専業主夫目指してるだけなんですけど。   作:Aりーす

27 / 34
ついにっ、原作主人公視点がっ(少しだけ)!どこに料理要素があるんですかね。お見舞い回なんていらないんじゃないかなって()
この作品でヒロイン感がすごい秘書子をお見舞いさせるかどうかで悩んでます。ストーリーを進めた方がいいような、そんな感じ……くっ……


▶︎10-2【極星寮】

 

 

 

 ようやく俺が出てきたとかそういう話はまぁ置いておこう。この作品俺の影とかほぼないからな。……あ、幸平創真って言います、知らない方は知っといてなー。

 

 遠月学園に入学してから色々なことがあった。この学園に通って良かった、と思う事ばかりだった。ここに来なかったら絶対に知らなかった人達や、料理の世界を見ることができたから。

 

 その中でもより印象があるのは、今俺が行こうとしている場所にいる。名前は千崎雪夜。同世代とは思えないってのがアイツの印象そのものだ。先輩とか、すでに自分の店を持ってるって言われた方がよっぽどだ。

 

 入学式の時に初めて見たが、あの時から独特の雰囲気というような、そんな何かを感じていた。どこか感じ取れない、掴みきれないような、それであって格上としか思うことができないほどの、そんな何か。

 

 勝てないと思ったことはほぼない。勝てなくても自分の料理をすることで、そして努力する事で自分をより強く、上にいけると思っているから。……だけど、アイツだけは違う。

 

 俺以上に努力している雰囲気、そして一度も負けた事がないという事実。それを信じていない奴らもいるだろうけど、そうだとしてもアイツを目の当たりにすれば嫌でもわかるはずだ。

 

 ……雪夜の印象を語り過ぎたかな。とりあえず俺は今、雪夜がいる病院へと足を運んでいる。……なぜ病院にいるのかというと、雪夜は学園内で事故に巻き込まれたからだ。

 

 何かを建築していたのかは知らないけれど、木材が落下して腕を骨折。頭をその時打っていたようで下敷きになった状態で発見されたらしい。意識はすぐ回復したらしいし、少しすれば治るらしい。

 

 そうだとしても、あまりにも時期が悪すぎる。今、遠月学園は秋の選抜という大会のようなものが開催されているからだ。俺は予選を突破したが、雪夜はそれにすら参加できてないんだ。

 

 あれだけの努力をしている雪夜だ。まだ同世代にも実力が一切分からない奴だっている。予選の時から雰囲気が違う奴らだっていた。葉山アキラだってその1人だ。

 

 ……こんな事を今更どうのこうのを言ったって意味はないし、結果が覆る事は無い。だが、アイツの実力を少しでも知ってる奴らからしてみれば、こんな事になったのはあまりにも残酷すぎる。

 

 どんな顔をすればいいかは分からない。だけど、お見舞いはしないといけない。……少しだけ気が重くなるのを感じる。

 

 そんな事を考えながら、病室に着いた。扉を開けると、こちらに目線が向く。紛れもなく雪夜の目線が。少し意外そうにこちらを見つめてくるその目には、隠しきれない悔しさが見えるような気がする。

 

「よっ、大丈夫か?」

 

「割と。……まぁまだ治りきってないけど」

 

「いきなりお見舞いきてゴメンな?何も持って来なかったし……」

 

「持ってくるものを楽しみにしてる訳ではないぞ?……わざわざ悪いな」

 

「秋の選抜中だけど、こっちの方が大事だと思ったんだ。……お前とは、絶対当たると思ってたから」

 

「……俺も、そうは思ってた。他にもいるけど」

 

 ……やっぱり、秋の選抜の予選なんてものはこいつにとっちゃ通過点でしかないんだな。俺と、そして他のメンバーと当たるってのは本戦以外はないし……

 

 怪我をしたのも秋の選抜の予選のメニューが発表されてからだった。どんな風に作るかは考えていたはずだし、もちろんそれに向けて練習であったりはしてたはずだ。

 

「俺ももう少しで本戦だし、相手とメニューも決まったんだ。……雪夜は見るのか?」

 

「その頃には多分治ってる、はず……見るぞ、全員分」

 

 その目は闘志が宿っているように見えた。……雪夜は自分の料理もさる事ながら、他人の料理はより一層関心があるように思う。他の人の料理も自分の力にしようと常に見ている。

 

 薙切から聞いた事だけど、俺の食戟も見ていたらしい。しかも俺の料理だけを。……まるで、結果が分からなかったはずなのに俺が勝つというのが分かっていたかのようだった、と聞いた。

 

「……頑張れよ、幸平。折角だから優勝してこい」

 

「……へへっ、当たり前だろ!」

 

 雪夜がいない、というのは本戦に上がったメンバーの大体からすれば、自分にもチャンスが巡ってきたと思ってしまう。雪夜との対決を楽しみにしてる一方、確実に負けてしまうかもしれないという、どこか不安があるのだ。

 

 どんな時だって雪夜は結果を出しているし、他人の料理から自分の可能性を広げる、そんな先見の明がある気がする。……あれ、先見の明とかこんな意味であってたっけ?分からないけどまぁいいや。

 

 お見舞いはそこまで長くいない方がいいだろう。……ほんの少し話しただけでも、悔しさとどうしようもできないもどかしさ、この2つを雪夜の行動の全てから感じるし、それを感じさせている存在である俺がいる事が、どうしようもなくダメに思える。

 

 こんな事を言ったら「違う」と言われるだろう。アイツは顔にあまり出さないけど、人思いだから。優しいという気持ちは、料理からも人柄からも伝わってくるから。

 

 ……願うなら、アイツと本戦の舞台で会いたかった。それはアイツを知る全員が言うことだろう。……次、何かがある時は必ず。例え勝てなかったとしても、な。

 

「……さて、人の心配してるだけじゃダメだな。俺が負けたらさっき言われた事を全部無駄にしちまう」

 

 俺は病院を出て、自分の戦いのために。そして雪夜に優勝を伝える為に。メニューをさらに上へと上がらせるそんな中を掴みに、歩みを進めた。

 

 

 

 

 

side.一色

 

 

 ……あれ、僕?……いや、そんな事言ってる場合じゃなかったんだったや。はーい、一色でーす。一応十傑の中に入ってる1人だけど……まぁ僕自身の紹介はそこまで興味も無いかな?

 

 そもそもこれ、僕は一体誰に対して会話してるんだろ?目の前に誰かいるわけじゃないのにねぇ、しかも心の中でとか……もし顔とか話してないつもりで口を開いてたりしてたら痛い人だよね。

 

 っと、本題を忘れてたや。今日は授業とかそういうのじゃなく、ちょっとした私用で外出してるんだよね。しかも普通ならそんな行くことのない病院という場所に。

 

 そこまで病院は好きじゃないんだけどねぇ。病院好きっていう人はいるだろうけど、多分その人たちはマイノリティ側の方々だと思うんだよね。注射大好き、みたいな人そうそういないと思う。

 

 ……で、来た理由なんだけど、可愛い可愛い後輩君が怪我をしたって聞いてね。時期が時期だから来ちゃったって事なんだけど……

 

 本人には一切何も伝えずに来てるわけだし、もしかしたらびっくりされるかもね。その後輩君、僕とそこまで会話したりしてるわけじゃないからねぇ……

 

 まぁ、こっちからしたら結構話したい相手でもあるし……遠月学園という場所に通っている以上、何かしらの形で話したりしたいと思う相手。それが後輩だから話しかけづらいんだけど……

 

 名前は千崎雪夜くん。今年入学した一年生にして、正直今の二年生や三年生でも割と敵わない子の方が多いと思ってる。実力は噂で聞いたり、ほんの少し見た程度なんだけど……自分でも勝てるかどうかははっきりしないってところだね。

 

 少し前に極星寮に来た事もあったけど、あの時に初めて会った時の雰囲気はまだ覚えてる。それくらいの存在感がある、もしくはそう思わせるほどの威圧感のような、言葉で表すことが出来ないものがある。

 

 言葉で表せないなら一体何で表せばいいんだろうねぇ?なんて自問自答を心の中で繰り返していると、彼がいる病室へ着く。……まぁ病院にいるって時点で何かしらあるって事なんだろうけど、さ。

 

「やっほー、体調その他諸々大丈夫かい?」

 

「……一色先輩?……わざわざ、どうも」

 

「いやいや、可愛い後輩のお友達後輩君が怪我をしたんだからね。僕が来ないわけにも行かなかったのさ」

 

「……幸平、ですか?」

 

「正解。……ま、本音もあるっちゃあるけどね?君と話したりしたいって事とか、さ」

 

「……そう、なんですか……確かに、こうやって一対一は初めてですかね」

 

 やっぱり少しびっくりしてるっぽいね。まぁ、実際部外者と同じような立場の僕にいきなり病室に来られて、しかもその理由が後輩がどうのこうのって言われてもピンとは来ないよねぇ……

 

「ま、お見舞いだよ。……少し真面目な話もあるっちゃあるんだけどね」

 

「……ありがとうございます。後、選抜の事はさほど気にしてないので、大丈夫です」

 

 『さほど』ねぇ……それはどこの平均数値に合わせた『さほど』なんだろうね?少なくとも負けず嫌いの人の『さほど』は一般の人からすれば……そうだね、気にしてないなんてお世辞を言えないほど気にしちゃってるレベルだと思うんだよね、個人的に。

 

 それに君は嘘は決して得意じゃない。ほとんど無表情だからこそ、むしろ変化する時の方が分かりやすいものさ。今の君は、負の感情ばかりが心の中で渦巻いてるようにしか見えないんだよね。こんな事は言わないけど、さ。

 

「……そうかい。じゃ、ちょっと真面目な話なんだけどね。君の怪我についてなんだけど……まぁ治る治らないの話じゃないから安心してよ」

 

「……事故じゃなかった、とか?」

 

 ……はてさて、この子は一体どこまで認識を改めないといけないんだろうねぇ?少なくとも僕と……竜胆さんしか知らなかったと思うんだけど、ね。誰かから聞いたって事はほぼないだろうし。

 

 その上、例え誰かから聞いていたとしたならば……何かしら自分の怪我の原因が他人にあると分かっているならば……少なからず怒りの感情が垣間見えてもおかしくはない。

 

 ただ、彼にはそういった感情が何も見えない。まるで怪我なんてもの、事故だろうと故意だろうと関係がないかのように。怪我をしたのはあくまで自分のせいでしかない、と思っているかのように。

 

 感じる、と言うならば悔しさに関する負の感情だけかな。……それであったとしても事故じゃなかったと頭で考えられる、ってのは冷静なんてレベルじゃ表せない気がする。

 

「……ふふっ、まぁそんな口ぶりなら興味も特に無さそうだね。……そっちは彼女がやるだろうし」

 

「……彼女?」

 

「はは、こっちの話だよ。そうそう、君が退院した頃にはちょうどスタジエールが始まるからなんだよね。君はどう思う?」

 

「……いつも通りやります。場所とかも興味はないんで……」

 

 大物、だねぇ。……まぁ君が行くところなんて限られてると思うけど。多少名の知れてる程度の店に君が行ったら、勢いのままその店を乗っ取ったり気が付かないうちに潰しちゃいそうだし、ね。

 

「あははっ、なら安心だね。まぁ君が行くところはそれなりに……いや、結構なの知れた場所だと思うから」

 

「……俺がそんな場所に行くんですか?」

 

 ……今のはどっちの意味かな?俺ごときがそんな店に行っていいのか、って意味なのか……それとも、俺が名の知れてる『程度』の店に行くのか、って意味なのか……

 

 前者だったら自分を過小評価しすぎてる、よねぇ。むしろ皮肉にも感じ取れちゃう。後者なら……あり得なくはないか。彼の実力は十傑の中の数名にも広まってるわけだし。

 

 尊大、と言えばそこまでだけど……決してそれが否定される理由になるかと問われれば違うだろう。彼にはそれ相応の実力も、努力も、実績もあるのだから。

 

「……ま、僕が君の行く場所を決める権利なんてないからね。楽しみにしてるよ。君の活躍も……いつか君と戦う日もさ」

 

「……恐縮です」

 

「ふふっ、謙遜も過ぎないように、ね?いらない敵を作る時だってあるだろうから」

 

「……です、ね」

 

「うんうん。……さて、そろそろお暇するよ。もう少しここで君と話していたいんだけどねぇ、時間が許してくれないって奴さ」

 

「……話すのは、また別の機会って事で」

 

「そうだね。それじゃあ無理しないで治してね?いきなり来ちゃってゴメンね」

 

 僕は彼の病室を後にする。……んー、なんだろうね。こうして話すと実力を持ち、努力をし続けていると思えないほど平凡なんだよねぇ。人は見かけや第一印象によらないって奴なのかもしれない。

 

 彼について調べた方がいいのかもしれない、と思う一方……それはやってはいけないような気もする。それでいらない事まで知ってしまう、なんてこれからの関係にヒビが入る可能性だってあるかもしれないし。

 

 それに、第二席の彼女に怒られてしまいそうだ。過保護とまではいかないけど、お気に入りなようだからね。……それに、多分だけど千崎くんと接触したことがある十傑はまだいる気がするんだよねぇ。

 

 ……どこの誰なんだろうね。十傑のお気に入り君を傷つけて……あまつさえ料理人としての人生を潰すような輩は。

 

 ……ま、少しくらい動かさせてもらわないと。後輩君の秋の選抜への道を誰かの勝手な何かしらの事情で途絶えさせる、そんな輩を許すつもりなんてあるわけがないし、さ。

 

 ……ふふっ、僕らしくないかな。幸平くん並みに肩入れしてるような気がするよ。

 

 




投稿間隔とは何だったのだろうか(困惑)ゴールデンウィーク!投稿祭りしてやる!そう思っていて気づいたら最終日……
思った通りのメンバーが最後に残ったな、って感じの展開ですよね。今の原作。むっちゃテンション上がりました。えりな様強スギィ……化けるふりかけを使う辺り、最終回が近づいてる感が否めないんですよねぇ!?
800000UAって嘘やろ……?他作者様の食戟のソーマ作品がランキング入りすると、すごい嬉しいです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。