポイントも貯まるため、めぐみんの意見には賛成だ。

 

「俺たちに辿り着く場所なんていらねぇ。ただ進み続けるだけでいい。止まんねぇかぎり、道は続く」

「……とりあえず、掲示板の依頼を見てから決めませんか?」

 

そのフミタンの意見で俺たちはぞろぞろと冒険者ギルドの掲示板へと移動する。

 

そして……。

 

「あれ?何だこれ、依頼が(ほとん)どないじゃないか」

 

カズマが言ったように、普段は所狭(ところせま)しと大量に貼られている依頼の紙が今は数枚しか貼られていなかった。

 

「カズマ!これだ!これにしよう!ブラックファングと呼ばれる巨大熊討伐を!」

「勘弁してくれよ……」

 

そんな高難易度クエストを受けたら、俺は確実に殺されるぞ、確実にな……。

 

 

ギルド職員の話によると、最近、魔王軍の幹部らしき者が街の近くに住み着いた影響で仕事が激減しているらしい。

 

そのため、文無しのアクアは毎日アルバイトに励み、フミタンはギルド職員の手伝いを、そしてダクネスは「しばらく実家で筋トレをしてくる」と言っていた。

 

特にやることの無くなった俺たちは、めぐみんの爆裂魔法の練習の付き添いで街の外れにある廃城に通い続けた。

 

 

廃城に通い続けるようになって数日が経った頃、ミカが俺の胸ぐらを掴み、こう言った。

 

ピギュ

 

「ここがオルガ・イツカの場所なの」

 

つまり、ミカは俺に廃城まで行って、爆裂魔法を食らってこいと言っているのだ。

 

「俺は確実に殺されるぞ、確実にな……」

「そこに着くまで、オルガ・イツカは止まれない」

 

……俺の存在意義は死ぬことによって見出だされる。

 

めぐみんが一日に一回、爆裂魔法を撃たなければいけないように、俺も一日に一回、希望の花を咲かせなければいけない、ということか。

 

「ああ、分かってる」

 

 

「【エクスプロージョン】!」

 

その時、希望の花が咲いた。

 

「【俺は止まらねぇからよ、お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」

 

 

 

爆裂魔法を食らい、希望の花を咲かせることが日課になって、一週間が経った。

 

その日の朝もいつも通り、廃城へ向かおうと、準備していたのだが……。

 

「緊急!緊急!全冒険者の皆さんは直ちに街の正門に集まって下さいっ!」

 

キャベツ狩りクエストの時と同様に街中にアナウンスが響き渡った。

 

そのアナウンスを聞いた俺たちは、一応戦闘準備をしてから正門へと向かった。

 

そして街の正門に着くと、そこには一匹のモンスターがいた。そのモンスターとは……。

 

「デュラハンじゃねぇか……」

 

左脇に(おのれ)の首を抱える漆黒の騎士、デュラハン。

冬夜の世界でもデュラハンと戦った経験があるが、目の前のデュラハンは冬夜の世界のデュラハンとは全く異なる(すさ)まじい威圧感を放っていた。

 

「この近くの城に越してきた魔王軍の幹部の者だが……」

 

冒険者が集まった事を確認したデュラハンはくぐもった声でそう言った後、首を小刻みに震わせながらこう叫んだ。

 

「毎日、毎日!毎日っ!!俺の城に爆裂魔法撃ち込んでくる頭のおかしい大馬鹿は誰だああああああーーーー!!!!」

「爆裂魔法?」

「爆裂魔法って言ったら……」

 

デュラハンの叫びを聞いた冒険者は皆、めぐみんの方へと視線を向ける。

 

周囲の視線を寄せられためぐみんはフイッと俺の方を見た。

 

俺に()(ぎぬ)(なす)り付けるつもりのようだが、ここはしっかり否定した方がいいな。

 

「俺は爆裂魔法なんざ使えn……」

 

そこまで言ったところで俺は突然、背中をドンッと押されて、デュラハンの目の前に無理矢理押し出された。

 

「勘弁してくれよ、ミカ……」

 

俺の背中を押したのはミカだった。

 

 

「お前が毎日、毎日!俺の城に爆裂魔法ぶち込んでくる大馬鹿者か!」

 

どちらかというと、俺も被害者側なんだが……。

こうなってしまったからには仕方がない。

 

「俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだ!」

「鉄華団って、何だ?」

「鉄華団……決して散ることのない鉄の華」

「……まぁいい。ここは一つ団長を苦しめてやろうか」

 

デュラハンは左手の人差し指を俺に突きつけてこう宣言した。

 

(なんじ)に死の宣告を……お前は一週間後に死ぬだろう」

 

ヴァアアアアアア!!…………いや、なんともないな。

 

「その呪いは今はなんともない。しかし、その団長は一週間後に死ぬ!日に日に苦しんでいくことだろう!自殺することも出来ない!団長を誰かが殺す事で、その苦しみから救済するという方法もあるが、仲間思いの冒険者がそんな事出来る(はず)もないだろう。団長の呪いを()いて欲しくば、俺の城に来るがいい。城の最上階の俺の部屋まで来る事が出来たなら、その呪いを()いてやろう!……だが、城には俺の配下のアンデットナイト達がひしめいている。ひよっ子冒険者のお前達は果たして俺の所まで辿り着く事が出来るかな?クククククッ、クハハハハハハッ!」

 

喋るだけ喋って、デュラハンは帰っていった。

 

 

デュラハンが帰った後、アクアがこう言う。

 

「デュラハンの呪い解除なんて楽勝よ!」

 

アクアの言う通り、デュラハンの呪い解除は簡単だ。

 

デュラハン自身も言っていたように、誰かに殺してもらえばいいだけの話だ。

 

「なぁ、ミカ。やってもらいたい事がある」

「オルガが決めた事ならやるよ」

 

パン!パン!パン!

 

その時、希望の花が咲いた。

 

「【復活魔法】!」

 

俺の蘇生魔法だと呪い解除が出来るか不安だったため、アクアの復活魔法でよみがえることにした。

 

 

 




最後、アクアの復活魔法でよみがえるかオルガの止まるんじゃねぇぞ……でよみがえるか悩んだんですが、動画通り、アクアの復活魔法にしときました。

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