霧隠れの黄色い閃光   作:アリスとウサギ

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四代目火影の遺産

サクラが殴り飛ばされたのを見て、少し心配したサスケだが、意識を失っただけなのを確認し、再びナルトに顔を向ける。

 

「ナルト! 今度はオレから行くぞ!」

「あぁ、来い! サスケ!」

 

ナルトとサスケは互いに、両手、両足を使った体術の応酬をする。

一見、五分五分に見える闘いを繰り広げる二人だが、時間が経つにつれ、サスケの方がどんどんナルトの動きを捕捉していく。

そして、ついに、まるで来るとわかっていたかのような動きでナルトの攻撃を完璧に避け、カウンターでサスケはナルトの顔を殴り飛ばした。

 

「ぐっっ!!」

「どうしたよ? ウスラトンカチ! 急に動きが遅くなったじゃねぇか!」

 

ナルトはなぜ急に自分の攻撃が当たらなくなったのかわからず、サスケを警戒する。

そして漸く気づく……

サスケが不完全ながらも写輪眼を開眼していることに。

 

「サスケ……お前、その眼!」

「あぁ、不思議とお前の動きに目が慣れてきた。どうやらこれが写輪眼のようだな!」

 

不敵に笑うサスケに言い返すナルト。

 

「それが、それがなんだってんだ! 写輪眼ごときでビビるオレ様じゃねぇぞ!」

「いいだろう……こい! ナルト! オレも丁度この力を見極めたかったところだ。お前はいい練習相手になりそうだ」

「うるせぇーー! オレを舐めんじゃねぇってばよ!」

 

拳を突き出すナルト。

だがあっさりとサスケの掌で払われ、空いた片方の手で手裏剣を使った反撃を受ける。

何とかしゃがんで避けたナルトだが、屈んだところを更に追撃され、サスケの蹴りが腹に入る。

 

「ぐはっ!!」

「ふん! どうしたよナルト、お前の力はこんなもんじゃないんだろう?」

 

(見える! さっきまでオレと五分五分だったナルトの動きが完全に見えるぞ!)

 

(ちくしょー! 最初はオレが勝ってたはずなのに! オレってば一杯、ハクや再不斬達と修行もして強くなったはずなのに! なんで、なんでいつもこうなんだってばよ!)

 

ナルトは十字に印を結ぶ。

それを写輪眼で見て、サスケは構える。

 

「多重影分身の術!!」

 

サスケの目の前に20人は超えるだろうナルト達が現れる。

 

「「「行くぞ! サスケ!」」」

「ふん……」

「「「余裕かましてられるのも今のうちだ!」」」

「午 寅!」

 

サスケも得意な火遁の印を結び、息を吸い込み、

 

「火遁・豪火球の術!」

「「「うわーー!」」」

 

火遁の術を食らったナルトの影分身達は一気に消え去る。

冷や汗を流しながらも、どうすれば勝てるかナルトが考えていた時。

突如、地響きのような音が橋の上に響き渡る。

 

ドドドドドドドっ!

 

音の発信源と思われる場所にナルトとサスケが顔を向ける。

すると、そこには大小様々な犬に襲われている再不斬の姿が見えた。

 

「再不斬!!」

「どうやらカカシの方もそろそろ終わりだな」

「なん……だと!?」

「再不斬はカカシに殺られる。ナルト、お前にはカカシから捕縛命令が出ている。良かったな。忍者登録をしていないおかげで、抜け忍扱いにはならない上に、今のお前ならアカデミーでトップをとるのも夢じゃないだろう。もう一度一から頑張るんだなウスラトンカチ……」

 

そう話すサスケの話は殆んどナルトの耳には届いていなかった。

再不斬の方を見て震えるナルト。

 

(再不斬が殺られる? このままじゃ……マジで! マジで! ヤバイってばよ! 再不斬もハクも殺させねぇ! 絶対に!)

 

「……………えってばよ!」

「なに?」

「オレの仲間は殺させねぇってばよ! やっと、やっとできた繋がりなんだ!」

「……………」

 

サスケはナルトの言葉に動きを止める。

なぜならサスケもナルトと同じように孤独を理解するものだから。

だが、この後、すぐにナルトを気絶させなかったことをサスケは後悔することになる。

 

「サスケェェッ!! 邪魔するってんなら、オレはてめえをぶっ殺してでも再不斬を助けに行くってばよォ!!!!」

 

先ほどと同じく、橋の上で地響きの音が響き渡る。

違うのは、その発信源がナルトであるということだが……

 

木の葉の忍に殺されかけた時と同じく、いや、その時以上に禍々しいチャクラがナルトの感情の高ぶりとともに溢れ出す。

目が縦に割け、ナルトの体が朱い衣に包まれていく。

その九尾のチャクラを写輪眼で見ていたサスケは、まるで大きな狐に睨まれたかのような錯覚を感じて漸く動き出す。

 

「な、な、なんだ! この朱いチャクラは!!

くそっ!」

 

震える体でサスケは印を結び術を発動する。

 

「火遁・鳳仙花!」

 

先ほどの火遁より威力は低いが、無数の火の球がナルトを襲う……が……

 

「ガアアアアアアァ!!!!」

「なっ!? くっ!!」

 

咆哮だけで火遁の術を消し飛ばし、さらにはサスケまでも一緒に吹き飛ばす。

その姿を確認してから、すぐにナルトは再不斬の手助けに向かった。

 

 

「忍法・口寄せ・土遁追牙の術!」

 

口寄せの巻物を地面に押さえつけるカカシ。

 

「何をやっても無駄だぜカカシ! お前は完全に術中にハマった!」

 

再不斬は自分の必勝パターンに入ったことにより油断していた。

足下から迫ってくる忍犬の足音にギリギリまで気づかないほどに。

 

ドドドドドドドっ!

 

「ん? なっ!?」

 

四方八方から忍犬に囲まれ、噛みつかれ動けなくなる再不斬。

 

 

「……タズナさん?」

「おぉ〜、サクラ超心配したわい!」

「私……ナルトにやられて……」

「ほれ、今、先生が再不斬を捕まえたところじゃわい!」

「えっ!?」

 

目覚めたサクラはタズナと一緒に闘いの行方を見守る。

 

 

「目でも耳でも駄目なら鼻で追うまでの事。霧の中で目なんか瞑ってるからそうなる。これは追尾専用の口寄せで、お前の攻撃を血を流して受けたのもこのためだ。術中にハマってたのはお前の方だよ……再不斬!」

「……く……そ」

「もはや霧は晴れた……お前の未来は死だ!」

 

カカシは再不斬が身動きとれないのを確認してから一定距離まで足を進めてゆっくりと近付いていく。

 

「再不斬。お前の野望は大き過ぎた。水影暗殺、そしてクーデター失敗。霧隠れの抜け忍になった男、お前の名は木の葉の里にもすぐ伝えられたよ。報復のための資金作り、そして追い忍から逃れるため。そんなところだろう……お前がガトーのような害虫に与した理由は……」

「くっ!」

「再不斬。お前はこのオレが写輪眼だけで生きてきたと思うか? 今度はオレ自身の術を……披露してやる!」

 

丑 卯 申

 

……チチチチチチチチチッ!!

千の鳥を想像させる音が鳴り響く。

 

雷の性質を持ったチャクラが独特の音を奏でながら集約され、カカシの右手は斬れないものなどないと言われた木の葉一の銘刀となる。

雷すら切り裂いたその術の名を……

 

「雷切!!」

 

「な、なんだ! チャクラが、手に、目に見えるほどに……」

「再不斬、お前ははしゃぎ過ぎた。お前が殺そうとしているタズナさんはこの国の勇気だ! タズナさんの架ける橋はこの国の希望だ! お前のやろうとしている事は多くの人を犠牲にする。そういうのは忍のやる事じゃないんだよ!」

「それはてめえの言い分だろうが! オレはオレの理想のために生きてきた! そしてそれはこれからも変わらん!」

 

チチチチチチチチチッ!

雷切が鳴り響く。

 

「もう一度言う……諦めろ……お前の未来は死だ!」

 

カカシが雷切を構えて再不斬に突進し始める少し前に、ナルトとハクも再不斬の元へ駆け出していた。

 

ナルトは走りながら無我夢中で、右手にチャクラを集中させ、修行の時には一度も成功しなかった術を繰り出そうとしていた。

回転と威力。

ここまではできていたが、どうしても最後の留めるを修行では出来なかったのだ……だが……

 

『フン!』

今のナルトは一人ではなかった。

 

右手にチャクラを留めるようにして、左手で乱回転するようにチャクラをコントロール。

そして九尾がチャクラの放出を行うことで、乱回転を維持したまま球体ができあがり、ついに四代目火影の遺産忍術が完成する。

 

ナルトと同じく駆けつけていたハクは、その様子を見て、カカシの攻撃はナルトに任せて、自分は再不斬を拘束している忍犬達を外すために、口寄せの術式が組み込まれているであろう巻物に狙いをつけた。

 

 

「うぉおおおおおっ!!」

 

九尾の衣を纏ったナルトが吠えながら近付いてくるのを見たカカシは、ナルトが手にしている術を見て驚愕する。

 

(あの術は!? まさかミナト先生の!? くそっ! ここで引けばオレが殺られる。上手いこと術を相殺するしかない!)

 

チャクラの回転→威力→留めるを極めた四代目火影が残した難易度Aランクの超高等忍術と、写輪眼のカカシの切り札にして、唯一のオリジナル技が激突する。

 

「雷切!!」「螺旋丸!!」

 

「「っーーー!!!!」」

 

両者は全くの互角に見えたが、ナルトの身を案じ手を抜いてしまったカカシ。

そして、再不斬を守るために全力を振り絞ったナルト。

術の威力が同じなら、最期は気持ちの勝負であった。

 

「オレ達が諦めるのを諦めろーー!!」

「くっ……そ!!」

 

螺旋丸が雷切を押し退け、技の衝突で生まれた爆風がカカシを吹き飛ばした。


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