「緊急!緊急!全冒険者の皆さんは直ちに武装し、街の正門まで集まって下さい!」
俺とカズマが異世界に来てから三度目の緊急アナウンスが街中に響き渡る。
「またかよ……。行かなきゃダメか?」
アナウンスを耳にした俺は
「ダメだよ、オルガ。アナウンスは最後まで聞かなきゃ」
「は?」
ミカの言うように、俺は最後までしっかりアナウンスを聞く。冒険者ギルドの緊急アナウンスはこのように言っていた。
「緊急!緊急!全冒険者の皆さんは直ちに武装し、街の正門まで集まって下さい!……特に
「勘弁してくれよ……」
俺たちは慌てて正門前に駆けつけた。
正門前にはすでに多数の冒険者が集まっていた。
多くの駆け出し冒険者たちが遠巻きに見守る中、街の正門前にはヤツがいた。
「お、やっぱりな。またあいつか」
「デュラハンじゃねぇか……」
魔王軍の幹部のデュラハンである。
「聞けっ!愚か者共!我が名はベルディア!仲間を庇って、呪いを受けた騎士の
そこまで言い掛けたところで左脇に抱えられている兜の中に見えるデュラハンの目と俺の目があった。
「………………あれ?生きてる?」
「なんて声を出してやがる……」
「なになに?このデュラハンずっと私たちを待ち続けてたの?簡単にあっさり呪い解かれちゃったとも知らずに?プークスクス!うけるんですけど!ちょーうけるんですけど!」
アクアが心底楽しそうに、デュラハンを指差しクスクス笑う。
そのアクアの様子にデュラハンはプルプルと肩を震わせ、わかりやすく激怒する。
「アンデットナイト!この連中に地獄を見せてやるがいい!」
デュラハンは自らの配下であるアンデットナイトを召喚した。そのアンデットナイトの中には、俺の姿を模したゾンビもいた。
「俺じゃねぇか……」
そして多数のアンデットナイトを召喚したデュラハンはゆっくりと右手を掲げ……。
「街の連中を……皆殺しにせよ!」
その右手を振り下ろした!
〈緊急クエスト デュラハンを討伐せよ〉
アンデットナイトはゾンビの上位互換モンスター。
ボロボロとはいえ、鎧をしっかり着込んだそいつらは駆け出し冒険者にとって十分な脅威となる。
「おわーっ!プリーストを!プリーストを呼べー!」
「誰かエリス教の教会行って、聖水ありったけ貰ってきてくれえええ!」
あちこちから、そんな切羽詰まった冒険者の叫びが響く中、アンデットナイトの群れが街へと向かってくる。
街の中には入れまいと、何とか迎え撃とうとする駆け出し冒険者たち。
そして、それを
「クハハハハ!さあ、お前達の絶望の叫びをこの俺に……、俺……に……?」
「わ、わああああーっ!なんで私ばっかり狙われるの!?私、女神なのに!神様だから、日頃の行いも良い筈なのに!」
アンデットナイトの群れは他の冒険者には目もくれず、なぜかひたすらにアクアだけを追いかけ回していた。
それを見たダクネスは
「ああっ!?ずっ、ずるいっ!私は本当に日頃の行いは良い筈なのに、どうしてアクアの所にばかりにアンデットナイトが…………っ!」
アクアを追いかけ回すアンデットナイトの群れに向けて、めぐみんが爆裂魔法を放つ。
「魔王の幹部、ベルディアよ!我が力、見るがいい!【エクスプロージョン】!」
「ヴァアアアアアア!!」
その時、希望の花が咲いた。
「俺は止まらねぇからよ、お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」
ゾンビとはいえ、自分が死ぬ姿をこの目で見る日が来るとは思いもしなかった……。
街の正門前の平原に巨大なクレーターを作り上げ、アンデットナイトを一体残らず、消し飛ばした爆裂魔法。
その魔法の威力を目の当たりにしたデュラハンは、目を見開き驚いていたが、やがてその驚きは笑いへと変わっていった。
「クハハハハ!面白い!面白いぞ!まさかこの駆け出しの街で、本当に配下を全滅させられるとは思わなかった!よし、では……」
デュラハンは右手に大剣を構えて、こう言った。
「この俺自ら、貴様らの相手をしてやろう!」
デュラハンが俺たちのいる街の正門へ向けて駆け出した。それに対して、一人の戦士風の男がこう叫ぶ。
「一度にかかれば、死角が出来る!全員でやっちまえー!」
その叫びと同時に皆が一斉に駆け出す。
「オルガ」
「わかったよ、行くよ!」
ミカに背中を押され、俺もデュラハン討伐に向かう。
俺を合わせて六人程でデュラハンの回りを取り囲む。
「どんなに強くても後ろに目はついちゃいねぇ!囲んで同時に襲いかかるぞ!」
そう言った冒険者の一人の指示の元、俺たちはデュラハンへと攻撃を仕掛ける。
しかし、デュラハンは自らの首を空高くへと放り投げると、大剣を両手で握り直し、攻撃を仕掛けた俺たちを
その時、希望の花が咲いた。
「【俺は止まらねぇからよ、お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」
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ドシャリと音を立てて崩れ落ちるオルガ達。
ベルディアは満足そうにその音を聞くと、片手を空に掲げる。
その手の平の上にベルディアの首が落ちてきた。
その一連の動きは何でもない事だったかの様にベルディアは気楽に言った。
「次は誰だ?」
その言葉に一瞬
「ビビる必要はねぇ!すぐにこの街の切り札がやってくる!」
「ああ!魔王軍の幹部だろうが何だろうが関係ねぇ!」
……この街の切り札?誰だろう、有名な腕利き冒険者だろうか?
その疑問はすぐに
「そうよ!あんたなんか、今にミツルギさんが来たら一撃で斬られちゃうんだから!!」
「は?」
俺は思わず、脳が止まる。
「止まるんじゃねぇぞ……」
オルガは黙ってろ……。
ミツルギって、俺達で魔剣を取り上げて売り払った……。
「おう、あと少しだけ持ち
「ベルディアとか言ったな?いるんだぜ、この街にも!帰ってきてるんだ、高レベルで
……ヤバイ、マジヤバイ……。
俺が真っ青になっていると、そこに三日月さんが話しかけてきた。
「ねぇ、カズマ。俺はどうすればいい?」
……いや、まだ策はあるぞ!
それは死中に活を見出だした瞬間だった。
ダクネスを含む冒険者達が一斉にベルディアに飛びかかるが、ベルディアはまるで後ろに目が付いているかの様に全員の攻撃を難なく
あの回避力は相当のものだ。まずは動きを止めなきゃな。
「【クリエイト・ウォーター】!」
俺は水魔法をベルディアに向けて放つが、それはいとも簡単に避けられてしまった。
だが、攻撃が避けられることは想定済みだ!
「【フリーズ】!」
「フリージアじゃねぇか……」
「違うわっ!」
倒れていたオルガが変な事を口走りながら【フリーズ】に巻き込まれて凍った。
そして、ベルディアの足元も同じように
「!?……ほう、足場を凍らせての足止めか……!なるほど、俺の強みが回避だけだと思っているな?だが……!」
「回避しづらくなればそれで充分だ!」
足元を凍らされたベルディアが何かを言うよりも早く、俺は本命のスキルを使う。
「本命はこっちだ!」
そう、先日オルガから教えてもらった『悪魔召喚スキル』だ!
「【三日月さん!お願いします!】」
俺がスキルを使った瞬間、空から悪魔が舞い降りた。
「なんだありゃ?」
「何って、三日月さんに決まってんだろ!」
「勘弁してくれよ……」
三日月さんの操るバルバトスルプスは落下しながら、腕部200mm砲で
その時、希望の花が咲いた。
「【俺は止まらねぇからよ、お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」
「オルガは……死んでいいヤツだから」
そりゃ、死んでも生き返るからな……。
〈緊急クエスト デュラハン討伐 クリア〉
3月は年度末なんで仕事が忙しくなりそうです。
投稿ペースは落ちるが俺は止まらねぇからよ、お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……。