専業主夫目指してるだけなんですけど。   作:Aりーす

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▶︎10-1【先輩】

 

 

「…………」

 

 今、あたしは少し面倒な会議?に参加している。まぁ基本的には緩く話したりしてるんだけどなー……今回はちょっと真面目な内容らしいし。……ただなー、どうもムカつくことがあるから嫌なんだよなー……

 

「……じゃ、始めよっか。今回話す事は前もって全員に伝えたとは思うけど……」

 

 今この場には現十傑が揃っている。……いや、十席の子は来てないね。まぁ仕方ないといえば仕方ないのか……ま、そこは正直にいえばどうでも良いんだけどね。

 

 一席、司瑛士。二席のあたし、小林竜胆。三席、女木島冬輔。四席、茜ヶ久保もも。五席、斎藤綜明。六席、紀ノ国寧々。七席、一色慧。八席、久我照紀。九席、叡山枝津也。合計9人が揃ってる。

 

「今回話す事は学園長の辞めさせ、新たな学園長として……薙切薊を任命し、この遠月学園を変革させるかどうか、だ」

 

「…………」

 

「ふむ……伝えられていたとは言え、なかなかの議題だ」

 

「まぁ、そうだね。こんな事そうそう有るものじゃない。でも決めないとね……過半数取るかどうかで、これからの全てが変わるんだから」

 

「うわ、おっもーー!そんな議題とかやりたくねぇ……んでも、やんなきゃいけねーんだもんなー」

 

「そうだよ久我。君だって十傑の1人なんだから」

 

「しかし、それについて何かしら意見などあるのですか?わざわざ会議など開かなくとも、賛成か反対か……どちらかで良いのでは?」

 

「うーん、そうしたいんだけどね……すぐに決めろってのも酷な話だと思うんだ。全員が決まってる、そう言われたら違うでしょ?」

 

 司が言うと、場は一気に静かになる。心のどこかで決めている自分と、それに反対している自分が相反しながらも、両立しているような気持ちで存在しているからだろう。

 

 あっ、相反とか両立とか結構あたし頭良さそうな事言わなかった?……って雪があれば言うし、司とかだけの時とか、もうちょっと緩めの会議とかなら口に出すのになー……まず心の中だからダメか。

 

「まぁ、早く決めるに越した事はないでしょ。やっと秋の選抜が終わって、俺がやる仕事とかも減ったんすから……」

 

「……はぁ……仕事って言うより、金づるが居なくなって残念なんじゃないの、アンタは」

 

「さぁ?まぁ大事なお客様にクライアントなんだからなぁ……仕事ほっとくわけにもいかねえだろ?」

 

「あっ、今日も毒舌だ。気をつけたほうがいいよ、いつも通り生理なんだと思う!」

 

「殺す。アンタ毎日私を生理にするのやめてくれない?男には分からないだろうけど、特にアンタは」

 

「まぁ俺、男の子だし☆」

 

「……会議、脱線してるぞ」

 

 重い会議じゃなければ基本こんな感じだからな、この十傑メンバー内の絡みって。……ももは一切興味無さそうだけど。多分頭の中お花畑……いや、スイーツ畑だから……

 

「……何か変な事考えられた気がする」

 

「さて、話を戻した方が良いのではないか?少なくとも賛成、反対は決めなくてはいけないのだろう?」

 

「……だね。……それで良いかな、女木島に一色」

 

「……俺は別に構わない」

 

「それで良いと思いますよ。……わざわざ聞く理由があるのか、知りませんけどね」

 

「あぁ、ごめん!少し発言してなかったからね。女木島はともかく、一色がそこまで黙り込むとは思わなかったから……」

 

「……いえ、僕も僕なりには考えていますから。ここで茶化すような人間ではないですよ」

 

「……そっか。それじゃ、長引かせても悪いし……賛成か反対か、決めようか。賛成の人は挙手を」

 

 手をあげる。挙手したのは司、もも、斎藤、寧々、叡山の5人。挙げてないのはあたし、女木島、一色、久我の4人だ。……さて、あたしはどうすっかな?

 

「意外だな、一色や女木島は挙げないとは思っていたが……久我と小林も、か?」

 

「んー、俺はどっちでも良いからね〜。どうなろうと知った事じゃないし。……まぁ俺の性格上、あの人とは合わねえかなって感じ?」

 

「けっ、まぁ1番合わなそうだもんな」

 

「女木島はどうしてだい?」

 

 司はいつも通りの雰囲気で女木島に話を振る。少し考える様なそぶりを見せて、女木島は話し出す。

 

「……元々、俺は食戟自体に参戦するつもりはなかったし、十傑になるつもりもなかった。……なら、より縛るような考えには賛同出来ん」

 

 ま、そういう奴だもんな、女木島は。食戟の誘いがしつこくて受けたら十傑に入った、このメンバーの中で唯一十傑の座に興味がないと言っても良いからなぁ……

 

「まぁ、それでも良いのだけどね。けど、結果的に十傑が過半数賛同している、とは言い難い気もします。十席の彼女を抜いてるわけですし、ね」

 

「……一理ある。十傑全員からの過半数ならば、6票が無ければ完全に決定できる訳でもないからな」

 

「まぁ、賛同の最終的な決定は任せますよ。今いるメンバー内、9人では反対派の方が少ない訳ですし」

 

 一色はいつもニコニコしてるなぁ……なんか食えない感じがするけど、そこが一色らしさだよなぁ……それに実際本気でやったら、っていう強さが分からないし。

 

「……じゃあ、竜胆はどうしてだい?てっきり賛同すると思ってたんだけど」

 

 あたしに目線が集まる。まぁ普段のあたしなら賛同する方だよな。ワクワクするのは事実だし、今までの学園のままでいくか変革?だっけ?そんな感じの学園にするか、って言ったら後者の方がワクワクするし。

 

 けど、完全に賛同できない自分がいる。その理由は明白だろう。……それに、正直疑いもあるし。完全についていくってのは正直無理だと思ってしまう。

 

「んー……なんかな、スッキリしないんだよなー……」

 

 ワクワクする方と明確な理由、比べるならあたしは明確な理由の方を絶対に取る。だけど、あたしはあの事の真相を知りたい。その結果によっては、あたしは許すことができなくなる。

 

「……りんどーでも、悩む事ってあるんだ」

 

「それはしつれーだぞ!?りんどーさんでも悩む事くらいあるから!」

 

「えっ、そうなのかい?」

 

「それは初めて知ったな」

 

「へー、悩むなんて知らなかったぜ☆」

 

「あたしへの愛を感じる!……保留って事にするのはダメだもんなー。でも、なぁ……」

 

「……一体、何で悩んでるんだ?」

 

「……言えない、かな。これはあたしの問題だし。……その問題の結果によっては、十傑とか遠月学園とかどうでも良くなるけどね」

 

 少し雰囲気が重くなるのを感じる。……自然とあたしの両手には力が加わってるのが分かる。……それに、事実であればあたしも、あの人だって許すことができるはずがない。

 

「ん、悪い悪い。やっぱあたしは賛成派に行くよ。あたしのやりたい事とか知りたい事は、そっちの方が知れるだろうし」

 

「……そっか。何があるかは聞かないでおくよ。なら過半数だね。それで、良いかな?」

 

 司が全員に返事を促す。誰も否定を述べるつもりはないようだ。……そもそも過半数を取った時点でこの会議は賛成派の意見を取る、そういうルールだし。

 

「それじゃ、今回は解散だ。各自、ちゃんと休んでね?」

 

 司の合図で一色と女木島は真っ先に出て行った。それに続くようにあたしも出て行く。さて、と……んー、念の為お願いしておこっかな。遠月学園のどうたらには関係ない事だし、ね。

 

 よーし!気持ち切り替え!雪のお見舞い行ってくるぜ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雪ー?」

 

「……あ、りんどー先輩」

 

「あり、起きてた?もしかして起こした?」

 

「大丈夫です。さっきまで他の人がお見舞い、来てましたし」

 

 知ってる。あの子達だよね。さっき受付の所でたまたま見ちゃったし。……良かったと言えば良かった。怪我してる時にお見舞いに来てくれるような友達ができたんだよね、雪にも。

 

 雪と、こう……うん、そういう関係になりたいって気持ちはあるけど、1番は雪に幸せになってほしいもんなぁ、雪が幸せになればあたしも幸せだし。……雪が結婚してもこの関係が続いたら嬉しいな。どれだけ先のことになるか分からないけどっ!

 

 幸平もいたし、なんでか一色も来てたらしい。おかしいな、あたしが少し遠月学園で仕事?っぽい事をしてたとは言え、来るの早くない?一色はもしかして瞬身の術使い!?……裸エプロンで来そうだよな。

 

「大丈夫か?まぁ大した事なくて良かったけどさー……流石に料理はしてないよな?」

 

「流石にしませんよ……幸平達にも言われたんですけど、そんなに無理しそうに見えます?」

 

「当たり前じゃん。見えない方がおかしいよ?」

 

「えっ」

 

 鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてるけど、まぁ置いておこう。実際無理しそうな雰囲気なんだよね。利き手の方を怪我してるとは言え、雪って両利きでもあるし。基本的に使わないだけで。

 

 意識してるかしてないかは分からないけど、夜中にメモ帳に何かしらを書いてるらしい。看護師さんから聞いた事ではあるけど、その時の雰囲気が声をかけられないような雰囲気だったらしい。

 

 その日はぴったり秋の選抜の予選突破者が本戦を開始する日だった。幸平だったりはその前にもここに来てるらしいから、おそらくその時に自分が作るお題を言ったんだと思う。

 

 『もし自分だったら、このお題でどういう風に作るか』なんて事を書き記していた、って事だろうけど。……雪らしいっちゃらしいけどね。予選なんて突破して当然だと思ってる辺りから、ね。

 

 まぁもちろん、雪が参加してれば予選は余裕で突破できるってあたしも思うけど。本戦はまだ分からないかな?あたしがまだ知らない料理人が後輩にいるかもしれないし、ね?

 

 それであったとしても雪が勝ったと思う。身内に対する贔屓とか、そんなのを一切含めないにしても。

 

 この事を聞いて不安になったのは、病院を抜け出したりしないかって事。いくら雪でも怪我には勝てない。どんな一流だろうと英雄だろうと、怪我をしながら無理をしたら、二度と料理ができなくなるかもしれない危険性だって考えないといけない。

 

 それだけは嫌だ。雪が料理をしてる姿は大好きだし、料理自体も大好きだ。何より、二度と出来ないなんて事になれば、雪が1番苦しむ。あたしはそんな姿なんて絶対に見たくない。例えあたしが死んでも見たいなんて思わない。

 

「雪、無理だけはするなよ?あたしだって、心配なんだからな」

 

「……分かってます。母さんにも心配をかけたくないし……」

 

「今度帰ったら怒られるかもな、無理したら。まぁあたしがチクるんだけど!」

 

「うっ、それはちょっと勘弁です……」

 

 あたしは負けるのは嫌だ。でも、悪くないと思う時だってある。雪に負けていると思う事があるからこそ、全てが悪いとは思わない。雪のおかげであたしも料理を続けられるんだから。

 

 だから雪、本当に無茶はしないでくれ。あたしがちゃんと雪を守る。雪は自分の道を進めば良い。……その道を応援する事だってあたしはする。その道に……料理以外で邪魔するなら、あたしはそいつを全力で排除する。

 

 雪に知られたらあたしは怒られるじゃ済まないだろう。真夜さんにはこっぴどく怒られて、泣いてしまうかもしれない。でも、あたしはあたしなりに雪を応援する。

 

 雪を認めてるからこそ、好きだからこそ……絶対に雪を守るから。

 

 

 




別にりんどー先輩は死なないし酷い目に遭ったりしませんので( ˘ω˘ )投稿間隔空き過ぎィ!
ちょっとシリアスなのはすぐ無くなります。裏でりんどー先輩が動くだけですので…ついでにもう1人動きますけど、まぁそれはここからのお楽しみ。それと、次の話は色んな人の主人公お見舞い話になります。番外編っぽくなるかもですね。
後、勘違い日記形式の作品を新しく一つ投稿しようと思ってます。今の所、1番合いそうなのが天空侵犯って言う漫画です。天空侵犯面白いです。まぁシリアスゼロな作品にしますけどね!もし投稿したらよろしくお願いします。

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