Fate/D×D   作:チンチラ

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EXPLAIN

 

気が付いたらまた別の場所にいた。感覚で何となくわかる。これは夢。でも、周囲を見渡して見ると花の魔術師とやらの男がいた真っ白な空間じゃなくて、ロンドンに似た街並みの中にいた。

けど、俺が知ってるロンドンと何処か違う。まず霧が酷い。いや、これは霧じゃない。遠くにある工場の煙突からとてつもない規模の煙が立ち上ってるのが見える。確か昔のロンドンって産業革命中に人体に有害な物質を含んだのがスモッグとなって呼吸器疾患の人が多くて死者1万以上の被害を出して後にロンドンスモッグって呼ばれる公害事件があったんだっけか?

この中にいたら気分悪くなりそう。昔のロンドンを見せて何がしたいんだ?

そう思考に老けながら暫く歩いて挙動不振な娼婦と思われる女性がいるのに気付く。

その女性は胸元に何か大事そうに抱えていて仕切りに辺りを見渡しながら人目のつかない所に走って行った。

何となくその女性の後を付いていくと其処は大きな川、多分テムズ川か?その川に架かっている橋の真下は薄暗く、スモッグもある所為か不気味さを醸し出している。

こんな所で何をするのか考えていると女性は抱えていた物を躊躇なく川の中に投げ捨てると一目散に俺の方に駆け出して来た。しかし、女性は俺の事が見えてないのか目もくれず逃げ出す。

俺は女性が何を捨てたのか確認してみた。

其処には数え切れない数の胎児が無惨にも川に捨てられていた。俺が絶句しているとその後も何人もの女性がゴミを捨てるかのように胎児を川の中に捨てていく。

 

「イタイ」「オカアサン」「サムイ」「コワイ」「サミシイ」「オカアサン」「ドコ?」「タスケテ」「オカアサン」

 

そんな中、川の中から沢山の子供の声が聞こえた。その声はどれも助けを乞うかのような声音。

沢山の声は段々と一ヶ所に集まると徐々に人の形になっていく。その姿は花の魔術師に教えてもらった呪文のようなものを唱えた時に現れた女の子だ。確か、名前はジャックって言ったか?

彼女は岸に上がると頻りに「おかあさんおかあさん」とさっきまで片言だったのに流暢な発音で呟きながら何処かに歩いていく。

その瞬間、俺の意識が浮上するような感覚に見舞われた。

 

________________________________________

 

「………今度は何処だここ?」

 

目を覚まして体を起こすと開口1番にそう漏らす。俺がいるのは白い空間でも現代・過去のロンドンの街中でもなく、誰かの家の一室に備え付けられているベッドの上。

 

「すぅ…すぅ……」

 

ベッドから降りようと思ったら俺の膝を枕にして寝ているジャックの姿があった。気持ち良さそうに寝ているジャックの頭を優しく撫でる。

 

「……ぅん」

 

擽ったそうに捩るその姿と夢で見たジャックの様子のギャップに驚かされる。

 

「………あれ?」

 

ふと俺の手の甲にルフェイさんと似たような模様があるのに気付いた。こんな模様つけた覚えがないぞ?この子にしろ、夢にしろ、悪魔とか言うのにしろちゃんと説明して欲しいんだけど……。

 

「目を覚ましたんですね!」

 

ガチャリとドアが開く音がするとルフェイさんがお茶を持ってやってきた。

 

「体の調子はどうですか?」

 

体の調子?………ってそうか俺、斬られたんだった。思い出してきたら背中が痛んできたけど、我慢出来ない程じゃないな。

 

「だ、大丈夫…です。そ、それよりも、聞きたい事が……」

 

「わかってますよ。私も聞きたい事があります。答えられる範囲でいいので良いですか?」

 

ルフェイさんの言葉に俺は頷くとタイミングよくお姉さんがホワイトボードを持って入って来て1から説明をしてくれた。

 

大昔、天使・堕天使・悪魔の3勢力が三つ巴の戦争をしてどの勢力も多大な被害を出した。特に悪魔は長とも言える4人の魔王が消滅したらしい。悪魔や天使といった種族は長命の代わりに子が出来づらいとの事。

魔王も失い、多くの悪魔が死んだとなると他勢力から侵略されかねない。そう危惧した悪魔達は新たな魔王4人を就任させる。そして、その内の1人の魔王が他種族を悪魔に転生させる技術を編み出す。

それが悪魔の駒(イーヴィル・ピース)。その悪魔の駒は上級悪魔……位の高い悪魔に渡される。

これで他勢力に狙われる危険性は減ったと安堵していたが別の危険性が直ぐに浮上。他種族を無理矢理悪魔に転生させられたとなれば他勢力は良い顔をしない。そして無理矢理転生させられたと他種族の人達は当然、反旗を翻して主人に噛みつき主人から逃げ出す。更には力に溺れて無差別に暴れ出す輩まで現れた。

それ等の悪魔ははぐれ悪魔と総称され、結果的に他勢力から目の敵にされる羽目になったとの事。

 

そして、俺達を襲ったのが力に溺れて人を喰らうはぐれ悪魔だとルフェイさんは説明する。

 

「因みに、はぐれは何も悪魔だけの事ではありません。教会のエクソシストや堕天使、何かしらの組織に所属してた人が反旗を翻した人達、全員を指したりもします」

 

ホワイトボードに今の説明を書きながらクイッとメガネをかけ直す仕草をする。ってあれ?いつの間にメガネしてたんだ?

 

「そんな事はいいんです。それよりも何か質問はありますか?」

 

何で俺の心を読めるんだろう。いや、いまは置いとこう。

 

「じ、じゃあ……1ついい…ですか?どうして悪魔は他勢力から目の敵にされても他種族を転生させてたん…ですか?」

 

「簡単ですよ。悪魔の人達は私達、人間と同じ……他者よりも優れていたいからです」

 

曰く、1人の悪魔に与えられた悪魔の駒は15個。その15個を転生に使うと主人の眷属となり下僕となる。そして眷属の優秀=主人のステータスになるらしい。

 

「なので多くの悪魔の人達は血眼になって優秀な人材を探しているんです。特に私達、人間には神器(セイクリッド・ギア)を宿したりしてますから」

 

「せい……くりっど…ぎあ?」

 

うーん、また分からない事が増えた。

 

「そうですね、神器とは……」

 

ルフェイさんはそう呟くとホワイトボードの文字を消して神器(セイクリッド・ギア)とは、と書き説明を始めた。

 

神器とは聖書の神が作った不思議な能力の一種。能力は多種多様らしく傷を癒すものや物を創るもの等がある。神器は人間、もしくは人間の血を引く者が宿してるらしい。それか神器所有者から奪い移植すれば後天的に宿す事が出来る。

 

「簡単に言うとこんな所です。まだ説明してない事もありますが今はこれだけ覚えといて下さい。

そして、誠二さん。貴方にも神器は宿しています」

 

どうやら絶賛爆睡中のジャックがはぐれ悪魔との戦闘中に奪い取って気絶してた俺に無断で移植したらしい。

 

「誠二さんがどんな神器を宿してるか確認してもいいですか?」

 

「え…は、はい」

 

って言われてもどうしたらいいんだか分かんないんだけど……。

と思ってたらルフェイさんからアドバイスを貰った。なんでも集中して自分の心の中を探るようにとの事。

俺は目を閉じて集中すること数分。俺の中に異物のような物が〝2つ〟あるのがわかった。どれが神器なんだ?……両方手に取れば良いか。

瞬間、俺の手にずっしりした重みが感じて目を開けてみると2本の剣が握られていた。1本は輝いていて、もう片方は悪寒のような物が感じれる。

 

「え、2つ?」

 

「えっと……言われた通りにしてみたら異物?の様な物が…その、2つあって……。り、両方手に取ってみたらこう…なりました」

 

「なるほど……。どうやら誠二さんは先天的にも宿していた様ですね。聖と魔の剣……。聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)魔剣創造(ソード・バース)ですね」

 

それが俺の宿してた神器の名前らしい。創造という名前の通り、俺の想像で聖剣と魔剣を好きに創れるとの事。

暫くしてると2本の剣は勝手に消失するとドッと疲れが押し寄せてきた。どうやら神器を使用する度に体力を消耗するらしい。長時間使用するには体力作りが必須だな。

 

「さて、簡単にこれまでの説明しましたが大丈夫ですか?」

 

俺は頷く。悪魔やら神器の事をもっと詳しく知りたいけど、それよりもジャックや手の模様の事について知りたい。

 

「大丈夫ですよ。ちゃんとセイバーの事やその子のこと……サーヴァントについて説明しますよ」

 

俺ってそんなに顔に出てた?

 

「簡単に言いますとサーヴァントとは英雄が死後、その功績や伝承が人々に祀り上げられ英霊化したものを私達、魔法使いが使い魔として現世に召喚したものです。

と言っても本物の英雄と言う訳ではないんです。英霊は世界の外側にある「英霊の座」と呼ばれる場所から召喚されます。その時に本体を基に各クラスの側面を切り出したコピーのようなものなんです」

 

「各クラス?」

 

「はい。能力や逸話に応じて基本、7つのクラスに分けられるんです。剣士(セイバー)弓兵(アーチャー)槍兵(ランサー)騎兵(ライダー)暗殺者(アサシン)魔術師(キャスター)狂戦士(バーサーカー)の7つです。これらに該当しないクラスもありますがそれは今度にしましょう。

そして、彼女はそのサーヴァントのセイバーでスヤスヤ寝ている子はアサシンになります」

 

「改めて……サーヴァント、セイバーです。よろしくお願いします」

 

そう言うとお姉さんは礼儀正しく挨拶をする。

 

「?セイバーってクラス……なんですよね?な、なんで本名を名乗んないんです?ジャックのように…本名あるんですよね?」

 

態々、クラスを名乗る意味がわかんない。

 

「真名がバレる事は逸話に基づく弱点が看破される事になるので、可能な限り隠そうとするものなんです。

真名はバレるとそのサーヴァントの宝具がバレる事や生前の弱点が知れ渡る可能性があるんです」

 

宝具は何ぞや?って思ったら説明してくれた。

宝具とは英霊が生前に築き上げた伝説の象徴で逸話や伝説、あるいは真に存在した武器道具そのものを基盤として誕生したもので伝説を形にした〝物質化した奇跡〟であるらしい。

補足で生前の活躍や、生前に所持した技術等が特殊能力として具現化するスキルとやらもあるとの事。

……多分、ゲームや漫画で言う必殺技みたいなものだろう。

 

「すみません。セイバーの真名は伏せさせても良いですか?それだけ彼女の真名は有名で言っちゃったら誠二さんも彼女の宝具が露呈しちゃうんです」

 

まあ、興味あるけど言えないならしょうがない。

それよりも気になることがある……。

 

「えーっと質問なんですが、この子…ジャックは英雄じゃない筈。寧ろ英雄とは反対の存在なんですが……。それでも英雄なんですか?」

 

「誠二さんはアサシン…ジャック・ザ・リッパーについてご存知ですね」

 

コ○ンの映画で知ってちょこっと調べました。

 

「英霊にはいくつか種類があります。

生前の偉業が称えられ英霊となった一般的な英雄。世間から悪と認識されながらも結果としてそれが人々の救いとなった反英雄。そして生前、英雄としての力の代償として死後の自分を星に売り渡した守護者。

他にも信仰や伝承の知名度などの条件さえ整えば、架空の人物や概念、現象そのものすらサーヴァントとして召喚される事があります。

アサシン(その子)は何方かと言うと反英霊にあたるはずです。

それより、どうしますか?」

 

え、どうするって?

 

「貴方が召喚したサーヴァントは切り裂きジャックです。サーヴァントは使い魔と言っても完全服従と言う訳ではありません。下手したらマスターに牙を向ける事があります。……寝ている今ならここで消滅させる事ができます」

 

セイバーさんは敵を見るかのようにジャックを見ながらそう言う。確かに切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)は19世紀にイギリスで起こった猟奇殺人をした犯人の通称。現在もジャック・ザ・リッパーが誰だかわかっていなくて劇場型犯罪の元祖とも言われている。怖い、怖いけど……

 

「……それを言われたら確かに怖いです。でも、召喚された子が危険だから見捨てるって……無責任な気がします」

 

ふと夢でテムズ川に捨てられた胎児達の姿を思い出す。多分、あれはジャックが見せたような気がする。……確証は無いけど。

あの夢でも女性が無責任に胎児達を川に投げ捨てていた。今、ここで怖いからって容認しちゃうとあの女性と同類になる気がする。それは嫌だ。だから……

 

「……呼び出した責任は最後まで見たい…です。だから、手を下さないでください」

 

俺はそう言うとセイバーさんはルフェイさんの方を見る。

 

「……わかりました。でも今回の事は私達、魔法使いの教団のトップに報告します。いいですか?」

 

それは……しょうがないか。悪魔に襲われたりしたし報告しなきゃマズイんだろう。

 

「わかりました」

 

そう言うとルフェイさんは1つ息を吐く。

 

「では、大体説明はしましたし今日はお開きにしましょう。何か説明はありますか?」

 

「いいや…ないです」

 

正直、疲れたしいい加減休みたい。なんかセイバーさんが驚いてるけど色々あり過ぎて頭がパンクしそうで其処まで気が回らない。

 

「では貴方のご自宅まで送りますね」

 

俺のカバンを手渡してくるとルフェイさんの足元に魔法陣みたいなものが展開される。俺はカバンの中を確認して問題ない事を確認するとジャックを抱き抱えてルフェイさんの所に向かう。

その瞬間、目の前が白く輝いていくと気が付いたら俺が向かう所だったアパートの入り口前にいた。

 

「多分、近いうちにまたお会いすると思います」

 

「はい、なんか……その、今日は色々とありがとうございます」

 

「ふふ、気にしないでください。では私はこれで」

 

ルフェイさんはそう言うと再度、足元に魔法陣が展開されて消えていった。

それを見送ると俺は自分の部屋の扉を開ける。部屋の中は未開封の段ボールが山積みだけど荷解きする気力が湧かない。

ジャックを床に寝かせると適当に段ボールの封を開けて枕と毛布を探し出してジャックにかける。そしてそのまま、俺は床に倒れるように横になる。

 

「………あ、手の模様の事聞いてなかった。………今度でいいか」

 

俺はそう呟くと瞼を閉じて眠りについた。

 

____________________________________________________

 

ルフェイ side

 

「ふぅ………」

 

誠二さんを送った後、私は自室でセイバーとお茶を飲んでいる。

 

「よかったのですかルフェイ?」

 

「アサシンを消滅させなかった事ですか?」

 

確かにジャック・ザ・リッパーは恐ろしいですが、誠二さんの言う事も一理あって非道になる事が出来なかった。だから去り際にこっそりと使い魔を放っておきました。もしジャック・ザ・リッパーが、誠二さんが問題を起こすのなら直ぐに駆け込んで手を下そう。……そうならない事を祈りたいですね。

 

「それもありますが、どうして聖杯を持ってたのか聞き出さなくてよかったのですか?」

 

「…………あ」

 

や、やっちゃいましたぁぁぁぁああああ!!!!それを最後に聞こうと思ってたのに忘れちゃってました!?

 

「ど、どうしましょうセイバー!」

 

「お、落ち着いてくださいルフェイ。それなら今度また会うのでしょう?その時に聞きましょう」

 

「そ、そうですね」

 

はぅ……。うっかりなんて彼女だけで充分ですよ。

私は気を落としながらお茶を飲むのでした…………。

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