異世界オルガ   作:T oga

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※イセスマパート多め
前半は冬夜目線、後半はオルガ目線です。


異世界オルガ4

僕とオルガ、そしてミカさんは先日倒したモビルアーマーのことを話すため、オルトリンデ公爵の屋敷へと向かっていた。

 

屋敷の前にやって来たとき、正門が開いて、中から馬車が出てきた。

 

あれ?お出かけかな?タイミングが悪かったか。

 

「冬夜殿にオルガ殿か!ちょうど良かった!君たちも馬車に乗ってくれ!」

「え?ちょ……、えっ!?なんですか!?」

 

馬車の扉を開けて、出てきた公爵に腕を引っ張られ、馬車の中に引きずり込まれた。

 

「このタイミングで冬夜殿とオルガ殿が訪ねてくるとは……!おそらく神が君たちを遣わせてくれたのだろう!感謝せねばな」

 

確かに、この世界に僕とオルガを送りこんだのは神様ですけど……。

 

「なにかあったのか?」

 

オルガが公爵にそう聞く。すると公爵は切羽詰まったような声で口を開いた。

 

「兄上が毒を盛られた。幸い対処が早かったので、まだ持ちこたえてはいるが……」

「国王の暗殺未遂か……」

「うむ」

 

オルガの言うように、国王陛下の暗殺未遂があったらしい。

 

「それで僕は何を?」

「急ぎ、兄上の毒を消してほしい。エレンにかけたあの魔法【リカバリー】で」

 

万能回復魔法【リカバリー】。以前、公爵の妻であるエレンさんの失明を治したこともある。

確かに、その【リカバリー】を使えば、国王陛下の毒を取り除けるかも知れない。

 

「分かりました」

 

僕らは国王陛下のいる王城へ向かった。

 

 

 

慌ただしげに公爵に連れられて、王城へ入り、吹き抜けのホールの正面にある階段を掛け上がる。

そして長い回廊を抜けた先にあった大きな扉を開ける。

 

「兄上!」

 

公爵が部屋の中に飛び込む。

部屋の中にある豪華な天蓋付きのベットの周りには多くの人が集まっていた。

あのベットに横たわる人物が王様なのだろう。

 

「冬夜殿!頼む!」

「【リカバリー】」

 

柔らかな光が僕の手のひらから王様に流れていく。やがて、それが収まると王様の呼吸が穏やかなものに変わっていき、顔色も良くなった。

 

王様は勢いよく起き上がる。

 

「なんともない……。先ほどの苦しみが嘘のようだ。アルフレッド、その者たちは?」

「エレンの目を治した望月冬夜殿とその仲間達です。彼なら兄上を救ってくれると思い、お連れしました」

「俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……」

「三日月・オーガス」

「そうか。助かったぞ、礼を言う!」

「……あー。どうも」

 

王様から礼を言われ、どう返したらいいか分からず、間の抜けた返事をしてしまった。

オルガやミカさんはすごいな。王様の前でも全く緊張してない。

 

 

そんな僕にお姫様(確か、ユミナ姫と言ったか)が王様に続けて礼を言う。

 

「お父様を助けていただき、ありがとうございました」

「いえ、気にしないでください。元気になられて良かったです」

 

お姫様に礼を言われるのもなんか気恥ずかしいので、誤魔化すように僕は笑顔を浮かべた。

しかし、お姫様はじっ……と僕の方を見つめ続ける。

 

「な、なんでしょうか?」

「年下はお嫌いですか?」

「……はい?」

 

質問の意図が分からず、困惑しているとき、ふと王様と公爵の会話が聞こえてきた。

 

 

「ミスミドが私を殺して何の得がある?私を邪魔に思う者の犯行だ」

「私もそう思いますが、証拠があっては……」

「証拠だと?」

「はい。陛下が大使から贈られたワインを飲んだ直後に倒れられた現場を多くの者が見ております」

 

ワインを飲んで倒れた……?なるほど。

 

「ちょっといいですか?」

 

僕はそういって会話に割り込む。

 

「なんだ?」

「王様が倒れた現場はその時のままですか?」

「ああ、誰も触らぬようにしてある」

「ではそこに連れて行ってもらえますか?」

 

 

王様が倒れたという大食堂まで案内された僕は部屋の真ん中に立ち、毒物を【サーチ】する。

 

「だいたい分かりました。関係者をみんなここに集めてください」

 

 

大食堂で待っていると、王様に王妃様、ユミナ王女と公爵、将軍、伯爵、宮廷魔術師、そして最後に狐の獣人の女性が入室してきた。あれ?あの人って……。

 

「オリガ・ストランド、参りましてございます」

「アルマのお姉さん?」

「あなた方は!?」

 

やっぱり。アルマのお姉さんだ。オリガさんって言うのか。オルガと名前が似てるな。

 

「ほう。君達は大使の知り合いなのか」

「迷子になっていた大使の妹さんを助けたことがありまして…………そんなことより」

 

 

たっぷりと間を空けてから、僕はこう宣言する。

 

「犯人はこの中にいます!」

 

決まった~!このセリフ一度言ってみたかったんだよな~!

 

「では、一から事件を検証してみたいと思います」

 

僕はミカさんから一本のワインを受けとる。

 

「ここに毒の入ってないワインを用意しました」

 

僕はそのワインを大食堂に置いてあった新品のグラスに入れ、一気に飲む。未成年だけどいいよね、異世界だし!

 

「うん、うまい!」

 

未成年だから、正直味は分からなかったんだけどね。

 

「毒が入っていないことを確認していただいたところで、このワインを国王のグラスに注ぎます。国王陛下はまだ体調が優れないようなので……代役はオルガにやってもらおうかな」

「俺が王の代わりか!」

 

なんか、嬉しそう。

 

オルガはグラスを手に取るとそのワインを一気に飲みほした。その時、希望の花が咲いた。

 

 

「どういうことだ」

「つまり毒はオリガさんの送ったワインにではなく、国王陛下のグラスの中に塗られていたんです」

「グラスに!?」

「卑劣な!」

「他の国王陛下のグラスにも同じ毒が塗られているんで、それの指紋とかを調べれば、犯人も分かると思いますよ」

「くそっ!」

 

僕がトリックを見破った途端に、伯爵が逃げ出した。

馬鹿なのか?あれじゃ、自分が犯人だと自白したようなもんじゃんか。

 

「【スリップ】」

 

逃げ出した伯爵を【スリップ】で転ばせる。

転んだ伯爵はそのまま兵士に捕らえられた。

 

 

無事解決して良かった。呆気なかったな。

そう思っていた僕にミカさんが話しかけてきた。

 

「ねぇ、冬夜」

「何です?ミカさん」

「オルガが生き返らないんだけど」

「えっ!?」

 

倒れたオルガの脈を図る……。本当に死んでる……。

……そっか!毒の入ったワインを一気に飲んだから、即死で呪文の詠唱が出来なかったんだ!しまったな……。

 

まぁ、いっか。【リカバリー】で生き返らせれるし。

 

「【リカバリー】」

 

僕が【リカバリー】をかけると、オルガは目覚めた。

 

「おお、ミカ」

「あっ、オルガ生き返った」

 

良かった。これで一件落着か。

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

「……どうしてこうなった……!?」

 

帰りに冬夜がそう呟く。それはこっちのセリフだ!

 

冬夜がちょっと考えれば子供でも分かるようなクソみたいなトリック(俺は分かんなかったなんて言えねぇ……)をドヤ顔で解明した後、なぜか冬夜はユミナ王女に逆プロポーズされた。

 

そして、何とか結婚は先伸ばしにしたものの花嫁修行ということで、ユミナ王女が俺たちに着いてきたのだ。

 

意味分かんねぇ……。

 

 

「ユミナ・エルネア・ベルファストです!今日からこちらでお世話になります!」

 

宿屋に帰ってきた俺たちはユミナ王女のことをエルゼやリンゼ、八重に説明するために皆を集めた。

 

「冬夜殿が結婚でござるか」

「……びっくり、ですね……」

「ったく、なにやってんのよ……」

 

皆、同じような反応をする。いや、リンゼは違うな。なんか顔が怖え。

 

「世間知らずではありますが、足手まといにならないように頑張ります!まずはギルドに登録して依頼をこなせるようになりたいと思います」

「「「「えっ!?」」」」

 

ギルドに登録だぁ。王女様にそれは無理なんじゃねぇか?

 

俺はそう思ったが、どうやらユミナ王女は魔法と弓を少々使えるらしい。

 

 

「っていうか、ユミナが冬夜と結婚したら次の王様って冬夜になるの?」

 

エルゼがふと思ったことを口にした。待ってくれ!

 

「王になる。地位も名誉も全部手に入れられるんだ。こいつはこれ以上ないアガリじゃねぇのか……?」

「僕が王様?ないないないない。そんな、ありえないよ」

「ないよ」

 

もったいねぇな……。なら俺と代わってくれよ……。

ってか、ちゃっかりミカまで否定してやがる……。

 

 

「とりあえず、ユミナの実力を図るために一つ依頼を受けてこようか」

 

話がまとまったところで冬夜はそう言い、席を立った。

 

「オルガとミカさんも行くよね」

「いや、俺たちは行かねぇ」

「えっ?なんで」

「俺たちが行ったらバルバトスが全部片付けちまって、ユミナ王女の実力を図れねぇだろ」

「あっ、そっか」

 

今までの魔物討伐もほとんどがバルバトス1機で倒してしまっている。

俺たちが行くとユミナ王女の実力は分からない。だから俺は冬夜の誘いを断った。

 

 

「じゃあ、今日は男一人に女の子四人か……」

「何か問題なの?」

 

冬夜の呟きにエルゼが疑問を問う。

 

「三人とも気づいてないと思うけど、ギルドで目立つんだよ君たち」

「なんででござる?」

「そりゃ、やっかみも受けるよ。エルゼにリンゼ、八重も特に可愛いんだからさ」

「「「えっ?」」」

 

冬夜がさも当然のようにそう口走った。

その瞬間、三人とも体が固まって、顔が赤くなった。

 

「何言ってんだぁぁっ!」

「な、何言ってんのよ冬夜。……可愛いとか……冗談ばっかり」

 

ったく、イチャつきやがって……早く冬夜を追い出すか。

 

「いいから早く行けよっ!」

「分かったけど……なんでオルガは怒ってんの?」

 

分かんねぇのか?冬夜の鈍感クソ野郎が!

 

 

冬夜を宿屋から追い出した後、今まで黙って火星ヤシの実を食っていたミカがこう口を開いた。

 

「なんで怒ってたの?オルガ。別に普通じゃん」

「は?」

 

俺はミカから前世での話を聞いた。

 

♪オ~ルフェ~ンズ ナミダ~♪

《な、なっ……何!?……何っ!?》

《可愛いと思ったから》

 

《クーデリアさんも一緒に作りましょう!三日月の赤ちゃん!》

《はい?》

《クーデリアも欲しいの?》

《えっ!?》

 

「何やってんだ、ミカァァァ!!」

 

 




♪オ~ルフェ~ンズナミダ~♪ とは、接吻(せっぷん)、キスなどの同義語。愛情表現や友愛表現の一つ。
愛情や友愛を示すときや、遺伝子採取の際に自分の唇と相手の唇を接触させる行為。

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