緑谷出久がオールマイトに弟子入り出来なかったけど、代わりに契約するそうです。

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緑谷出久がオールマイトに弟子入り出来なかったけど、代わりに契約するそうです

 

 

「やあ、どうして君は泣いているんだい?」

 

 

緑谷出久がその存在と出会ったのは、空が紅く染まり始めた夕刻の頃。

 

数時間前に憧れだった存在に無個性ではヒーローになることは不可能だと言われ、そのあとに起きた事件で幼馴染みを助けることも出来ず、己の無力さを現実として突き付けられ、一人俯きながら家路を辿っているときに後ろからやってきたその存在に声を掛けられた。

 

 

その話しかけてきた何かは、出久の膝に届くか届かない程の小さく真っ白な体毛に覆われた生物だった。

 

地面に擦り着きそうな程長く伸びた、先端が僅かに桃色に染まった左右の耳と、その耳の半ば程に固定されたように存在する浮かぶリング。

上向きにカールした尾に、臀部にある丸い模様。

猫のような形の頭ではあるが、髭の生えて無い顔に、こちらを見つめる円らな真紅の瞳が凄く印象的だった。

 

「えっ?ああ、僕は泣いてたんだーーー」

 

見たこともない謎の存在に話しかけられて驚いたものの、目の前の存在が異形型の個性の持ち主ではないのかと思い至り、話しかけてきた目の前の存在の質問に答えた。

 

 

「僕はね、無個性なんだ・・・」

 

普段であれば、見ず知らずの人にこんな話はしないだろう。

だが、胸が張り裂けそうな程に悲哀の感情に囚われた出久にその考えは思い付かず、積もり積もったその思いを吐き出した。

 

出久が胸の内に溜め込んだ無個性への苦悩と個性を持つ人に対する劣等感、誰かを笑顔にすることが出来る最高のヒーローに成りたいという夢への憧れを持ちつつも、憧れの存在に無個性だからヒーローには成れないと突き付けられたことで沸き上がった絶望と諦観の念。

長年に渡って出久の胸に溜まり続けた負の感情を吐き出すと、出久は自分が一体何を言っているのかと正気に戻った。

 

「ご、ごめんなさい!見ず知らずの人にこんなことを言って・・・」

「君の気が晴れたなら大丈夫だよ、気にしないでいいよ」

 

目の前の存在は、出久の謝罪に笑顔で気にしてないと答える。

 

自分が爆発させた感情の発露に相づちを打ちながら話を聞いていた目の前の白い生物は、「んー」っと言葉を発しながら考え込むように視線を空に向け、幾ばくかの時を置いて円らな赤い瞳を出久へと向けるとその小さな口を開いた。

 

「もし君が望むなら、僕が君に個性を発現させてあげるよ」

 

その言葉に、出久の頭の中が真っ白になる。

 

「それって、どういう・・・?」

 

「僕は、君の願いごとをなんでもひとつ叶えてあげる。なんだってかまわない。どんな奇跡だって起こしてあげられるよ」

 

「例えば怪我や病気を治したい、お金持ちになりたいとかなんでもいいーーー個性が欲しいとかもね」

 

 

次々に語られるその言葉に、壊れかけていた出久の心はどんどんと惹き付けられていく。

 

「それは、ほんとうなの?」

「ああ、本当さ。でも、それには条件があるんだ」

 

「まずは、普通の人には知ることができない資質さ。これは君たちの個性とかで推し量ることが出来ない資質が必要なんだ。そして君は、僕が今まで見たことない程の、それこそ君が憧れている最高のヒーローを越える程の力を抱えているんだ」

「僕に、そんな力が・・・?」

 

両手を見つめ、告げられた事を頭の中で繰り返す。

無個性だと言われていた自分にそんな才能があるとは思えず、何かの間違いだと目の前の存在に否定しようと口を開きかけるが、その此方を見つめる真剣な瞳に何も言い返すことが出来ずに口を閉ざしてしまう。

 

「そして、これこそが条件の大元なんだけど、君にはとある存在と戦ってほしいんだ」

「とある存在?」

「ああ、そうさ。普通の人類には見えないけど、古来から人類に災厄を齎してきた化物ーーー魔女を倒して欲しいんだ」

「ーーーま、じょ?」

 

魔女と言う言葉に出久は息を呑む。

個性を悪用した人が呼ばれる(ヴィラン)ではない存在。

人を襲う化物が大昔から存在しているなど物語のような事があるというのかと、普通の人は信じないようなことではあったが、心の隙間に次々と入り込んでくる言葉に、出久はそれを疑いもなく信じてしまい話を聞き続けた。

 

 

「それらは、人を襲い殺す化物であり、周囲からは事故や自然災害としてしか認識されないんだけど、昔から人は彼らの被害を受けてきたんだ」

 

「彼らを倒すのは個性を持っただけの只の人間には退治が出来ないけど、極一部の限られた人間だけが退治できるんだ」

 

「君が化物と戦うことで命を落とすかもしれない。けどヒーローって職業は命を落とす危険を覚悟をした人達が成るものだろ?だから、命を落とす危険性があっても個性を手に入れて誰かを笑顔にすることが出来るヒーローになりたいって想いが君にあるなら、僕と契約して魔女と戦うって事は、君が胸に抱く想いを形にすることが出来るチャンスだと思うんだ」

 

 

 

「ヒーローに、なれる?」

「ああそうさ、緑谷出久君。君はーーー選ばれた存在なんだ」

「君が、誰かを笑顔にすることが出来るヒーローになりたいというなら、そう願えば良い。僕との契約の代償で魔女と戦うことは、君に何らかの不都合になることは無い筈だろ?」

 

 

個性を手に入れる代わりに、魔女と呼ばれると戦う。

それによって命を落とす可能性がある。

死の危険と隣り合わせにあるという事に背筋が震えてしまうーーーが、それがどうしたというのだろうか。

 

「僕はーーー無個性だとヒーローにはなれないって憧れの人に否定されたけど、僕は彼のように誰かを救える・・・笑顔にすることが出来るヒーローになりたい!」

「本当は怖いけど、ここでチャンスを掴まなきゃ、僕は一生無個性で何も出来ない存在になってしまう!」

 

 

「だから、僕の願いを叶えてください!」

 

 

 

「ああ、勿論さ!」

 

「君は死の危険があるのを承知で僕との契約を選ぶ道を決めたから、僕は君の願いを叶えてあげる」

 

 

「だから、緑谷出久君ーーー」

 

 

 

 

 

 

僕と契約して、ヒーローになってよ!

 

 

 




白い生物・・・一体何者なんだ?

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