霧隠れの黄色い閃光   作:アリスとウサギ

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爆発!!これがナルトの忍道だ!!

螺旋丸の余波で吹き飛ぶカカシ。

直撃はしていないものの受け身すらとれずに地面を転がる。

 

「カカシ!」

「カカシ先生!」

 

サスケとサクラがカカシに駆け寄り、身を案じる。

 

ナルトとカカシが激突している間に、ハクは口寄せの巻物を千本で串刺しにして再不斬を解放していた。

螺旋丸の威力を目の当たりにして驚きの顔を浮かべる再不斬とハク。

修行中に一度もできなかった術を、闘いの中で完成させるとは思ってもみなかったのだろう。

 

「大丈夫ですか、再不斬さん!」

「大丈夫か? 再不斬!」

 

再不斬は自身の側に駆け寄ってきた二人に、

 

「ああ、お前達のおかげで助かった……ナルト……ついに完成させたんだな?」

「言っただろう? まっすぐ、自分の言葉は曲げねぇ、それがオレの忍道だ!」

 

にしししと喜ぶナルト。

再不斬の無事とナルトの新術の完成にハクも嬉しそうに微笑んでいる。

そんな二人を見てから、何とか起き上がろうとしているカカシに向かって、

 

「ククククク、カカシ、誰の未来が死だと? オレのど……部下達を舐めるなよ!」

 

と、再不斬が言い放った。

 

「へっ!」

「ざ……再不斬……さん!」

 

再不斬の素直な言葉を聞き、ナルトは自慢気に笑い、ハクは泣きそうになるのを堪えていた。

 

しかし、そんな良い雰囲気は、長くは続かなかった。

まだ、ナルト達の闘いはまだ終わりではなかった。

 

「おいおい再不斬! 闘いの最中だというのに随分と余裕だなぁ?」

「ん?」

 

声がした方を振り向くと、そこにはガトー率いるならず者の集団がかなりの数で来ていた。

100人は余裕で超えているだろうか?

再不斬は怪訝そうな声音で、

 

「ガトーどうしてお前がここに……その部下どもは何だ?」

「なに、お前達にはここで死んでもらおうと思ってね」

「なんだと!?」

「少々作戦に変更があってね……というより、始めからお前達に金を支払うつもりなんて毛頭なかったんだよ。正規の忍を雇ったらやたら金がかかる。そこでお前らみたいな抜け忍を雇って、敵の忍者と戦い、弱ったところを数の力で皆殺しにする。いい作戦だろう?」

 

自慢気に予定されていた作戦を話すガトー。

さらに、

 

「まあ、私に作戦ミスがあったとすれば、タズナ一人殺すのにお前がここまで手こずるとは思ってもみなかったところだよ……なんだ、私からすれば霧隠れの鬼人もただの小鬼ちゃんといったところかね?」

「「「がははははは」」」

 

ガトー達の、いかにもバカにした高笑いに、ハクは拳を握り、ナルトは吠える。

 

「うるせぇってばよ、てめえら!! オレ達のことをバカにしやがって! てめーらと縁が切れて、こっちだって精々するわ!」

「ふん、相変わらずうるさい小僧だ」

 

ガトーの突然の裏切り。

再不斬はカカシの方へと視線を向け、

 

「カカシ……オレにタズナを狙う理由がなくなった以上、お前達とも闘う理由はなくなった。ここは両者痛み分けということでいいな」

「ああ、こちらもそれで問題ない」

 

カカシも再不斬の提案に頷き、新たな敵を迎え撃つために立ち上がる。

問題はチャクラを殆んど消耗しきった状態で、どうやってあの人数を相手にするかだった。

チャクラを使えなければ、忍者も少し運動神経のいい、ただの人である。

 

「カカシ、一気に片付ける術はないのか?」

「無理だな……写輪眼に雷切まで使ったんだ。オレもそんなに余裕はないね……」

 

サスケとカカシの会話を聞き、ナルトも再不斬に尋ねる。

 

「再不斬はなんか、こうドカーンとできるやつねえの?」

「無理だな。オレもカカシ同様チャクラを使いすぎた……」

「じゃあ、じゃあどうするんだってばよ?」

「オレが知るか!」

 

再不斬達もカカシ班もお互いにチャクラと体力を使い果たしていたが、それでもなんとかしようと対抗する構えをとる。

だが、ガトーが用意していたのは数多くの部下達だけではない。

更なる奥の手を用意していたのだ。

 

「おいおい、この戦力差でまだ抵抗しようとするのかい? 健気だねえ……だけどいいのかな? そんなことをしたら……」

 

ガトーが顎で部下に合図する。

部下の一人の大男が一人の女性を拘束して、前に出てきた。

その女性を見て、カカシ達第七班とタズナは驚きの声をあげる。

 

「ツナミ!!」

 

その女性はタズナの娘、ツナミであった。

ガトーの奥の手、それは即ち、人質である。

タズナが思わず前に飛び出そうとしたのをサクラがしがみついて止める。

 

「タズナさん! ダメ!」

「く……くそっ!」

 

ガトー達はその様子を見てせせら笑いを浮かべる。

 

「いいのか、タズナ? 大事な娘がどうなっても?」

「ガトー……貴様!!」

「口の聞き方がなっていないようだな……よし!」

 

杖を橋の上で叩き、ガトーがツナミを拘束している男に合図を送る。

その合図を受けて、大男はツナミの腕をとり……まるで小枝を折るかのように腕をへし折った。

 

「うあああああ痛い!!」

「ツ、ツナミーー!!」

 

涙を流しながら叫ぶタズナ。

第七班の連中も青筋をたてながら堪えていた。

 

「てめぇーー! ガトーショコラ! 何してんだってばよ!」

 

と、怒りのまま突進しようとするナルトを再不斬が押さえ止める。

 

「再不斬、離せってばよ!」

「落ち着けナルト! 人質をとられているんだぞ! それにあの数だ……今の状態でまともに殺りあっては、こちらもただじゃすまねー」

「再不斬さん、ですが、これは……」

「ハク、お前も落ち着け……」

 

そんな忍達を見て、ガトーは更なる悪徳を考えつく。

 

「くくくくっ! このままお前らを一網打尽にするのもいいが。それではつまらん。今までの借りを返すためにも一つ余興といこうじゃないか!」

「ガトー! わしの娘を! ツナミを人質にとってまで何をするつもりじゃ!」

「なに? お前達のいう希望とやらを目の前で打ち壊してやろうと思ってな! お前達、準備はいいな!」

「「「オーーー!!」」」

 

ならず者達の中でも大柄な数十人が大きな木槌を振りかざす。

まるで何か大きな物を壊すかのように……

 

「まさか!?」

 

カカシ達はガトーの狙いに気づく。

タズナをはじめとした国の人々が、毎日波の国の希望になるようにと願って造り続けていたこの大橋を壊そうとしていることに……

 

次第に木槌だけでなく、いつものようにクレーンの駆動音までもが聞こえ出す。

いつもと違い、橋を造るためではなく、壊すために……

 

まるで悪夢のような光景。

だが、それは夢などではなく現実で、ついに橋の一部が壊され始めた。

少しずつ崩壊し始める……波の国の願いが込められたこの大橋が……

 

「あ、あ、あ……儂等の……波の国の……希望の象徴が……」

「う……なんなの……これ……酷すぎる……」

 

タズナは膝を折り、サクラは口元をおさえて泣きはじめる。

自分達を散々利用したガトーの蛮行に再不斬とハクも歯を噛み締め、カカシ、サスケ、ナルトの三人は血が滲むほど拳を握りしめて我慢している。

だが、敵の戦力があまりにも多い上に、人質がいる以上は迂闊に動けないでいた。

 

――その時。

 

「自身の力=斬った数。だから斬らなきゃ!」

 

ツナミを拘束していた大男が、突如現れたハクと似た仮面を着けた小柄な少年に切りつけられる。

 

「…………」

 

仮面の少年はツナミを救出した後、再不斬の方を何かを伝えるかのように、じっと見ていた。

その視線で、再不斬は自分が今すべきことを理解する。

 

(アイツの太刀筋は……間違いねえ、奴だ。だがどうしてここにいやがる? オレとハクを始末しに来たのなら、この状況で手を貸すはずがない……まあいい、とりあえずは……)

 

再不斬は少し仮面の少年の思惑にのるか、どうか考えたが、現状ではそれが最善だと判断し、タズナに話しかける。

 

「おい、タズナ! この状況、カカシ達だけでは荷が重い。こちらの条件を飲むなら手を貸してやる!」

「な、なんじゃと? お前さん達は超わしを殺そうとしてたのではないのか? そんなお前さん達がどうして手を貸すんじゃ?」

「ガトーとは今さっき手を切った。お前を狙う理由などもうない。敵の敵は味方、お前達に手を貸す理由はそれだけだ!」

「じゃ、じゃが……」

 

タズナは話の急展開に混乱し、カカシと再不斬の方に視線をいったりきたりさせている。

カカシの方は黙って、話の展開を見ている。

が、状況は切羽詰まっており……

煮え切らないタズナに、再不斬が言った。

 

「手を組む気がねえってんなら、別にそれでも構わねえよ! オレはハクとナルトだけを連れてここを去る。その後、波の国は完全にガトーの手に落ちるだろうが、そんな事はオレ様の知ったこっちゃない!」

「…………条件とはなんじゃ?」

「今までオレ達がお前を狙っていたことを全て水に流すこと。もう一つはタズナ、あんたがオレ達にカカシ達と同じように波の国を守るように依頼することだ」

 

ガトーは害虫だが、一応は一般人。

何の理由もなく忍が手をあげるのは流石に面倒な事にもなりかねない。

依頼であれば、一応世間的にも言い訳がたつ。

再不斬は極力、今回のことを後腐れなく終わらせようとしていた。

 

「超わかった! わしはこの通り生きとるし、そんな事で波の国を助ける手助けをしてくれるなら超助かる! 先生もそれで大丈夫なんじゃろ?」

「ええ、こちらとしても再不斬達の戦力は正直言って助かります。相手もあの数ですし……」

 

タズナの後半の問いかけにカカシも了承で応じる。

それに、再不斬は笑みを浮かべ、

 

「まさか写輪眼のカカシと手を組む日が来るとはなあ!」

「それはこっちのセリフだよ、忍刀七人衆、霧隠れの鬼人と背中を合わせる日が来るとはね……」

「さっすが、再不斬! そうこなくっちゃよ!」

「再不斬さん、僕も行けます!」

「ふん、丁度物足りなかったところだ!」

「わ、私だって!」

「みんな……超感謝する……ありがとう!!」

 

先ほどまで命のやり取りをしていた抜け忍チームと第七班が手を組む光景にタズナは涙ぐむ。

 

「おいおい、まじでやるつもりか? この数を相手に? いくら何でもここまでお前達が命知らずのバカどもとは思ってもみなかったよ……お前ら、皆殺しにしてやれ!」

「「「がははははは!! 今のお前らなら簡単に、ぶち殺せるぜ!!」」」

 

ナルト達を挑発するガトー。

そしてそんな見え透いた挑発にのるのは、

 

「おい! ガトーショコラ!!」

「誰に向かって口を聞いてやがる! 金髪小僧! 状況がわかってんのか! この数相手にお前ら程度の……「数が何だって?」」

 

ナルトが印を結びチャクラを練り出す。

 

「ハァアァアァアァアア!!」

 

一部壊された橋。

涙を流すサクラにタズナ。

腕を折られたツナミ。

そして、この数相手に闘おうとしている再不斬、ハク、カカシ、サスケ。

 

ここで負ければ、全てがなくなる。

みんなの夢も希望もそして命さえも……。

 

 

(人は本当に大切な何かを守りたいと思った時に 本当に強くなれるものなんです)

 

 

「オレが絶対守りきって、やるってばよ!!」

 

横にいた再不斬とハクが、思わず吹き飛ばされそうになるほどのチャクラを練り込むナルト。

 

「な、なんてチャクラ練り込んでやがる!?」

「な、ナルトくん!?」

 

十字に印を結び――

 

 

「多重影分身の術!!」

 

 

いつも喧嘩を売ってきては、その度に返り討ちにあってきたナルトを思い出すサスケ。

 

アカデミーでいつも自分にいい寄っては振られてきたナルトを思い出すサクラ。

 

毎回、イタズラをしては里中を駆けずり回っていたナルトを思い出すカカシ。

 

つい数週間前まで、木登りすらまともに出来なかったナルトを思い出す再不斬。

 

そして、毎日毎日泥だらけになりながらも修行をしていたナルトを思い出すハク。

 

((((これが……あの……ナルトだと!?))))

 

先ほどまで圧倒的にガトー達の方が数の上では間違いなく優勢だったはずなのに、今はその戦力差をナルトがひっくり返していた。

 

 

千人という数で――

 

 

「何だ……この数は……」

「う……そ……これがナルト!?」

「何て数だ……(やはり先生の、あの二人の子か)」

「何て出鱈目な数の影分身だ……」

「ナルトくん……キミは……」

『フン!』

 

本体のナルトが見得を切る。

 

「やあやあやあやあ、遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ。世界に忍は数あれど! 四代目火影を超える忍は我一人。最大ピンチをチャンスに変えて、変化・分身・螺旋丸! 受けた拳は倍返し! 当代切ってのドタバタ忍者!! うずまくナルト忍法帖の始まりだぜ!!」

「「「「「よっしゃらああ!! みんな! 行くぞォ!!」」」」」

 

あまりの戦力差に何も出来ずにいるガトー達にお構い無しに突撃するナルト連合。

 

「ひぃいいいーー!!」

 

何とか小舟で逃げようとするガトー達だが、橋の上に収まり切らず、水の上にも立っているナルト軍団を相手に逃げ場などあるわけがなかった。

 

「ハク、このままではナルトに手柄を全て持っていかれる。オレ達も行くぞ!」

「はい! 再不斬さん!」

「サスケ!! サクラ!! これは元々オレ達の任務だ! ナルトに遅れをとるな! 行くぞ!」

「わかっている!」

「はい!」

 

一分後、ガトー達は抵抗すら出来ずに、全員お縄についていた。

橋も一部壊され、怪我人も出ており、完全勝利とはいかないが、何とか波の国を守りきったナルト達であった。

 

 

 


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