専業主夫目指してるだけなんですけど。   作:Aりーす

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皆様、この話で今年の投稿は終わりとなります。メリークリスマス、もしくは今年もお疲れ様でした。新年を迎えようとしている、この小説を読んでいる皆様方のおかげで日間、週間、月間から、四半期、さらに累計までランキングに載っていました。本当にありがとうございます。
投稿し始めて2ヶ月過ぎ、年が明けます。来年も不定期にはなりますが、投稿していきたいと思います。今年はありがとうございました。来年もよろしくお願いします。


▶︎9-2【エフ】

 

 

 今日という日を待ち望んでいた私がいる。ドキドキしてるのもある。そして不思議と緊張している、というのも否めないのが今の私の気持ちだ。

 

 千崎雪夜。私が今年、宿泊研修の審査員として呼ばれた時に私の試験を受けた生徒の1人。もちろん、ただの生徒なら名前を覚えたりはしない。

 

 私はあの性格の悪い、かませメガネみたいに大量に落としたりはしないし。だけどその分、あまり覚えたりはしなかったけど……料理をする姿からできた料理の味、全てが昨日のことのように思い起こせる。

 

 ……自分で自分が笑えてきてしまう。まるで恋心を抑えようとしている、乙女みたいな考えだな、と思ってしまって。でも、もしかしたらそれに近いのかもしれない。

 

 あんな腕があれば、と思ってしまうけれども。彼自身のレベルが高すぎる。いつか私を抜かしてしまうのは、私自身が確信している。だけど私の店に欲しいと思ってしまう、こんなワガママな気持ちは恋心にも近いのかもしれない。

 

 こんな気持ち、料理をしてるアイツの顔を見る以来なのかもしれない。……まぁあっちはヒナコがいるから、いつかくっつくとは思うけどね。あのメガネは気づく様子ゼロだけど。

 

 今日という日を、私自身楽しみにしている。私だって料理人だからこそ、客がどんな表情で食べているか分かれば、心の底から美味しいと思ってもらえているかは分かる。

 

 料理をしている時の千崎雪夜は、無表情にも近かったけれど、その目はしっかりと楽しいという気持ち、上に上がるという気持ちを感じさせるような熱を感じた。

 

 ただ少し予想外だったことは、何故かエフに千崎雪夜を招くことをヒナコに知られていたことだ。普通に連絡がきて、「今日来てもいい?」っていわれたし。

 

 断ろうとも思ったけど……「千崎くんって言う、目をつけた子が来るんでしょ〜?」といわれ、一体どこから情報が漏れたのか未だに分からない。

 

 今はヒナコと2人でエフの中にある。もちろん私以外も従業員はいるのだが、今日は全員を呼んでいない。1人だけ、千崎雪夜を店に招く従業員はいるけど、それ以外は今日はお休みにした。

 

 理由は私自身が彼に料理を作るため。そうじゃなきゃ、招く意味がないから。

 

「ねぇねぇ〜、まるで恋をしてる女の子みたいだよ〜?」

 

 ひとまずヒナコの頭をグリグリしておいた。ヒナコのドヤ顔ほどムカつくものはそうそう無い。どれくらいってあのメガネに馬鹿にされるくらいムカつく!

 

「痛い!痛いですよ!?」

 

「痛くしてる。それくらい罪深い許されない事をした」

 

「何がですかぁ〜!?あっ、頭が、頭がっっ!!!」

 

 ヒナコが痛みに悶えていると、外から少しの話し声が聞こえる。私が用意しておいた案内役の従業員の声と、私が招いたあの子の声。ヒナコもおちゃらけた雰囲気ではなくなっていた。

 

 卒業生がまだ卒業もしていない生徒に、こんな形で招くなんて異例と言った方が正しいのかもしれない。宿泊研修は確かに卒業生が在校生に目をつけるため、という名目でも参加することができる。

 

 ただそれはいわばスカウトのようなもの。卒業するであろう、そんな予想を立てた上で自分の店で働かないか、という事を伝える。もちろんただの生徒には声を掛けたりはしない。

 

 もちろん噂が広がっている子らもいる。例えば薙切えりな。彼女は現学園長との血縁というアドバンテージもさながら、その実力も確かなものだ。ただ生半可な腕の料理人がスカウトするものなら、食われてしまうだろう。

 

 ……でも、薙切えりなや他の1年生にもない何かを感じ取ることが出来たのは彼だけだ。その正体は一体何かは掴めないけれど、彼自身を知らなければどうしようもない、かもしれない。

 

 考えていると、千崎雪夜は私の店に入店してきた。ひとまず私も立ち上がり席に案内する。……わざわざヒナコは席を移動して隣にいったみたいだけど……ヒナコも興味あるの?

 

「今日は、お招きありがとうございます」

 

「堅苦しくなくていい。今日は私が招いたから……」

 

「うふふ、いつも通りで良いんですよ〜」

 

「……まぁ、それなら……」

 

 まだ少し堅苦しい感じは抜けてないけど、元からこんな感じだった気もする。どこか他人行儀でありながら基本的なマナーだったりは守ってる、そんな感じ。

 

 ひとまず今日は私が料理を振る舞う場だ。メニューを渡し、好きなものを頼んでもらう。

 

「……んー……」

 

「うふふ、迷ってるんですか?」

 

「こういう高級そうな店は、初めてなので……」

 

「そうなの?私はてっきり、普通に行った事くらいはあるかと……」

 

「普通の家庭で過ごしてきたんで……外食とかはファミレスとか安上がりな所に言ってました。美味しいですし……」

 

「あら、そうなんですか。でも噂は聞いてますよ〜?先生だったり、ね?」

 

「……噂?そんなのあったんですか……」

 

 ……他者からの噂とか、一切気にしないんだ。まぁ、実際実力もある。自分より下の人間の発言や噂にいちいち反応するような人は、強者ではそうそういない。

 

 強い人にはそれなりの強さの根本となる、何かがある。料理人なら得意料理のジャンル、そしてその中でも最も自分が美味いと思える料理、もしくはそれを作る調理器具だったり……強さとは、証明になるから。

 

 もちろん強者には種類があるし、他者に手を差し伸べられる聖人君子のような人間もいる。ヒナコはどちらかと言えばそちら側の人間なのかもしれない。本人に言ったら調子に乗るから絶対に言わないけど。

 

「それじゃあ……私のオススメ、ってのは?」

 

「水原さん、の?……それでも良いんですかね」

 

「一つに決められないんですからね〜、それでも良いと思いますよ?オススメなんて珍しいですよ!なんたって、あぁっ!!あ、頭が潰れます!!!」

 

「トマトみたいにしてやろうか……それじゃあ作ってくる。ヒナコセンサーがある限り、変な事を言ったりしたら一回につき1ミリ頭が凹むから」

 

「それは酷くないですかぁ!?私への扱いへの改善を求めますぅ!!!」

 

 ぎゃーぎゃー喚くヒナコをそのまま置いていき、厨房に入る。オススメ、とは言ったけど……一つ挑戦でもあるかな。でも、あれじゃなきゃ卒業程度のレベルは測ってもらえないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出来たよ」

 

「……これって……」

 

「アマトリチャーナ、ですね。確か千崎くんが試験で作った、とも聞きましたが……」

 

「水原さんの試験で作りました。……オススメ、でこれが出てくるとは思ってなかったです」

 

「そう?まぁ、食べてみてね」

 

 千崎雪夜は私が作ったアマトリチャーナを口に運ぶ。ほとんど無表情と言って差し支えない表情だった彼が、一瞬で顔を崩した瞬間を見た。

 

 静かに、その味を噛みしめるかのように一口、一口と食べていく。その間、不思議なことに私も、ヒナコも恐ろしいほどに静かだった。まるで食事の邪魔をしないようにする為に。

 

 ヒナコには私から色々伝えた事がある。千崎雪夜という人間について、私が今の時点でわかった事を。ただその時はまだ疑心暗鬼、というか……はっきり言ってそんな確証はどこにもないから、どことなく信じてはなさそうだった。

 

 だけれども、今のヒナコには私が伝えた事全てが理解出来たのだろう。本当に一流の料理人っていうのは、料理だけでなくその立ち振る舞いにも現れる、なんて事を料理が主体の世界では言われる。

 

 店を出すなら作る側の人間もマナーは基本ではなく、一流でなくてはならない。もし作りながらスマホで電話しながら、タバコを吸いつつ片手間で料理を作っていたら食べる気も失せるだろう。

 

 そんな世界に入り込めるのは人類の0.000何%なんてレベルだ。もちろん私達がそんな世界に入り込んでいる、なんて自惚れはしていないけれど……目の前の彼は入り込めるのではないかと、思ってしまう。期待してしまう。

 

「……美味しいです。つい、無言になってました……」

 

「っ!……うん、ありがと」

 

 彼は珍しくも、笑顔だった。私は知り合いなんてレベルでもないのかもしれないけど、笑顔がここまで私の心に響く、そんな笑顔を初めて見たのかもしれない。

 

「うふふ……千崎くん、笑うんですね」

 

「俺だって笑う時は笑います。あまり笑いませんけど」

 

「ここに入店してから今まで、表情が変わってなかったんですけどねぇ……それであまり、はないんじゃないんですか〜?」

 

「……かもしれない、ですね」

 

 彼は私が作ったアマトリチャーナを食べ終わり、そこからしばらくは談笑に入った。私とヒナコは少しだけどお酒を飲んだ。……ヒナコは千崎に酒を飲ませようとしたのは、流石に殴った。

 

 彼はしばらくして帰った。まぁここは宿泊施設とかそんなものではないし、帰るのは当たり前なんだけど。

 

 ……どれくらいなものかわかったのかな?彼は今の時点でも卒業する、そんな気はしてる。だけど卒業するだけでは彼自身の何かは満たされることはないだろう。

 

 話してる間でわかった。彼の夢っていうのは、店を出す事だったりそんな事ではないのだろう。夢自体を聞き出すことはしなかった。人の夢を聞くのは、あまり好きじゃなかったから。

 

 さて、彼は今の遠月学園でどれだけの進化を遂げるのかな。出来ることなら一つ一つ見てみたい気持ちもあるけれど、私にも暇はそこまでないし……彼自身、ずっと見てられるなんて気が気でないだろう。

 

 ……私も自分自身を進化させたい気持ちはある。だけど大人になると、自分の限界が見えてしまう時だってある。あのメガネもそうだ。壁を感じていたらしいし。

 

 彼自身の成長は彼自身でしかなし得ない。……今度、また別の機会に誘ってみよう。今度は私の本気で、本当の得意料理を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……となりの酔っ払ったヒナコをどうにかしなければ、という気持ちをひとまず捨てておきながら、そう思った。

 

 

 




白猫合計115連くらいした!
結果はオスクロル×2、ルビィ×2、ユキムラ、ティナ、ノア、ネモでした!!本当さ!茶熊2017のセイヤ!主人公らしくて本当に好き!ティナの思い出6のセイヤとの絡みが特に好き!!!ノアネモは至高。カプ厨ではないけどセイヤとティナが好きなんです!!!後、茶熊2017後半イベのデートストーリー面白かった。エル姉しかり、ルビィが可愛いっっっ!!!お姉ちゃんとか!!!ギャルゲーかな?ついでに大樹の道難しくない??
正月が近いですね。今の時点で650個ほどしかジュエルが無いので、1人引けたら撤退ですかね……まだまだフォロワーさん募集してます。今の名前は『Aりーす@専業主夫』です。誰か!白猫の恋愛物書いてくれ!キャラ同士、もしくはオリ主×キャラの短編系の!恋愛を!書いてくれないなら自分で書く!(誰も期待してないです)(誰得?)

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