機動兵器インフィニット・ストラトス・ユニコーン 作:ひきがやもとまち
原作:インフィニット・ストラトス
タグ:R-15 オリ主 残酷な描写 アンチ・ヘイト クロスオーバー 女オリ主 一夏がクズ 戦争 ISは兵器 性転換
原作設定を流用したオリジナル設定の世界観ですので、原作ファンの方と原作尊重派の方は読まれない事をお勧めしたします。
『白騎士事件』。この名前を知らない者は、今はもういない。
十年程前のことだ。当時の日本を攻撃可能な。各国のミサイルが一斉にハッキングを受け制御不能に陥り、ほぼ同時に発射された。
突然の凶報に驚き慌て狼狽える日本国民の瞳に映ったのは、救いの主を思わせる純白の人型兵器《インフィニット・ストラトス》。その第一号機《白騎士》であった。
純白の騎士は大空を縦横無尽に飛び交い、すべてのミサイルを一刀両断することで次元の異なる性能差を世界に対して見せつけ、続く対艦隊戦でも《白騎士》の優位が揺らぐことは決してなかった。
出撃した当時最新鋭の艦艇二十隻の内、母国の港へ寄港できたのは僅か8隻のみ。
当時の世界はこの時、日本出身の天才科学者篠ノ之束と彼女の生み出した超兵器インフィニット・ストラトス、通称《IS》に完膚なきまで徹底的に打ち負かされて敗北したのだ。
世界はISに敗北した。世界の秩序を支え続けた固定概念はここに崩壊する。
ーー戦争がはじまった。
白騎士事件で撃沈された艦艇はすべて当時の『最新鋭艦』。むろん、それらを保有していたのは世界に冠たる大国ばかり。それら全てが撃沈され、生き残った8隻は戦力外通告を事前に受けて同盟国と言うより属国としての随伴艦に過ぎず、大国の誇る海洋戦力は一時的に大きく削られ海洋覇権の存続維持は不可能となる。
折しも本国では、国家の威信を懸けた派兵に敗北を喫した政府に対して市民の怒りが拳となってぶつけられ、警官隊と衝突。首都機能は麻痺し、国中が無政府状態と化した時間は三十六時間の長きに及んだ。
この間、ネットワークに依存しきっていた経済と物流は混乱を来し収拾の目処が立たないままに株価は暴落。世界的な大恐慌に陥り、首都機能を回復させたばかりの大国政府に混乱を収める余力は僅かも残されてはいなかった。
世界は、大国の武力敗北とともに秩序を失い理性的な判断力さえ放棄した。
誰もが感情を根拠とする正義を主張し、主観的な正しさが世界中に蔓延り、テロと暴徒を大量発生させパニックへと至る。
この時既に篠ノ之博士は各国の研究施設に自分の開発したISの、制御コンピューターとでも称すべきISコアを送付していたのだが、この混乱を予期していなかった彼女は完全に取り乱して判断能力を失い、個々の事件にその都度対処するだけの対処療法しか手を打てず、自身が贈ったISは果たして政府機関が確保できたか否か本人でさえ把握し切れていない状況が発生してしまう。
これが最終的な破滅をもたらすキーとなった。
弱小国でもISさえ保有すれば、通常兵器で武装した一国の軍隊と同等に戦える。
テロ組織であろうと一軍に勝る戦力のISさえ持てば、主権国家と対等な関係を構築できる。
ISさえ持てば、ISさえ保有できれば、ISさえ手に入れられれば何だって出来る。許される。
ISさえあれば、ISさえあれば、ISさえあれば、ISさえあれば・・・・・・。
世界中がISの性能と力を誤解し錯覚し迷妄し、悪夢から覚めないままに各国はISを手にした組織と手にしていない勢力に分かれて激突し、都市を破壊し、線路を壊し、港を回復不可能なまでに荒れ果てさせた。
こうして世界は混乱期を迎え、これらの収拾には実に十年と少しの時間を必要とした。
あらかたの大国は崩壊し分裂し、または名称だけを一部残して他の国々と共同歩調を取っている現在、世界地図は大戦前より大きく塗り替えられている。
『秩序再構築戦争』とも呼称される第三次世界大戦を経た世界で人々は新たな秩序のもと、仮初めの平和を謳歌していた。
そんな中、極東の島国で貿易国でもある日本共和国。
大戦勃発以前より政治体制を変えていない世界的にも大変希有な国家。
白騎士事件に際しては、事実上の宗主国アメリカを支援するため護衛艦隊を派遣するも間に合わず、戦闘終結まで一発の銃弾も撃つ機会を与えられなかった。
そしてそれが要因となって崩れゆくアメリカの傘から離脱を決意し、平和ボケした国民性故に秩序を維持したまま白騎士事件を終えられたことで、贈られてきたIS全機を無事確保することに成功。
以後、ISを祖国の防衛と平和利用のみに限定して使い続ける世界中で唯一の国家として名高い。
物語は、ここから始まる・・・。
「・・・夏、おい、一夏! 私の声が、聞こえていないのか貴様は!」
「・・・・・・え? 箒・・・?」
桜舞う学園前で入学式会場の案内をしている在校生の女生徒から案内掲示板を渡され見入っていた少年『織斑一夏』は、突如として耳元で轟いた怒声に驚きながらも視線を声のした方へ向け、そこに長い黒髪をポニーテールにした幼馴染みの少女の姿を見いだして茫洋として声を出す。
返答内容もさることながら、自分の声に対する反応が乏しいことに箒はイラだち。肩眉を上げながら、彼を睨みつけてくる。
「私以外に誰がいると言うんだ? ここは本来、女子しか入学を許されていない特別な教育機関なのだぞ? 世界で初めて男性がISを動かしたから入学を許されているお前が、ここに入れたのは特例なんだ。
特例のイレギュラーでしかないお前と入学式から話したがる物好きは珍しいだろうからな」
「特例・・・」
「そうだよ。謂わばお前はスペシャルなんだ。だからもっと己の力に自覚を持ってだな・・・」
箒の説教が続いている。
それを聞き流しながら織斑一夏はどうにも府に落ちない気持ちを抱え込んでいた。
彼には確かに特別な才能がある。だがそれは、本来であれば女性しか動かすことの出来ないISを男であるにも関わらず起動できたというだけの才能だ。
世界中で只一人しか確認報告がなされていない男性IS操縦者だから。只それだけの理由で国防軍士官学校少女の部、通称IS学園に入学させてもらえた。それだけなのだ。
なんらの努力も段階も経ずに国家的エリートという栄冠だけを手渡されたから自覚を持てとは、この幼馴染みも無茶を言ってくれる。
(第一、俺は望んでここに来た訳じゃない。たまたま才能があったからと言って子供の将来を奪う権利が大人たちにはあるって言うのかよ?
ーーチッ。なんかムカつくんだよな、こういうのって・・・)
心の中で世間と政府の愚行を罵倒しながらも、彼の視線は周囲の見目麗しい少女達へと向けられていた。
率直に言って、かわいい子達ばかりが揃っている。
ISは国防の中核をなす世界最高戦力だが数に限りがあり、中核は成せても主力には成り得ない。
そのせいか各国政府はISを出撃させるに際し、部隊全体の士気向上を狙って若く見目麗しい美女・美少女を優先的に選抜する傾向が強い。
無論、実戦に際しては実力主義を徹底するのであろうが、普段は学生服を着て日常生活を送っている彼女たちを見ている分にはアイドル育成校にでも入学できたようで心が躍る。
彼とて健全な肉体を持つ十代半ばの青少年だ。姉とはいえハリウッド女優が裸足で逃げ出すレベルのハイスペック美女を間近で見ながら育ち続けては、理性を保ち続けるのにも限界がある。
彼とて男、いつまでも子供(朴念仁)のままではいられなかった。
思春期特有の生理現象を持て余していた彼にとってIS学園への入学そのものは歓迎すべきものであり、忌避する要素はなにもない。
彼が気になっているのは『自分の勝利で勝ち得た結果ではないから』と言う一点のみ。
余人にしてみれば酷くくだらない理由で突っぱねているだけと笑うのだろうが、彼にとってこれは神聖な誓いだった。
国防軍きってのエースパイロットであり、IS操縦者としても世界中で並ぶ者なしと称される《最強の剣姫》織斑千冬を姉に持つ彼にとって世間とは幼い頃より『自分を姉と比較して見下してくる存在』であり、『力で打倒し打ち倒すことで、自分の才能を認めさせる存在』で在り続けてきた。
姉に対する感謝の念と愛情には些かの揺らぎもないままに彼の敵意と憎悪はすべて世間に対して向けられ続け、強そうな奴を見かけたら問答無用で喧嘩を売る問題児へと彼はいつしか変貌していた。
それ故に彼は、己の実力を過小評価されるのを何より忌み嫌う。
人に見下されるのが嫌いだ。人に子供扱いされるのが嫌いだ。女よりも格下扱いされるのが嫌いだ。押しつけがましく命令されるのが大嫌いだ。
時代遅れな不良少年と揶揄されるようになっていた彼だが、今年度のIS適性検査で事故が発生し、偶然にも検査対象に含まれていない男子生徒の身でありながら機械が作動して、適正値『B』を認定される。
それからと言うもの、世界は彼に都合良く回り出した。世間の大人たちは手のひらを返して媚びを売ってきたし、女たちは自分で探さずとも向こうから寄ってきてくれる。
(なんとも清々しくて気持ちのいい、最高の世界になったもんだぜ。まさにIS様々だな。束さんの墓前には、後で感謝しておこう)
表面は取り繕って、内心ではニヤケ笑いを浮かべながら悦に入り、年上の幼馴染みで箒の実姉でもあるIS開発の先駆者にして天災科学者、“今は亡き”篠ノ之束に感謝の言葉を捧げて冥福を祈る。
未だに死体は確認されていないが、あの戦乱の中で一度も人前に姿を表さなかった篠ノ之束の死亡は既に確実視され、記録の上でも確定事項として明記されている。
世界は自分を祝福している。世界は自分のためにこそ在る。
自分こそが世界という舞台で、物語の主役を張るべき主人公!
世界の未来は、俺の手の中に! 俺が世界の未来を創っていくんだ!
ーー自己陶酔ここに極まれりである。織斑一夏の思考は、幼い頃から続いてきた鬱憤を晴らせたことで昇華し増長し、過信となることで一応の完成を迎えた。これ以降どう進んでいくのかは、彼と彼を取り巻く周囲の人間たちとの絆がものを言うだろう。
「・・・あれ? あの少女は・・・・・・」
「ーーあん?」
傍らに並んで歩いていた幼馴染みの篠ノ之箒が意外そうな声を発して、一夏の自己陶酔による夢妄想に冷や水をかける。
思わず不機嫌そうに問い返した一夏だったが彼女の視線の先にいる少女を一目見て、普段から見慣れている幼馴染みのことなどどうでも良くなる。
信じられないほど透明感のある少女だった。
長い銀髪を後頭部で結んだポニーテールは箒のそれと形状こそ似ているが、受ける印象は全くの別物だった。
キリッとした侍風の凛々しさを醸し出す箒のポニーテールに対して銀髪少女のそれは幼い感じがして、どこかしら子供っぽい。多めの髪で結ってあるのに大人っぽい色気よりも、男の子じみた健康的な色気を感じさせるのだ。
おそらく着ている服装も、印象を補填するのに一役買っているのだろう。
ショートパンツとタンクトップと言う露出の激しい軽装の上からジャンバーを羽織り、頭にはサングラスを乗せている。
携帯端末を見下ろしている姿から、おそらくは地図を確認するため掛けていたサングラスを上げているのだろう。
小柄で華奢な体格とそぐわないグラマラスなボディーも、一夏にとっては新鮮味があって目の保養になる。特に白すぎるほど白くて細い両足首のふとももには目を奪われずにはいられない。
少女の外見的な特徴から色気だけに着目して視線を集中させる一夏に対し、彼の隣に立つ篠ノ之箒は正規の手順で入学したIS学園生として、彼女の存在そのものに疑問を持った。
(おかしい・・・。あれだけ目立つ見た目をしていれば噂ぐらいは聞きそうなものだが、銀髪のロリ巨乳少女の話など入学前から聞いたこともない。
それにあの服装・・・生徒ではなく一般人のようだが、今年度入学してくる新入生の父兄かなにかか? その割には歳が私たちと近すぎる気がするのだが・・・。まさかあの歳で来賓と言うこともないだろうしな。
だが、不審者であれば即座に警備員が飛んできて取り押さえられている。元女子校で、しかも国家的エリートを育成する専門学校としての機能を持つIS学園はそういう点で厳しすぎるくらいに厳しいからな。彼女が未だ警備員に連行されていない以上、渡されたIDは学園長クラスから手渡されたVIPであると言うこと。
・・・ふぅ・・・触らぬ神になんとやらか。致し方ないな)
姉が現在の世界で最高戦力の座にあるISを生み出した天才科学者であるため、幼い頃より目上の人間相手にやりとりをする機会を強制的に与えられ続けた束の妹篠ノ之箒は、こういう場合に対処する術を心得ていた。
曰く、長いモノには巻かれる以前に関わりあうな、だ。
「ほら、一夏。もうじき入学式が始まる。初日から遅刻して笑い物になるのは貴様の好みではあるまい。他人に笑われたくないなら、今は走れ。とっととな」
「・・・・・・ちっ」
舌打ちしながらも一夏は箒の挑発に乗って走り出す。
笑い物になるのはごめんだ。二度とはごめんだ。笑うのは俺が勝ったときだけだ。他人に負けて笑われるのは我慢ならない。その為なら一時のお色気ぐらい堪え忍んでやるさ。
上から目線で相手の心に語りかけながら、一夏は後ろを振り返り振り返り会場へと歩を進めていく。
やがて彼らの後ろ姿が見えなくなって、しばらく経った頃。
黒服をまとった一人の男が少女に近づき、恭しげに頭を下げる。
「クロスボーン・バンガードの姫君『セレニア・ショート』様とお見受けいたします。
失礼ながら、本人であることを証明される身分証をご呈示願っても構いませんでしょうか?」
少女は茫洋とした瞳で黒服の男のサングラスに隠れた両目を見つめ、然る後に鈴を転がすような耳に心地のよい声を発する。
「この学園の流儀とは、そういうものなのですか?」
「は・・・? 申し訳御座いません、今なんと・・・」
「サングラスに内蔵された熱感値センサーで相手の心理状況を分析しつつ身分証の提示を求めるのが、あなた方IS学園の学園長『轡木十蔵』麾下の元特殊工作部隊が得意とする流儀かと聞いているのです。
それで? どうなのですか? 元ファントム・タスクの構成員リー・フォウチュンさん?」
「・・・・・・・・・・・・」
黒服は口をあんぐりと開けたままで固まり、間の抜けた彫像と化してその場に固定してしまう。
一分が過ぎ、二分が過ぎ、三分の時が過ぎ去っても彼の時間は戻ってこない。
いい加減、「すみませんでしたね、言い過ぎましたごめんなさい。始めてきた場所なので緊張していただけなんです。謝りますから、学園長室までご案内して頂けませんでしょうか?」と、自分の方から譲歩した方が良さそうだなぁと感じ始めていた矢先に。
ーー彼が、来た。
「・・・まさか『箱』の受け取りに貴女自ら出向いてこられるとは・・・噂で聞いていたとおり先読みの出来ない方のようですね? レディ・ショート」
ゆったりとした足取りで語りかけてきたのは、総白髪で顔にもしわが粋筋も刻まれている柔和な雰囲気を漂わせる初老の男性。
IS学園の学園長にして、篠ノ之束の協力者だった過去を持つ『遺産の管理人』。
IS学園校務員の制服に身を包んだ轡木十蔵は、穏やかな口調と態度で本心を覆い隠しながら来客に歓迎の意を示し、昼食の用意が出来ていることを告げて相席を求める。
それに対して礼儀正しく許諾しながら、セレニアもまた自分の流儀を押し通す。
「先触れの使者数をケチってしまい、申し訳ございません。なにぶん組織の構成員自体が少数なものですから。
改めまして轡木学園長。私は・・・」
轡木は軽く手を挙げて先の言葉を制しようとする。「あなたのことは存じています。今は名乗らない方がいい」と。
だが、彼は彼女のことを噂でしか聞いたことが無く、存じているのはあくまで人伝の又聞きで聞く彼女の姿だけだった。
それ故に彼は知らない。存じていない。
彼女、武装組織クロスボーン・バンガードの姫君にして、今は亡き組織の先代首領の忘れ形見セレニア・ショートは身の危険など一切省みず、成すべきと信じることを手段を選んで成し遂げる胸に覚悟を抱いた鋼鉄の少女であると言う事実を。
セレニアは轡木の言葉に対して形ばかりの礼儀を捨て、いつものようにいつもの如く平然とした口調で暗黙の了解を言葉だけでぶち破る。
「あなたが私を知っているかどうかなど、私にはどうでもよい事です。これは私の流儀です。これから交渉を行う相手と、名乗りもせずに食事を共にする趣味は持ちあわせておりませんのでね。だから勝手に名乗らせてもらいます。後のことはそちらの勝手でご自由にどうぞ。
私の名前はセレニア・ショート。クロスボーン・バンガードのお飾りにして、担いでも御利益のない御輿。交渉の場に花を添えるぐらいしか役に立てないので、ショーガールとしての役割を果たしに参りました。
どうぞ、お見知り置きください。元海上自衛隊の幹部にして、白騎士事件で派遣された護衛艦隊の指揮を執っておられた轡木十蔵閣下。お会いできて誠に光栄の至り。
ーーさ、それでは食事の後にでも早速見せていただけますね?
世界を壊し、世界を再生するのに必要な箱とやらを。
開けるのに必要な『鍵』と共に、二つ一緒に並べてね・・・・・・」
少女の狂気が轡木の心を掻き乱し、世界に再び大乱の風を呼び込み始める。
世界は回る、世界を回す。狂気と共に、少女の手の中で。
魔王と騎士たちによる終わり無き戦いのロンドが今、再び回り始めようとしていた・・・。