「グスターボ特務三佐!噂にあった『死神騎馬団』とおぼしき一団を確認しました!」
「おっ、マジか~」
「はっ!
「ふっ……カルタのやつも隠密任務が板についてきたな」
部下の報告を聞いて
船橋に立つ彼の視線の先には異形の馬車の群れが見えた。
「あれが噂の『死神騎馬団』か~。まぁ、相手が何だろうと、このグスターボ・マルドネス様がぶちのめすことに変わりはねぇさ!」
異形の馬車──ツェンドリンプルを見ても彼はあまり驚きはしなかった。それは何故か……
グスターボの本当の名は『ガエリオ・ボードウィン』
自身が転生した理由や、転生前での自分がどのような男であったのかの記憶は定かではないが、自分が『ガエリオ』という名の男であったことなど、一部ではあるが転生前の記憶が残っているため、彼はツェンドリンプルを自身の搭乗機であったキマリストルーパーと無意識に重ねていたのだ。
空をゆく
「ん?」
「どうした、ミカ?」
「何あれ?」
「ディータイチョ、船が空飛んでます」
三日月が空を見上げ、その後
報告を受けたディートリヒはその
「ジャロウデクの紋章がある。つまりは敵ということだ!各員騎乗!戦闘準備!先頭車のエルネスティ達にも伝令を回せ!」
「伝令は俺の仕事だ……」
「任せたぞ!オルガ」
「んじゃ、バルバトス出るよ」
「先手必勝!砲撃開始!!」
滑腔砲を装備したバルバトスと、兵士達の赤いカルディトーレが
その砲撃を浴びても、
「
そう言いながら、
次の瞬間、
そして、ジャロウデク軍のティラントー部隊と三日月のバルバトス、ディートリヒのグゥエラリンデ、
「盗んだ技術を使っての乱暴狼藉!その代償は高くつくぞ!!」
ディートリヒのグゥエラリンデと三日月のバルバトスが真っ先に先行する。
「ふん、このティラントーに真っ正面から挑むなど!身の程を教えてやろう!!」
ティラントーの
突出した防御力と強烈な筋力を誇るティラントーにとって、正面からの戦いはむしろ望むところであった。
事実、クシェペルカ王国の量産
ティラントーは何の捻りもなく真っ正面から突っ込んでくるバルバトスの一撃を同じく正面から迎え撃ちにいった。
ティラントー自慢の装甲で横薙ぎに振られたバルバトスのメイスを腕で押さえ、攻撃を弾いてからの
しかし、もちろんティラントーの
バルバトスのメイスを押さえようとしたティラントーの腕部装甲は砕け散り、機体ごと吹き飛ばされる。
「ば、馬鹿なっ!」
「邪魔」
三日月は一言そう呟いて他のティラントーも狩りにいった。
その横を
初手で虚をついたバルバトスとグゥエラリンデはそのまま、圧倒的な強さを見せ、ジャロウデク軍のティラントー部隊を全滅まであと一歩というところまで追い込んだ。
「やるじゃん。腑抜けの人」
「腑抜けの人はやめろっ!私は二度と騎士の
「ふーん。まぁ、足引っ張らないでね」
「…………」
残ったティラントー部隊の小隊指揮官が驚愕を噛み殺し、後退に転じる号令を出そうとした時、彼のティラントーの隣に
それは──
「ヒイィィ…」
声にならない悲鳴とともに
そんな彼の後ろから、
「ここは俺っちの出番だぜぇぇ!!」
「グスターボ特務三佐!」
「とっとと退きな!お前らじゃ無理だ」
ジャロウデク軍の増援にやってきたその黒い機体はジャロウデクの汎用
その機体を異質たらしめているのは『剣』だ。
剣とは多くの
そんな突飛な特徴をしたソードマンにディートリヒは目を剥き、絶句した。
「なっ……何だ、それは?……そんなに剣ばかりつけて、どういうつもりだ!?」
ディートリヒのその問いに
「んなもん決まってっだろ!『剣は強い』!『強いのいっぱい持ってるやつがいっぱい強い』!当たり前じゃねぇか!」
拡声器で響き渡った
「その声、チョコの隣の……」
「ガエリオ・ボードウィンだ!」
「……ガリガリ?」
「貴様、わざとか!!」
三日月と
「三日月!こいつの相手は私が受け持つ!お前は残りのティラントー部隊をやってくれ」
「やれんの?」
「やってみせるさ!」
「……んじゃ、任せた」
相手より優位な位置を狙うために、より強力な一撃を相手に浴びせるために、互いに目まぐるしく動き回るこの二機の戦い方はある意味で似通っていた。
共に極端に攻撃に偏重した型を持ち、さらに研ぎ済ました必殺の一撃よりも嵐のような連撃を好む。
「こいつ!バカだが、使い手だな……っ!」
実際には互角に見える二機の戦いであったが、実はディートリヒのグゥエラリンデの方がやや押され気味であった。その差は
グスターボは転生前、
対するディートリヒは双剣による連撃と
「ははははっ!そんなすっとろい動きじゃ、俺っちの相手は務まらないぜっ!」
徐々にソードマンの剣の連擊に押されていくグゥエラリンデ。
「……くっ!このままでは……」
「フッ……。そろそろ決着つけっちまおうかね!」
その時、ディートリヒはソードマンの頭上から飛翔してくる
それと同時にオルガの獅電も遅れて出撃してきた。
「すまねぇ、遅れた!だが、そろそろアイツが来るぞぉ!」
「あぁ……こちらでも確認した」
オルガの獅電を見て、
「
「確かにオルガが増えたところで対した戦力ではない」
「おい!」
「だがな……」
グゥエラリンデの
「何考えてんのか知らねぇが……俺っちは攻めるのみだ!!」
ソードマンが突っ込んでくる。
それをオルガの獅電がアサルトライフルを片手に迎え撃つ。
グゥエラリンデは少し後退。
そして──
ソードマンがアサルトライフルの射撃を回避しながら突撃し、オルガの獅電を斬りつけようとする。
それをパルチザンで防御し、鍔迫り合いの状況になった時、その頭上から
「何やってんだぁぁぁ!!」
「あっ、間違えましたw」
その時、希望の花が咲いた。
「【俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」
「な、何が起こった?今のは」
そして、空から降ってきて、目の前に立つ
「キサマか……俺の邪魔をしたのは!」
その
「君の相手は……私がしよう」
二本の真・バエルソードを構えた
「君には我々──
その
「
そして、拡声器で聞いた
「ん?その声……まさか……!」
この
「マクギリスゥゥゥゥ!!!!」
「ガァエリオォォォォ!!!!」
過去の遺恨を叫びにのせて、両者共に激しくぶつかり合う。
ソードマンはそのまま二本のサブアームを展開し、サブアームに持つ二本の剣で
ソードマンはすぐさま距離をつめ、手に持つ二本の剣と四本のサブアームに持つ剣を合わせた計六本の剣で連続突きを繰り出した。
それを
「何故死んだのか、転生の理由は知らんが……。俺の行く手を阻むのならば、今度こそ殺してやろう!」
「やはり、お前の目には俺は見えない。お前には俺の言葉は届かない」
両機とも頭突きを繰り出す。
「俺を見ろ!!」
そして、ソードマンの膝部にあるドリルニーを展開。
しかし、そのドリルニーも難なく避けられ、
「くっ……」
その一瞬が
太陽を背に空から舞い降りる
しかし、
転生前もガエリオ、イオクという二人の機体の
──そして、それは今回も同様であった。
「…………あと、少し右にズレていたら即死だったぜ……」
四本のサブアームでソードマンに刺された真・バエルソードを引き抜き、後退する
「ちっ…!」
「エルネスティでも倒しきれないか……」
ディートリヒがそう言った直後、三日月から通信が入る。
《雑魚は片付いた。そっち手伝うよ》
「ふっ……」
その三日月の通信に
そして、ジャロウデク軍にも通信が入ってきていた。
その通信を聞いた
「何っ!ティラントー部隊が全滅だとっ!……ちっくしょう!……さすがにこのまま逃がしてくれるはずもねぇよな……。まぁずいねぇ……。……とりあえず船を戦域に戻せ!それまでは何とか俺っち一人で時間を稼ぐっ!!」
そう言って
突如、何の前触れもなく、希望の花を咲かせて倒れていたオルガの獅電が大爆発を起こしたのだ。
ヴァアアアアアア!!
その時、再び希望の花が咲いた。
「【俺は止まらねぇからよ……。お前らが止まらねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」
「……っ!?」
「何っ…!?」
「何だ!?目潰しか!?」
「どういうことだよ、こりゃ!!?」
戦場に居た三日月、
しかし、この爆発には全くと言っていいほど威力がなく、その代わり周囲には数歩先も見えない程の黒く濃い煙が立ち込める。
「後退です!下手に撃っては同士討ちになりかねません!まずは煙の外まで後退を!!」
味方の位置も把握出来ないこの状況では、迂闊に法擊することも出来ない。そう判断しての後退だ。
「だが、助かったぜ。ここは仕切り直しだ!」
そんな
戦場に横たわっていた煙が風に乗って吹き飛んでいった。
「なっ……これは、空飛ぶ船が戻って来たのか!?」
その代わり
低空で飛ぶ
「おい、紅いの!アンタなかなかだったぜ!それにマクギリス!!お前を倒すのはこの俺だ!!今度やる時まで死ぬんじゃねぇぞ!」
三日月のバルバトスは滑腔砲、ディートリヒのグゥエラリンデは
「空飛ぶ船か……。あんなものが相手だとすると……」
ディートリヒはグゥエラリンデの
「何か有効な武器をエルネスティに用意してもらう必要があるな……」
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それを受け取り、中の酒を一気に飲んだ
「珍しく追い込まれてたね。ガエリオ」
「ありゃ、アンタの仕業か。カルタ」
その女性の名は
四年前。カサドシュ砦に運び込まれたテレスターレが奪取された事件──『カサドシュ事変』を引き起こした
「いつから船に乗ってた?」
「さーてね」
「フン……余計なマネを!」
そう言って
「だが、今日は感謝しておく!二度目はないぜ……」
そう言い残し、船橋へと戻っていく
今回はナイツ&オルガ9の後半部分に追加カットを多数盛り込んだ感じになりました!
ソードマンは原作では確かサブアームは二本だったと思うんですが、このナイツ&オルガでは、
そして、キマールの武装であるドリルニーも追加してます(笑)
次回も今回同様早く投稿出来るようにガンバラナイト!