霧隠れの黄色い閃光   作:アリスとウサギ

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九尾の封印

「ぐわぁああぁ!」

 

無数の武器が飛び交う。

何とか避けようとしたが、殆んどの武器がナルトの体に突き刺さった。

全身に傷を作り、傷口から血を流すナルト。

運よく致命傷になるものはないが、そう何度もくらってられる攻撃ではない。

だが、

 

「時間はかけるな! 次で仕留めるぞ!」

「「おう!」」

 

周りの忍達が再び武器を構える。

次で終わらせるという忍達に、ナルトはただ震えるばかり。

 

何で、何でオレだけこんな目に会わなきゃいけないんだ!

涙目にナルトがそう叫びそうになった時……

 

『人間が憎いか、小僧ゥ!』

だ、誰だってば!!

 

頭に、いや魂とも言うべき場所から人間ではないものの声が聞こえた。

 

『貴様が望むのであれば、今回限り特別に力をくれてやるぞ?』

だから、お前は誰だってば!

『頭の悪いお前でもこの状況、察しはついているのであろう?』

まさか、九尾……

『そうだ、ワシはお前達人間が九尾と呼ぶ存在だ』

何で九尾が力を貸してくれるんだってばよ!

『ワシとお前は忌々しいことに一心同体。お前が死ねばワシも死ぬ』

だから力を貸す?

『そうだ! ククククク、どうするナルト? このままでは一秒後には死んでいるかもしれんぞ? ワシもお前もな!』

死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、嫌だ! 死にたくない!

『いいだろう、もう一度言うが今回限りだ!

ワシは人間が好かんからな……』

 

「オレも同じかもな……ありがとうだってばよ、九尾」

 

フンと九尾は鼻を鳴らした。

 

「はぁあああああ!!」

 

ナルトの体から、微量ながらも九尾のチャクラが溢れ出す。

チャクラその物が具現化し、

キィン! キィン!

と、ナルトに迫っていた手裏剣やクナイを全て弾き返した。

さらに急速的なまでの回復力で、ナルトの体にできていた傷がみるみる塞がっていく。

それを見た木の葉の忍達は、当然慌てふためき、

 

「まずいぞ、本当に九尾のチャクラが……忍具は効果が低い! 忍術でかたをつけるぞ!」

「「わかった!」」

 

忍達が慌てて印を結び、術を発動するが……

 

「「「火遁・豪火球」」」

「ガアァアアア!!」

「なん……だと……!?」

 

九尾のチャクラを纏ったナルトが、その咆哮だけで術を消し飛ばした。

もちろんナルトは無傷である。

忍術で相殺するならまだわかる、例え相手がアカデミー生でも、まだ理解できる。

だが、咆哮だけで消すなど、上忍や暗部でも例外を除き不可能だろう。

あまりにも理不尽な相手に、木の葉の忍達は撤退を始める。

だが、それを逃がしてくれる相手ではない。

逃げ遅れた一人の忍が、九尾のチャクラで地面に叩きつけられ、

 

「…………」

 

その隙にナルトは、その忍の上に乗りかかり首を締める。

 

「ゆ、許してくれ……」

 

命乞いをする相手に容赦せず、さらに力を込める。

そして、あのクナイを手に取った時……

 

――そこまでだよナルト!

 

ナルトの意識は奥底へと沈んでいった……。

 

 

いつの間にかナルトは薄暗い通路に立っていた。

どこだってばよ? と、疑問に思いながらも、何故か奥に進まなければという直感に従い、足を進める。

そして、最終地点と呼べるであろう大きな檻の前にたどり着いた。

先ほどまで、そのチャクラを纏っていたからわかる。

この中に九尾がいると……

 

『まさか、ここまで来るとはな小僧ゥ!』

 

赤い大きな檻の中。

禍々しいまでのチャクラを漂わせながら、大きな狐がそこに存在していた。

 

「九尾……」

『フン、本来なら貴様を殺して檻から出たいところだが、忌々しい封印だ……四代目!』

 

九尾が目を向けた先に、ナルトの精神世界で、ナルト以外にももう一人、人が立っていた。

金髪碧眼で、どこかナルトに似た雰囲気の男であった。

 

「誰だってば?」

「ん? オレはお前の父親だよ、ナルト」

「父親……」

「そして、お前はオレのせがれ、息子だ」

「あっ!」

「ん? なんだい?」

「その顔、どっかで見たことあると思ったら四代目火影だ!」

「ん! そうだよ。オレはこれでも生きていた時は木の葉の火影を任されていた」

 

色々ごちゃごちゃになっているナルトに、落ち着いた口調で話を合わせる四代目火影。

だが、ナルトがパニックになるのも仕方がない話である。

今まで自分の父親の話など、誰もしてくれなかったのだから……

 

「じゃあさ、じゃあさ、オレってばもしかして火影の息子なのか?」

「うん、そうだよナルト」

 

その答えに、ぱぁと顔を喜ばせるナルト。

里を救った英雄、自分が目指した火影が自分の父親なのだ。

ナルトのような年頃の少年にとって、父親がカッコいいのは、この上ない喜びだろう。

だが、その顔は少しずつ沈んでいく。

 

「でもさ、でもさ、とうちゃんがオレのとうちゃんなら、何でオレってば里の奴等に殺されそうになってるんだってばよ?」

「それは……本当にすまなかったと思っているナルト……」

「別にとうちゃんが、オレを殺そうとしたわけじゃないってばよ。だから、とうちゃんは悪くない!」

「……そう…だね……オレは本当は九尾の封印が解けそうになった時に出てきて、封印を掛け直すために自分のチャクラを八卦封印に込めたんだが……」

 

四代目火影はそこで言葉を切り、九尾の方を見る。

檻はしっかり閉じてあり、何も問題ない。

また、ナルトに顔を戻しながら、印を結ぶ。

 

「とうちゃん?」

「本当はクシナに頼むつもりだったんだけど、せっかくチャクラも余っているし、ナルトには少し早いが、あの日の出来事を教えるよ」

「あの日の出来事?」

「ナルト、君が生まれた日のことだ。口で説明してもいいけど、実際に見てもらった方が早い。それに……」

 

四代目火影は生前自分が使っていたクナイを見ながら、

 

「それの本当の使い方も覚えてもらいたいからね!」

 

印を結び終え、ナルトに幻術をかけた。

 

 

 

 

「オレ、思ったんです。今度生まれてくる子供もこんな忍になってくれたらいいなって!

だから、この小説の主人公の名前……頂いてもいいですか?」

「お、おい、そんなんでいいのか? ラーメン食いながら適当に決めた名前だぞ?」

「ナルト……素敵な名前です」

 

自分の名前が決まった日から記憶が、どんどんナルトの頭に流れ込んでくる。

日々幸せそうなみんなの顔が。

だが、その幸せは最後の最後に現れた面の男によって崩れることになる。

ナルトを人質に取り、九尾に幻術をかけ、里を襲い、それでも何とか四代目火影はその面の男を撃退する……

しかし、その面の男の底は、四代目火影ですら、最後までわからなかった。

だからこそナルトに九尾を封印したのだ。

いつか、この力を自分の息子が使いこなすと信じて……

 

 

いつの間にか幻術は解けていた。

 

「とうちゃん?」

 

四代目火影の身体がどんどん薄くなっていく。

もう、時間なのは誰の目から見ても明らかで……

 

「どうやら、そろそろ限界のようだ」

「そんな! せっかく会えたのに! オレってば色々なことをしたり、もっと話したりしたいってばよ!!」

「オレもだよ、ナルト。だが、オレは既にあの戦いで命を懸けた……こうして会えただけでも奇跡なんだ」

「とうちゃん……」

「最後にナルト、そのクナイの使い方を教えよう。オレと一緒にクナイを持って」

「……うん」

「先ほど面の男との戦いを幻術で見せた通り、これは時空間忍術でかなり特別な術なんだ。本来ならこのクナイはオレ以外使えないんだけど、ナルトはオレの息子だからね」

 

四代目火影はナルトに手を重ねながら、クナイの術式をナルト用に書き換えた。

 

「かなり練習が必要だろうけど、お前ならできる。オレはそう信じてる」

「あぁ、見ていてくれ、とうちゃん! オレは黄色い閃光の息子だからな!」

 

四代目火影はナルトの頭に手をおき、

 

「正直、お前のことを木の葉の里が受け入れてくれるかは、オレにもわからない。もちろん、ナルト。お前がこれからどんな道を歩むのかもね。でも、どんな道を進もうとオレはお前を信じている。それが親ってものだからね……本当は火影の夢を叶えて欲しかったけど……」

「とうちゃん! とうちゃん達の火の意志はオレがしっかり受け継ぐから心配しないでくれ! 火影にはなれないかも知れないけど、歴代の火影を越す夢は今でも捨ててねーからよ! オレはとうちゃんより凄い忍になる! まっすぐ自分の言葉は曲げねぇ、それがオレの忍道だ!」

「あぁ、オレはずっとお前を見守っているよナルト」

 

その言葉を最後に四代目火影は見えなくなった……

 

 

 


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