霧隠れの里を出発して数日後。
ナルト達は無事に木の葉の里へと辿り着いていた。
再不斬、ハク、長十郎にとっては初めてだが、ナルトにとっては久し振りの木の葉の里であった。
ナルトは目の前にデカデカとある「あ・ん」と書かれた門を見上げる。
(そうか……オレってば、またここに帰ってきた……いや、ここにやって来たんだ……)
ミズキに騙されて封印の書を盗み出し、木の葉の忍に襲われ、そして九尾の存在と四代目火影のことを知った日。
あの日の出来事をナルトは門の前に立ち、思い出していた。
九尾……お前も見てるか?
『フン、お前が見ているのだ。ワシにも見えるのは当然だろ!』
オレ達……ここから始まったんだよな
『…………フン』
九尾……しっかり見てろよ!
『何をだ?』
雪の国でも言っただろうが! オレが頑張れば、オレ達の評価だってひっくり返せる! 中忍試験なんて最高の見せ場だろ!
『お前……本気で……』
まっすぐ自分の言葉は曲げねぇ! オレの忍道だ!
全員ぶっ飛ばして、目立って目立って目立ちまくってやるってばよ!
『………………』
「ナルトくん? 急に立ち止まってどうしたのですか?」
ハクの声が聞こえる。
ふと気づくと、心配するような目で再不斬達がナルトの方を見ていた。
それを見て、ナルトは慌てて意識を戻し、
「わりーわりー、何でもないってばよハク。ただ、あの日ハクと出会った時のこととかを思い出しちまってさ……」
「……そうだったんですね……」
ハクも神妙に答えたせいか、少しナルト達の空気が暗くなる。
それを振り払うかのように再不斬が声をあげ、
「ナルト! まだ中忍試験は始まってすらいねーんだぞ! 気合い入れろよ!」
「わかってるってばよ!」
「よし! じゃあ、ハク、ナルト、長十郎……木の葉に入るぞ」
「はい」「おう!」「は、はい」
部下達の返事を聞いてから再不斬が受付に迎い、手続きをしに行く。
最初は淡々としていた受付員がナルトの姿を見て慌て始めたが、再不斬が一睨みして黙らせ、木の葉の里への通行証を手に入れる。
それを部下達三人に配る。
通行証を手に入れたナルトはみんなの先頭に立ち、
「いざ! 木の葉の里へ!」
と里へと足を踏み入れた。
ナルト達が木の葉の里に入った瞬間、ナルトの姿を見つけた木の葉の人々の目が、一斉に第一班へと集まる。
それを見た再不斬、ハク、長十郎は、
「ちっ! 煩い連中だな!」
「皆さん……酷い目つきをしていますね……」
「あわ、あわわわわ……な、何で睨まれているんですか、ぼ、僕達……」
とそれぞれの感想を述べる。
長十郎に至ってはこんな視線を浴びたのは初めてなのか、いつも以上に縮こまってしまう。
そんな中、ナルトだけは違った感想を述べていた。
「あれ? 今までより少しだけ嫌な視線が少ないような?」
確かに里にいる半分以上の人間がナルトに対し、醜悪に満ちた感情を向けていた。
だが、一部の人間がナルトに対して、何やら申し訳なさそうな顔を浮かべているのが見て取れる。
その一部の人間は風雲姫の映画を見て、薄々ではあるがナルトの正体に気づきはじめた人達だったのだが、そのことはナルトには知るよしもなかった……
暫くナルト達が木の葉の里を歩いて散策していた時、ナルトの同期の一人でもある見知った顔に出会う。
何やら若い女の人と話しているところみたいだが、そんなことは気にも止めずにナルトは手を上げ、おかっぱの女の子に声をかけた。
「おお! やっぱりヒナタじゃねえか! 久し振りだってばよ!」
「ナ、ナルトくん!?」
いきなりナルトに声をかけられたヒナタは目を見開きパニックを起こしていた。
そんなヒナタにナルトは、
「こんな所でなにやってるんだってばよ?」
「えっ! えっと……ナ、ナルトくんの方こそ、どうして?」
しどろもどろになりながらも返事をするヒナタ。
ナルトの方は知り合いとの再会に舞い上がっていた。
「ん? あー、オレってば、木の葉の里に中忍試験を受けに来たんだ!」
そう言って霧の額あてに手をかざすナルト。
そこで今まで黙っていたヒナタの担当上忍、紅が話に加わってきた。
「はじめまして、私はこの子の担当上忍をしている夕日紅……今年は霧も参加するとは聞いていたけど、まさかナルトのチームが来るとはね……あなたがウワサの忍刀七人衆の一人、桃地再不斬ね」
紅の視線が後半、再不斬に移る。
「ふん、どんなウワサかは知らねーが、まあ、よろしく頼むぜ」
「ええ、こちらこそ……」
担当上忍同士の挨拶を終えた後、ハクがナルトに説明を求める。
「ナルトくん。この女の子はナルトくんの知り合いなのでしょうか?」
「ああ、アカデミーの時の同期で、名前は日向ヒナタっていうんだ。暗くて恥ずかしがり屋な女の子だってばよ!」
その言葉を聞いてヒナタはますます下を向いてしまう。
そんなヒナタを代弁するかのように紅が、
「まぁ、実は今も丁度そのことで悩んでいたところだったんだけどね」
「どういうことだってばよ?」
「ヒナタにも中忍試験に出るかどうか聞いていたのだけれど、なかなか勇気が出せないみたいで……」
「ふ〜ん……ヒナタも受けりゃあいいじゃねぇか。中忍試験」
ナルトの提案にヒナタは顔を下に向け、
「わ、私なんかが出てもキバくんやシノくんの足を引っ張っちゃうかな……とか思って……」
キバとシノ。
久し振りに聞いた名前にナルトは懐かしさを覚える。
「へえ〜、ヒナタってば、キバとシノのやつが一緒のチームになったのか!」
「う、うん」
「でもさ、それならなおさらいなくなるのが一番迷惑になると思うってばよ? だって三人でスリーマンセルなんだから! ハクと長十郎だってそう思うだろ?」
後ろを振り向き、自分の仲間を見るナルト。
ハクと長十郎が頷き、
「そうですね」
「は、はい」
ハクと長十郎の返事を聞いてから、ナルトは言葉を続ける。
「ヒナタも試験受けて、みんなで中忍になれば問題ないってばよ!」
「ナ、ナルトくん……」
少しの間ができた。
下を向き、悩んでいた様子だったヒナタだったが、ナルトの言葉になにか思うことがあったのか自分の担当上忍の方を向いて、
「紅先生……中忍試験……私も受けます」
と参加の意思を示した。
「ヒナタ……そう、わかったわ。これで正式に八班の参加が決まったわね。じゃあヒナタ、早速提出用紙に記入しに行きましょうか」
ヒナタの決意に、口元に笑みを浮かべる紅。
早速、受付の用意を済ませようと提案する。
「はい! あっ……ナルトくん、その……ありがとう……」
「別に大したことはしてねえってばよ。最後に勇気出したのはヒナタじゃねぇか」
「う、うん……それでもきっかけをくれたのはナルトくんだから……」
そこでヒナタに付け足すように紅もナルトに向かって、
「ナルト、私からも礼を言っておくわ。私ではヒナタを説得できたかはわからなかったし……」
「そ、そうか? まあ、なんにせよ!中忍試験お互いに頑張ろうな!」
ナルトがそう言った後、ヒナタ達は試験の申し込み用紙を書き込みに自宅へと戻って行った。
昼時。
里を散策していた第一班は、ナルトの提案で、一楽のラーメンで昼食をとることになった。
霧隠れにもラーメン店はもちろんあるが、やはりここのラーメンはナルトにとって特別な物らしく、木の葉に来たらもう一度食べに行きたいと思っていたのだ。
ナルト達は暖簾をくぐり、
「おっちゃん! 味噌チャーシュー大盛で!
あ、みんなの分もだから4人前で!」
「!? な、ナルト!?」
一楽の店主、テウチは久し振りのナルトの姿に驚きの声をあげる。
「ナルト! お前今まで急にラーメン食いに来なくなったかと思っていたら、どこで何していやがった!」
「へ? あ〜、実はね……」
ナルトは自慢気に霧の額あてに手をかざし、
「オレってば、霧隠れの忍者になったんだってばよ!」
「なに!? 里を抜けたのか?」
「まぁ……色々あってな……そんで今回中忍試験を受けることになったから、木の葉に来たんだってばよ!」
「……そうか……」
里を抜けたナルトに言いたいことが山ほどあっただろうが、テウチは何も言わず、ナルト達にラーメンを差し出す。
……注文よりもトッピングをサービスして。
それにすぐ気づいた再不斬が、
「親父、注文より量が多いぞ?」
と、疑問を口にするが、テウチは意義を許さない表情で言った。
「あんたはナルトの先生か? これはオレからの餞別だ。四人とも残さず食っていけ!」
それに、ナルト、ハク、長十郎、再不斬は、
「ありがとうだってばよ!」
「ふふふ、ありがとうございます」
「あ、ありがとうございます! いただきます!」
「ふん、さすが古くからある伝統の店ってところか」
と、それぞれ礼を言い、テウチが背中で見守る中、ちょっと量の多いラーメンを残さず食べていった。
昼飯後。
ラーメンを平らげたナルト達は店の暖簾をくぐった所で、またも顔見知りの人物と遭遇する。
「やあやあやあ、これはこれは、忍刀七人衆の桃地再不斬くんと、その愉快な仲間達じゃあ〜ないですか」
一楽の先で待っていたのは波の国で再不斬達と敵対していた、はたけカカシであった。
その顔を見て、再不斬とナルトは、
「てめぇ、カカシ!」
「あ、カカシ先生! どうしてこんな所にいるんだってばよ?」
と、ほぼ同時に言った。
「ん? いやぁ紅の奴に、お前達のことを聞いて、昼飯してるならここかなと思ってね……」
呑気な態度のカカシに再不斬は少し警戒しながら話しかける。
「で、何でこんな所にいやがる? ラーメン食いに来たって訳じゃねーんだろ」
「あ〜、そんな警戒しなくて大丈夫だから。中忍試験の話はオレも火影様から聞いている。で、話しってのは、その火影様がお前達と話しがしたいから連れて来てくれってことでね……」
「ふん、どう考えてもナルトが目当てだろうが」
「まあ、そういうことだな……火影様はナルトのことを可愛がっていたからね……里を抜けたことにも責任を感じていらっしゃる。ナルト、お前をどうこうするつもりはないから、試験の前に少し火影様に会ってはくれないか?」
後半の部分はナルトの目を見ながら、問いかけるように話すカカシ。
ナルトはそれに迷うことなく頷き、
「うん、オレもじいちゃんとは話しがしたかったところだってばよ!」
「そうか……」
カカシも笑顔で答えた。
その会話を聞いていた再不斬達は三人で目線を合わせて、
「まあ、そういうことならオレ達は先に宿に行ってるぜ! 試験は明日なんだから遅くならねぇようにしろよ! カカシ、念のために言っておくが、余計な真似はするんじゃねーぞ!」
「悪いね再不斬、今度ラーメンでも奢るから……」
「今、腹一杯食い終わったところだ!」
再不斬とカカシの軽口をよそに、ハクと長十郎もナルトに、
「では、ナルトくん、宿で待っていますね!」
「ナルトさん、僕も先に宿へ行っておきます」
と、木の葉の里が用意した第一班の宿屋へと向かって行った。
そんな三人の背中を見て、カカシは頭を掻き、
「一応全員でと言われていたんだがな……気を使わせてしまったようだな……」
「気にしなくていいってばよ、カカシ先生! それより早くじいちゃんの所に行くってばよ!」
勝手知ったる火影室へ、カカシを置いてきぼりにする勢いでナルトは歩みを進めていった。