異世界オルガ   作:T oga

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デスマーチから始まる異世界オルガ6

目玉魔族とデーモン・ロードを倒し、迷宮を脱出してから、アリサとルルという二人の奴隷をなりゆきで買った次の日、俺とミカとサトゥー、そしてゼナは『なんでも屋』にやって来た。

 

なぜゼナも一緒なのかは説明すると長いからやめておく。まぁ、なんだ。色々あったんだよ……。

 

「邪魔するぜ~」

「ごめん下さい」

 

なんでも屋の一階には誰もいなかったので、二階に聞こえるような声で人を呼ぶ。

 

すると二階から「はーい」と落ち着いた声が聞こえ、その後に階段を駆け降りてくる足音が聞こえた。

 

「お待たせしました。なんでも屋のナディと申します」

「俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……」

「本日は、どのようなご用件でしょう?」

「あんたに話があって来た」

「宿か借家(しゃくや)を紹介して頂きたいのですが……」

 

今住んでいる門前宿は亜人は入室禁止となっているため、リザやポチ、タマは厩舎(きゅうしゃ)で寝泊まりさせている。いつまでも厩舎(きゅうしゃ)に置いておくわけにもいかねぇからこうして亜人でも泊まれる宿か借家(しゃくや)を紹介してもらいに来た訳だ。

 

サトゥーは亜人でも泊まれる事と防犯対策がしっかりしている事という条件を提示した。

 

するとナディはファイルを広げながら、こう言う。

 

「亜人が一緒となると、西街か職人街の西街よりの場所になりますね。西街の宿ですと、防犯面で不安が残りますので、借家(しゃくや)(よろ)しいかと存じます。それで、ご予算は如何(いか)ほどでしょう?」

「そうですね。銀貨二枚程度を考えています。足りなければ金貨一枚くらいまでなら出せますよ」

「それでしたら何軒かあったはずです」

 

サトゥー曰く、ちょっと高い宿の宿賃が、一泊大銅貨一枚で、大銅貨五枚で銀貨一枚の計算だから、八人で泊まるには銀貨二枚くらいが妥当なのだそうだ。

 

俺はその説明を聞いても正直ピンとこなかった。

 

「この三軒ですと、先ほどのご用件にお応えできると思います。ただ……」

 

ナディが口ごもってから、続きを話す。

 

どうやら、どの家も曰く付きの物件らしい。

 

せっかくなので、一度現物を見て、借りるかどうか決める事にした。

 

鉄華団のマークが書けない家は勘弁してくれよ。

 

 

一軒目。

 

「持ち主が犯罪ギルドの人間に暗殺されたというお屋敷です」

 

カズマたちと暮らしていた幽霊屋敷みてぇな屋敷の前でナディがそう説明した。その説明を聞いたミカが俺にこう言う。

 

「オルガだろ」

「は?……違うぞ」

「オルガ・イツカだろ」

「違うって言ってんだろうg……」

 

ピギュ

 

「鉄華団も犯罪ギルドみたいなもんだろ」

「俺じゃねぇって言ってんだろ!」

 

 

二軒目。

 

「この借家(しゃくや)は娼館の立ち並ぶ通りのすぐ裏にあります」

「は?」

 

娼館……。

 

「サキュバスの店じゃねぇか」

「オルガ」

「すいませんでした」

 

 

三軒目。

 

「このお屋敷は幽霊が出ると噂なんです」

 

カズマたちと暮らした幽霊屋敷はこっちか……。

 

アクアが入れば【ターンアンデット】してもらえたんだがな……。

 

「ここは何か不穏な気配がします。やめておきましょう」

 

サトゥーがそう言う。

 

後で聞いた話だが、この屋敷には市外に抜ける地下道があり、それを犯罪ギルドが密輸に使っていたらしい。

 

 

結局、見に行った借家(しゃくや)のすべてが問題のあるものだったので、ナディにもう少しまともな宿を探しておいて欲しいと伝えると……。

 

「銀貨二枚の予算なら、きっと他にも出物があるはずです。私は午後から商会の方を回って良さげな物件を探してみます」

「頼んます」

 

 

ということで、用件も終わり、午後からは暇になった。

 

どうやら、この先の広場で(のみ)(いち)が開かれているらしく、俺たちはポチたちを連れて、(のみ)(いち)に行く事に決めた。

 

 

「見て見て~!」

「にあう~?」

「なのです?」

 

アリサとタマ、ポチがテプタ通りで買った新しい服を見せてくる。

 

「みんな、可愛いよ。ところでその髪は?」

 

サトゥーがアリサにそう聞く。アリサが服と一緒に金髪のカツラを買って、被っていたからだ。

 

マクギリスの髪色に良く似ている。

 

「あぁ、こっちじゃ紫色は不吉って言われているからその対策なの」

「なるほど」

「でさぁ~、ちょっとおねだりしたいものがあるんだけどな」

 

アリサがサトゥーにくっつきながら甘えた声でそう言う。

 

ゼナがすげぇ顔で見てるぞサトゥー。

 

「くっつくな。それより何が必要なんだ?」

 

 

アリサが欲しいものは露店に売っているらしい。

 

その露店の商品を手に取ってサトゥーがこう言った。

 

「カードか」

「は?」

 

カード……?まさか、遊矢じゃねぇのか……?

 

サトゥーが遊矢かも知れねぇ露店の若い店主にこう話しかける。

 

「面白いカードだね」

「故郷の子供達に文字を教えようと思って」

「なんだよ……」

 

どうやら遊矢とは何も関係ない青年だったようだ。

 

表には絵が描いてあって、裏には文字が書いてある文字を覚えるためのカードらしい。

 

ポチとタマ、そしてミカに文字を教えるため、一セット買うことにした。

 

 

その後も露店を見て回っていると、相変わらず露店で竜面を売っているマクギリスを見つけた。

 

「マクギリスじゃねぇか……。なんだよ、冬夜と一緒に帰ったんじゃなかったのか?」

「彼女達が気になってね」

 

どうやら、マクギリスはポチとタマがいるからこの世界に残ったらしい。

 

 

「これなんかゼナさんの金色の髪に似合いますよ」

 

マクギリスと話しをしていると向かいの露店でゼナにイヤリングを薦めるサトゥーの声が聞こえた。

 

そこにアリサもやって来て、サトゥーに再びおねだりをする。

 

「ご主人様~!私はこれ欲しい!」

 

アリサが欲しいと言ったのは『ガンダム・バエル』のフィギュアだった。

 

「は?」

 

なんでバエルのフィギュアがここにあるんだ?

 

「このロボットのフィギュアでいいのか?」

「私も欲しくなった」

「は?」

 

何言ったんだ?マクギリスの奴。

 

「じゃあ、皆にも欲しいものを買ってやるか」

「ヤッタ!」

 

サトゥーはマクギリスにも『ガンダム・バエル』のフィギュアを買ってやった。優しいな。

 

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

 

(のみ)(いち)の野外ステージで演劇がやっているとマクギリスさんから聞いたオレ達はリザに人数分の観劇券を買ってきてもらって、見に行くことに決めた。

 

 

「にく~」

「にく、なのです~」

 

野外ステージでやっている演劇を見に来たのだが、ポチとタマは劇についていけなかったらしく、オレの膝を枕にして眠っていた。

 

この演劇は()()に基づいた伝承らしく……。

 

《『マクギリス・ファリド事件』と呼ばれた一連の騒動はマクギリス・ファリド本人の死によって幕を下ろした。一時は社会的信用を失いかけたギャラルホルンだが、その抗争を早期に解決したことで、改めてその力を世界に示した。『誰にも等しく権利を与えられる世界』マクギリス・ファリドの目指した理想の一端は()しくもラスタル・エリオンの手によって、成し遂げられようとしている》

 

という訳の分からない展開で劇は終了した。

 

「鉄血のオルフェンズじゃねぇか……」

 

今思えば、さっきの露店で『ガンダム・バエル』が売っていた事やベルトン子爵がオルガの名前を聞いて驚いていた事、三日月のバルバトスが魔族の君主(デーモン・ロード)を倒した時に兵士の人達が言っていた台詞(セリフ)など、ヒントは幾らでもあったんだよな。

 

なんで気付かなかったんだろう。

 

 

劇が終わった後、熱心に見ていたアリサが(のど)の渇きを訴えたので、オレはオルガと三日月と一緒に果実水を買いに行った。

 

少し小腹が空いたので、ついでに近くの屋台で何か買って行く。

 

注文待ちの間、後ろから中年女性に話し掛けられた。

さっきの劇の時に、オレの前に座っていた人だ。

 

「あら、後ろの席にいらした方ね。外国の方かしら?」

「ええ、行商人のサトゥーと申します」

「俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……」

「あの劇の真似かしら。面白いお友達ね」

「は?……違うぞ」

 

オルガはさっきの劇の真似をしていると受け取られたみたいだ。

 

「さっきの劇の最後の方(ひど)かったでしょう」

「勘弁してくれよ……」

「ええ、まぁ」

「は?」

「あんたにだけは言われたくないよ」

 

彼女は注文待ちの間、さっきの劇の最後の茶番の理由を教えてくれた。

 

「貴族から物言いがあってこんな流れに変更されたのよ」

「なんだよ……やっと分かった」

「なるほど。後からねじ曲げられたから、微妙な展開だったのか」

「あぁ、そうだ」

 

 

焼きたてのパンを人数分注文して、皆の元に戻るとオレ達が買い物に行く前はまだ夢の中だったポチとタマがすでに起きていたようで、オレの方へと駆けよってきた。

 

「あっ!ご主人様~!」

「三日月さんとオルガも、どこ行ってたのです?」

「ごめんごめん。ちょっと買い物にね」

「何買ってきたの?」

「果実水とパンを人数分」

 

 

オレ達は木陰でパンを食べながら、雑談に興じる。

 

「劇はお約束の熱い展開の連続で堪らなかったわ~!」

「「止まるんじゃねぇぞ……」するところで泣いちゃいました」

「いや……ありがとな」

「え~。死んだら何もならないじゃん」

「すいませんでした」

 

 

その時だった。

 

市壁塔の一つから警報が上がる。

 

「なんだ?緊急クエストか?」

「緊急収集です!行って来ます!」

 

警報を聞いたゼナさんがそう言って走り出す。

 

「何があったんだ?」

 

オレもマップを開いて確認してみると、正門の外に広がる森林の奥から敵を示す赤い無数の光点が近付いて来ていた。

 

どうやら大羽蟻(フライング・アント)という巨大な蟻のようだ。

 

マップの詳細を見る限り、大羽蟻(フライング・アント)はレベル3程度しかない。単体の強さとしては武装した兵士達より弱い。

 

しかし、この大羽蟻(フライング・アント)は鋭い爪と普通の蟻とは違う硬い外殻がある。その上、空を飛ぶのだ。普通の市民からしたら十分脅威だろう。

 

市壁の上には魔物払いの結界があるらしいので、壁を乗り越えて大羽蟻(フライング・アント)が街に侵入することはないが、門を早く閉めなければ門から街に侵入してしまう。

 

兵士達は慌てて、正門を閉じようとするが、発車のベルが鳴った電車に駆け込むマナーの悪い客のように、閉まりきる寸前の正門の間に大羽蟻(フライング・アント)が体を滑り込ませる。

 

「一匹くらいの魔物など押しつぶしてしまえ!」

 

門衛の詰め所から、兵士達を叱咤(しった)する声が響くが、大羽蟻(フライング・アント)は一匹だけではない。

 

ほんの少し門の閉鎖が止まった隙に一匹、また一匹と大羽蟻(フライング・アント)達が次々と体を割り込ませて門を()じ開け、結局大羽蟻(フライング・アント)達の侵入を許してしまった。

 

「何やってんだぁぁっ!」

 

 

「【……■■■ 落気槌(フォールン・ハンマー)】」

「放て!」

 

市内への侵入を果たし、空へ舞い上がろうとした大羽蟻(フライング・アント)達をゼナさんの【落気槌《フォールン・ハンマー》】の魔法で叩き落とし、魔法から逃れた大羽蟻(フライング・アント)は兵士達が石弩(クロスボウ)で撃ち抜く。

 

その石弩(クロスボウ)の一つが大羽蟻(フライング・アント)に突撃していったオルガに当たる。

 

「う"う"っ!」

 

ヴァアアアアアア!!パン!パン!パン!

 

その時、希望の花が咲いた。

 

「【俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」

 

 

ゼナさんの魔法やオルガの銃、兵士達の石弩(クロスボウ)を警戒した大羽蟻(フライング・アント)達は迂闊(うかつ)に飛び上がらなくなった。

 

低空で飛ぶ七匹程の大羽蟻(フライング・アント)が兵士達を迂回して、オレ達を襲って来る。

 

「来たか」

 

オレは低空で飛ぶ大羽蟻(フライング・アント)賤貨(せんか)指弾(しだん)で撃ち抜こうとした。

 

しかし、その射線上にオルガが入ってきて……。

 

「う"う"っ!」

 

ヴァアアアアアア!!パン!パン!パン!

 

再び、希望の花が咲いた。

 

「【俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」

「ごめん」

「こんくらいなんてこたぁねぇ」

 

 

オルガの銃弾で三匹、リザも一匹は倒すことが出来たようだが、残りの大羽蟻(フライング・アント)が門前宿に近寄ってしまった。

 

「ここは通さないのです!」

「通行禁止~!」

 

宿に侵入しようとした三匹の大羽蟻(フライング・アント)の前にポチとタマが立ちふさがる。

 

「とー、なのです!」

「や~!」

 

ポチとタマが腰溜めに構えた小剣(ショート・ソード)で一匹ずつ仕留める。

 

しかし、動きの止まったポチの背後から最後の一匹が襲いかかった。

 

それをオルガが庇い、希望の花が咲いた。

 

「【俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」

「ありがと、なのです!」

「団員を守んのは俺の仕事だ……。こんくらいなんてこたぁねぇ」

 

最後の一匹はリザの槍で仕留めた。

 

これでこっちは大丈夫だろう。だがナディさんのいるなんでも屋の方に何匹かの大羽蟻(フライング・アント)が侵入しているのが見えた。ナディさんは地下室に隠れているみたいだから大丈夫だと思うが、一応助けに行こう。

 

「リザ、少しの間、ここを任せる」

「承知!」

「俺も行くぞ!」

 

なんでも屋に進入した所で、ストレージから『バールのようなもの』を取り出し、大羽蟻(フライング・アント)撲殺(ぼくさつ)する。

 

「ナディさん、大丈夫ですか?」

「は、はい、大丈夫です!」

 

地下室への階段は大羽蟻(フライング・アント)の吐いた酸で黄色くなっている。

 

どうやってナディさんを地下室から脱出させるか悩んでいると、一人の少年が部屋に飛び込んできた。

 

「■■■ ■■■ ■■ 蔦操作(アイビー・コントロール)

 

少年が魔法を使うと、室内にあった観葉植物の(つた)が触手のように(うごめ)いて、地下室へと伸びていく。

 

しばらくして、胴に(つた)を巻き付けられたナディさんが地下室から出てきた。

 

「店長!」

 

どうやら、彼がこのなんでも屋の店長らしい。

 

「ありがとうございます。サトゥーさん、オルガさん!それに店長も」

「おまけ?」

「違います。ちゃんと感謝してますよ」

 

なんでも屋の店長らしき少年は俺とオルガの顔を見てこう聞く。

 

「誰?」

「俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……」

借家(しゃくや)探しを依頼して下さった方々で、命の恩人ですよ。彼らがここに侵入した魔物を倒して下さったんですから」

「感謝」

「こんくらいなんてこたぁねぇ」

 

AR表示でもたらされた彼の情報にオレは驚きを隠せなかった。

 

彼がファンタジー世界随一の有名種族『エルフ』だったからだ。

 

 

ユサラトーヤ・ボルエナンと名乗ったなんでも屋の店長やナディさんと話している間に大羽蟻(フライング・アント)との戦闘も終了していた。

 

ゼナさんの話しによると怪我(けが)人の(ほとん)どが軽症で死者は一人も出なかったらしい。

 

その後、ゼナさんは市外に哨戒に出掛けるとの事だったのでそれを見送った後、宿へと帰った。

 

 

その日の夜、頭痛がするというルルのため、オレとオルガは近くの薬屋に頭痛薬を買いに行った。

 

頭痛薬を買い、すっかり暗くなった街の通りを歩いていると空から影梟(シャドウオウル)の羽が落ちてきた。

 

意外と立派な羽だったので、ポチやタマのお土産にしようと決めたその時、路地裏から何やら金属同士がぶつかる音が聞こえた。

 

「どうした、サトゥー」

「向こうの通りで誰かが争ってるみたいだ」

「何っ!?行くぞ!」

 

オルガの後を追って街灯の無い薄暗い路地に足を踏み入れると、人の形をした影が見えた。

 

その影は這い寄る影(シャドウ・ストーカー)というレベル11の魔物のようで、物理攻撃が無効らしい。

 

オルガの銃では攻撃を与えられないため、魔法銃で仕留めようと発砲するが、射線上にオルガがかぶってしまい、希望の花が咲いた。

 

「【俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」

 

その隙に這い寄る影(シャドウ・ストーカー)が接近してきて黒い刃をオレに向かって振り下ろしてきた。

 

【立体機動】スキルを使って空に逃げ、空から魔法銃を連射する。

 

「ま、待ってくれ」

 

這い寄る影(シャドウ・ストーカー)は全滅させたが、オルガにも誤射してしまったらしく、再び、希望の花が咲いた。

 

「【俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」

 

 

どうやら這い寄る影(シャドウ・ストーカー)達はこの路地裏にいた灰鼠人族の男と彼が庇っていた布の中にいる子を襲おうとしていたようだ。

 

「誰ダ……」

 

灰鼠人族の男がそう詰問してくる。

 

「俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……」

「ぐぬ、ギザまはヤツの手下なのクァ?」

 

灰鼠人族の男は先程の這い寄る影(シャドウ・ストーカー)にやられたようで瀕死の重症だった。

 

聞き取りにくい声でそう言うが、その『ヤツ』というのが誰なのか分からない。

 

分からないが、その『ヤツ』があの這い寄る影(シャドウ・ストーカー)達を送り込んだ張本人なのだろう。

 

「いや、違うよ」

「違うぞ」

 

オレとオルガが否定すると、灰鼠人族の男は最後にこう言って眼を閉じた。

 

「ワッシは、もう()たヌ。シ、姫を頼む」

 

 




ミカが何もしてない……。

鉄血のオルフェンズもウィンター兄貴もメガネ脚フェチケモナー兄貴も再び動き出したからよ、止まるんじゃねぇぞ……。

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