四代目火影が消えた後。
ナルトは少しの間だけ色々な感傷に浸っていたが、いつまでもこのままではいけないと、袖で涙の溜まった目元を拭った。
「九尾、お前とも色々話してみたかったけど……」
『フン、木の葉を襲ったことに対する文句か?』
「違うってばよ、あれはお前も無理矢理だったんだろ? 難しいことは正直、オレってばよくわかんなかったけど……」
『………………』
「でも、オレはすぐに動かなきゃならねぇ! だから……」
『小僧、これからどうするつもりだ?』
「えっ?」
『はっきり言ってやる! このままだとお前は木の葉の忍に殺される可能性がある。ミズキとかいういけ好かない先公だけならまだしも、他の者とも戦闘をしてしまった。仮に今回何とかなったとしても、今まで以上にお前は、この里で迫害されることになるだろう……』
確かに九尾の意見は正しかった。
今までは自分が頑張れば里の奴等を見返せると思っていたが、ミズキ以外の忍達も、本気でナルトを殺しにかかってきていた。
「なら、だったら旅にでも何でも出てやるってばよ! そして、旅しながら修行して強くなって……」
『それなら、影分身を作れ』
「へ? 影分身? 何で?」
『バカか貴様。普通に里の外に出られると思っているのか? 影分身はそうそう本体との見分けはつけられない。本来、そういう陽動に使う忍術だ。数でモノをいう術じゃない!』
「な、なるほど〜! お前ってば頭良いんだな!」
『いや、ワシが良いのではなく……そんなことより時間がなかったのではないか?』
「そうだった! お前ってば意外と良いやつだな九尾!」
『フン』
会話の後、ナルトはすぐに現実世界に戻った。
周囲には、自分の下に気絶した忍が一人いるだけ。
他の奴等は誰もおらず、一度逃げたようだ。
安全を確認した後、ナルトは印を結び、
「よし、やってやるってばよ! 多重影分身の術!」
チャクラのうねりとともに、分身ナルトが出現する。
ミズキの時ほど数はいないが、それでも十数人。
少しなら陽動も可能だろう。
そして、本体のナルトだけ猫に変化。
「おぉ〜、何故かいつもより術が上手く発動するってばよって、猫が喋っちゃまずいか」
それから数分後。
ナルトは猫の姿のまま「あ・ん」と書かれた門の前まで来ていた。
ここまでは楽に来れたが、門のところには二人の見張りがいる。
だが、伊達に木の葉1のイタズラ小僧は名乗っていない。
一人だけついて来させていた影分身とアイコンタクトをとり、
「おーい、おっちゃん達、助けてくれってばよ!」
「あ? どうした? 何かあったのか?」
「それが、ミズキ先生が血流して倒れてるんだ! オレ一人じゃ病院まで運べないんだってばよ!」
「なんだと!? わかった。オレが行く、案内してくれ」
真実を少し混ぜた嘘には信憑性が意外とあるもので、一人はそのまま影分身と一緒についていった。
流石にもう一人は残っていたが、あれだけ目を逸らせたら作戦としては十分である。
なぜなら、猫に変化した本体のナルトは、既に里の外に出ていたからだ。
最後に、木の葉の里を振り返る。
(火影のじいちゃん、イルカ先生、サクラちゃんとも、もう会えないかもな……
でも、オレは強くならなきゃいけない。
ここで死ぬわけには絶対にいかないんだってばよ……)
猫の手を四代目の顔岩に突き出し、
「とうちゃん、行ってくるってばよ!」
と、心の中で呟いた。
が、そこで九尾が割り込んできて……
『ナルト、カッコつけてるところ悪いが、たぶんお前が里を出たのばれたぞ』
ど、どういうことだってばよ!
『貴様が門を出た時に少し違和感を感じた。どうやら木の葉に出入りしたものを感知できるように、結界が張ってあるらしい』
それってば、まずいんじゃ……
『あぁ、走れクソ猫』
こんなところで捕まってたまるか!
それから全速力で走ったナルトは、かなり運がよかったのだろうが、追手に遭遇することもなく、木の葉国境の付近まで来ていた。
大きな川まで来て、ここからは舟に乗らなくては進めないと判断し、変化の術を解いたところで、
「もしかして、キミもこの先に行く予定ですか?」
と、見知らぬ相手に声をかけられた。
ナルトが声の聞こえた方を振り向くと、そこには、
「わぁ、サクラちゃんより可愛い……じゃなくて、そうだってばよ!」
見たこともない美少女が、舟の上に乗っていた。
長い黒髪に、綺麗な桃色の着物を着た、ナルトとそう年の離れていない女の子。
その少女が微笑み、
「ふふ、なら丁度席も空いていますので、一緒に乗って行きますか?」
と、言った。
渡りに船とはまさにこのことである。
相手の言葉に甘えて、ナルトは一緒に舟へ乗せてもらうことにした。
二人で木の舟を漕ぎ、川の中を少しずつ進んで行く。
「ありがとうだってばよ、姉ちゃん」
「いえ、舟はある程度人が乗っている方が安定しますし、困った時はお互い様です」
「オレってば、うずまきナルト!」
「僕はハクです。ちなみに、男ですよ?」
「えっ?」
衝撃の事実。
一瞬絶句し、思わずハクの顔をマジマジと見るナルトだが、どう見ても女の子にしか見えず、そんなバカな! この世は不思議で一杯だ〜
と、現実逃避していたところ、ハクの質問ですぐに現実に戻される。
「もしかして、ナルトくんは忍者ですか?」
「えっ!? オレってば忍者に見えちゃう!」
「はい、さっき舟を探していた時も変化の術を使っていましたから、凄い忍者なのかなぁと」
「いや〜、それほどでも……って、変化の術を知ってることはハクも忍者なのか?」
「どうでしょう? 一応訓練はしてきましたが、僕なんかよりナルトくんの方が凄いと思いますよ?」
「いや〜、それほどでもないってばよ」
そこでハクは一度言葉を区切り、ナルトを少し注意深く見ながら、
「ナルトくんはこの川を渡り切った後、どこに行く予定なのですか?」
と、さり気なくナルトの目的を探ろうとする。
木の葉の方面から来たのは間違いないが、額あてすらしていない。
正直、自分達の障害になるとは思えなかったが念には念を、一応聞いておかなければならなかった。
「う〜ん、オレってばちょっと事情があって、里にいられなくなったんだってばよ!」
「えっ? 里にいられなくなった?」
「うん、でもオレってば今よりもっと強くなって、やらなきゃいけないことがあるんだ! 行く宛は今のところないんだけど……」
「えっと、方角的にナルトくんは木の葉の里から来たんですよね? あの里は五大国最強で、尚且つ平和な里ですよね? わざわざ里を出なくても強くなれたのでは?」
「う〜ん、確かに木の葉は凄い里だけど、オレにとっては平和なところじゃないんだってばよ」
舟を漕ぎながら、ハクはナルトの言葉について考えを巡らせていた。
いや、既に答えは出ている。
この子は僕に似ていると
勝手にこんなこと言ったら再不斬さんに怒られるかな……
そう思いながらも、ハクはナルトに声をかけずにはいられなかった。
「ナルトくん、もし行くあてがないのであれば、僕と一緒に来ませんか?」
「え?」
「僕には仲間が…僕を含めて4人いますが、全員ナルトくんと同じで、訳あって里を抜けています。もしよろしければナルトくんも一緒に来ませんか?」
「いいのか!」
「もちろんです。仲間は多いに越したことありませんから」
「ありがとうだってばよ、ハク! どこに行くか迷ってたから助かったってばよ!」
「それから、ナルトくん一つお願いがあるのですが……」
「おう、ハクはオレの仲間だからな! 何でも言ってくれってばよ!」
仲間という部分を強調しながら話すナルトにハクは微笑みながら、
「その背中にかかっている羽織は…いくらなんでも目立ち過ぎます。今すぐ畳んで下さい。忍なのに全然忍べてないです」
「え〜、カッコいいのに」
「確かにカッコいいですが、敵に遭遇した時、狙って下さいと言っているようなものです」
「わ、わかったってばよ……」
今日一日で散々な目に会って来たナルトは、大人しくハクの言葉に従うことにした。