異世界オルガ   作:T oga

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今回は語り部がコロコロ変わりますが、ご容赦下さい。
オルガ→カズマ→ミツルギ→カズマの順になっております。

オルガもカズマも一人称が同じ「俺」だからわかりづらいかもですけど、このすば原作が一人称「俺」だから仕方ないんです。


祝福オルガ5

デュラハンの襲撃から数日後、アクアが一つの依頼を見つけてもってきた。

 

「街の水源の一つである湖の水質が悪くなり、ブルータルアリゲーターが棲みつき始めたので、水の浄化を依頼したい。湖の浄化が出来ればモンスターは棲息地を他に移すため、モンスターの討伐はしなくても良い。報酬三十万エリス!私にピッタリのクエストじゃない!」

 

水の浄化だけで三十万か、確かに美味(おい)しいクエストだ。おまけにアクアは水の女神だしな。

 

「いいんじゃねぇか」

「じゃあそれ請けろよ。ていうか、浄化だけならお前一人だけでもいいんじゃないか。アクアはアルバイトが嫌だからクエストを請けたいかも知れないけど、別に俺達は無理して高難易度クエストを請けたいわけじゃないしさ」

 

今だデュラハンは廃城に住みついており、ギルドに貼り出されているクエストは高難易度クエストしかない。

 

俺たちは何事もなく平和に過ごしていたのだが、アクアが「アルバイトはもう嫌だ」と言ったため、仕方なく冒険者ギルドにクエストを見に来たのだ。

 

カズマの言うように、水の浄化のクエストならアクア一人でもなんとかなるかも知れない。

 

そう思ったのだが、それをミカが否定した

「ダメだよ、オルガ。アクアが水を浄化してる間、オルガの護衛が必要でしょ」

「……勘弁してくれよ、ミカ」

 

ミカは無言で俺の胸ぐらを掴む。

 

ピギュ

 

「すいませんでした」

 

 

〈水源の湖を浄化せよ〉

 

 

街から少し離れた所にある大きな湖。

 

街の水源の一つとされているその湖からは小さな川が流れており、それが街へと繋がっている。

 

依頼にあった通り、湖の水は(にご)り、(よど)んでいた。

 

「ねぇ……本当にやるの?」

 

希少なモンスターを閉じ込めておく鋼鉄製の(おり)の中から不安げなアクアの声が聞こえてくる。

 

「俺と三日月さんの考えた隙のない作戦の一体何が不安なんだよ」

 

ミカとカズマの考えた作戦はこうだ。

 

アクアを(おり)の中に入れて、安全な(おり)の中から水に触れて湖を浄化する。その間にアクアに近づくモンスターを俺が倒すというものだ。

 

「……私、ダシを取られている紅茶のティーバッグの気分なんですけど……」

「勘弁してくれよ……」

 

 

アクアの入った(おり)を湖に浸けてすぐに湖の一部に小波(さざなみ)が走る。

 

ブルータルアリゲーターというワニの群れが湖から現れた。

 

「なんか来た!ねぇ、なんかいっぱい来た!アァー↑ハァー→ハアアア↓」

「オルガ」

「わかったよ、やるよ!」

 

俺はピストルを片手にワニの群れに向かっていく。

 

ヴァアアアアアア!!パン!パン!パン!

 

「う"う"っ!」

 

その時、希望の花が咲いた。

 

「【俺は止まらねぇからよ、お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」

 

 

浄化を始めてから、四時間が経過。

その間、俺は希望の花を咲かせ続けた。

 

アクアも早く浄化を終わらせて帰りたいらしく、一心不乱に浄化魔法を唱えまくっている。

 

「【ピュリフィケーション】!【ピュリフィケーション】!【ピュリフィケーション】!」

「【……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】【止まるんじゃねぇぞ……】【止まるんじゃねぇぞ……】」

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

そして、七時間が経過した。

 

「浄化は完了したみたいですね」

 

めぐみんの言うように、浄化は確かに完了した。……オルガの犠牲と引き換えに……。

 

途中からオルガの蘇生魔法が追い付かず、オルガは死んでしまったのだ。

 

浄化された透明な水の上に元々オルガだったものが分解されてプカプカと浮かんでいる。

 

「オルガ?」

 

三日月さんも哀しそうだ。

 

俺はアリゲーターに噛まれてボロボロになった(おり)の中で体育座り状態で膝に顔を(うず)めているアクアの様子を(うかが)う。

 

「……おいアクア、無事か?ブルータルアリゲーター達はもうどっか言ったぞ」

「……ぐす……ひっく……えっく……」

 

そんなに泣くぐらいなら、とっととクエストをリタイアすれば良かったのに……。

 

「アクア、すまんがもう一つ仕事があるんだ。オルガに復活魔法をかけてくれ」

「……ぐす……【復活魔法】」

「おお、ミカ」

「あっ、オルガ生き返った」

 

良かった。これで一件落着だな。

 

「あのさ、アクア。めぐみんとダクネス、それにフミタンとも話し合ったんだが、俺達は今回、報酬はいらないから、三十万はオルガと話し合って二人で分け合えよ」

「……わかった」

「ん、じゃあ帰るぞ。早く(おり)から出てこいよ」

 

俺の言葉にアクアが小さく呟くのが聞こえた。

 

「……まま……連れてって……」

「……?なんだって?」

「……(おり)の外の世界は怖いから、このまま街まで連れてって」

 

どうやら今回のクエストはカエル討伐に続けて、アクアにまたトラウマを植えつけたようだ。

 

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

 

僕の名前は御剣(ミツルギ)響夜(キョウヤ)

 

何処にでもいる平凡な高校生であったが、死の(ふち)で美しい女神に出会い、選ばれし勇者として、この世界に転生した。

 

職業は『ソードマスター』。武器は異世界転生の特典でもらった神々が作ったとされる神器『魔剣グラム』。

 

今日は魔王軍の幹部が住んでいるという城の調査のため、始まりの街アクセルまで帰ってきた。

 

「さっすが、あたしのキョウヤだね!エンシェントドラゴンを一撃で倒しちゃうなんて!」

 

パーティメンバーの一人である盗賊の少女フィオが僕の左腕にしがみつきながらそう言う。

 

この街に来る途中、僕らを襲ってきたドラゴンを倒した時のことを言っているのだろう。

一撃で倒せたのは、僕の力ではなく、神器の力なんだけど……。

それと左腕にしがみつくのはやめてくれないかな?ちょっと歩きづらい……。

 

「い、いつからアンタのになったのよ!」

 

そうフィオに反論する少女はもう一人のパーティメンバーで戦士職のクレメア。

 

フィオは僕の腕を放して逃げ、それをクレメアが追う。

 

「お、おい!やめろって」

 

こんな感じでいつも二人はなぜか争っている。

僕はなんで争っているのか見当もつかない。

 

 

「ルールルルー、売られていーくーよー」

 

そんな時、なにやら歌のようなものが聞こえた。

 

歌が聞こえた方を見てみると、そこにはボロボロの(おり)に閉じ込められた────女神様がいた。

 

「女神様ああああーーーーーー!!!!」

 

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

 

無事にクエストを終えて街に帰ってきた俺達は、すっかり(おり)の中に引き(こも)ってしまったアクアを馬で引きながら、生温かい注目を集めつつ、ギルドに向かっていた。

 

「女神様っ!女神様じゃないですか!?」

 

そこに、突然叫んで、(おり)の中に引き(こも)っているアクアに駆け寄る一人の男が現れた。

そいつはあろうことか、ブルータルアリゲーター達が噛みついても破壊出来なかった(おり)鉄格子(てつごうし)をいとも容易(たやす)くグニャリと()じ曲げ、中からアクアを引っ張りだした。

 

「何をしているのですか、女神様!?貴女は女神ですよ!それがこんな……!」

 

そして、その男はアクアの両肩に手を置き、放心状態のアクアを揺さ振りながら、俺を睨みつけた。

 

……言いたい放題だな、コノヤロウ!

 

少し話を聞いてみると、こいつは俺やオルガと同じ転生者で名をミツルギ・キョウヤというそうだ。

アクアがこの異世界に送った人間の一人らしい。

 

そのミツルギという男は、オルガやめぐみん達を見て、こう言った。

 

「君はこんな優秀そうな人達がいるのに、恥ずかしいと思わないのか?」

 

こいつらが優秀?

そんな片鱗(へんりん)、一度も見たことがないんだが……。あっ、三日月さんは別ですよ!

 

「さてと、帰るか」

 

オルガがそう言って、俺達はミツルギを無視して帰路につく。

それに対して、ミツルギはこんな提案をしてきた。

 

「待て!勝負をしないか?僕が勝ったら、女神様を譲ってくれ!」

 

俺は、オルガと三日月さんを一瞬見る。

二人共小さく(うなづ)いた。オッケー!作戦Bだな!

 

「よし乗った!行くぞ!」

 

俺がそう言って、剣を構えたと同時に、三日月さんが銃で発砲。

 

それをミツルギは、魔剣グラムを抜いて防ぐが、魔剣に弾かれた銃弾がオルガに当たることでカウンターが発動する。

 

「う"う"っ!」

 

ヴァアアアアアア!!パン!パン!パン!

 

オルガが放った銃弾は、ミツルギの脳天に直撃した。即死だな。

 

「結構当たんじゃねぇか……」

 

その時、希望の花が咲いた。

 

「【俺は止まらねぇからよ、お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」

 

 

倒れたミツルギにアクアが【復活魔法】をかける。ついでに【スティール】で魔剣を奪っておいた。

 

意識を取り戻したミツルギに三日月さんがこう告げる。

 

「俺らが勝った場合はどうなんの?アンタそれ言ってなかっただろ。気に食わなかったんだ」

 

……すげえ、迫力。ミツルギもパーティメンバーであろう二人の少女も脅えて何も言えないようだ。

 

流石、元そのスジのプロは一味違うな。

 

 

帰り道、俺はミツルギから奪った魔剣グラムを三日月さんに見せて、こう尋ねる。

 

「三日月さん、これ使います?」

 

三日月さんはその魔剣を片手で軽々と持ち、ブンブンと振り回した後、舌打ちをしてこう言い放った。

 

「チッ、使いづらい」

 

…………じゃあ、売るか!

 

 

 




ラストの「流石、元そのスジのプロは一味違うな」や「チッ、使いづらい」等は元動画にあったコメントを拾わせてもらいました。
元動画のコメントも出来るだけ拾っていこうと思いますので、こちらを読むだけでなく、元動画にもコメントをお願いします!

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