「てめぇ、ライド!なんでクリュセを……お嬢を狙う!何が目的だ!」
「火星の王になる。団長がなりたかったものを俺も目指すんだ」
「それがなんでお嬢を狙う事になるんだよ!?」
「今の火星連合の指導者はクーデリア・藍那・バーンスタインだ……。彼女を殺せば、俺たち鉄華団が火星の王になれるんだ……。団長を目の前で殺されたあの光景を見たチャドさんなら俺の気持ちわかってくれると思ったのに……」
「ライド……、お前は間違ってる……!」
「目を醒ませ!ライド。今のお前はオルガの亡霊に取り憑かれているにすぎない!」
「アジーさんまで、俺を否定するのか!!……もういい、鉄華団の邪魔をする奴は皆……潰す!」
クロケの森では
金属同士が衝突する重々しい打撃音が響き、一機の
「ぐぁっ!」
「大丈夫か!?」
「昭弘、前!」
「何っ!」
吹き飛ばされた味方機に一瞬、気を取られた
「くっ!盾をもっていかれたか!」
「まだだ、
ヴァアアアアアア!!
その時、希望の花が咲いた。
「【俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」
「昭弘、生きてる?」
「あぁ、どうにかな……。しょうがねぇ……死ぬまで、生きて……命令を果たしてやろうじゃねぇか!!」
「あははははははっ!ふっははははは、いましたいました。見ぃつけた~!!」
狂気じみた
「ディートリヒ、戻ってきたのか?」
「聴け!ギャラルホルンの諸君!今、三百年の眠りから、マクギリス・ファリドの下にバエルは甦った!」
「チョコ?」
「マクギリスじゃねぇか……」
「……飛翔しろ!バエル!」
瞬間的に速度を上げたグゥエールは走りながら抜剣し、
斬れないと判断した
しかし、その手応えは彼の予想以上に固かった。
(ふむ、ほとんど刺さっていないな……。関節を破壊する事は出来なかったが、甲羅を攻撃するよりはまだましか)
そう思考し、クスッと笑みを浮かべる
「これは持久戦になりそうですね。……ならば、見せてやろう!純粋な力のみが成立させる真実の世界を!」
激情に猛る巨獣と紅き騎士の
(む……うぅ……?)
彼の視界に広がるのは薄暗い空間。ぼんやりとしていた意識がハッキリするにつれて、にわかに無理な体勢をとっていた全身を痛みが襲う。
「ぐっ……こ、ここは……」
狭き空間でなんとか体勢を整えようとしていると、目の前の壁に押し当てられるような独特の圧力が彼に襲いかかった。
この圧力の正体は慣性──
(ここは
そこまで考えて彼──ディートリヒ・クーニッツは記憶にある最後の光景を思い出した。
(そうだ。エルネスティが目の前に現れて、それで……)
完全に記憶を取り戻したディートリヒは慌てて体勢を立て直し、座席の後ろから首を持ち上げるが、その時に彼の目に入ったものは
「ぎゃああああああ!」
「あっ、おはようございます先輩。今は戦闘中なので、出来ればお静かにお願いしますね」
「お前っ!なんてことを、正気なのか!?いや、そもそもなぜ戦っている!?」
「私の言葉はアグニカ・カイエルの言葉」
「はぁ?」
「バエルは甦った!」
「【バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル、アグニカ・カイエル、バエル…………】」
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オルガ、三日月と
ヤントゥネン守護騎士団の
「カルダドア!援軍だ!守護騎士団が来てくれた!」
「予想よりも少し早い。鉄華団の差し金か」
「紅の騎士!よくぞ、健闘した!」
「私の言葉はアグニカ・カイエルの言葉。あなた方もギャラルホルンの一員と名乗るのであれば、ただ私に従えばいい」
「ギャラル……ホルン?」
「まずは保有する地上戦力を全て、私に差し出して頂く」
「我がヤントゥネン騎士団の
「バエルを手に入れた私はそのような些末事で断罪される身ではない」
「何を言っているのだ?」
「革命は終わっていない!諸君らの気高い理想は決して絶やしてはならない!アグニカ・カイエルの意思は常に我々とともにある!ギャラルホルンの真理はここだ!皆、バエルの下へ集え!」
「良くわからんが、皆!バエルに続け!」
「「「「うおおおおおおおおおお!!」」」」
守護騎士団のカルダドアが
しかし、やはり傷一つつける事が出来ず、蹂躙されてしまった。
「くっ……ならば……!
『
四機もの
その
「穿てぇぇ!」
騎士団長の指示の下、
しかし、その
至近距離の地面へと放たれた
命中を目前にした
それから数時間後、決定打を無くしたヤントゥネン守護騎士団は為す術なく──全滅した。
「……彼らの協力が得られないのは想定外だった」
グゥエールの操縦席から拡声器を閉じる事も忘れ、そのように呟く
その
「てめぇの無駄な演説のせいで死ななくてもいいはずの騎士団のやつらが死んだ!
「バエルを手に入れた私はそのような些末事で断罪される身ではない」
「あんた正気か?……こいつはバエルじゃねぇぞ……」
オルガは
「勘違いしないで欲しい。アグニカ・カイエルの意思は常に我々とともにある!」
オルガは
「こいつは……こいつはバエルじゃねぇぞ……」
「バエルを持つ私の言葉n……」
なおもグゥエールをバエルと呼ぶ
オルガに殴られ続けた
《おかしいわ……。マッキーの言ってることはすべておかしいわ……》
(アルミリア……。全く、困った女だ……)
オルガを
「私は今、機嫌が悪くてな。少々、八つ当たりに付き合ってもらう!」
「おいっ!そいつと一緒に俺も降ろせっ!……って、何を、お前っ、やめっ!……むーーーーりーーーー!!!!」
跳躍しながら抜剣したグゥエールは眼球を狙い、突きを穿つ。しかし、
グゥエールの一撃は眼球を穿つ事は出来ず、硬い
「……鉄華団ならば、この状況を打破出来るはずだ」
「あんたが俺らの力をあてにするってんなら、俺らのやり方に従ってもらう」
「ああ……それでいい」
作戦指揮が再びオルガへと戻る。
しかし、オルガにももう作戦などなかった。
オルガが放った一言はただ「奴に突っ込む」それだけだった。
「敵に突っ込むの?」
「ああ……ミカ、露払いを頼めるか」
「もちろん。それがオルガの命令ならね」
三日月はオルガを信頼している為そう言うが、他の生徒達は違った。
「何言ってるか分かってるの?相手は師団級魔獣なのよ。がむしゃらに突っ込んでいって勝てる相手じゃないわ!」
「無理だ、むりむりむり!!」
しかし、そんな生徒達を
「だったら、他に策はあるのか?……ないだろう。だったら団長の指示通り、死を覚悟し、突っ込むより他はあるまい」
「無茶を言ってんのは分かってる。だが、やるしかねぇ!お前らの『命』って名前のチップをこの作戦に賭けてくれ!」
───その時だった。
「
「なんだ!?」
オルガのその問いに懐かしい声が返ってくる。
「准将ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「っ!?……石動か!?」
「待たせたな!てめぇら!」
「シノ!」
「ヒーローのお出ましだ!」
「その声……ユージン!?」
「俺もいるぜ!」
「チャド!」
「それにタービンズも一緒だぜ!」
「ごめんごめん、装甲の換装に時間かかってさ~!」
「……っ!ラ、フタ……なのか!?」
「うん。久しぶり、昭弘……」
「あたしもいるんだけど、仕方ないね。……まぁ、遅れた分の仕事はするよ」
「アジーまで、……なんでいんの?」
「
懐かしい面々を前に
「さーて、反撃開始と行くかぁ!」
「やったぞ!どうだ化け物め!」
グゥエールの
「とどめを、准将!」
「さあ、大詰めです!」
グゥエールが
「な、なんですか!?」
「機体が軋みをあげている……!」
機体の首をめぐらせて脚を確認してみると、関節の各部が異常な軋みをあげ、装甲の隙間からは
「なるほど……。これは
「何っ!?」
「足を止めるなぁ!」
グゥエールが動けないことを悟ったオルガは単身、
それを見たユージンはオルガを止めようとするが、彼はもちろん止まらない。
「生身じゃ無理だ、また死んじまうぞ!」
「死なねぇ!!死んでたまるか!このままじゃ……こんなところじゃ……終われねぇっ!!」
「【ミカァ!】」
その叫びとともに、彼の目の前の地面から砂塵を巻き上げ、『ガンダム・バルバトスルプス』が再召喚された。
バルバトスルプスは召喚と同時に、ツインメイスを
「おい!武器を投げてどうする!」
グゥエールの
「あそこだ!あの剣を使え!」
「借りるよ」
三日月のバルバトスルプスは石動のヘルムヴィーゲ・リンカーの持つバスターソードを借り、そのバスターソードで
「こんなもんかよ、お前の力は」
「なんだ!?あれが
「これが、厄祭戦を終わらせた力……」
そして、
「これなら……殺しきれる」
三日月のバルバトスルプスは
昇ってきた朝日を浴び、
────────────────────────────────────────────
そして、
「ダメだ。開かねぇ……」
オルガが外部装甲を開こうと試みるが、グゥエールの装甲は剥離し、
そんなグゥエールを見た
「エルネスティ、いやマクギリス。今度こそは、と思った三度目の人生だったはずだ。それがこんな形で終わってしまうとは……。この世界でなら、お前ともこれからやり直せると思っていたのだがな……。それに、許してくれディートリヒ。俺はお前が逃げ出したものと誤解していた……。まさかエルネスティを援軍に連れてきてくれるとは……。二人とも良くやってくれた。お前達が犠牲になって俺達を……」
──その時、ふいに外部装甲が開いた。
「は?」
突然グゥエールの
「う"う"っ!」
その時、希望の花が咲いた。
「【俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」
「やれやれ、正面装甲が歪んでいて開かないなんて。おかげで外に出るのに苦労しました。……って、ええと?皆様、どうなされたので?」
「え?」
「……何やってんだ、マクギリスぅぅっ!!」
そんなオルガの叫び声が青く澄んだ大空に響き渡った。
「彼らは無事合流出来たみたいだね。良かった、良かった。ライド・マッスの演技力も大したものだよ……。やはり、彼は面白い存在だ」
「あの……」
「なんだい。アルミリア・ボードウィン──いや、アルミリア・ファリドかな?」
「今の私の名はモンタークだと前にも言いました。それより、私の声はマッキーに届きましたでしょうか?」
「ああ、その事か。届いたよ、届いたとも。彼も自分の異常性に少しは気づいたんじゃないかな」
「貴女に……言われたくはありませんが……」
「魔女とはそういうものだよ。ボクは悪い魔法使いなんだぜ?……と、そんな事よりも『試練』の話だ。ガエリオ・ボードウィンはどうした?」
「…………」
「……君には荷が重かったか。やはり、ライド君にやらせた方がいいかな?」
「いえ、私がやります……」
「出来るんだね?」
「……はい」
「────期待しているよ。ボクの知識欲を満たす為にも」
いつもの事ではありますが、元動画から多少改変させてもらっています。
援軍に来たユージン達の搭乗機は
石動→ヘルムヴィーゲ・リンカー
シノ→ガンダム・フラウロス
ユージン→オルガ専用獅電改(王様の椅子)
チャド→ランドマン・ロディ
ラフタ、アジー→獅電(テイワズ仕様)
となっています。
ユージンが乗ってきたオルガ専用獅電改は次回からオルガに返却される予定です。