霧隠れの黄色い閃光   作:アリスとウサギ

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立ち向かう勇気

ドトウの城。

再不斬、ハク、長十郎の三人は囚われたナルトと雪絵を救出するため、現在敵の本拠地まで来ていた。

既に日は暮れており、闇に乗じるには絶好の時間帯である。

周囲に人気がないのを確認してから、再不斬はハクと長十郎に潜入の作戦を言い渡した。

 

「まずはオレが先行して、霧隠れを張る。その後、お前達もついて来い。ナルトと姫さんを救出するまで、直接戦闘はなるべく避けろ」

「「了解」」

 

 

ドカーン!!

城内では起爆札の爆音が、あちらこちらに響き渡っていた。

玉座の間で座して待つドトウに、雪忍の一人が状況を報告をしに来た。

 

「敵襲です!」

「ふん、再不斬め、夜襲をかけてきたか。定石通りといったところか」

 

 

雪忍達は総動員で侵入者を排除しようと城の中を走り回っていたが、霧の中での捜索は予想以上に困難を極めていた。

 

「くそっ、前が殆んど見えない」

「ああ、敵の術か何かだろう……おい、牢屋に閉じ込めておいた奴の鎖が外れているぞ」

 

最下層を探索していた雪忍の二人が、牢屋の中で倒れていたナルトを見つけた。

 

「チッ、こんな忙しい時に」

 

再びナルトを拘束しようと、雪忍達は牢屋に仕掛けてあった二重トラップを解除し、鍵を開け、中へ入っていくが……

ドカッ! バキッ!

不意打ちによる素早い拳打。

気絶した振りをしていたナルトは、雪忍達をあっさりと返り討ちにしてしまった。

倒した雪忍から牢屋の鍵を奪ったナルトは、得意気に指でくるくると回して、

 

「へへへ、だから言っただろう? そうそう企み通りには進ませねェってよ」

 

してやったりと笑い、雪絵もそんなナルトを見て、微かに微笑みを浮かべていた。

ナルトは周囲を観察し、敵が近くにいないのを確かめてから、すぐさま雪絵を牢屋から救出した。

その手を取り、腕を引っ張る形で人の気配が少ない上へ上へと足を進める。

現在、城内は霧に包まれていた。

霧隠れの術の発動は、敵の翻弄だけでなく、再不斬達が助けに来たという合図でもある。

あとは再不斬達と合流するまで、雪絵を守り切れば反撃のチャンスも出て来る筈だ。

と、ナルトが思考していた時だった。

 

「ねえ、ナルトはどうしてここまでしてくれるの?」

 

雪絵がそんな疑問を口にした。

ナルトは周囲を警戒しながら、

 

「ん? 言っただろ。任務だってな」

「でも、この任務は規格外なんでしょう? あんたの先生からそう聞いたわ」

「……オレさ、オレが初めて請け負った任務は橋作りをしているおっちゃんの始末だったんだ……」

「えっ!?」

「あっ、勘違いしないでくれよ。 最終的にはそのおっちゃんを守る方についたんだ……だけど、最初はすげぇ嫌だったんだ。他に行き場所もなくて、再不斬達も金がなくて、オレは再不斬達に飯を食わせて貰ってたから言えなかったけど……」

「…………」

「だからかな……嬉しいんだってばよ。こうやって誰かのために闘えるのが……決して口には出さねーけど、たぶん再不斬やハク、長十郎だってオレと同じこと思ってると思う。だからさ、守らせてくれよ、姉ちゃんのことを」

「ナルト……ありがとう……」

「へへへ……」

 

雪の国の姫が十年振りに立ち上がった瞬間であった。

 

ナルト達はさらに歩を進める。

霧が発生しているお陰か、殆ど敵と遭遇することもなく、安全に逃亡を続けられていた。

どれくらい登っただろうか。

かなり城の上層に来たところで、ナルト達は鬼のような顔をした人物と再会を果たした。

 

「よォ!」

「ざ、再不斬!」

 

今まで変化の術を使って潜入していた再不斬がナルト達の姿を見つけて、術を解き近付いてきた。

 

「独断専行したあげく、まんまと敵に捕まるとは、テメェはお姫様か、何かか、あァ?」

「い、いや〜、本当のお姫様はこちらの方です……」

「んなことはわかってんだよ!」

「すみませんでした……」

 

怖ぇ……

敵よりも怖いってばよ。

と、ナルトが失礼をかましている側で、再不斬は雪絵の安否を確認し、

 

「ふん……姫さんも無事でなによりだ」

「ええ……」

 

二人の無事を確認した後、即座に撤退を促した。

 

「よし、取り敢えず敵の本拠地にこれ以上居座る理由はねェ。一旦退くぞ」

「それがさ、そうも言ってられねーんだ」

「どういうことだ?」

「それが……」

 

ナルトは横にいる雪絵の方を見る。

それで言いたいことを察した雪絵が、再不斬の質問に答えた。

 

「私の持っていた六角水晶がドトウの探していた物らしくて、それを手に入れたドトウは忍五大国をも凌駕する力を手に入れられるとか言っていたわ」

「はあ? 忍五大国を凌駕するだぁ? どう考えてもハッタリ……と言いてーが奴等の鎧を見た後じゃあ、案外ハッタリとも言い切れねーか」

 

再不斬がどうするべきか思考を巡らしていた時、ナルト達の後ろから、

 

「ナルトくん、姫様!」

「ナルトさん、姫様! ぶ、無事でよかった〜」

 

ハクと長十郎がこちらの姿を見つけて、駆けつけに来た。

それを見て、ナルトも心の中で安堵の息をもらす。

これで、城に潜入した五人全員が合流する形となった。

続けて、事態が好転したのを見た再不斬が頭の中で作戦を立て始める。

最後にナルト達を見回してから、

 

「本来なら、やはり一度引きてーところだが、もし奴らのハッタリが事実なら一刻の猶予すらない可能性もある。姫さん、ドトウの居場所はわかるか?」

「ええ、ドトウは最上階にいるわ。こっちよ!」

 

雪絵が先行して、ナルト達はその後を追う。

暫く走ってから、他とは明らかに雰囲気の違う、大きな扉の前にたどり着いた。

再不斬は雪絵に視線を送り、

 

「ここか?」

「ええ、ここにドトウがいるわ……」

「よし……オレが霧隠れを使って先に入る。お前達はその後に続け」

「「「了解」」」

 

再不斬は雪絵に確認した後、ナルト達に指示を出し、術を発動する。

 

「忍法・霧隠れの術」

 

濃い霧が発生したのを見計らい、再不斬が部屋へと侵入した。

が……

 

「風遁・大突破!」

「くっ」

 

相手の強風を生み出す忍術で、霧もろとも吹き飛ばされた。

作戦が失敗したのを悟り、ナルト達はすぐに王の間へと足を踏み入れる。

するとそこには、ドトウをはじめ、ナダレ、フブキ、ミゾレ、四人の雪忍がチャクラの鎧を身に纏い、王の間に集結していた。

戦闘準備は向こうも万端のようだ。

 

「ようこそ我らの城へ。歓迎しよう、霧の忍者の諸君。そして小雪」

「チッ、やっぱりそう易々と首を取らせちゃくれねーか」

 

身体を起こしながら、ドトウを睨みつける再不斬。

ドトウはそんな再不斬に不敵な笑みを浮かべて、

 

「ふふ、ワシの首を取るだと? それは無理な話だ。貴様らにはこの最新式のチャクラの鎧を身に纏ったワシを、倒すことはおろか、傷付けることすら叶わない」

 

ドトウが自身の姿をひけらかすかのように、座していた玉座から立ち上がった。

黒いチャクラの鎧。

ドトウのそれは、ナダレ達が着ているものとは一線を画し、外装は分厚く、黒く染め上げられ、より強固な武装と化していた。

 

「小雪、まさかお前まで来るとはな……お前は雪の国から逃げたのではなかったのか?」

「ええ、そうね。でも、あなたの好きにさせる訳にはいかないわ」

「ククク、まさか霧の忍者共にほだされたか? まあいい。お前には特別、虹の氷壁に隠された真実を見せてやろう」

 

そう言うや否や、ドトウは目に止まらぬ速さで雪絵の背後に回り込み、その体を抱え込んでしまった。

それを見たナルトが、

 

「汚ねぇ手で、姉ちゃんに触るんじゃねェ!」

 

と、ドトウに突撃するが、

 

「無駄なことを。忘れたのか、貴様のチャクラは完全に封じられているのだ」

 

ドトウの放った、ただの腕の一振りで簡単に殴り飛ばされてしまった。

 

「ナルト!」

「ナルトくん!」

 

雪絵とハクが短い悲鳴を上げる。

再不斬達もなんとかしたいところだったが、ナダレ達の存在もあり、迂闊には動けずにいた。

その時……

ゴゴゴゴゴォ!

王の間全体が揺れ動き、粉塵が舞う。

爆破音とともに、城そのものが崩壊の前兆を告げ始めていた。

 

「何事だ!」

 

突然の事態に雪忍達は慌てふためき、再不斬はニヤリと笑みを浮かべ、

 

「敵の本拠地を見つけたら、取り敢えずぶっ壊してやるのが礼儀ってもんだからなァ」

 

再不斬は城に潜入するのに霧隠れを発動した後、水分身を作り、同時に破壊活動も行っていたのだ。

それに気づいたドトウが再不斬を一瞥し、

 

「再不斬、お前の仕業か……まあいい、こんな城ももう必要ないのだからな」

「なに!?」

 

本拠地が必要ないとはどういうことだ?

という再不斬の問いには答えず、ドトウはナダレ達に指示を出し、

 

「お前達、コイツらの相手は任せたぞ」

「「「わかりました」」」

 

そう、ナダレ達が返した瞬間。

ついに城の崩壊が始まった。

床に亀裂が入り、豪奢な天井は瞬く間に砕けていく。

大きな揺れとともに雪忍達は逸早く脱出し、ナルト達も上から降り注ぐ瓦礫を避けながら、それぞれ散り散りとなる形で城の外へと飛び出していった。

 

 


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