霧隠れの黄色い閃光   作:アリスとウサギ

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写輪眼のカカシ

鬼兄弟が木の葉の偵察に向かってから、再不斬とハクもやることがあるといいアジトから出ていた。

そのため、今はナルトが一人で留守番をしており、手持ちぶさたに暇をもて余していた。

最近は修行も誰かと一緒に行っていたので、一人だとあまり乗り気がしない。

 

「あ〜ぁあ、暇だってばよ! みんな俺だけおいて行きやがって……そうだ」

 

ナルトは目を閉じ精神世界に入ろうと試みる。

覚えたい術があったのだが、どうやったら会得できるのかわからず、困っていたナルトは、知っているかもしれない相手にヒントをもらおうとしていた。

 

 

薄暗い通路。

ナルトは再び来られたことを理解し、九尾のいる部屋へと足を進める。

そこは何もない部屋。

九尾とナルトの二人を除いて……

 

『小僧! 何のようだ!』

「オレってば、飛雷神の他にもう一つ覚えたい術があって、そのヒントを教えてもらいに来たんだってばよ!」

『ああぁ?』

「とうちゃんが、あの仮面の男をぶっ飛ばした術だってばよ!」

『そんなこと知らん!なぜワシが、小僧の頼みなど、聞いてやらねばならないんだ?』

「いいじゃねーか! オレとお前は一心同体なんだろ?」

『フン、貴様ごときが螺旋丸を会得できるわけがなかろう? 寝言は寝てから言え!』

「螺旋丸?」

『螺旋丸。あの四代目が自ら作った難易度Aランクの超高等忍術! 少し前まで分身すらできなかったお前が覚えられるわけないだろうが』

「そんなのやってみなければ、わかんねぇだろうが!」

『フン、小僧……お前、さっきから普通に話しているが、ワシが怖くないのか?』

「うん? そりゃあ、でっかいから怖いけど、お前が悪い奴じゃないのはとうちゃんが教えてくれたし、何よりもっと怖い奴等を知っているからな……オレってば……」

 

ナルトは木の葉の忍に殺されそうになった時のことを思い出す。

もう何日も経ったのに、あの日の出来事を今だに夢に見ることさえある。

 

 

九尾も目を閉じ、あの時の事を思い出す。

ナルトが木の葉の忍に殺されかけた日のことを……

 

『フン、四代目! ナルトに何を教えようとしているのかは知らんが無駄だ! 里を救った英雄であるお前の息子がどんな扱いを受けているか、これでわかっただろう? ククク!!』

 

ナルトに幻術をかけ終えた四代目火影は、九尾のほうを振り返る。

 

「確かに、今回のことは僕も辛く思っているよ……でも九尾、僕はあの日の決断を後悔した覚えは一度もないよ」

『あんな光景を見せられた後だというのに、よくそんな強がりが言えるものだな四代目!』

「いや、そこじゃないよ九尾」

『なに?』

「キミをナルトに封印したのは間違いじゃなかったと今日確信できたよ」

『……どういう意味だ』

「だって、さっきナルトを助けてくれたじゃないか?」

『……何の話だ』

「確かにナルトとキミは一心同体だ。だけど、ナルトが死んだからといってキミが死ぬなんて本当はわからないじゃないか。むしろ、キミが自由になれる可能性の方が高いんじゃないかい?」

『…………』

「九尾、ナルトのことをこれから少しだけ気にかけてあげてくれないかい?」

『なぜワシに頼む? そもそもそんな寝言、ワシが聞くとでも……!?』

 

四代目火影の身体が、徐々に薄くなっているのに気付く九尾。

それに四代目火影は苦笑を浮かべ、

 

「まぁ、ご覧の通り。僕もそう長くは持たないし、キミ以外に頼める相手もいないしね」

『そんなことで、ワシが同情するとでも思っているのか?』

「そんな風には思っちゃいないさ。ただ息子の幸せを願わない親はいないだろう?」

『…………ワシの力をコイツに貸すつもりはない』

「……九尾」

『だが、コイツの態度次第で横から口出しぐらいはしてやる』

「そうか……ありがとう。僕はナルトの幻術が解けたら、クナイの時空間忍術の術式にナルトのチャクラを組んで、いつか僕と同じ術をナルトも使えるように道しるべを作っておくよ」

『フン、そんなことはワシは知らん!』

「あはははは……」

 

九尾は再び目を開け、ナルトを見る。

 

『小僧! 貴様は何のために力を身につけようとしている。木の葉の者達へ復讐するためか? それとも何か野望でもあるのか?』

「うん? オレは復讐しようなんて思ってないってばよ? そりゃあ里の奴等は憎いけど、オレのとうちゃんは四代目火影だったんだからな! 向こうから喧嘩ふっかけてこないなら我慢するってばよ!」

『ならなぜ力を求める?』

「難しいことはよくわかんねぇけど、オレみたいな奴を助けるためだってばよ!」

『助ける? 自分のことすらろくに守れない奴がか?』

「だから、頑張って修行してるんだろうが!」

『フン、まあいい……螺旋丸を会得したければ、水風船で遊んでいろ!』

「はぁ? 水風船って、オレをバカにしてるのか!」

『この前までやっていた木登り修行の応用だ。今度はチャクラの流れだけで、他の力は使わずに水風船を割ってみろ』

「もしかして……まじで、そんな修行方法なのか?」

『少なくとも四代目がそうやって修行していたのは実際にワシがこの目で見ている。信じるか信じないかはお前次第だがな……』

「う〜ぅ、何か思ってたよりしょぼい修行だけど、やってみるってばよ! ありがとな九尾!」

『フン、用が済んだのならさっさと出ていけ! ワシは寝る』

「あぁ、じゃあ、またな」

 

ナルトは手を振り、外へ駆け出した。

 

『四代目よ、貴様がアイツのために残していった螺旋丸を会得できるかどうか見させてもらうぞ……』

 

 

精神世界から戻ったナルトは早速、修行に入ろうとしていた時……

 

バン!と家の扉が開かれる。

 

入って来た再不斬とハクの様子がいつもと少し違うことに気付き、ナルトは声をかける。

 

「どうしたんだってば? ハク? 再不斬?」

「ナルトくん、今すぐ出る準備をして下さい!」

「何かあったのか?」

 

というナルトの質問に、再不斬が答える。

 

「先ほど鬼兄弟からの連絡が途絶えた。定期的にオレと連絡を取っていたのだが……」

「ど、どういうことだってばよ!」

 

すると、今度はハクが簡潔に状況を説明する。

 

「状況から考えると木の葉の忍にやられたとみて間違いないでしょう」

「そんな……業頭と冥頭が……」

「ですので、急いで準備をして下さい!」

「わかったってばよ!」

 

 

再不斬、ハク、ナルトはアジトを出て、波の国へ行くのに必ず通らなければならなく、かつ水の多い場所で木の葉の忍達を待ち受けることになった。

元々、水の国出身の再不斬は水が多ければ多いほど力を発揮しやすいためである。

周囲の水にも再不斬自身のチャクラを練り込み、万全の体制で迎えうつ。

ナルトも短い間だったとはいえ、仲良くなった業頭と冥頭やられたと知り、完全にやる気でいた。

だが、そんなナルトとハクに再不斬は告げる。

 

「ハク、ナルト。今回お前達は戦闘に参加するな」

「わかりました再不斬さん。僕達は相手の戦力を見極め、いざという時にだけ助けに入ればいいのですね?」

「あぁ、そうだ。お前は賢い奴だよハク。本当に良い道具だ」

「ありがとうございます。再不斬さん」

 

スムーズに話を終わらせようとする再不斬とハク。

それにナルトが、

 

「ちょ、ちょっと待つってばよ! オレだって戦える! ここでやらなきゃ、何のために修行して来たのかわかんないってばよ!」

「ナルト、始めに言ったはずだ、オレの指示には従ってもらうぞ!」

「で、でも……」

 

何とか食い下がろうとするナルトにハクは優しく声をかける。

 

「ナルトくん、相手は木の葉の忍です。どのレベルの小隊が護衛についているかはわかりませんが、木の葉の恐ろしさはキミが一番よくわかっているはずです。こちらの戦力を隠し、相手の戦力だけを見定める。そして、何かあった時に再不斬さんを助けて、次に備える。これも忍の闘いですよ」

「……わかったってばよ……」

 

悔しがるように納得するナルトを見て、再不斬とハクは声に出さずに笑い合っていた。

 

 

作戦が決まった後、ナルトとハクは再不斬からある程度離れた木の陰に隠れていた。

 

「ナルトくん、来ました」

 

遠くからでも状況をよく見渡せる位置を陣取っていたナルトとハクは、木の葉の忍達を肉眼で確認していた。

黒髪の少年が二人、ピンク髪の女の子が一人、爺さんが一人、そして顔の半分以上が隠されている白銀髪の男が一人。

それを見て、ナルトは驚きの声を上げる。

 

「えっ! あれってば、サクラちゃんとサスケか?」

「もしかして知り合いなのですか?」

「うん、この間まで一緒にアカデミーに通っていた奴等だ……」

「そうだったんですね……」

 

横にいるナルトの表情は複雑な顔をしていた。

ハクはその顔を見て、再不斬がナルトを戦闘に参加させなかったのは、やはり正解だったと考えていた。

 

 

一方、再不斬は、周りより少し高い木の陰から、木の葉の小隊を見ていた。

他の奴等はとるに足らないが、一人だけ別格の忍がいるアンバランスな小隊。

 

(まさか、アイツがタズナの護衛についているとはな……それともナルトの情報を得て、依頼ついでに送り込んで来たのか……

まぁ、どっちみち殺れば一緒だな)

 

小隊が全員狙える位置に来たのを見計らい、首斬り包丁を投げつける。

 

「!? 全員伏せろ!」

 

やはり白銀髪の男がすぐに気付き、全員に指示を出す。

 

(こりゃあ、一筋縄で行かなそうだ)

 

再不斬は先ほど自分が投げ、木に刺さった首斬り包丁に乗り、小隊の前に姿を現す。

 

「まさか、てめぇがいるとはな、カカシ! お前が相手じゃ鬼兄弟の奴等では勝てないのも無理はねぇな」

「へぇ〜、こりゃあ、こりゃあ。霧隠れの抜け忍・桃地再不斬くんじゃあ、ないですか〜」

 

気の抜けた返答をするカカシ。

だが、そこには一部の油断もなく、再不斬を警戒して見ている。

 

「お前達、卍の陣でタズナさんを守れ! 戦闘には参加するな! それがここでのチームワークだ……」

 

そこでカカシは一度言葉を切り、左目を隠していた額あてに手をあて、

 

「お前相手にこのままではちと厳しいか……」

「ほぉー、早速うわさの写輪眼を見せてくれるのか……」

 

写輪眼という単語に、タズナの護衛をしながらサスケが反応する。

それも無理のない話で、本来、写輪眼はうちは一族の一部の者にしか使えない憧術であり、うちは一族ではない者が持っているのはおかしいからだ。

うちは一族の殆んどがこの世から去った今、その眼を持つカカシは数多くの忍からマークされている。

そして、憧術使いは全て観察眼に優れているが、写輪眼の恐ろしさはそれだけではない。

写輪眼の本当に恐ろしいところ。

それは一度見た術をコピーしてしまうところだ。

その憧術を持つが故にカカシは木の葉一の業師、コピー忍者のはたけカカシと各国で恐れられているエリート忍者なのだ。

 

「忍法・霧隠れの術」

 

再不斬は予め準備していた周囲の水分に、更にチャクラを練り込み、霧を濃くしていく。

 

「お前ら、油断するなよ! 相手はあの無音殺人術の達人、桃地再不斬だ。呼吸一つで相手の位置を完璧に把握し、殺しにくる。オレも写輪眼を完璧に使いこなせるわけじゃないからな……ま、駄目でも死ぬだけだがなぁ……」

「先生、そんな呑気な!」

「あのね、サクラ。今の先生の話聞いていたのかい? この状況で何で口を開くの? 顔はブサイクだけど頭だけはそこそこ良いのがキミの取り柄じゃなかったのかい? これじゃあ、良いところが一つも……」

「あんたが一番うるさいわよ! サイ!」

「クククク……餓鬼のお守りは大変そうだなカカシ! 優しいオレがお前の負担を減らしてやろうか? 誰から殺して欲しい?」

 

再不斬の殺気がどんどん膨れ上がり、タズナは勿論、下忍の三人も呼吸すらままならなくなる。

そんな三人に振り向き、この状況ににつかわない笑顔で、

 

「安心しろ、サスケ、サクラ、サイ。お前達はオレが死んでも守ってやる。オレの仲間は絶対、殺させやしないよ……」

 

カカシの言葉で極度の緊張が解ける三人。

だが……

 

「それはどうかな?」

 

再不斬は既に四人の後ろに立っており、タズナを含めた四人を首斬り包丁で切り落とすモーションに入っていた。

その動きを写輪眼の洞察眼で見抜き、カカシが全員を突飛ばし、再不斬にクナイを突き刺す。

が、それは再不斬の実体を作る水分身であり、カカシの後ろから現れたもう一人の再不斬がカカシを切り落とす。

 

「カカシ先生ー! 後ろ!」

 

サクラが叫ぶが間に合わず、カカシは真っ二つになり……水へと還る。

 

(なに!? 水分身だと!? この霧の中で既に術をコピーしていたというのか……)

 

一瞬の思考。

その隙を写輪眼のカカシが見逃すわけもなく、再不斬の後ろから首へとクナイを突きつけ、

 

「……終わりだ」

 


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