異世界オルガ   作:T oga
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異世界オルガ6

冬夜が家をもらった。

先日の国王の暗殺未遂事件の謝礼として受けとるはずだった爵位を冬夜が辞退したことで、その代わりとして家をもらったのだそうだ。

もったいねぇな……。
俺だったら喜んで、爵位を貰うぞ……。


俺たちは今、その冬夜がもらった家に来ていた。

白塗りの壁に青い屋根の三階建ての屋敷。
その屋敷には昨晩、徹夜で俺が書いておいた『あるモノ』があった。

「これが鉄華団のマークだ!なかなかいいだろ!」
「ないないないない!【モデリング】!」

俺が親切心で書いてやった鉄華団のマークを冬夜は【モデリング】で一瞬にして消し去りやがった!

「何やってんだぁぁぁ!!」
「あたりまえじゃん」

……ミカにまで否定された……。



冬夜がもらった屋敷で過ごし始めてから、数週間がたったある日、屋敷にオルトリンデ公爵が訪ねてきた。

「この度、我が国はミスミド王国と同盟を結ぶことが決定した。ついては国王同士の対談の席を設ける必要があるのだが……」

俺たちが住んでいるベルファスト王国は三つの国に囲まれている。
三つの国とは西のリーフリース皇国、東のレグルス帝国、そして南のミスミド王国である。
西のリーフリース皇国とは長年、友好的な関係を築けているが、東のレグルス帝国はいつ攻め込まれてもおかしくない状況にあるらしい。

対帝国の勢力増強のため、ミスミド王国との同盟が結ばれることになったとのことだ。

「会談するには、どちらかの王都へ行くのが一番なのだが……それは必ず危険がつきまとう。そこで……だ」

その同盟のための国王同士の対談をミスミドで行うため、俺たちにミスミドまでの道中の護衛をしろ。ってことだろ!分かったよ!

「ああ、分かったよ!連れてってやるよ!!連れてきゃいいんだろ!!」
「まぁ、待ちなさい」
「冬夜さんの【ゲート】ですね」
「流石ユミナ、話が早い」

……そういうことか。俺たちだけでミスミドまで先行して、冬夜の【ゲート】でベルファスト王国の王都とミスミド王国の王都を繋げちまえば、両国の王都を安全に行き来できる。

「あの魔法は一度行った場所にしか移動出来ませんよ?まさか……」

冬夜が分かりきったことを公爵に尋ねる。

「そう。君たちにミスミドへ行ってもらいたい」
「やっぱりか」


数日後、ミスミドへの先遣部隊が組織された。
ミスミド側からはミスミド大使のオリガとその妹のアルマ、そしてガルンという男の率いるミスミド兵士隊。
ベルファスト側からは、ベルファスト王国第一騎士団…………!!??

その騎士団を率いる男を見て、俺は驚きを隠せなかった。
その金髪の男は、生前俺たち鉄華団を破滅の道へと誘った男ーーーー『マクギリス・ファリド』と瓜二つであった。

「あんた、まさか……」

俺はポケットの中に手を突っ込み、そこに入っている銃を握りしめる。

「ベルファスト王国第一騎士団所属 リオン・ブリッツです」
「なんだよ……」

どうやら、他人の空似というやつだったらしい。
……結構似てんじゃねぇか……。

俺はポケットの中で握りしめていた銃を手放した。


「今日はここまでにしましょうか」

マクギリスに似た金髪の男がそう言うと、暗くなってきた森を進んでいた三台の馬車が動きを止めた。

止まった馬車から人が降りていき、火を焚いたり、夕飯の準備を始めたりして、皆が一斉に働き出す。

俺も馬車を降りて、一度大きく伸びをした後、森の奥へと歩き出した。

「オルガ、どこ行くのさ?」

俺に気づいた冬夜がそう声をかけてくる。

「便所だよ!」
「そう、わかった。あんま離れすぎないでよ」
「分かってるっつーの」

俺はそう言って、再度歩き出した。





「何者かが複数、近づいています」

オルガが用を足しに行ってから数分後、ミスミドの兵士の一人が立ち上がり、そう言った。

「おそらく、街道の盗賊でしょう」

ミスミドの兵士隊長ガルンさんがそう予想する。
僕もスマホで盗賊を【サーチ】してみる。

すると、スマホの地図上にいくつかのピンが表示された。しかし、妙なことが一つあった。

「……あれ?僕の隣にも盗賊が一人いる」
「それ多分、俺だ」

僕が疑問に思ったことを口にすると、僕の隣にいたミカさんがそう発言する。
スマホの地図上のピンは確かにミカさんを示していた。
ミカさん曰く、「鉄華団も盗賊みたいなもんだから」とのこと。じゃあ……。

「【エンチャント:マルチプル】……【パラライズ】!」

僕は連続詠唱省略魔法【マルチプル】をスマホに【エンチャント】させて、マルチターゲットの機能をスマホに追加。そして【サーチ】で表示されているミカさん以外の盗賊を選択して、【パラライズ】で麻痺させた。

すると、周りの森からは盗賊であろう者たちの悲鳴が聞こえてきた。

「うぐっ!」
「ぬあっ!」
「ぎゃっ!」
「うわっ!」

その悲鳴を聞きながら、僕はある事を失念していることに気がついた。
ミカさんが盗賊として認識されたのだから、当然 森の奥へ用を足しに行ったオルガも盗賊の一人として認識されているはずだ。
しかし、僕はミカさん以外の全ターゲットに【パラライズ】をしてしまった。

ということは…………。

「ヴァアアアアアア!!」

やっぱり、オルガも【パラライズ】に巻き込まれていた。





その時、希望の花が咲いた。

「【俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」





それから数日間は何事もなく、平和な旅路が続いた。

しかし、国境を越えてミスミド王国へ差し掛かった頃、急に森の動物たちが騒ぎ出した。

「何か、大きなものが来ます!」

ミスミドの兵士の一人がそう言って、空を見上げる。

「あれは何だ?ドラゴンか?」
「まさか!?ドラゴンがこんなところにいるはずが……」

俺たちも皆と同じように空を見上げる。
空を飛ぶそいつを見て、冬夜も俺も驚きの声を上げた。

「あいつは、あの時の!」
「モビルアーマーじゃねぇか!!」

俺たちの真上にいたのは以前、旧王都で倒したはずのモビルアーマーだった。

前回、リンゼの【エクスプロージョン】を喰らった後、壊れた部品が妙に少ないと思っていたのだが、やはり仕留め損ねていたようだ。


「あいつ、エルドの村に真っ直ぐ向かってるぞ!」

冬夜がスマホで地図を確認しながら、そう叫んだ。

モビルアーマーは人工密集地を優先的に狙うようにプログラミングされている。
この辺りで一番人が密集しているエルドの村をターゲットに選んだのだろう。

このままじゃエルドの村が崩壊するぞ!


「ユミナと、騎士団の皆さんはここで待ってて下さい!」
「モビルアーマーと戦った経験があるのは俺たちだけだ。だから俺たちだけで様子を見てくる!」

冬夜の言葉に続けて、俺も両国の騎士団へ命令する。

無駄に人を引き連れて行って、被害が増えるのは勘弁だからな。

「よし、エルドに向かおう!」


エルドの村に辿り着くと、村はすでに炎に包まれていた。

「村人の避難を優先させろ!」

俺たちに着いてきた一部の騎士団員が村人の避難誘導を始める。


「どうする、オルガ?」
「まずはモビルアーマーを村から離さなくちゃなんねぇ!なんとかしてあいつを引きつけるぞ!」
「わかった!【光よ穿て、輝く聖槍、シャイニングジャベリン】!!」

冬夜は俺の指示を聞いた後、モビルアーマーへ魔法を放ち、やつの注意を引く。

「琥珀!!」

次に琥珀を大虎サイズで呼び出し、モビルアーマーを引き付けながら、逃げる。

モビルアーマーが砲撃。その方角には……リンゼがいた!危ねぇ!

「リンゼ!」
「は、はい!」

冬夜がリンゼの手を引いて、琥珀の背に乗せ、再び逃げる。

「いいぞ……ついて来い!」


村から充分に離れたところまで、モビルアーマーを誘導出来た。
よし!ここなら、ミカを暴れさせられる!

「【ミカァ!】」

自らの魔力のほとんどを使って、『ガンダム・バルバトス』をLv7で召喚する。
『ガンダム・バルバトス』はLv7で、機体名称が変化する。
俺が限界の魔力で召喚したこいつの名は『ガンダム・バルバトスルプス』。
こいつならモビルアーマーと渡り合える!


召喚した瞬間、モビルアーマーに出鼻をくじかれたが、ミカのバルバトスルプスはすぐに持ち直し、反撃に打って出た。

バルバトスルプスはその手に持つソードメイスでモビルアーマーを叩いては離れ、叩いては離れとヒット&アウェイを繰り返す。あまり決定打は与えられていないようだが……。一応、今はバルバトスルプスが優勢だ!

しかし、そのバルバトスルプスの猛攻も長くは続かない。
バルバトスルプスが離れたタイミングを狙い、モビルアーマーが砲撃を放つ挙動を見せた。

「【水よ来たれ、清洌なる刀刃、アクアカッター】」

モビルアーマーが砲撃を放ったのと同時にリンゼも魔法を放つ。リンゼの【アクアカッター】がモビルアーマーのビームの軌道を変化させた。

モビルアーマーはその後、何度も砲撃を放つが、攻撃を捨て、回避に専念したバルバトスルプスにモビルアーマーの攻撃が当たることは無かった。

だが、反撃に打ってでなければ、勝機はない……。


そんな時、冬夜が何か閃いたようなので、俺は冬夜に賭けてみることにした。

「エルゼ、八重!時間を稼いでくれ!」
「わかったわ!」
「了解でござる!」

「リンゼは大きな氷の防御壁を僕の方に!琥珀はリンゼを守れ!」
「はい!」
「御意!」


モビルアーマーの砲撃を避け続けるバルバトスルプスだったが、モビルアーマーの尻尾が伸びてきて、バルバトスルプスを突き穿つ。

「あっぶねぇ……なあ!!」

モビルアーマーの尻尾がバルバトスルプスのコクピットに突き刺さるが、ミカとバルバトスルプスは止まることを知らない。

モビルアーマーを左腕で殴り付けた後、バルバトスルプスは後退するが、モビルアーマーの尻尾がバルバトスルプスを追尾して来る。

「九重真鳴流奥義・龍牙烈斬!」

その時、ものすごい勢いで飛び出してきた八重が刀でモビルアーマーの尻尾を一刀両断した。

「必ッ殺ッ!キャノンナックル!!」

続けて、エルゼが右手のガントレットをロケットパンチの要領で飛ばし、モビルアーマーを攪乱する。

「二人共やるじゃん」
「行くわよ!三日月!」
「冬夜殿に言われた通り、時間を稼ぐでござるよ!」


「【氷よ来たれ、永遠の氷壁、アイスウォール】」

リンゼが魔法で分厚い氷の壁を作り上げる。

「【モデリング】、【エンチャント:グラビティ、プロテクション】!!」

冬夜はその氷の壁の形状を【モデリング】で変化させて、巨大な両刃の剣を作り、【グラビティ】を【エンチャント】することで重さを、【プロテクション】を【エンチャント】することで耐久度を底上げする。

「ミカさん!」
「借りるよ!」

冬夜が作った巨大な両刃の剣『バスターソード』を受け取ったミカは、モビルアーマーの砲撃を避けながら、全速力で近づいていく。
そして、目にも止まらぬ勢いでモビルアーマーを何度も叩き伏せる。

「あんな技、見たことないわ!」
「あれは……!?」

あれは、試し斬りだ。今、ミカは冬夜の作ったバスターソードの使い勝手を確認しているんだ!

「ちょうどいい、これなら……殺しきれる!!」

ミカのバルバトスルプスがバスターソードを水平に構え、そのままモビルアーマーへと突き刺した。

そして……モビルアーマーは、完全に機能を停止した……。




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ウィンターさんにランキング入りを報告したところ「めでてぇ」とコメントを頂きました。
残り6話もこの調子で頑張っていこうと思います!

……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……。