「千鳥!!」
「螺旋丸!!」
二つの奥義が激突。
轟音を鳴り響かせた後。
両者は衝撃波に弾かれ、
「くっ」
「チッ!」
距離を取る。
水面が泡立つ中、ナルトは目の前に立つ相手を。
サスケを見た。
今回、自来也からナルトが受けた任務は、音忍に連れ去られたサスケの奪還である。
だというのに、そのサスケは自由の身になっていて……
いや、それはいい。
サスケが無事なら、文句はない。
だが……
ナルトはサスケを睨む。
「サスケ……今のはどういうつもりだ?」
その質問に、サスケは人を小馬鹿にした笑みを浮かべ、
「あァ? 何のことだ?」
「とぼけんじゃねーよ。お前、今…サクラちゃんを殺そうとしてただろ! そりゃ、どーいうことだって聞いてんだよ!」
「ククククク……ナルト。テメーまでそんなことを言うために、わざわざ霧の里から出向いたってーのか? ご苦労なこった……」
「ンだと……オレはな、お前が攫われたって聞いたから、こうして助けに来てやったんだぞ! そしたら、もうお前助かってるし、サクラちゃんと闘ってるしで、訳わかんねーってばよ」
それに、サスケは笑う。
見ていて不快感を感じる笑みで……
人の心を凍らせるような笑みで……
そんなサスケに、ナルトは訊いた。
「サスケ?」
「ナルト……オレは里に帰るつもりはない。サクラを助けに来たってんなら、とっとと連れて帰りやがれ」
「はあ? 何言ってんだ、お前。里を抜けるつもりなのか?」
「そうだ……オレは音へ行く……」
「音? 何で? 木ノ葉で何かあったのか?」
「クククク……」
愉快で、冷たい、嫌な笑い声。
不快な音に、ナルトは眉を寄せ、
「何かお前…おかしくねーか? どうしちまったんだ」
「フン……ナルト。オレはようやく理解した。里を抜けたお前は正しかったとな」
「……どういう意味だ」
「今までオレは…木ノ葉というぬるま湯に浸かり……自分のやるべきことから目を逸らし、奴のことを、復讐を忘れ、ただのうのうと生きてきただけだった。だがそれも今日で終わりだ……」
「……それが、お前が里を抜ける理由か?」
「ああ。オレはさらなる力を手に入れるため、音へ行く」
ナルトはため息を吐く。
サスケの言ってることの半分ぐらいは、よくわからなかった。
いきなりそんな話をされても、ナルトの頭では理解が追いつかない。
だけど、サスケの気持ちはわかった。
何かを憎む気持ち。
力を求める心。
里に対する不信感。
色々と、思うところがなかったわけではない。
が、ナルトは言う。
「なるほど……ね。わかった」
「フン、ウスラトンカチにしちゃー理解が早いじゃねーか」
「何言ってんだ、サスケ?」
「?」
「オレは、お前を力づくでも木ノ葉の里に連れて帰る。今、そう決めた!」
「……どういうつもりだ……既に木ノ葉を抜けたお前が、どうしてオレの邪魔をする」
「別に邪魔したいわけじゃねーってばよ。お前にちゃんとした理由があって、里を抜けてーって言ったんなら、霧に連れて帰ることだって考えた。
けどな……」
そこで一度言葉を区切り、ナルトはサスケを見据えて、
「今のお前は……何もわかっちゃいねェ……強くなるってことの本当の意味が……まるでわかってねぇ」
「落ちこぼれの分際で、このオレに説教かよ! ナルトォ!」
「言っただろ、サスケ。お前は強いってことの本当の意味がわかってねぇ。今のお前じゃ、たとえ何回闘っても……オレには勝てねーぞ?」
ニヤリと笑って、ナルトが言った。
相手を挑発するかのように。
それにサスケは目を血走らせる。
朱い瞳。
写輪眼を開きながら、
「上等じゃねーか! ウスラトンカチがぁ!」
こちらに突っ込んできた。
雄叫びを上げながら、サスケが加速する。
下忍にしては、破格のスピードだ。
あくまで下忍としては……だが。
ナルトは半歩体をズラし、最低限の動きだけで放たれた拳打を躱し……
「遅いってばよ」
サスケを殴り飛ばした。
「ぐっ……」
カウンターを決められたサスケが、殴られた頬を拭い、憎悪すら宿した朱い瞳でこちらを睨んでくる。
そんなサスケをどうするか……
と、呑気に考えながら、ナルトはサクラの方を見て、
「サクラちゃん。わりーんだけど、こっからは選手交代だ。オレがサスケの相手をするから、手ぇ出さないでくれ」
「で、でも……」
「頼むってばよ……」
「わ、わかった……ナルト…サスケくんを」
ナルトはナイスガイポーズで、前を向き、
「任せとけ!」
「う、うん」
という、やり取りを聞いていたサスケが、
「オレと闘ってんのに、サクラの心配とは……随分と余裕じゃねーかよ」
「いいや、お前と闘うんだ。サクラちゃんには悪いけど、守りながら闘うのは流石に危ねーからな」
「フン……」
サスケは短く返した後、姿勢を屈ませ、
「ナルト……お前とは機会があれば、もう一度本気で闘いたいと思っていた」
「……ああ、オレも同じことを思ってた」
「そういや……アカデミーの頃から、テメーはよくオレに突っかかって来やがったよな……クク、互いに望んでた闘いって訳か」
それにナルトは、首を横に振る。
確かに、サスケと闘いたい。
ナルトはそう思っていた。
だけど……
「こんな形で闘いたかった訳じゃ…ねーんだけどな……オレは」
「フン、お前の都合なんか知りゃしねーよ。ナルト……はじめに言っておくが、オレはお前を殺すつもりでやる。死にたくなかったら、精々必死になるんだな」
直後。
サスケが印を結び、術を放ってきた。
「火遁・豪火球の術!!」
うちは一族がもっとも得意とする火遁忍術。
辺りを照らす熱を帯びた火の球が、一直線に迫り来る。
そんな状況でも、ナルトは焦らず、的確な判断を下し、行動に移っていた。
ポーチから巻物を取り出す。
変わった術式が書き込まれた巻物。
それを開き、
「封印術・封火法印!!」
すると……
本来紙ぐらい簡単に燃やせるはずの火遁が、瞬く間に巻物へと吸い込まれ、封印された。
一瞬にして火が収まる。
クリアになった視界で、それを見たサスケが、
「なに!?」
驚きの声を上げた。
元々、うずまき一族は封印術に優れた一族。
飛雷神の修行ついでに、自来也から少し教わっただけで、これぐらいのことはナルトにもできるようになっていたのだ。
それを自慢気にナルトが話す。
「へっ……どうしたサスケ?」
「チッ! そんな術まで身につけてやがったのか……落ちこぼれの分際で……」
憎々しい表情をするサスケ。
あれ?
想像していたのとまったく違う反応に、ナルトは一瞬困った顔を見せたが……
「まぁ、今のサスケに、言葉での説得は無理か……」
一人で納得した。
が、もう一度だけ言う。
たぶん無理だろうけど、言葉で解決できるなら、それが一番だから。
「サスケ……一度頭冷やして、里に帰れってばよ……」
「フン。オレの頭はテメーと違って、出来がいいんだよ……結論なら既に出ている……考えることなんざ何もねぇ」
「あぁ!? テメー、こっちが優しくしてっからってつけ上がりやがって! オレってばその気になれば、お前をボコボコにして、力づくで連れ戻すことだってできんだぞ!」
「調子乗ってんじゃねーよ! いつでもオレを倒せるってかァ! アア!?」
何故か逆効果だった。
うーん、優しくしたつもりなのに……
頭を悩ませるナルト。
何でサスケを救出する任務で、その本人と闘わなければいけないのか疑問に思いながら……
前を見ると……
普段はクールなサスケが、物凄い形相でこちらに駆け出して来ていて……
「はぁ……仕方ねぇ。ちょっと痛くすっけど、我慢してくれよな」
瞳に力を入れる。
覚悟を決めた。
サスケと闘い、完膚なきまでに叩きのめす覚悟を。
と、そこで。
「ナルトォ!」
先ほどの封印術を見て、火遁では分が悪いと判断したのだろう。
サスケが接近戦を挑んできた。
拳を突き出し、殴りかかってくる。
が……
ナルトは瞬身の術で、その後ろに回り込み、
「わりーな、サスケ」
サスケの首を押さえる。
そのままホルスターからクナイを取り出し、振り下ろした。
グサッ!
サスケの右肩にクナイが突き刺さり、
「ぐあっ……!」
血が流れる。
だが、逃がす訳にはいかない。
首を掴んだ状態で、ナルトは攻撃を続行しようと……しかし。
「いい気になってんじゃねぇー!!」
サスケが右手に隠し持っていた石を、手首のスナップだけで器用に投げてきた。
「おっと」
ナルトは反射的にそれを避ける。
拘束が緩んだところで、サスケが回し蹴りを放ってきた。
「ハッ!」
「おぅ、これはマジで危ねぇ」
ナルトは後ろへ跳び、一度距離を取った。
そこでサスケが、自身の肩に突き刺さっているクナイを抜き、自分の武器として構えた。
それを見て、ナルトは納得した。
サスケは武器を持っていなかったのだと。
だから、石を隠し持っていた訳だ。
相変わらず闘い慣れたその動きに、ナルトは感心して、
「やっぱ、やるなー。サスケ」
「…………くっ」
が、サスケの表情は逆に曇る。
まあ、その理由も痛いほど、ナルトにだってわかるのだが……
だが、だからこそ手は抜けない。
チャクラを全身に巡らせ、今度はナルトから攻撃に出た。
「行くぞ! サスケェ!」
拳を握り、サスケを殴る、蹴る、叩きつける。
ナルトが一方的にサスケを攻撃する。
以前、波の国で闘った時は、二人の力量はほぼ五分五分だった。
だが、今は違う。
写輪眼を使ってもなお、サスケはナルトの動きについてこられない。
恐らく眼では見えているのだろう。
サスケは術も多彩だ。
火遁、雷遁、手裏剣術。
体術だって、波の国で闘った時とはレベルが違う。
だが……
それだけだ。
このレベルでは、もう、今のナルトには勝てない。
一方的にサスケをボコボコにして……
「くらいやがれ!」
トドメとばかりに、思い切り殴り飛ばした。
ナルトの拳打をもろに受け、サスケの体が何度か水面を跳ね、沈む。
暫くしてから、ボロボロのサスケが水の中から這い出てきて、
「クソがァ!!」
そう呻いた。
それにナルトは応える。
「ちったぁ、目ぇ覚めたかよ?」
「黙れ!! 何故だ……何故、ここまで……」
「サスケ……もう十分だろ。今のお前じゃ、オレには勝てないんだってばよ……」
「ざっけんなァ! お前がオレより強いだと? そんなこと認められるか!!」
ナルトはその言葉に首を振り、
「オレが強いから勝てない……じゃねぇ……お前が弱いから勝てねーんだ」
「な、なんだと……テメー……」
怒りの声音を滲ませるサスケ。
当然だ。
プライドの高いコイツが、弱いと言われて怒らない訳がない。
が、ナルトは言う。
「サスケ……オレからすれば、今のお前よりは、サクラちゃん達の方が、よっぽど強く見えるぞ」
「ククク……何言ってやがる。オレがサクラより弱いだと? ウスラトンカチがナマ言ってんじゃねーぞ!」
続けて、サスケが叫ぶ。
「大体、テメーがオレに説教する資格があんのかよ、ナルトォ! お前だって、オレと一緒だろーが!」
「一緒?」
「お前が木ノ葉にいた頃、周りの奴らから蔑まれてたのは知ってんだよ! 理由までは知らねーが……だが、お前だって木ノ葉の連中が憎かったはずだ! 疎ましかったはずだ! テメーがオレとは違うなんて、口が裂けても言わせねーぞ!!」
「……ああ、お前の言うとおりだってばよ……サスケ」
「なら、何故……オレの前にテメーが立ってやがる!」
ナルトは少し寂しく思いながら、サスケを見据えて、
「それは……サスケ。お前が、オレとは違うからだ」
「あ?」
「確かにオレとお前は似た者同士だ。けどな……一つだけ違うところがある」
「何の話だ……」
サスケの疑問に、ナルトは近くにいるサクラを指差し、
「サスケ……何でここにサクラちゃんがいるのか……本当にわかんねーのか」
「…………」
「オレが里を抜けた時……誰も追ってなんて来なかったぞ……だけど、サスケ…お前は違う。サクラちゃんだけじゃねぇ。イルカ先生や他のみんなだってお前を助けるために、命懸けで今も闘ってんだぞ!」
「……るっせーんだよ! それが何だ? オレがいつ助けてくれって頼んだよ!」
ナルトは拳を握る。
何にもわかってないサスケに、真剣に語りかける。
「頼んでなくても来てくれたんだろうが! みんなお前のことを心配して来てくれたんだぞ! 本当に何とも思わねーのか? お前の目にサクラちゃんの姿は映らねーのか? イルカ先生の声は届かねーのか? みんなと過ごした楽しい思い出の一つも浮かばねーのかよォ! なぁ、サスケェ……!」
ナルトの言葉に、想いに、サスケは一度目を閉じる。
「…………」
そして、開いた。
三つ巴の勾玉を……
その眼に、憎しみを宿したまま……
さらに朱い色を増した瞳がナルトを映す。
「木ノ葉に残る道も考えた……だけど、結局オレの心は復讐を選んだ」
「復…讐……?」
「ナルト……お前はオレと同じく、孤独の痛みを知る者だ。だからお前は強い。オレと同じようにな……」
「…………」
「そしてこの痛みが人をさらに強くする。だからこそ、オレはお前らとの繋がりを――断ち斬る」
「ふざけんな……」
今度はナルトが怒りを滲ませ、
「まだわかんねーのか……サスケ。そんなもんは本当の強さじゃねェ。繋がりをもとめて、もとめて、守り通そうとするのが本当の強さだ! 復讐を言い訳にしてんじゃねェ! 目の前にいる仲間一人大切にできねー奴が、強くなんてなれる訳ねーだろうが!!」
が、やはりナルトの声は届かない。
それどころか……
「ククククク……この力を使うつもりはなかったんだがな……」
サスケの体から禍々しいチャクラが溢れ出す。
「ナルト、最後に認めてやるよ。テメーはオレのライバルだってな……」
そう言った――直後。
ズズズズズズズッ!
サスケの体中から、黒い痣が浮かび上がった。
しかも、変化はそれだけでは終わらず……
その痣が体を覆い、サスケの体全体が、どす黒い褐色へと変貌し始めて……
さらに……
バサバサと羽まで生えていて……
明らかに、異常な力に。
触れてはいけない禁忌に、サスケは手を出していた。
禍々しいのはチャクラだけではない。
サスケの体は人間のものではなくなっていた。
異形なものと化していた。
悪魔――
もはや化け物と呼ぶにふさわしい姿。
後ろから、サクラの悲鳴が聞こえたが……
「な、なんだってばよ……それ……?」
対峙しているナルトは、それどころではなくなっていた。
凍えるようなチャクラ。
空気を凍てつくすほどの禍々しいオーラ。
冷や汗が頬を伝う。
流石にこれはヤバい。
ナルトは内なる相棒に呼びかける。
『九喇嘛!』
すると、こちらの状況を見ていたのか、間髪入れずに九喇嘛が返事を返してきた。
『ったく……気を抜きすぎだ、ナルト。今のお前なら、うちはのガキなど瞬殺できただろーが』
『いや、サスケを助ける任務で、サスケ殺しちまって、どーすんだってばよ!』
『ケッ! まあいい、さっさと終わらせるぞ』
『おう!』
次の瞬間。
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
九喇嘛のチャクラが溢れ出す。
オレンジのチャクラがナルトを覆い、際限などないと言わんばかりのチャクラの奔流が、滝の水を弾き飛ばし、氾濫していた。
それを見たサスケが、
「そろそろ決着といこうか……ナルト」
背中の羽を羽ばたかせ、空を飛ぶ。
空中からの攻撃でも仕掛けてくるのか?
と警戒したが、どうやらそうではなく、サスケはそのまま……
終末の谷の象徴の一つ。
うちはマダラの石像の上に、舞い降りた。
そして、ナルトを静かに見下ろす。
まるで、早く来いと、言わんばかりの眼で。
それにナルトは苦笑して、
「ったく……相変わらずかっこつけだな……アイツ」
そして、それに応えようと……
もう片方の石像に、跳び乗ろうとした……
その時。
後ろから、
「待って! ナルト!」
サクラが言った。
ナルトは声の方へ振り向き、
「サクラちゃん。わりーんだけど、もうちっとだけ……」
が、サクラはそれを遮り、
「わかってる……アンタとサスケくんの闘いに
……悔しいけど、今の私じゃついていけない……
それどころかナルトの足を引っ張るだけなのはわかってる……だけど、今回ばかりは私がサスケくんを止めなくちゃいけないの! だから……」
ナルトは一瞬悩んだ。
が、頷いた。
「ん! わかったってばよ。でも、無茶だけはしないでくれよ?」
「う、うん。大丈夫よ!」
「よし! そんじゃ、行くか!」
ナルトとサクラは、同時に駆け出した。
そして。
サスケの待つ像とは反対の場所。
千手柱間の石像の上に、ナルトが正面、サクラがその一歩後ろへ立つ。
と――
突風が吹き荒れる中、サスケがナルトを見据えて、静かに告げた。
「これで終いだ……ナルト……」
「ああ……行くぞ。サスケ……」
サスケが印を結ぶ。
丑 卯 申
バチチチチチチチチチ――ッ!
千の鳥が鳴り響く。
と――
同時に、
ナルトが十字に印を結び、
「影分身の術!!」
ボン! ボン!
二体の分身ナルトが両側に出現する。
そして、分身ナルトが本体の両手に、九喇嘛のチャクラを集約させていく。
乱回転する旋風音。
ナルトの両手には、渦巻くチャクラの球が、輝かんばかりのオレンジの光を放っていた。
「………………」
「………………」
「………………」
ナルト、サスケ、サクラ。
全員が口を閉ざす。
「………………」
暫く沈黙が流れたあと、
サスケがゆっくりと口を開いた。
「知ってるか? ここは“終末の谷”と呼ばれる木ノ葉の国境だ……クク…オレ達の最後の闘いには、ちょうどいい舞台じゃねーか。なぁ、テメーもそう思うだろ? ナルト」
「わりーが、サスケ。テメーが終わらそうとしているもんを、守るためにオレは闘ってんだ!
……絶対に負けねェ!」
「…………」
「…………」
次の瞬間。
サスケとナルトが同時に、
――飛んだ。
「ナルトォォオ!!」
「サスケェェエ!!」
二つの石像の中心。
止まることを知らない滝が流れる上空で……
二人の忍が激突する。
サスケが闇に染まった奥義を――
ナルトが輝き光を放つ球体を――
――瞬間。
――衝突。
「千鳥!!」「螺旋丸!!」
「「ウオォオオオォオオオ!!!!」」
二つの衝撃波が、周囲の地形を埋め尽くし、覆い尽くす。
滝が裂け、石像の一部を壊し、砕く。
互いに一歩も譲らない。
二人は一歩も退かなかった。
その均衡を崩したのは……
桜髪のくノ一が、一本の変わった形をしたクナイを――
「ナルトォォ!!」
サクラが術式クナイを投げた。
それはナルトが予め渡していたもので……
そのクナイが、ちょうどサスケの上空を通過しようとした――瞬間。
ナルトの姿がサスケの前から――消えた。
刹那。
一筋の光が閃き。
黄色い閃光が舞う。
「なっ!?」
驚きの声を上げるサスケの背中から、
飛雷神の術で、瞬間移動で現れたナルトが、
託された……もう一つの螺旋丸を叩き込んだ。
「こいつはサクラちゃんの分だァ!!」
バサバサと羽ばたく両翼に、乱回転するチャクラの球が捩じ込まれ……
「ぐああああああぁぁ」
サスケは強烈な回転を描きながら、
滝の降り注ぐ水中へと、沈んでいった……