霧隠れの黄色い閃光   作:アリスとウサギ

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闇に蠢く蛇

中忍試験をかけた予選が全て終了。

これにより、くじ引きで決めたトーナメントの発表が、勝利者達に告げられた。

 

一回戦。長十郎vsサイ

二回戦。サスケvsハク

三回戦。ナルトvs我愛羅

四回戦。シカマルvsテマリ

五回戦。チョウジvsカンクロウ

六回戦。サクラvsリー

 

試験は公平を期すために、一月の準備期間の後、開始される。

これは各国の大名や著名人に、本選の伝達をする期間でもある。

 

そう説明しながら、三代目火影は予選を勝ち上がった者達を見る。

 

(木の葉6名、砂3名、霧3名。霧は全員残ったか……水影殿が自信を持って送り出して来る訳じゃわい……同盟国となれるのなら心強いのだがのぅ)

 

三代目火影は口からキセルを放し、

 

「では、皆、御苦労じゃった! 一月後まで解散じゃ!」

 

第三の試験、予選の終了を告げた。

 

 

場面は変わり、試験会場の裏。

薄暗い場所で、音の額あてをつけた二人の忍。

大蛇丸とカブトが顔を合わせていた。

 

「災難だったわね……カブト」

「いえ、予想以上に楽しい試合でした」

「ふふ……そう。でも、遊びの時間は終わりよ」

 

探るような目線で大蛇丸はカブトを見る。

それに一言、ええと頷き、尋ねた。

 

「今なら取れますか?」

 

火影の首を取れるか……と……

カブトの質問に大蛇丸は顔色一つ変えず、

 

「今さら、あんなジジイの首取って楽しいかわからないけどね……」

「これから各隠れ里は長く、激しく、ぶつかり合う……アナタはその引き金になるおつもりだ」

「…………」

「そして、彼、うちはサスケくんはその弾の一つ何でしょ?」

「ふふ……私を見た途端、彼は仲間の腕を引っ張って一目散に逃げ出そうとしたわ。生への執着があり、なおかつその瞳は力を求めている。サスケくんがウチに来るのは時間の問題よ」

「大蛇丸様に狙われたら僕でも逃げますよ……」

「あら、言うじゃない……で、もう一つ調べて貰っていた事があったじゃない。そちらはどうなったの?」

 

大蛇丸がカブトに調べさせた事。

一つはサスケの事であり、もう一つは木の葉が霧と同盟を結ぶかも知れないという噂が本当なのかという事であった。

カブトは眼鏡をクイっと上げ、

 

「ええ。ナルトくん達にかまをかけて見たところ、どうやら本当の話のようです」

「なるほどね……なら、なおさら木の葉を早く潰してあげなくっちゃ……」

「さすがのアナタでも、影を三人も相手にするのは無謀ですからね」

「ふふ……それはそれで面白そうだけど……そういえば、さっきの試合でも、霧の三人はなかなか良い動きをしていたわね」

「ですね。僕も遊んでみたかったのですが……何やら雪の国を救ったのは彼ららしく……」

 

殆んど聞いたことがない国の名に、大蛇丸は首を傾げ、

 

「雪の国?」

「ええ……調べてみたところ、以前まで殆んど閉鎖的だった国らしく、最近、君主が変わり、国自体が大きく変わり始めたようです。何やらその変わるきっかけになった任務を再不斬率いる霧の小隊が請け負い、その活躍も映画になって、絶賛上映中だとか……」

 

カブトの説明を聞いた大蛇丸は目をギラリとさせ、

 

「へぇ……面白そうじゃない。少し気になってきたわ」

「では、今からご覧になられますか?」

「良い案ね。木の葉で最後の思い出作りと行きましょうか……さあ、行くわよカブト。虹の向こうへ」

 

芝居掛かった口調で背を向け歩き出す大蛇丸。

その後ろ姿を見ながら、

 

(大蛇丸様……すでに一度見られたのでは?)

 

カブトは心の中で呟いた。

 

 

その数時間後。

木の葉側から与えられた、霧隠れ第一班専用の宿で……

 

「よーし! テメーら、今日は好きなだけ食え、飲め、騒げ!」

 

再不斬が部下の勝利を祝っていた。

ハクはそれをたしなめるように、

 

「再不斬さん、もう少しお静かに。宿には他のお客様もいらっしゃるのですから……」

「何言ってやがるハク! オレ様はテメーらの勝利を祝ってやってるんだ。お前達も喜びやがれ! オレの部下が勝つたびに木の葉の連中が悔しそうな顔を見せてくれて……クク……まったくいい気分だぜ。今夜は旨い酒が飲めそうだ!」

 

もう大喜びである。

そして、ここにもう一人。

 

「よっしゃー! ずっとインスタントラーメンばっかだったからな〜。オレってば一杯食べちゃうもんねぇ」

 

ナルトも再不斬には負けるが、大喜びである。

だが、そんな時。

ハクが重大な事実に気づく。

 

「あ……試験が始まってから、ずっと留守にしていたので食料がありません……」

「「なに〜!」」

「再不斬さんが飲むお酒もありませんので買い出しに行かなくては……ナルトくん、長十郎さん、お願いできますか?」

 

ハクの頼みに、ナルトと長十郎がそれぞれ頷く。

 

「了解……けど、オレってば、野菜とか売ってるところにはあんま行きたくねーから、再不斬の酒を買ってくる」

「なら、僕は食料の買い出しに行ってきます」

 

そう言って、二人は買い出しに出かけて行った。

 

意気揚々と外に出かけたナルト。

今だに嫌な目線もあり、行きたくない場所も多いが、それでも昔よりは気持ちを沈めることなく、木の葉の里を歩いていた。

それが木の葉の住人達が少しは態度を改善してくれたお陰か。

はたまたナルトに仲間ができたことにより、心に余裕ができたお陰かはわからないが……

 

ナルトは、ふと足を止める。

本屋が目に映った。

昔、お色気の術の修行に使っていた場所である。

で、

今そこには、腰に大きな巻物を携えた白髪のおっさんが……

 

「ぐふふ……ええのォー、ええのォー! 女湯と違って取材にはならんが、これはこれで……」

 

だらしない顔でエロ本を読み漁っていた。

それだけなら、よくある風景? である。

しかし、その後ろ姿を見たナルトは、幻術を使ってミナトに見せて貰った…自分が産まれる日の前の光景を思い出していた。

自分の名前が決まった日のことを。

そして……思わず口から言葉を溢す。

 

「もしかして、お前ってば……自来也先生!」

 

ナルトの声に、振り向く自来也。

 

「ん? 誰だ、お前? ワシを先生だと?」

 

エロ本を片手にナルトに近づいてきた。

正面から相手を見て、やっぱりだ! と、ナルトは確信し、

 

「オレってば、うずまきナルト!」

「いや、いきなり自己紹介されてものォ……だがしかし、名乗り上げられたからにゃ、返してやらねばワシの名がすたる!」

 

言うや否や、自来也はすかさず印を結び、

地面に手を置き。

ボーン!

煙とともに現れた…忠のネックレスをした大きなガマに乗り、カカッと見得を切る。

 

「あいや、しばらく!! よく聞いた! 妙木山 蝦蟇の精霊仙素道人。通称・ガマせ……」

 

が、その途中で……本屋の店員が元気よく、

 

「お客さん、持って行くなら本の代金払って行ってくれよ〜」

「………………」

 

見得切りを邪魔された自来也が、なんとも言えない表情で大人しく金を払った後……

 

二人は、今度は誰にも邪魔されないようにと、人気のない川まで移動するのであった……

 

暫く歩いて。

自然に囲まれた川へと辿り着いた。

ゴホンっ! 咳払いを一つ。

自来也はナルトに目線を向け、口を開く。

 

「で、お前、何故ワシを知っとる?」

「えー、まだ気づかねぇのか? オレってば、父ちゃ…四代目火影の息子だってばよ!」

「!? やはりそういうことか……」

「ん?」

「どうやら何もかもバレとるらしいのォ。ナルト、その辺の話をちーと詳しく教えちゃくれんかのぅ?」

「いいってば……『待てナルト!』」

 

自分の名付け親と会えたことで喜んでいたナルト……に、九喇嘛がストップをかけた。

ナルトは九喇嘛に意識を向け、

 

『どうした九喇嘛?』

『そいつは確かにお前の名付け親の一人だ。だが、木の葉の忍。迂闊に信用するな』

『えぇー、でも、オレの父ちゃんの先生だぞ?』

『そんな事はわかってる。だが、せめてお前の味方かどうかぐらい確めてから、情報を話せ。あと、ワシのことは極力話すな』

『何でだってばよ?』

『ワシはお前は信用したが、他の人間どもは今だに好かん! 名前を教えるなど言語道断だ!』

『お前ってば、難しい性格してんだな……』

『フン、ほっとけ』

 

ナルトは再び意識を自来也に向けて、少し言葉に迷いながら、

 

「えーと、自来也先生はオレが里を抜けたこと、どう思ってるのかなーとか、なんとか……」

「ん? いや、正直言って、お前の姿を大スクリーンで見せられた時は、危うく吹き出しそうになったが……」

「えっ! 自来也先生も風雲姫の姉ちゃんの映画見たのか?」

「見たも何も、ワシとあの姫さんは仕事仲間だからのォ」

「え……えぇ〜!!」

 

知られざる事実にナルトが叫ぶ。

自来也はそんなナルトを笑いながら、

 

「元々、次はワシの書いた小説を映画にする話が出とったのに、お前さん達が横からワシの映画デビューをかっさらって行ったんだがのォ」

「し、知らなかった……」

 

風雲姫完結編を映画館で見た時の自来也の衝撃は凄まじいものであった。

ナルトが出ていたのはもちろんのこと、何よりその少年がかつての教え子、ミナトとそっくりだったからだ……

見た目だけの話ではない。

クナイの持ち方、足の運び方、印を結ぶ時の細かい仕草……

一つ一つがミナトの面影を宿していたのだ。

……まるで、本当に見て、その影響を受けたかのような動きであった。

些細なものなので、それに気づいた者は自来也とカカシぐらいであったのだが……

だからこそ、わざとナルトの前に姿を現したのだ。

もしかしたら、自分のことも知っているのではと……

 

「ナルト……ワシは確かに所属こそ木の葉の忍だが、見ての通り、今はあっちこっち旅をしとる身。お前をどうこうするつもりはねーから、ミナトの話を聞かせちゃもらえんかのォ……」

 

その言葉をきっかけに、ナルトは今まであった出来事を話し始めるのであった……

 

 


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