霧隠れの黄色い閃光   作:アリスとウサギ

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第二試験終了!強者どもが勢揃い!

霧隠れ第一班が塔に到達してから二日後。

ナルト、ハク、長十郎は会場へと呼び出された。

三人の中で、ナルトだけはこの二日間、ずっと修行をしていたので服に汚れがついており……

長十郎は泥だらけのナルトを見て、

 

「ナルトさん、足の怪我も完治してないのに、ずっと修行してたんですか?」

「ん? あ〜、もう痛くねーし、大丈夫だってばよ。それに一日でも早く螺旋丸をマスターしてーからな!」

 

と、話し込む二人にハクが前方を指さす。

 

「ナルトくん、長十郎さん。どうやら皆さん集まっているようですよ」

 

試験会場。

かなり大きなスペースがある場所で、第二試験を突破したそうそうたるメンバーが勢揃いしていた。

他にも、各担当上忍をはじめ、イビキ、アンコ、イルカ先生などの木の葉の忍達が複数参列している。

これは突如、中忍試験に姿を現した木の葉の抜け忍、大蛇丸を警戒しての措置であったのだが、第一班には知るよしもなかった……

そんな中、

皆と同じく列に参列する第一班。

全員揃ったところでアンコが宣言する。

 

「まずは第二試験。通過おめでとう!」

 

(合格者は合計24名。まさかここまでの人数が残るとはね……)

 

心の中で呟くアンコ。

木の葉 15名

砂 3名

霧 3名

音 3名

 

主催国の木の葉が多いのは例年のことだが、ここまでの数が残るのは珍しいことであった。

 

「それでは、これから火影様より第三の試験の説明がある。各自、心して聞くように! では、火影様。お願いします」

「うむ」

 

返事一つで、マイクがアンコから、三代目火影に移る。

 

「第三の試験……その説明の前に一つだけはっきりとお前達に告げておきたいことがある! この試験の真の目的についてじゃ」

 

(真の目的?)

と、首を捻る下忍達を見回して、三代目火影が話を始める。

 

「なぜ、同盟国同士が試験を合同で行うのか? 友好、忍のレベルを高め合う。その本当の意味を履き違えてもらっては困る! この試験は言わば……」

 

三代目火影はふーと、キセルを吹かせ、

 

「同盟国間の戦争の縮図なのだ!」

 

そう言い切った。

三代目火影は話を続ける。

 

「歴史を紐解けば、今の同盟国とは、すなわち、かつて勢力を競い合い、争い続けた国同士。その国々が互いに無駄な戦力の潰し合いを避けるために敢えて選んだ闘いの場……それがこの中忍選抜試験のそもそもの始まりなのじゃ……」

 

などなど……と、

厳かな声で話す三代目火影。

それに、

少し物騒なそんな話に、サクラが手をあげ、

 

「どうして? ただ中忍を選ぶためにやってるんじゃないんですか?」

 

三代目火影はサクラの質問に、もっともだと頷き、

 

「確かに、この試験が中忍に値する忍を選抜するためのものであることに否定の余地はない。だが、その一方で、この試験は国の威信を背負った各国の忍が命懸けで闘う場であるという側面も合わせ持つ」

 

今度はいのが疑問の声をあげる。

 

「国の威信?」

 

三代目火影はうむと、相づちを打ち、

 

「この第三の試験には我ら忍に仕事の依頼をすべき諸国の大名や著名な人物が招待客として多勢招かれる。そして、何より各国の隠れ里を持つ大名や忍頭がお前達の闘いを見ることになる。国力の差が歴然となれば、強国には仕事の依頼が殺到する。弱小国と見なされれば、その逆に依頼は減少する。それと同時に他国に対し、我が里はこれだけの戦力を育て有しているという脅威……つまり政治的圧力をかけることもできる」

 

今度はキバが吠える。

 

「だからって、なんで? 命懸けで闘う必要があるんだよ!」

 

命懸け。

忍とて、命はおしい。

中忍になるための試験に、命を懸けろとまで言われては黙っていられなかった……

しかし、

担当上忍達を背に、三代目火影は語る。

 

「国の力は里の力。里の力は忍の力。そして本当の力とは命懸けの闘いの中でしか生まれてこぬ!」

 

力強い声で言い切った。

反論は許さないといわんばかりの圧力。

火影の迫力に押し黙る下忍達。

その中で、ナルトだけは、

 

(う〜ん、何か少し違うような……)

 

と、三代目火影の言葉に僅かな疑問を感じていた。

 

「この試験は自国の忍という力を見せつける場でもある。本当に命懸けで闘う試験だからこそ意味があり、だからこそ先人達も目指すだけの夢として、中忍試験を闘ってきた」

「では、どうして友好なんて言い回しをするんですか?」

 

テンテンが質問する。

それに三代目火影は、

 

「だから始めに言ったであろう。意味を履き違えてもらっては困ると。命を削り、闘うことで力のバランスを保ってきた慣習。これこそが忍の世界の友好なのじゃ……」

 

闘いこそが忍の友好。

忍はただの道具であるべし。

三代目火影の言葉に絶句する下忍達。

 

忍の心得 第二十五項。

忍はどのような状況においても感情を表に出すべからず。任務を第一とし、何事にも涙を見せぬ心を持つべし

 

文章に少しぐらい差はあるが、木の葉隠れだけでなく、五大国全てに共通する忍にとって当たり前の考え方。

その当たり前はあまりにも無情なものであった……

 

「第三の試験の前にもう一度告げる。これはただのテストではない。己の夢と里の威信を懸けた命懸けの闘いなのじゃ……」

 

長い話に痺れを切らした我愛羅が言う。

 

「何だっていい……それより早く、その命懸けの試験ってヤツの内容を聞かせろ」

「ふむ……では、第三の試験の説明をしたいところなのじゃが……」

 

スタッと、三代目火影の言葉を区切るように、病弱そうな青年が膝をついて現れた。

 

「……恐れながら火影様……ここからは審判を仰せつかった、この月光ハヤテから……」

「……任せよう」

 

三代目火影が頷いたのを見て、ハヤテが下忍達の方に体を向ける。

 

「皆さん、はじめまして、ハヤテです。ゴホッゴホッ……えー皆さんには第三の試験前に、やってもらいたいことがあるんですね……それは本選の出場を懸けた第三の試験の予選です……」

 

青白い顔で咳を吐きながら話すハヤテ。

その説明にシカマルとサクラが異を唱える。

 

「予選って、どういうことだよ!」

「先生……その予選って、意味がわからないんですけど……今残っている受験生でなんで次の試験をやらないんですか?」

 

早くゴールしたチームはまだしも、つい先ほど塔に辿り着いた者達からすれば、たまったものではない話であった。

しかし、ハヤテは説明を続ける。

 

「えー、今回は第一・第二の試験が甘かったせいか、少々人数が残り過ぎてしまいましてね……中忍試験規定にのっとり予選を行い、第三の試験進出者を減らす必要があるのです」

「そんなぁ……」

「先ほどの火影様のお話にもあったように、本選では沢山のゲストがいらっしゃいますから、だらだらと試合はできません……というわけで、体調のすぐれない方、これまでの説明でやめたくなった方は今すぐ申し出て下さい。これからすぐに予選が始まりますので……」

 

容赦なく試験の説明が終わった。

 

「これからすぐだと!」

「えー、やっと第二試験が終わったばっかなのに……」

「マジかよ……めんどくせーな……」

「えー、ご飯は……」

 

あちらこちらから、不満の声が殺到するが、棄権する忍は誰一人といなかった……

一分ほど経っても、手が上がらなかったのを確認して、ハヤテが予選の内容を話し始める。

 

「えー、では、これより予選を始めますね。予選は一対一の個人戦。つまり実戦形式の対戦とさせて頂きます。ちょうど24名いますので合計12回戦行い、勝者が本選進出になります。ルールは一切なしです。どちらか一方が死ぬか倒れるかまで闘ってもらいます。死にたくなければ、すぐ負けを認めて下さいね。ただし、勝負がはっきりついたと私が判断した場合……えー、むやみに死体を増やしたくないので止めに入ったりします……そして、これからキミ達の命運を握るのは……」

 

ハヤテの説明途中で、アンコが無線で指示を出す。

 

「開け」

 

ガガガっと、音を立てながら、壁の向こうから電光掲示板が現れた。

完全に壁が上がったのを見て、ハヤテは視線を下忍達に戻す。

 

「これですね。この電光掲示板に一回戦ごとに対戦者の名前が表示されます……では、早速ですが、第一回戦の二人を発表しますね」

 

下忍達がドキドキしながら見守る中、電子音が鳴り始める。

二人の名を表示し、ぴたりと止まる。

出てきた名前は……

 

ウチハ・サスケvsアカドウ・ヨロイ

 

(いきなりとはな……)

(ふっ……願ってもない)

 

選ばれた両者が笑みを浮かべる。

 

「では、掲示板に示された二名、前へ」

 

試験官のハヤテの指示に従い、サスケとヨロイが前に出る。

 

「第一回戦。対戦者……赤胴ヨロイ うちはサスケ。異存はありませんね?」

「はい」

「ああ」

 

二人の意思を確認した後、ハヤテは、

 

「対戦者二名を除く、皆さん方は上の方へと移動して下さい」

 

と、それぞれ左右の上にある試験を見渡せる場所へと誘導をする。

木の葉の忍達は左へ、霧と砂と音の忍達は右の階段へと移動し始める。

その小さな騒動の途中で、サスケの後ろを通ったカカシがこそりと、

 

「サスケ……写輪眼は使うな」

「……知ってたのか」

「その首の呪印が暴走すれば、お前の命に関わる」

「!」

 

サスケは第二試験の最中、音忍の大蛇丸と遭遇し、首に呪印をつけられていた。

呪印とは使えば確かに力は得られるが、リスクもデカイ諸刃の剣であった。

 

「ま、その時は試合中止……オレがお前を止めに入るから、よろしく」

 

と言い残し、カカシはスタスタと階段を上っていった。

 

全員の移動が終わる。

上から、数多くの忍達が試合の開始を見守っていた。

静まりかえる会場で、ハヤテが合図する。

 

「それでは……始めて下さい!」

「行こうか」

「ああ」

 

すぐさま、

ヨロイが開始と同時に印を結ぶ。

それを見たサスケは、何の術かはわからないが相手が行動へ移る前に……煙玉を地面に投げつけた。

 

ぼふーん

 

煙が広がり、周囲の視界を塞ぐ。

そこに、

 

「はっ!」

 

煙が晴れるのを待つヨロイに、サスケが投げた一本のクナイが差し迫る。

一直線。

それを当然のように、ヨロイが避ける。

と同時に、サスケが煙の中から飛び出し、

ヨロイ目掛けて、先手必勝とばかりに駆け出す……

が、

足にチャクラを溜めていたヨロイが加速。

相手を上回る速度で急接近し、サスケの首を捕まえ、そのまま地面に抑えつける。

 

「……く……」

「ふん……お前のチャクラ頂くぞ!」

 

手で掴んだ相手のチャクラを奪う。

それがヨロイの能力であった……

だが、

 

「……ふん」

 

サスケは相手を逃がさないように、両手両足を使いホールドのように固める。

そして、印を結ぶことすらせず、術を発動する。

 

「分身・大爆破の術!」

 

ドッカーン!

 

ヨロイを捕まえていたサスケが自爆した。

爆発をもろに受けたヨロイは地面に転がる。

その直後。

 

ボン!

 

クナイに変化していた本体のサスケが変化の術を解き、姿を現す。

サスケは最初に煙玉でヨロイの視界を塞いだ後、影分身を一体作り、本体がクナイに化けることで分身と入れ代わっていた。

影分身の術。

と、

変化の術。

チャクラを使ったことにより、呪印が痛むのか首筋を抑えてはいるものの、サスケの圧勝であった。

ヨロイの様子を確認し、ハヤテが勝者を告げる。

 

「これ以上の試合は私が止めますね。よって、勝者、うちはサスケ」

 

周りからサスケに感嘆の視線が集まる。

サクラやいのは、

 

「やったー!」

「キャー、さすがサスケくんねー!」

 

と、人一倍、大喜びしていた。

勝者宣言を受けたサスケが上にいるナルトへと視線を送る。

ナルトは手すりを強く握る。

なぜなら、今の術はナルトが以前、波の国でサスケに使ったものだったからだ。

 

「あれって、オレの……」

「いや、少し違うな……」

 

横にいた再不斬が、ナルトの呟きを否定する。

サスケから、横にいる再不斬へと顔を向けるナルト。

 

「違う?」

「確かに、影分身は以前、てめーがサスケと殺り合った時に、コピーされたんだろうが、その後は少し違った……あのうちはのガキは起爆札を使っていなかった。どうやら分身が自らの意思で、込められたチャクラそのものを爆発させたようだ……」

「…………」

 

自分の術をコピーし、さらには強化までされ……

強くなったのはお前達だけではない、とサスケに言われた気がしたナルト。

カカシに連れて行かれるサスケの後ろ姿を第一班の四人はただただ黙って見送った……


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