専業主夫目指してるだけなんですけど。   作:Aりーす

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原作見てなきゃ【】内で誰か分からない気がするぞ???水原冬美シェフです、可愛いです。検索してみて下さい、可愛いです。可愛いです。
原作じゃそこまで出てくるキャラとは言えないから、今回結構自分の中での心情って感じです……(´・ω・)多分シェフ同士の呼び方もオリジナルだと思います、原作読んだのどれくらい前だろ。しかも宿泊研修って相当前だし……


▶︎4-1【エフ】

 

 

 私の名前は水原冬美、自分で言うのはなんだけど名は知れてる料理人だ。遠月学園での3年間を過ごし、卒業までたどり着いた数人の中の1人。今は自分の店も持っている。

 

 イタリア料理店のエフ、それが私が持つ城の名前。イタリア料理においては負けるつもりはない。見た目だけで判断されるのは負けとは認めないから。

 

 悲しいことに私の料理の腕が上がるたびに、自覚した事がある。身長は比例とはいかなくても、少しくらい伸びて欲しかった事実を認めざるを得なくなってきた事。

 

 他に卒業した人達、男子は仕方ないとしても女子の中ではかなり低い方だった。さらに今回も悲しいことに一番低い気がする。認めたくはないが、認めたくはないが。

 

 日向子ですら私より高い。四宮は仕方ないけど、なんかムカつく。鼻に付く感じがあるし、でも腕は私よりも上だし。なんか認めたくないけどムカつく。

 

 ……私の愚痴はここまでにしたいと思う。今回、私は審査員として呼ばれた。宿泊研修、遠月学園に入学したばかりの一年生が最初にぶつかるであろう、高い壁の一つ。

 

 卒業生が試験官となる。それは聞いただけでもレベルの高さがわかる。退学が一つのミスで決められてしまうからだ。

 

 今回は四宮や私がいる79期、日向子らがいる80期、そして関守さんは一つ上の先輩だ。呼ばれるのは初めてではないけれど、今回はいつもとは違うかも知れない。

 

 例えば薙切えりな。彼女は神の舌と称され、一年生ながらにして十傑に入っている。私も元々は十傑の第二席だが、簡単に入れるような世界ではない。

 

 今回は期待しても良いだろうか?私が退屈しない程度の料理を出してくれる人が、名前を聞いたこともないような一年生らが、私や他の人を唸らせてくれるだろうか?

 

 あまり変わることない私の表情も、その時は少し笑っていたと思う。四宮には気持ち悪い笑みを浮かべるな、と言われた。相変わらず高飛車な奴。今度日向子を四宮の店に送りつけてやる。対四宮人型兵器だ。

 

 まぁアイアンクローされる未来しか見えないが。四宮は女子に対しても容赦がない。デリカシーもない。さらに愛想も悪いと三点アンハッピーセットだ。

 

 しかし料理の腕は確かだ。誰にも負けない自信も腕もある。……だがどこか、今まで会ってきた中で一番何も感じない気がしている。そう、四宮に何も感じない、なんてあり得ないのだ。

 

 もちろん私が四宮に恋をしているわけではない。無駄に腐れ縁が続いているというだけだが、オーラのような何かが感じなくなってきている。なぜかそう感じてしまったのだ。

 

 この宿泊研修にそれを掴めればいい、とも思いながらホテルの中へと移動する。これから卒業生メンバーとして壇上に立つのだ。自分の店を出てまで来る価値を感じさせる人はいるだろうか?

 

 私や他のメンバーが出てくる。一気に騒がしさが増していくのが分かる。……出て早々四宮が1人を退学にさせるとは思わなかった。鼻が効きすぎなんだと思う。嫌味を言う口と同じように鼻まで嫌味が……

 

 それからは普通に進んでいった。彼らの最初の課題は割り振られた場所に行き、審査を合格すること。まぁ宿泊研修の日程はその審査が大体だ。全てというわけではないが。

 

 四宮の所に行く人は不幸だと思う。いきなり20人くらい落としてもおかしくないから。まだ私は優しい方だけど、簡単に合格は出さない。

 

 椅子に座り、私の審査を受ける人たちの顔を見る。料理人として大成出来る人は顔つきも違う、そう考えぐるっと見回してみたが……やはり数えられる程度しかいなかった。

 

「じゃあ、課題を発表するから聞いてて。課題はイタリア料理、種類は問わない」

 

 ざわつく声が聞こえてくる。私はイタリア料理の専門、簡単に審査が通るわけがないと考え始めているんだろう。だけど、それじゃあこの先を生き残れるわけがない。ざわつく生徒達へ、私はさらに一言告げる。

 

「ただ、合格であれ不合格であれ……今回の審査において、料理の種類の被りは無し。私に同じ料理は持ってこないで」

 

 料理の世界は速さも問われる。自分の城を持つなら当然そこの技量が問われてくる。人気が出れば出るほど、客足は比例して増えるものだ。

 完全予約制、などを取っていない限りはだが。誰でも入れる、例えば大衆料理屋だったりはスピードが命。一つの遅れは全ての作業を遅らせる。

 

「質問はある?」

 

 ……どうやらないようだ。さぁ、私が退屈しない程度にお願い。退屈したら審査を終わらせたっていいんだから。

 

「ないなら、始め」

 

 全員が慌ただしく料理の準備を始める。やはりメニューの被りという縛りは、人の判断を鈍らせている。それより早く作ればいいだけなのに。

 

 言葉だけでも惑わされている。パスタにおいても麺は複数の種類がある。それが違うだけでも全く違う料理になる。私の舌はその程度を見抜けないほど頓珍漢ではない。

 

 早く料理に取り掛かっている人は数人いる。だけどスピードを重視しすぎても受からない。ちょこちょこいい雰囲気を出してる人はいる。一人一人の名前は覚えてないけど。

 

 まぁゆっくり待とう。そう考えていた私の目を覚ましたのは、会場自体がいきなり静かになったことだ。この人数がいていきなり静かになるはずがない。

 

「……これでいいか」

 

 ボソッと聞こえた。作るメニューは完全に決まっているのだろう。ただの生徒のはずなのに、周りは彼に注目している。

 

 作っているのはパスタ、麺はブカティーニ……と言うことは作るのはアマトリチャーナだろうか?時間としてはパスタなら早く終わるだろう。

 

 問題は茹で時間の間、何をするかだ。ソースを作るのは当たり前だが、アマトリチャーナに関しては本場では有名なものがある。グアンチャーレ、と呼ばれるものだ。

 

 ペコリーノロマーノと言うチーズは用意されていたが、グアンチャーレは数週間を使って作るものだ。ここでは用意されていない。

 

 代わりに彼が使っているのはどこにでもある、ベーコン。彼が作っているのは確かにアマトリチャーナだが、本場のアマトリチャーナではない。

 

 油はサラダ油、使っているのはベーコン。彼が作っているのは本場のイタリア料理では無く、日本でも出来るイタリア料理だ。

 

 決して思いつかない発想ではないし、実際そちらを使うレシピも存在する。もちろんそれを知っていれば容易に出来るだろう。そうだとしても、速い。

 

 一瞬も止まっていない。頭の中でレシピを思い浮かべていたとしても、完全に記憶していたとしても、止まることはある。そこから先は知識ではなく経験の話になる。

 

 レシピを知っているから料理ができる訳ではない。包丁の使い方を学んでいなければ、料理は出来ない。彼は全ての動きが等しく、完成されている。包丁の手捌き、料理の手順、時間感覚まで全て等しく完全に近いものだ。

 

 気づけば私は彼の料理を間近で眺めていた。その間、彼は私に目をくれることはない。ただ目の前の料理のみに全てをかけているような。

 

 ほぼ完成したと同時に、ようやく彼は私の存在に気づいたようだ。だが今度は私が彼を見ていなかった。完成された料理が、皿に盛られていない状態でも見えてくる。

 

 食べなくても分かる。これは美味しい。本場で通用するかどうかは分からない、彼らの舌と日本人の舌は違う。だが彼の作り方は日本人向けの作り方。

 

 イタリア料理と言ったが、アレンジを加えるなとは言ってない。近頃では外国の料理と和食を合わせたりなんてのは、簡単に出来ている。

 

 皿に盛られ始める。茹で時間も完璧だ。素人や料理の始めたての人は時間を計測して茹でたり、焼いたりしている。料理人は経験だけで時間を計測しているが、彼にはそれが存在している。

 

 作り方だけなら、日本向けのアマトリチャーナというだけだ。だがその手順、動きの全てが彼の経験や才能を表している。だからこそ、彼が作り始めた瞬間に静寂が訪れたのだろう。

 

 これで高校一年生とは思えない、それほどの経験を感じさせる。特に私や卒業生、先生達や自分の料理に腕があると思っている料理人ならば、何度も修羅場をくぐったとしても辿り着けない世界に辿り着いていると、脳が告げるだろう。

 

「……どうぞ」

 

 目の前に置かれた料理を、私の口に運ぶ。たった一口で全てが達する思いに至った。美味しさが脳から足先まで痺れるほどに伝わる。トマトの酸味、その中に含まれる甘み、それを殺さない程度の風味と辛味。完璧な食感のブカティーニと、アマトリチャーナで言われる「重い」ソースも完璧に作られている。

 

 ソースの味付けも完璧。グアンチャーレの代わりにサラダ油を使えばその分の旨味は無くなる。その部分を唐辛子と、ニンニクを入れることで辛味と匂いを追加している。

 

 さらにニンニクは揚げているのだろう。ソースやパスタの風味を邪魔しない程度、しかしその中で主張してくる。ベーコンもただのベーコンではなく、敢えて生ベーコンを使っている。油での風味を強くさせすぎないためだろう。

 

 告げる答えは、たった一つ。

 

「……合格」

 

「……お疲れ様でした」

 

 おそらくどの会場にも、これほどの速さで合格した人は片手で数えられる程度だろう。

 

「……やっぱり、考えが足りないかな」

 

 不思議な事を言い残し会場から出て行く。彼はこの料理でも、満足していないのか?まだ上がある、と。それは当たり前なのだろう、料理人には必殺料理が存在する。

 

 彼の得意料理などは私には分からない。だがこれ以上がある、おそらく彼は今壁にぶつかっている。それも普通の料理人なら辿り着けない壁に。

 

 そして既視感を覚えた。あぁ、四宮だ。今の四宮と同じ雰囲気を感じた。四宮も今、壁にぶつかっているのだろうか?それは正しいか分からない。彼の壁は美味しさや速度では無く、何かが足りないと思っているのだろう。

 

 その「何か」は、彼自身しか知らない悩み。あの完成された料理に何を加えるのか、ただ想像しているだけで私の口から涎が出そうになってしまう。

 

 願うならば壁を壊して欲しい。そして他の審査ではあまり目立って欲しくない。彼は……私の店に欲しい。目をつけるのはアリ、と言われている。

 

 この中で誰よりも早く目をつけたのは私。なら声をかけるのも私が一番最初だっていいはずだ。心でそんなワガママを言いながら、審査を続けていった。

 

 

 

 




前話の後書きで短くなると言ったな、むしろ最長(4126字)になった。食戟のソーマ特有の料理に対する変わった評価の感じ、あれは出さないようにします。まず思い付かないのと、料理自体そこまで知識にわかなので出せないんですよね……実際作ってみるのも出来ないし……まぁにわかな部分が気になったらとことんスルーしてください。

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