Fate/D×D 作:チンチラ
イギリスにやって来て早3日が経った。
あのはぐれ悪魔やらサーヴァントやらの騒動から少しは落ち着くかと思ったけどそうは問屋が卸さなかった。
「おかーさーん!」
「ぐへっ!?」
俺が召喚したサーヴァント、ジャックは見た目通りの子供そのもののようだった。
〜〜回想〜〜
『おかーさん、上がったよー!』
『ちょ!?服着て!と言うかバスタオルで体拭いて!!って言ってる側から床がべちゃべちゃに濡れてるー!!』
『あははは〜!!』
風呂上がりのジャックが素っ裸+びしょ濡れで部屋の中を走り回ったり………。
『おかーさーん、まだー?』
『ちょ!?料理中に急に抱きつかないで!!』
飯作ってる最中に抱きつかれて何度も怪我をしたり……。その他etc……。
〜〜回想終了〜〜
そんな感じで俺の部屋は常に騒々しく賑やかな事だった。現在進行系で俺の寝ている無防備な腹にダイブして来てるし。
「おかーさーん!お腹すいたー!」
まるで日曜日のお父さんと娘のようなやり取りだ。まだ15歳なのにもう子育ての大変さを味わってるな。……父さんと母さんもこんな感じで苦労してたのか?……でも、不思議と苦労してても嫌じゃないかも。
「おかーさーん、おきないの?解体しちゃうよ?」
「それは止めて!?」
その脅迫めいた言葉がなければもっと苦じゃなかったな。
「わーい起きたー!」
当の本人はそんなの御構い無しと言った感じで相変わらず俺の腹の上ではしゃいでる。
「た、頼むから俺の腹の上ではしゃがないでくれ。直ぐに飯作るから」
「はーい!」
子供らしい元気な返事だと飽きれながら俺は起き上がる。因みに俺が寝ている場所はソファの上。ベッドを使いたかったけど其処はジャックに譲った。
贅沢は言えないけど安いソファだからか寝心地は宜しくない。かと言って新しくベッドを買う余裕もない。と言うかジャックの日用品買い揃えて財政的にかなりピンチだ。
「はぁ……」
ついつい出ちゃう溜め息。近いうちにバイトでも探すか。
そんな事を考えながら俺は着替えて朝飯作りに励んだ。
「いっただっきまーす」
嬉しそうにそう言うとジャックは自分の所にあるパンケーキを食べ始める。最初に比べたら上達はしてるな……。炭の塊や生焼けだったり悲惨な結果だった……。
美味そうに食べてるジャックを他所に俺この先の事を考えていて気分が優れない。
1つ、ルフェイさんから教えて貰わなかったけど、どうやらジャックは俺の魔法力を供給しているお陰で現界してるらしい。と言う事は俺にはルフェイさんのように魔法を行使できるとの事。神器とやらも含めて其処らへんの使い方をキチンと学んでおきたい。
けど、教えてくれそうな人がいない。ルフェイさんの連絡先知らないから教えてもらう事出来ないし、ジャックに至っては魔法力や神器は知っているものの詳しい訳じゃないみたいで教えを請う事が出来ない。
2つ、父さんと母さんにジャックの事をどう説明しよう。イギリスに留学してる間はいいけど向こうに戻ったら隠し通すなんて出来ない。
かと言って本当の事を説明して納得して貰えるだろうか?
『この子はあのシリアルキラーって呼ばれてたジャック・ザ・リッパーなんだ。ちょっと過去の偉人を呼び出しちゃったさ』
……なんてフランクに言っても信じて貰えないだろうな。と言うか俺ならバカにしてるのか?って言いながら最悪、右ストレートが飛ぶだろう。
そして3つ、今度から通う学校で俺は上手くやっていけるんだろうか?留学先として紹介された学校だ。雰囲気は悪く無いはず。問題はこっちの勉強に着いていけるかと、クラスの人等と良い関係を築けるのかなんだよ。不安でしょうがない……。
それ等3つに加えてジャックが来たことで財政的にも圧迫されてる。
「おかーさん、どーしたの?」
「んにゃ、なんでもない。って、口汚れてる」
ジャックの口周りが汚れてるのを見てティッシュで拭う。その時、手の甲にあった模様に目がいった。
「なぁジャック、この手の模様ってなんだか知ってる?」
「令呪だよ?」
それがどうかしたのか、見たいな顔をしながら俺を見る。どうやら知ってるみたいだし教えてもらおう。
って事で教えてもらった結果、マスターが自分のサーヴァントに使える絶対命令権……簡単に言うと3回だけ、強制的に命令を下して言う事を聞かせれるものとの事。
とは言っても命令の強制力は明確であればあるほど強くなって、曖昧であればあるほど弱くなるらしい。
うーん、命令を強制出来るって言われても何か無理矢理従わせるのって罪悪感がある。
「おかあさんは令呪を使って何を命令するの?」
令呪を使うつもりじゃないけど……1つ約束して貰おう。
「んー、別に使うつもりは無いな。でも1つ約束して欲しい事がある。ジャックはあの切り裂きジャックなんだよな?」
「うん。私達はジャック・ザ・リッパーだよ!もしかして誰かを解体すれば良いの?」
「いやいや、そうじゃない!俺が約束して欲しいのは無関係な人を殺さないで欲しいって事さ。この間みたいなはぐれ悪魔とやらとかに襲われた時には存分に解体すればいい」
正直、死にたくないからこの間みたいなのに襲われたら無抵抗でいるつもりは無い。抗えるか分かんないけど、正当防衛として抵抗させてもらう。悪魔を殺しても俺等の法律は適用されないから罪に問われない……はず。
「おかあさんはあの人が憎くないの?おかあさんの昔知ってるよ?あの人のせいで1人ぼっちだったの。わたしたちなら簡単に殺せるよ」
あーそう言えばサーヴァントとマスターは魔法力とやらで繋がってるから互いの記憶みたいなのが共有できるんだっけ?
んで、ジャックは俺の過去を見てイッセーに憎悪を抱いてるのを知られたわけだ。
「んー、確かにアイツは嫌いだ。正直、死んで欲しいって思ってる」
「じゃあ「でもダメ」…なんで?」
「アイツが死んだら父さんと母さんが悲しむんだよ」
昔、母さんから聞いた事がある。母さんは子供に恵まれない体だったようで俺達を産む前に何度も流産させてしまったらしい。諦めていた所に俺やイッセーを身籠って苦労に苦労を重ねて出産した。
イッセーを追い出さない理由も念願の我が子をおいそれと勘当したくない。確りと世間に出ても恥ずかしくないように育てるんだと父さんも言ってた。………実際は上手く行ってないけど。
「……父さんと母さんを悲しませたくないからアイツを殺すって選択肢がないんだ。だからジャックは手にかけなくていいんだ」
「うーん、おかあさんがそう言うなら……」
俺の言葉に渋々と言った感じで納得し朝食を食べきると2人で後片付けに入った。
「そう言えば俺が学校に言ってる間、ジャックどうしよ……」
ここが日本だったら母さんを言いくるめて預けてたけどこっちじゃそんな事出来ないし……1人で留守番して貰うか?……ちょっと心配だけど。
「わたしたちもおかあさんに着いて行くよ?」
「え?」
「え?」
お互い何を言ってるんだと言う表情をしながら顔を見合わせて聞き返す。
「流石に生徒でもないジャックを連れてくことなんて出来ないんだ。悪いけど大人しく留守番しててくれないか?」
「バレなきゃいいんだよね?わたしたちは霊体化出来るから誰にもバレないよ。それにおかあさん、弱いからまたはぐれ悪魔とかに出会っちゃうと簡単に殺されちゃうよ?」
本当のことだけど、どストレートに弱いと言われると流石に俺の心にダイレクトに響く。けどジャックの言ってる事も事実なんだよなぁ。
また変なのに出会ったら何も出来ないし。令呪で呼べばいいって一瞬思ったけど3回しか使えないからおいそれと使えない。ならここは……
「……頼むから学校で変な行動は起こさないでくれよ?解体も駄目だし人目もあるから実体化も出来ない。ジャックは間違いなく退屈になるかもしれないけど……それでも良いの?」
お互いの妥協点を探し出して俺が折れる。俺の言った事を守るなら…連れてくしかないだろ。
「うん!」
当の本人は嬉しそうに返事をする。物騒な事を平然と口に出す事はあるけど、行動の節々には見た目通りの年相応の女の子に見える。
現に屈託のない笑顔を見せてるジャックははぐれ悪魔を嬉々として倒していた時とは真反対なものだ。子供のように燥ぐジャックを見ると何だか可愛がってやりたい衝動に駆られる。
あんな
………そうなったらシスコン拗らせれる自信がある。何でだか分かんないけど自信持って言える。
「そう言えばジャック。なんで俺のこと、おかあさん呼びなの?」
今更だけどそんな疑問をジャックにぶつける。正直、男の俺がおかあさんと呼ばれるのはキツいし恥ずかしい。
「?おかあさんはおかあさんだよ。わたしたちの大切な
そう言えば夢でたくさんの胎児が川に投げ捨てられていたんだっけ。そしてその胎児達は1つになってジャックが出来た。その時に〝おかあさん〟と絶えず呟きながら何処かに行ったんだったな。
多分、ジャックは母性を求めている…のかな?愛される事なく川に投げ捨てられた胎児達は母の愛情を欲してた?そんで、母性を知ってても父性は知らない。男性と女性の区別は分かっていてもジャックにとって自分を愛してくれる人をおかあさんって呼んでる感じなのか?
「おかあさん……って呼んじゃ…ダメ?」
俺が黙っていたのを不安に感じたのかジャックは上目遣いでそう尋ねてくる。……何でそんなテク知ってんだよ。19世紀のロンドンじゃ既に上目遣いで媚びるなんてテク存在してたのか?
「………ダメ…じゃ、ない」
直視出来なかった俺は視線を外しながらそう言う。しょうがないだろ。ジャックに母性やら父性何て物を上手く確実に説明できる自信がないんだ。それにあんな目されると……断れなかった。
俺って意外にもチョロかったんだな……アハハ。
「わーい!ありがとう、おかーさん!」
ジャックはと言うと見ての通り皿を持って大はしゃぎ。
………まぁ、いいや。多分、これからジャックと外に出歩く事もある筈だけど、周りの人の目が冷たく突き刺さるだけだから俺は気にしない。俺の心が頑丈になればそんな視線も気にならなくなる筈だしいいもん。
ピンポーン…ピンポーン
そんな覚悟を内心で決め込んでたら不意にチャイムが鳴る。洗い物を一旦止めてジャックと一緒にインターホン越しを覗いてみると其処にはルフェイさんにセイバーさん。そして見知らぬ老人と男性の計4人が俺の部屋のドアの前で立っていた。
「「?」」
俺とジャックは見知らぬ2人を見て首を傾げ合うも取り敢えず出てみようとドアを開けた。